Tyrannical;30コメント

1 PUMA id:DDLLo3z1

2012-12-27(木) 16:32:13 [削除依頼]
2015年。A市のグロー駅で不可解な集団催眠殺害事件が起きる。その事件を解決するために結成された組織に天草は追われていて――。
  • 11 PUMA id:DDLLo3z1

    2012-12-27(木) 16:45:28 [削除依頼]
    「僕は淡縞一斗(あわじまいっと)です。高校一年です。よろしくお願いします」
     そう天草に一斗は笑いかけた。
    「……、なあ、一つ聞いても良いか?」
     一斗はにこやかに、どうぞ。と答えた。
    「光守さんの瞬間移動みたいなのや淡縞さんの手から炎みたいなのは何?」
     核心を突くような話であり、天草がこのミステイク・フリーに関わってから最も気になっていることだ。
    「ああ、そのことは何れ分かります。実戦になってから自ずと分かってくるかと」
     一斗の笑顔は変わらないままなのに、光守も凛も何一つ語らなかった。
     良くわからないことだと、天草は感じた。

    「淡縞さん、雑誌って捨てちゃって良いの?」
    「ああ、まだ資料として使うので棚に入れておいて下さい」
     はーい、と良いながら灰色の本棚に週刊誌のような雑誌を何冊か並べる。
    「しかし、散らかっていると言うよりもホコリが凄いだけなんだな」
     一斗は雑巾を持って壁や床を拭いていた。
     膝を床に付けながら拭いているため黒の喪服(もふく)は少し汚れていた。
    「そう言えば俺、喪服とか着なくても良いのか?」
    「天草サンは着なくても良いぜ。この喪服は死者を敬うものだし」
     ソファに寝転び、光守は言う。
    「言ったろ? 俺たちは依頼なら何でもするって。それが、人殺しでもな。んー、一応、凛サンと俺、一斗は殺しをやったしな」
     天草は息が詰まりそうだった。
     明らかに自分が体験してきたことと次元が違う。
     一体、この人たちは何のために動くのだろう。なぜ、人殺しまでするのだろうか。
    「――五年前、つまり、2015年このA市で集団催眠殺害事件が起きました」
     一斗は体を起こし、天草を見つめる。
    「駅近くで起きた催眠は流れている映像からの催眠で、駅付近に居た人々が集団で意識を失うといった、事件が起きました。その催眠によって死亡したのは200人。ただ、意識を失った時間は人それぞれで何人が催眠にかかったかは不明で、詳しい人数も分からないことが多い事件です」
     その事件は天草も知っていたし、本人も近くに住んでいるため恐ろしいと感じた。
    「その集団催眠殺害事件では犯人は未だ捕まっておらず、今もそのままです。そして再発もありません」
     そして、と一斗は雑巾を乾燥棚に戻してから、
    「ここのメンバーは催眠によって、家族を失った集まりなんですよ。僕は妹を、凛さんは姉を、光守君は母を、雪ノ条さんは兄を」
     光守も凛も一斗が語るそれを聞いても何一つ語らず、顔色も変えなかった。
    「僕たちの本当の目的は、催眠をかけた犯人を拘束、及び始末することです」
     ただただ平坦に一斗は語りそれが現実だと言って受け止めているようだった。
    「あなたの聞いてきた特殊な能力のことも、僕を除けば、ここの三人は催眠と関係がありますよ」
     光守も凛も雪ノ条も集団催眠の場には居たのだ。
     たまたま、生き残っただけ。と彼らは考えている。
     目の前に広がった光景は余りにも目を背けたいもので、大切な人が、最愛の人が隣でもう永遠に目を冷ますことがないと知った。そんなもの、認めてやるわけには行かなかった。
    「ごくろうさまでーす。あ、悠一さん、こんにちはー」
     雪ノ条葉月が薄暗い廊下の向こうから表れた。
     彼女は制服を着ていた。
     学校に用があったようだ。
  • 12 PUMA id:DDLLo3z1

    2012-12-27(木) 16:46:01 [削除依頼]
    「あ、ああ、雪ノ条さん。こんにちは」
     先ほどの会話で天草の思考は完全に着いていかなくなった。
     一斗は天草の肩を叩いて忘れて下さい。と笑うのだ。
    「はいコレ、盛田さんから依頼の紙貰ってきたよ」
     雪ノ条は一斗にメモのような紙を手渡した。
     依頼は凛のPCメールか、盛田が預かるようになっていた。
    「天草さん、習うより慣れろです。依頼を受けに行きましょうか」


     天草は一斗と雪ノ条と共に依頼主の元へ向かっていた。本来、一般人がミステイク・フリーのアジトに入ることは希で、天草や菊池のケースは凛と盛田が了承しないと中に通すことは出来ない。
    「悠一さんって何で大学行かなかったんです?」
     気さくに話しかけてくる雪ノ条。
     一斗や雪ノ条は目立つからと学校の制服に着替えて依頼に向かっている。
    「大学行ってまで勉強したくなくてね」
     天草は苦笑した。
     バーのリゾートから近い商店街を潜りながら一角のカラオケ店を目指している。
    「そう言えば、俺は君たちのこと何て呼べば良いのかな?」
     今更だが、迷ったことでもあった。
    「あたしは、雪ちゃんとか葉月とか?」
     何でも良いよと付け加えた雪ノ条。
    「そうですね、僕らの方が年下ですし名前の呼び捨てなんて格好良いのではないでしょうか」
     一斗は目を細くして笑って言う。
     格好良いかどうかは問題なのだろうか。
    「葉月ちゃんと一斗君で良いかな?」
    「ええもちろん。ああでも光守君は下の名前で呼ばれるのが嫌いなので注意して下さいね」
     一斗の忠告を聞きつつ、天草たちは目的地のカラオケ店についた。
     集合場所や目的地などは依頼主から設定出来るようにしてある。
     店内に入り、受付で合流すると部屋番号と共に伝え人数分支払って中に通してもらった。
     302室が依頼主のいる部屋だった。
    「失礼します」
     扉を開け、一番に一斗が部屋に入った。続くように雪ノ条、天草、となった。
     部屋は人が五、六人で座れるほどのソファにカラオケで使うマイクや画面が設置しており、窮屈に感じる。
  • 13 PUMA id:DDLLo3z1

    2012-12-27(木) 16:46:43 [削除依頼]
     依頼主と思わしき男は背筋を伸ばし、ソファに深く座っていた。
     縁なしの眼鏡(めがね)を掛け、黒いスーツ姿。二十代後半くらいだった。
    「どうぞ、お掛けになって下さい」
     丁寧に言われ、三人は依頼主の向かい側の席に座った。
    「すみません、こんな場所を選んでしまい」
     依頼主は場所とは合わぬスーツをきっちり着込み彼らと相対した。
    「初めまして、笹木壮介(ささきそうすけ)と申します。今日はミステイク・フリーさんに依頼がありまして」
     そう言った笹木はポケットからハンカチを取りだし、額を拭った。
    「笹木様ですね、分かりました。そんなに固くならなくて構いませんよ。話しやすいように飲み物を頼みましょうか。笹木様は何をお飲みになられますか?」
     笹木の真正面に座った一斗が丁寧に対応し、笹木は紅茶を。と頼んだ。
     注文の電話は電話から一番近い天草となり、全員の分を聞いた後、電話を入れた。
     飲み物が運ばれるまでは本題に入ることをやめ、一斗は笹木の緊張を解そうと他愛もない会話を始めた。
    「笹木様はどのようなお仕事に?」
    「えっと、紙を専門に扱う仕事をしています」
    「そうなのですか。ご立派ですね、あ、名刺を頂戴出来ますか?」
     笹木は名刺ケースを取り出し、一斗へ手渡した。
    『機械長・笹木壮介』
     と書いてあり、その横に会社名が住所とともに揃えられている。
     名刺を貰った直後飲み物が運ばれてきた。
     店員は歌う様子のない四人を見て良い顔はしなかった。
    「さて、笹木様。依頼内容をお話し願いますか?」
     一斗は頼んだコーヒーを口に運び、目配せした。
    「分かりました。――先にお話ししました紙を専門に扱う仕事のことです。僕らの会社ではリサイクルや輸出を主にしています。しかし、この頃になってから異様に輸出する時に費用が掛かるようになりまして」
  • 14 PUMA id:DDLLo3z1

    2012-12-27(木) 16:47:14 [削除依頼]
     鞄から請求書のようなものを机に叩き付けながら笹木は怒りと不安混じりの表情を取った。
    「一月で250万ですよ!? 以前なら100万前後でどうにかなっていたのに……。お願いします、この金額の増量の原因、そして究明をして下さい!」
    「もちろん。笹木様、ご安心下さい必ず良き知らせを持って参ります。確認ですが、依頼は一度しますと特例を除き内容には一切変更が出来ませんのでご注意を」
     最後に一斗は立ち上がり、
    「責任はこの僕、淡縞一斗が受け持ちますので」
     やはり、最後に一斗は笑うのだった。


     笹木を駅まで送り、三人はリゾートへ戻る途中だった。
    「しかし会社関係まで依頼あるんだな」
     困ったようにいう天草に対して二人は鼻で笑うようにして息を吐いた。
    「言ったでしょ? 何でもって。種類、ジャンルなんてミステイク・フリーには存在しないわ」
     ただ、おー。としか反応出来なかった天草。
    「今回の依頼も手が込みそうで楽しみですよ」
     一斗の余裕の笑い。
    「えー、あたしはこういう系ってツマんなく感じるかもー」
     不服そうに言っても顔にはそんなもの欠片も感じられない雪ノ条。
    (分かった。ミステイク・フリーのメンバーって全員が余裕なのか、何に対しても)
     まだ、ミステイク・フリーに入ったばかりだと言うのに、新人の彼でもそんなことくらいは感じられるのだ。
     少なくともこの余裕があるからこそ依頼者は不安が少ないのだろうし。
    (あれ? ここの人が失敗したことなんてあるのだろうか?)
     と新人が心で唱えた時、
    「ないよ」
     と即答された。雪ノ条だ。
     え? と彼は目を見開き止まる。
  • 15 PUMA id:DDLLo3z1

    2012-12-27(木) 16:48:02 [削除依頼]
    「『え? 俺今、口に出して言ったか?』って考えてますね。キャハ☆」
     と、雪ノ条は言ったのだった。
     止まった位置が商店街前の信号で人に揉まれた。
    「あたしは、この場にいる人全ての考えが分かります。一人ひとり言っていくことも可能ですよ? 悠一さん」
     一斗はいつも通りで、日常を見ているようだ。
    「葉月ちゃんは……、君は一斗君は一体何だよ。俺だけ分からないって不公平じゃないか」
     と天草は言ったのだが、雪ノ条に手のひらを捕られ、リゾートへ強引に連れられることに。

    「私たちの能力?」
     凛はソファに深く腰掛け、脚はテーブルに乗せている。
    「“超”能力って思ってるわけ? 天草は」
    天草は頷く。リゾートに戻りアジトに入り次第天草はそれを聞いた。
    「だとしたら、間違いよ。私たちは普通の人だし、“超”能力なんて持ってないわ」
     じゃあ何なんだよ、と苦い顔をした。
    「まあ、メンバーだし良いか。――私たちは集団催眠殺害事件の生き残り側なのよ。その生き残り側は脳に障害を負った。葉月のように相手の考えが分かったり、夜磨のように空間移動出来たり」
     催眠は、脳にダメージを負うものだった。亡くなった人はダメージが多かっただけ。生き残った人はダメージが少なかっただけ。
     凛が言うには、脳が覚醒(かくせい)したんじゃないかと。
    「この催眠は科学じゃ証明出来ない領域のものなのかしらね」
     催眠を受け、生き残った人間は恐らく全員が人間離れした能力を手に入れた可能性がある、とトイレから帰ってきた光守が言った。
    「催眠障害、催眠能力と勝手に呼んでいるわ」
     天草はまたも置いていかれた気分になった。
    「じゃあ一斗君は?」
    「僕は、催眠能力ではありません。元々、使えるのです。先代がそのような家業だったので。僕の能力は体中から炎を出すことですが、普段は両腕の烙印によって腕しか発動は出来ません」
     このメンバーが余裕である理由がなんとなく分かった。
     凛は自分の催眠能力は現場で見せた方が華やかだと言ってこの場でやってはくれなかった。
    「さて、と。天草。あんた依頼行ってきたんでしょ? さっさと報告して、実行に移すわよ! 良いわね!」
  • 16 PUMA id:DDLLo3z1

    2012-12-27(木) 16:49:38 [削除依頼]
    〈第二章〉天草の初陣

     どんなことにも初めてと言う道を誰しもが通るわけで、天草もその一人だった。
     今回の依頼を整理してみたところ。
    「これ、普通に考えても、一斗と葉月は出られないわよね」
     と、凛からの提案。
     天草、一斗、雪ノ条の順にソファに座り、向かいには凛と光守が。
    「何でですか?」
     と天草。
    「この依頼、会社関係だし、忍び込むのも童顔と中学生じゃ入る前に止められちゃうわよ」
     凛は一斗と雪ノ条を交互に指差す。
     どこをどう見ても二人が成人を迎えたようには見えなかった。
     天草も交互に見ている。
    「『子供にしか見えねぇなぁ』って思ってますね? 悠一さん」
     雪ノ条は目を細め、睨むように天草を見ていた。
    「か、勝手に心を読まないでくれよ!」
     また心読されていたようだ。
     凛はそれに、と付け加え、
    「夜磨じゃ口が悪すぎてボロ出そうだし……」
     光守はおい! と凛に向かって言ったが本人には聞こえないようだった。
     資料をペラペラ捲りながら凛は、
    「私と天草とで潜入してくるわ」
     と、手をうったようである。
    「えぇ!? 俺!?」
     絶対に自分には回ってこないだろうと思っていた天草は凛に向かって不満を露にするような声を上げた。
    「初仕事が人殺しじゃなくて良かったわね、天草」
    「俺で大丈夫っスか凛さん?」
    「問題ないわ。天草は私のフォローをお願いね。じゃっ、今日はお開きで」
     全員は解散の言葉を聞き、各々帰り支度を始めた。
     童顔と中学生は来た段階で制服のため、そのまま狭い通路へ歩き始め暗闇に消えていく。
     金髪ハーフ男は喪服のため、ロッカーにある自身の洋服を取り出していた。
     上のティーシャツしか取り出さず、どうも下のズボンは着替えないらしい。
     ロッカー付近に掛けられたハンガーに上着を掛け、ワイシャツのボタンを外し脱いだところで、
    「何ジロジロ観察してんの、天草サン」
     じとっとした目で天草は見られていた。
     そんなに見ていたつもりはないのだが。
    「あ、ああ悪い……。良い体してるなー、と」
    「そりゃどうも。男に言われても嬉しかないがな」
     天草は席の空いたソファに座った。
    「天草サンはどう? やってけそう?」
     光守も気にかけているようだ。
    「んん、どうだろう。今回の仕事が上手くいったら自信が持てると思うけど」
    「フリーターだったわけだ、ここいらで頑張るんだな」
     ティーシャツを着終わった光守は黙って出口に歩いて行った。
     何も言わずに帰るのが彼の主義なのだろうか。
    「夜磨、さよならとか、バイバイとか、じゃあね、みたいなのを嫌ってるみたいなのよ」
     凛は書類を机にしまい、手を休める。
    「何で?」
    「お母さんと駅で別れる際に、そんなこと言っちゃったんでしょうね。……誰も思わないわよ。今の言葉が最後になるなんてこと。天草、ここにはそんな人しかいないわ。どう? やっていけそう?」
     天草は間髪入れずに。
    「問題ない」
     と凛に伝えた。
  • 17 PUMA@ぷーま id:k2MMqh..

    2013-01-18(金) 22:27:39 [削除依頼]


     会社潜 入当日である。
     どうやって潜 入するのか。
     それは、
    「あんたは清掃員をやりなさい。あたしは客として何とかするから」
     あんたに客は無理だろ、なんて天草は口が裂けても言えない。
     幸い、雪ノ条がいない為、アジト内で何を思っても大丈夫そうであるのは確かだった。
     一斗と光守はいるだけである(依頼の受け答えはするが)。
     もはや今回は、天草の為の仕事のようだった。
     探って来るのは以下のこと。
     ・金額がここ最近になり、何故上昇してしまったのか。
     ・主 犯は誰か。
     大まかにはこの二つである。
    「清掃員なんだから見てきなさいよね」
    (おっおかしい! 俺は凛さんのサポートだけじゃないのか!? これじゃあメインが俺みたいじゃないかっ)
     とは言えず、天草は黙って頷いた。
     視線をソファに座る高校生たちに逃がした所、天草の方を見ながら光守はニヤニヤと一斗はニコニコとしていた。
     光守の笑みは填められたな、と言っているようにしか思えない。天草は早くも心が折れかかった。
     はい、と凛から清掃員の制服を渡され、天草は受け取る。
    「着替えたら行くわよ!」
     そこには楽しそうな凛の姿があった。
  • 18 PUMA id:k2MMqh..

    2013-01-18(金) 22:48:41 [削除依頼]
     似合わない。
     スーツも似合わないとは思うが清掃員姿はもっと合わないと天草は凹む。
    「んー、偽名使わなきゃいけないしなー。天草は何が良い?」
     そんな自由に決められるのかと天草の顔が曇る。
    「ま、何でもいっか。“中田大輝”でどうよ? どこにでも居そうじゃない?」
     自信満万に凛は天草を見ている。
     その自信がどこから来るのか天草は未だに分からない。
     凛は、あ! そうだ、と思い出したように事務用の机に戻り、名札を天草に手渡した。
    「すでに書いてあんじゃん」
     さすがに口から出た。
     名札には中田大輝、とルビ入りで印刷してあった。
    「準備は早い方が良いに決まってるわ。さっ、行くわよ」
     凛はずかずかと暗い廊下へと出たため、天草は慌てて後をついていく。
     その後ろ姿を見ながら光守は、
    「まるで犬だな」
     馬 鹿にしたように笑った。
     しかし、と一斗も口を開き、
    「いくら彼女との仲を我々が取り持ったからって仲間に加わろうとするなんて——お礼がしたい。なんておかしな話ですね」
     凛さんは何を考えているのでしょう。と一斗は笑わなかった。
  • 19 PUMA id:eTqQytO1

    2013-01-19(土) 20:05:48 [削除依頼]
    「んだよ? どーでも良いことばっか気にしてんなお前は」
     光守ははやり馬 鹿にしたように笑う。
    「そんなん雪ノ条チャンに聞けば良いんじゃねーの?」
    「はたして天草さんが素直に思ってくれるんでしょうか」
     僕には思えません、と一斗は回答。
     光守は立ち上がり、
    「しゃーねーなァ。用心深い一斗クンの為に調べっか」
     と、廊下に出ようとしたとき、
     上のアクアリウムが開く音がした、光守は少し待つと扉が閉まる音が聞こえた。
     警戒して、ソファの辺りまで下がる。
     依頼者は通さないし、心当たりがない。
     本部の蛍光灯によって照らされた人物は、
    「盛田サンっ!?」
     意表を突かれ、目を見開く光守。
    「悪いわね、何も言わず来ちゃって」
    「いやそれは良いんスけど。どーしたんスか」
     あんたら、と言ったあと盛田はソファ前の机に書類を置いた。
    「読んでみなさい。天草悠一のことが載ってる」
     どこから入手したのか、こと細かに天草のことが載っているものだった。
     光守は書類の一カ所を指して盛田を見る。
    「おい。どういうこった」
     一斗も欄を見る。
     ・2015年「集団催 眠により近辺の病院に運ばれる」
     と記入されたのが見えた。
  • 20 PUMA id:eTqQytO1

    2013-01-19(土) 20:11:29 [削除依頼]
    >>19 光守ははやり × 光守はやはり ○ なんてミスだ はやってないよっ
  • 21 PUMA id:eTqQytO1

    2013-01-19(土) 20:40:56 [削除依頼]
    >>19  ・2017年「目を覚ますも、思い出に関する記憶がない模様」 「書いてある通りよ」  当然のように盛田は告ぐ。 「天草サンも俺らと同じ……なのか?」 「思い出だけないって、おかしいと思わないわけ? あんた」  思うさ、と光守は答え、書類を一斗に渡した。 「意味不明だ。まず、思い出だけって何だよ」 「記入してあったわ。一斗読んであげて」  一斗はページをめくり、はいと返してから、 「『何故自分が病院にいるのか、は分からないが病院がどういったものか、くらいは把握している』。つまり、知識はある、と」  そうよ、と盛田。  光守は盛田を睨み、 「凛サンは知ってんのか、このこと」 「当たり前。それに、“覚醒”のことも知ってるわ」 「能力あんのか! アイツ」  盛田は頷くがその先は知らないと言う。  一斗は盛田に書類を返した。 「皮肉ですね。あの事件のメンバーしかいないじゃないですか。それに最後の項目って——」  こう書いてあった。  ・2020年「1月原因不明の事故により、完全記憶喪失」
  • 22 PUMA id:2qCMMeI1

    2013-02-06(水) 23:21:31 [削除依頼]
    「オイオイ……、分からねえな」
     光守は書類を指さし、
    「天草ってのはいってえ何なんだよ! 記憶がねえだのなんだの言うがちゃんと喋ってんじゃねえか」
    「1月の記憶消去により、能力の覚醒そのものを忘れたと思われるから、今の彼は一般人となんら変わらないわ」
    「じゃあ完全って何だよ?」
    「さぁね。ここに書いてあることで精一杯よ。これ以上は無理」
     盛田は書類を持って廊下へと戻っていった。
    (天草悠一……。もっと調べても良さそうね。他の分野を当たればヒットくらいはするかしら。それにしたって、何だって彼は、こんなに記憶を消されなきゃいけなかったのかしら?)
     つのる不安は興味へと動く。
     興味こそ行動となるのだ。
     盛田の目は輝いていた。
     本当に面白いことを見つけた子供のような顔つきで、バーへと戻っていった。
  • 23 PUMA id:3Iyhxvt0

    2013-02-08(金) 03:23:26 [削除依頼]

     ***

     別に大した事じゃない、と思う。
     記憶が何度もなくなったけれど、青年の思うことは変わらなかった。
     この組織と会う前の四ヶ月間、菊池雪美の支えによって天草の心身の回復は順調だ。
     記憶がないこと事態が、嘘であるかのよう。
    「どうしたのよ?」
     凛は不審そうに天草の顔をのぞき込んだ。
     二人は笹木の勤める会社の自動ドア前だった。
     周囲のビルの窓に太陽の光が反射して眩しい。
     グロー駅近くの会社であったため二人の到着は早かった。
    「あ、すいません」
     天草は思い出したように自動ドアをくぐった。
     この会社の四方を囲むようにビルが立ち並び、それも会社関係なのだと笹木は二人に話した。
     そのため、すべての会社を回って調査する必要があった。
     ああ、もう面倒くさい! と凛は一社目からそう思っていた。
    (いっぺんにコンピューターを操作って出来ないのかしら)
     天草は入ってからすぐに受付に駆け込み、清掃員パスを提示した。
     もちろん偽 装。
     顔写真と清掃会社名を入れるだけだから簡単な作りだ。
     受付の女性は笑顔で、どうぞと天草を通した。
     ゲートのようなものはあるが、形だけのようだ。センサーもない。
  • 24 PUMA id:ptEyI271

    2013-02-09(土) 00:15:32 [削除依頼]
     天草に続くように凛は客を装うため、受付に寄っていった。

     ゲートを通ると、階段が見え、天草は素直に進む。その結果、仕事場へと着く。各部ごとに敷居が置かれ、デスクワーカーと呼ばれる者たちが、かちゃぽことタイピングしている。
     この中のどれかのコンピューターが仕掛けに使われているかもしれないため、天草はモップを会社から借りて、掃除をする素振りで画面一つを睨むように見ていく。
     凛よりは天草の方が行動範囲が広い。
     机の上に必ず一台、コンピューターがあるため、時間がかかる。
     それに表面だけ見たとして、発見出来るかどうかも分からない。
    「ねえ、清掃員の方」
     と、天草に声が掛かった。
     顔を見られないように目線を下げて天草は返事をした。
    「て、凛さ——」
     凛が天草の口を塞いだ。
     幸い、止まった場所が、室内樹の近くであり、葉等で見え隠れしている。
    「(上の部署看板を見なさい。窓際の奥が予算案と決算の部よ。私も行くからちゃんと見てきなさいよ)」
     凛は小声で天草に伝え、先に進んでしまう。
     天草も遅れないようにモップを掛けつつ、少しずつ予算・決算部署へ。
  • 25 風火 満月 id:WlZBj0/1

    2013-02-09(土) 02:30:10 [削除依頼]
    孤島の楽園に、コメントありがとうございます!
    PUMAさんのこの作品には、私もちょくちょく覗かせていただいていました。

    大人っぽい雰囲気の世界観に憧れます。
    天草が今後どのように能力を開花させていくのか、とても楽しみです。
    ミステイク・フリーの活動も気になります。
    現実にはありえないことなのにそれをリアルに表現されていて、
    世界に入りやすく、読みやすかったです。

    ……感想屋みたいになってしまいました。すいません。
    また、チラチラ覗かせていただきます。
    お受験、頑張ってくださいね。作品と、両方応援しています(笑)

    長文失礼しました!
  • 26 PUMA id:ptEyI271

    2013-02-09(土) 20:56:29 [削除依頼]
    >25 おお! ありがとうございますm(_ _)m 凛の能力と天草の開花、どちらが先に物語に登場するのか、楽しみにして下さいノ 受験も今月までですから頑張ります。 ありがとうございます
  • 27 PUMA id:SYRmo7F0

    2013-02-24(日) 15:33:37 [削除依頼]
    >>24  視線を感じながら、天草は凛に追いついた。 「(私が)」
  • 28 PUMA id:SYRmo7F0

    2013-02-24(日) 15:34:37 [削除依頼]
    >27 おっと しまったミスです 気にしないでください
  • 29 PUMA id:SYRmo7F0

    2013-02-24(日) 15:48:51 [削除依頼]
    >>24  視線を感じながら、天草は凛に追い付いた。 「(私がいじってみるから、あんたは時間稼いで)」  いじる。  何をだろうかと天草は考える。  まさかPCそのものをいじるなんて大胆なことは凛でもしないだろう。  天草は言われた通りに、フローリングの床にモップを落とす。  凛を横目で見て見るも、しゃがみ、目を閉じて片手だけ握り拳にしたまま動いていない。  何がしたいんだろうか。と天草は思う。  凛の能力に関してはまだ知らされていない。  正確には見せてもらっていない、だが。  天草が同じところばかりモップをしているので、二つ隣のデスクにつく男が不 審がって見ている。  ここは決算・予算部。  金の仕事場だ。  こんなところで留まって仕事をしていること事態怪しまれる。 「(は、早くしてくれ……)」  天草は周囲の視線が何となくこちらに向きつつあることに気づいた。 「あ、あの。お客様?」  そう言ったのは天草だ。 「ええと、体調が優れないようですが大丈夫ですか」  こうでも言わないと視線が切れることはないと考えたのだろう。  天草の考えと同じようにその場で働いている者の視線は切れてくれた。
  • 30 PUMA id:cbypt1O0

    2013-03-24(日) 16:08:16 [削除依頼]
    「(お、終わりました……?)」
    「(ええ、これで私たちのホームでも探れるわ。リゾートに戻りましょう)」
     ただし、ここで天草と凛が一緒に行動するのは怪しまれるため、先に凛だけ帰ることにし、天草は残って作業をすることになった。

    「ねえ君」
     先ほど、天草と凛を不 審がって見ていた男が話しかけてきた。
    「ええと、僕の机の周りもお願いして良いかな」
     不 審がって見ていたよりも、これの為だったのかもしれないと天草は思い、返事をし、その男性のデスクに行く。
     その男性は金子と名乗った。
     名刺は貰えなかったが、少しだけ会社のグチを天草に聞かせていた。天草としては何を言っているのか分からず、要領は掴めなかった。
     天草は話を聞き流しつつ、机の下に散乱しているプリントの中から興味深い資料があった。
     その内容はリゾートに帰ってから全員で検討しようと考える天草だった。
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