君か、もしくは僕に。23コメント

1 千茶 id:k.kioPF0

2012-12-16(日) 00:45:02 [削除依頼]
:僕はただ……

まただ
言いたかったのに
伝えたかったのに

口をついて出たのは
当たり障りのない言葉

もっとあったはずだ
言いたい事

時間が足りなくなるくらいの
伝えたい思い

今日も何も言えなかった

明日も伝えられないのかな

こんなにも
こんなにも
こんなにも

…………なのに
  • 4 song id:FXzB7u9/

    2012-12-16(日) 01:35:33 [削除依頼]
    何お面白そうですね−!
    楽しみです。
  • 5 千茶 id:k.kioPF0

    2012-12-16(日) 14:31:11 [削除依頼]
    >4 songさん、ありがとうございます!
    頑張りますね!
  • 6 千茶 id:k.kioPF0

    2012-12-16(日) 15:01:28 [削除依頼]
    2:中庭にて状況説明

    「皆さん、今日は。
    「アッジリューア地方対魔物専門学校」2年、コウ・ナナイです。
    今回、本校の説明役になりました、よろしくお願いします。

    本校は、他校とは少し違ったクラス分けが特徴の対魔物教育機関です。
    能力、個性、体格、知力……とにかく生徒個人を様々な観点から
    どの分野に適応できるかを調べ、入学時にクラス分けを行うのです。
    ただ、このような1点特化型に育て上げられた生徒は当然
    1対1の戦闘および防衛が難しくなるため、複数名でチームを組むのが基本です。
    よって、チームワークも重要な能力になるので、
    属性(クラス)がバラバラなもの同士で「学級」作ります。……」

    「ん?どうした、コウ」
    「いやさ、この文章ちょっと固くないか?」

    4月1日、天候に恵まれたすばらしい春休み日和だ。
    俺…コウ・ナナイは
    「アッジリューア地方対魔物専門学校」略称「アッジ魔専」
    のだだっ広い敷地の中。芝生が敷き詰められた中庭にいる。
    これまた広くてでかい「実技棟」と「講習棟」の真ん中にあるから、
    真昼でも影ができて涼しい場所だ。

    そこで、4日後に行われる入学式に読む原稿を読んでいたのだが、
    「しかし、大事な儀式だろう、入学式と言うのは。
     これくらいの文でいいと思うのだが」
    学校を代表する、会長……と呼ばれる最高学年の人が(6年生)
    入学式に出席できないとか、なんとかで、なぜか俺みたいな下っ端が
    入学式説明会の原稿を読む事になった。
    ……のはいいのだが、原稿が用意されているわけがなく、
    学級一文才のあると言われるセンラ・ホワードに手伝ってもらっている。

    と言う状況だ。理解していただけただろうか?
  • 7 千茶 id:k.kioPF0

    2012-12-16(日) 15:18:32 [削除依頼]
    3:センラ・ホワード

    「この辺の地域にはあんまりそういう習慣がないんだよ。
     儀式っつうより、祭事、みたいな。
     入学式でも、もっとみんなくだけてるっつうか、
     堅苦しく無い……んだよな、ほら俺たちの入学式でも……」
    首を傾げられた。
    センラ・ホワード。アッジリューアより北の地方からやってきた、
    白い肌に黒の短髪。
    目つきが悪いと言われる鋭い、それでいて眠たそうな黒い瞳の女子。
    1年途中からの編入者。
    当然入学式は経験していない。
    「そうか、この辺ではもっとくだけて良かったのか。
     といってもコウ、その原稿もう書き直す気にはなれんよ。
     君の話術で、やわらかく言い直せば良かろう」
    気だるげに、しかし不機嫌では無い口調。
    彼女にとってはいつも通りの口調で、告げる。
    「それを下書きだと思って、自分なりにアレンジを加えれば良い。
     むしろ、そのほうが得意だろう、学級委員長さんよ」
  • 8 千茶 id:ZS50ipq.

    2012-12-17(月) 00:02:29 [削除依頼]
    4:入学式当日

    「皆さん、今日は!
     今回説明役になりました、2年のコウ・ナナイです。
     顔、覚えてくれたら嬉しいな。これからよろしくお願いします。
     じゃあ、早速説明に入りますね。
     
     皆さんはこれから、属性確認、通称クラス分けを受けてもらいます。
     手元にある、皆さんの履歴書をもとに、
     質疑応答と、軽い実技確認があるよ。
     合格、不合格なんて判定は出ないから、リラックスして受けてね。
     それから自分の組が発表されるけど、
     属性つまりクラスでは、分かれないんだ。
     違うクラスを持った仲間と、団結することが大事だから、
     学級は普通の組み分けだよ。

     さて、軽ーく説明してみたけど、分からない事があったあら手挙げてね。
     質問タイムだ。
     はい、そこの君。うん、うん、なるほど。
     そうだね、学級は一緒でも、クラスごとに受ける授業は大分違うね。
     クラスが判断された後でも、訓練しだいでまた別のクラスが目覚めることもあるから。
     授業は、講習と、実技、全て選択制になってて
     いつでも気軽に変えることができる。

     さてと、あ、君何かあるかな?
     ……どのくらい、かぁ、クラスは沢山あるからね。
     分かりやすいのから挙げてみようか、みんな指折り数えてね。
     実際に戦闘を行うのが「魔法系」「銃火器系」「打撃系」「刀剣系」
     それをサポートするのが「治癒専門系」「武器製造系」「道具開発系」
     「実地調査系」「魔具創造系」これだけでも9クラス。
     あと、希少なクラスは「特殊系」ってまとめて呼ばれることもある。
     
     よーし、そろそろ時間だね。
     先生方の準備が整ったみたい。……あはは、そうだよ。
     説明会って言ってもクラス分けが始まるまでの時間つぶし。
     だから、2年生の俺なんかが、役を任されてるんだ。
     俺も、つい昨日知ったんだけどね。
     もっと詳しい説明は、クラス分けと、組み分けの後、
     教室で、先生方から聞けるからね。

     ……それでは皆さん起立してください!
     これで、説明会は終わりです。緊張はほぐれたかな?
     クラス分けは、みんなの属性を見分ける大切なことだけど、
     いつも通りの自分を出せば、何も問題ないから!

     え、最後に?俺のクラス?」

    俺は、少し息を吸って、吐いて、
    期待に満ちた眼差しを向けてくる新入生たちに向かって、笑って見せた。

    「無属性だよ、2年2組、コウ・ナナイ、無属性」

    新入生が、どよめいた。

    「これからよろしくね」
  • 9 千茶 id:ZS50ipq.

    2012-12-17(月) 21:26:45 [削除依頼]
    5:無属性と幼馴染と

    「あれ?センラ、もう来てたのか?」
    「暇だったからの」
    入学式が行われていた、縦にも横にも上にも広い室内実技実践質、
    まあ、体育館って呼ぶんだけど。
    ざわつく新入生がようやく出て行ったその入り口には、センラ・ホワードがいた。
    「別に、君のクラスは言わなくても良かったんじゃないのか」
    「ま、いずればれるだろうし、早いか遅いかの違いだよ」
    そうか、と興味なさげにセンラは外へ出た。

    ……相変わらずこの同級生は、こちらを気遣っているのかどうかが読めない。

    「で、今回はどこに行けばいいのか知ってる?」
    「知っているから迎えに来た」
    ……センラの足取りからすると、5階の空き教室か。
    ……相変わらず口数少ないな。ま、慣れてるけど。
    「今年の新入生は、少ない気がしたが」
    「あぁ、俺たちの学年に比べるとな。でも今の5年生もあのくらいだ」

    その少ない新入生たちは、「すれ違ったこの先輩が無属性だ」なんて、
    思わなかっただろうな。

    「……どうせ、今回も同じだろうに」
    「え?あ、あぁ、でもどうだかな?
     案外特殊系あたりとか、目覚めてるかもよ」
    話が180度変わったが、気にしない。
    センラとの会話では、良くあることだった。

    無属性、つまり「ある1点にのみ特化した能力を持たない」俺たちは、
    定期的に属性確認を受けている。
    何の結果も得られてないけどね。
    その事をセンラは言っているんだろう。
    ……ただ、こんな口調だからといって、センラは落ち込んでいるわけではない。
    無属性には無属性なりの戦い方もある。これは後で説明したいと思う。

    「ついた、が、私が先でいいか?」
    5階空き教室手前。センラが順番の主張をするなんて、珍しい。
    「別にいいけ、ど……あぁ、なるほど」

    教室の先にある曲がり角から、人影が現れた。
    なぜか分からないが、この人影の人物をセンラは苦手としている。
    いいやつなんだけどな。

    「では、先にはいっているぞ」
    「あぁ、それじゃ、また後で」

    ――カラカラ……タン
    教室のドアが閉まると同時に、人影が俺の目の前に到着した。

    「コウ!今年は同じ組よ!」
    「え、ほんとか、やったね。じゃあこれからもよろしくな」
    目の前で満面の笑みを浮かべる、俺より背の低い小柄な女子。
    ゆるく1つにくくった茶色い髪と、同じ色の丸い目。
    「ミコ、でもなんでここが分かったんだ?」
    ミコーナ・マトイ。同級生。
    「そりゃあ、私たちが幼馴染だからよ!」
    俺の幼馴染である。
  • 10 千茶 id:2SFKWrB0

    2012-12-20(木) 21:01:55 [削除依頼]
    6:幼馴染と会話

    「関係なくないか?それ」
    「うん、正直関係ない。けど、よかったよ〜ホント!」
    ミコーナ、俺はミコって呼ぶ、はニコニコと本当に嬉しそうに笑う。
    「コウと同じ組だったら、私学級委員長しなくていいもん」
    「え、何で?」
    「コウがいたら、絶対コウが委員長だから!」
    去年、ミコは隣のクラスで委員長だったな。
    俺もしてたけどさ、センラもたまに学級委員長とか呼んでくるけどさ。
    「俺なんかより、できるやついるだろう」
    そう、無属性の俺なんかより統率力のあるやつなんて、

    いくらでも、いる。

    「んー、そう言い切られると、ね。
     でも、コウのいない間にみんな推薦しちゃったし」
    「は?俺を?」
    「そう、コウを」
    クスクスと、おかしそうに笑う彼女を見ていると、
    陽だまりの中で昼寝したい気分になる。
    ――何でだろ、昼寝って何だ?

    「っていや、いや、何勝手に推薦してんだよ!」
    「えーと、オーゾウ君とかが、ねぇ?」
    「あいつは……」
    約1名、無邪気に笑う日に焼けた逞しい同級生が思い出される。
    去年同じクラスで、友達と言っていいほど仲良くなったやつ。
    悪気はないんだろうなぁ、きっと。
    そう思えるほど、オーゾウと言う男はいいやつだ。
    「まあいいや。こっちにする気はないし。
     オーゾウがすればいいだろ」
    「そんな、なげやりな」
    そんな風に、ミコとの会話をそれとなく楽しんでいたら、
    ――カラララ……
    教室のドアが開いた。
    そこには、もちろんセンラが立っていた。
    「終わった。次は、コウだ」
  • 11 千茶 id:Xm/aQ5B.

    2012-12-22(土) 14:12:02 [削除依頼]
    >9の「実技実践質」× 正しくは「実技実践室」○ ですね、誤字脱字多いかもしれませんが、 広い御心でスルーしてやってくださいな……
  • 12 千茶 id:Xm/aQ5B.

    2012-12-22(土) 14:55:32 [削除依頼]
    学生である作者は、現在冬休みです!
    更新たくさんしたいですね!

    それでは、本題。人物紹介です。


    ::人物紹介::

    コウ・ナナイ
     年齢は16歳。身長は170センチ位で、細いが鍛えらた体躯。
     クラスは、無属性。
     センラとは友達。ミコは幼馴染で仲良し。
     この物語の語り部である。
     その為、コウが見て感じた風にその他の人物の紹介をします。

    センラ・ホワード
     白い肌に、黒の短髪(ストレート)に黒い瞳の女子。
     目つきが悪いと言われるがそれでいて眠たげである。
     年齢は16歳、身長は160センチで、ほっそりとした体つき。
     冷静で、あまり感情を表に出さない淡白な性格のようだ。
     コウとは同じ無属性と言う事もあり、良く組んでいる。
     ……あのしゃべり方は、住んでいた地域の方言らしい。

    ミコーナ・マトイ
     明るい茶色の髪に、同じ色の丸い目。
     年齢は16歳。身長は158センチで、年相応の体つき。
     明るい性格で、笑顔でいる事が多い。少し、几帳面。
     クラスは「魔具開発系(魔具創造系×道具開発系)」
     ※本文で詳しく書きたいと思います。
     コウとは幼馴染で、仲が良い。

    他にもまだ出てきますが、話が進んだら書くつもりです。
  • 13 千茶 id:Xm/aQ5B.

    2012-12-22(土) 14:57:49 [削除依頼]
    >12 ミコーナ・マトイ 女子です!!書き抜かしてました。
  • 14 千茶 id:xYP5Qd80

    2012-12-23(日) 21:54:09 [削除依頼]
    7:気まずい……

    「終わった。次は、コウだ」
    俺を教室に促すように、センラはドアから一歩離れた。
    「じゃ」
    「あ、おうって、ちょっと待てって」
    そのまま立ち去ろうとするセンラを引き止める。
    何かを睨むような、それでいて眠たそうな目はいつも通りで、
    そこに感情を読み取るのは難しい。
    「クラスは……」
    「確認されず、いつもどおり、な」
    強いて言うなら(面倒くさい……)とか、そう思ってそうだった。
    「それじゃ」
    「あ、ちょっと待って」
    また去りかけそうになるセンラを、今度はミコが呼び止める。
    「コウのいる場所、教えてくれてありがとうホワードさん」
    ミコは、センラにこの場所を聞いていたのか。
    「ん、礼にはおよばん。しかし、マトイ……」
    こちらに体をひねって振り返っていたセンラは、しっかりと向き直って
    「私はマトイと呼ぶのだ。
     私の事もセンラ、もしくはホワードと呼べばいい」
    無愛想なしゃべり方だが、不機嫌そうではない口調で言う。
    「あ、うん、そうなんだけど……」
    ……なぜか沈黙。
    「……マトイがそうしたいなら、無理強いはせん」
    先に口を開いたのは、センラで
    「あ、いや別にそう言うわけでは」
    慌てたように手のひらを振るミコ。

    ……俺、なんか気まずい。
    この2人、いつもこうなんだよな。
    センラはなぜかミコが苦手らしく避けようとするし、
    たとえ話す事があってもミコの方が調子おかしくなるし。

    「そうだ、コウ」
    ふと、思い出したようにセンラは俺に顔を向ける。
    「私も2組だ」
    この空気の中で、俺に話を振るなよ……
    「え、あ、そうなのか。今年もよろしくな」
    うむ。センラは頷いてから
    「それと、もう1つ。今年転校生が来るらしい」
  • 15 千茶 id:xYP5Qd80

    2012-12-23(日) 22:10:15 [削除依頼]
    8:2人の事情と、全く関係ない転校生

    ミコは、結構誰とでも仲良くなれる性格をしている。
    その誰にでも優しく公平な態度から、学級委員長に選ばれたりしていたんだが。
    まぁ、当然センラとも仲良くなろうとしたわけで。
    だがこの通り、センラは無口で無表情なやつだ。
    ……とても、とっつきにくい。

    同じくクラスで、大抵の授業が一緒で、よく組んでるから、
    俺とは会話が成立するし、あるきっかけで友達にもなれたが、
    ……これはおそらく例外だ。

    ただでさえ友達ができにくい状況を作り出してる上、
    なぜか会ったその時から人望の厚いミコを苦手としている。
    その為今でもセンラにはほとんど、と言うか俺しか友達はいない。

    それでも、センラに話しかけようとミコはするのだが、
    たぶんセンラに「慣れる」には、それなりに時間がいる気がする。

    目つきが悪いと言われる、それでいて眠たげなな瞳の感情を。
    気だるげで、無愛想で、でも不機嫌ではない声色の変化を。
    読み取るのは無理だと。
    無理だと分かった上で慣れるのは、かなり難しい。

    そんな2人の事情を知ってか知らずか、
    2組の席順、センラとミコは隣同士だった。

    ちなみに俺は窓側の最後尾。
    日当たりがよくて気持ちいいが夏は暑くなりそうな席だった。
    その右隣が空席。
    さらにその隣がミコ、そしてセンラ。

    この空席に転校生が来るんだろうか?
    あ、でも、2組に来るとはセンラ、言ってなかったしな。

    俺が学級委員長だのどうだのざわめく教室に、
    ――ガララッ
    勢いよくドアを開け、誰かが飛び込んだ。
  • 16 千茶 id:xYP5Qd80

    2012-12-23(日) 22:35:59 [削除依頼]
    9:カガイノミニ先生とオーゾウ・ハラ

    ――ガララッ
    ――ドン!!!!!
    「のおおおわあああ!」
    突然すぎる招かざる者……もとい、2組担任マキ・カガイノミニ先生。
    と、オーバーリアクションをとって最前列の机から飛び上がるオーゾウ・ハラ。
    カガイノミニ先生は、小柄で淡い金髪を三つ編みにした
    歳は12だと言われてもなんら問題ない男性教師で、
    オーゾウは前にも出てきた
    去年同じ組でいいやつだが少々抜けたところのある男子生徒だ。

    ドアから跳躍したのか、教壇の上に仁王立ちするカガイノミニ先生が
    「おい!誰か今、12歳とか言わなかったか!」
    先生だと分かって、いつの間にか机に戻っていたオーゾウが
    「誰か、俺の事抜けてるって言わなかった?」
    ……なんて事だ、読まれている……だと!?
    2人ともすぐに、聞き間違いかなあと首をかしげているのでそう言うわけではなさそうだ。
    安心、安心。

    とにかく、ありえない教師の登場シーンでオーゾウ以外の生徒は静まり返っていた。
    それが目的だったのだとばかりにカガイノミニ先生は教壇から飛び降りた。
    「よーし、皆おはよう。
     新入生説明会の前に、ナナイには紹介したが、
     私が2年2組の担任になるマキ・カガイノミニだ。
     皆も1年の時に知っているだろうが、道具開発を担当している。
     1年間よろしくな」
    ……先生、教壇から顔だけしか出てませんよ。
    なんて、誰も言わない。
    言ったら最後、最高一ヶ月の校内清掃に加え、
    最高200枚の反省文と言う罰が待っている……と噂されている。

    「うーん、実技講習の授業選択のプリントとか、
     係り決めとかの前に、自己紹介をしようか。
     1年も学校にいたら、お互い知っている人の方が多いだろうけど……」
    先生はそこで言葉を切る。
    ニヘラァ、子供がいたずらを思いついたような……訂正。
    とんでもない悪巧みが今にも成功しそうだと言う笑みを浮かべ、
    先生は告げた。
    「なんと転校生が2組に来るからな!」
    「ええええええええ!!!!!」
    こんなオーバーリアクションをとったのは、オーゾウくらいだった。
  • 17 千茶 id:xYP5Qd80

    2012-12-23(日) 22:55:40 [削除依頼]
    10:転校生

    「あれ、知らなかったのはハラ位か?」
    首をかしげる先生。
    まあ、数あるクラスの中には
    「実地調査系」なんて情報収集を得意とする者もいるからなあ。
    職員室の機密事項と言うほどの情報でなければ、
    生徒間にはあっという間に知れ渡る。
    交友関係がほとんどないセンラが、知っているのもそのおかげである。
    ……まぁ、オーゾウは噂が広まっている間寝てるかなんかしていたんだろう。

    「ま、それはさておき、入っていいよ」
    教室の外で待機していたのか、ドアの外に人影が見えた。
    さすがに顔写真は個人情報になるからか、情報は広まっていない。
    どんなやつだ?男か女か?

    期待の高まる教室は、さっきとは違う静けさに包まれる。

    ――……

    教室に音もなく入ってきたのは
    「「……わぁ」」
    主に女子の視線を集めるような二枚目男子だった。
    すらりと身長が高くて、銀色のような灰色の髪は短く、
    さわやかな笑みを浮かべる顔立ちは精悍だった。
    「さ、自己紹介一番は君からしてくれ」
    先生に促され、教壇の横に立つ二枚目は口を開けた。

    「今日は、ヨウル・ジーリアです。
     この学校に来る前に、別の所で2年いたから今17歳です」

    ……ジーリア、だって?
    先生以外の全員が、思ったんじゃないのかな。

    「これからよろしくお願いします」
    特に緊張している様子もなく転校生、ヨウル・ジーリアは言い終わり笑って見せた。
  • 18 千茶 id:xYP5Qd80

    2012-12-23(日) 23:22:09 [削除依頼]
    11:転校生の名字とセンラの笑み

    「アッジ魔専」は最少10歳、最長20歳からの入学を受け付けている、
    6年制の教育機関である。
    その為、同じ学年にいても年齢が違ったり、
    他校から中途編入してくる者も多い。
    「中等学校」を卒業してから専門学校に入学するのが一般的だから、
    16歳で入学した俺や、ミコ、センラは今年で17になる。
    つまり、ヨウル・ジーリアは1つ上って事だ。
    (ちなみに、センラはここよりずっと北の地方の出身で、
     学校に来るまでに、移動手段が魔物に襲われると言うアクシデントがあり、
     入学式から1ヶ月遅れて入った。それ故の編入生である)

    それは、別にいい。

    問題は彼の名字の方。
    アッジリーア地方最大の有力者であり、
    アッジ魔専の創立者である初代学校長もその名門出身者である。

    つまり、彼にはその血縁関係がある……!

    「いいとこの、坊ちゃんかよ!」
    男子の多くがつぶやき、女子の中には
    「た、玉の輿」
    なんて、変な事を言い出すやつもいた。

    「……あ、そうそう、確かに僕ジーリア家の血縁だけど
     遠縁で、そんなに関係はないよ」
    その囁き声を聞いてか、転校生は付け足した。

    「「……」」

    全員、気まずそうに下ををむく。

    その中で一人、ヨウル・ジーリアを見つめる者がいた。
    (センラ……?)
    その顔には珍しく分かりやすく表情が浮かんでいた。

    突然センラはこちらを向いて
    「なあ、コウ、少ぉし面白いことしようかの」
    ……薄っすらとだが楽しげに、笑いながら。
    「ちょいと協力してはくれんか?」
    俺とセンラの席は離れていたけど、口だけで、センラはそう言った。
  • 19 千茶 id:eoN1Nsd1

    2012-12-24(月) 11:07:36 [削除依頼]
    12:面白い事

    ヨウル・ジーリアは、案の定俺の右隣に座らされ、
    自己紹介が始まった。

    「えっと、俺はオーゾウ・ハラだ。
     オーゾウって呼んでくれ!よろしくな。
     クラスは、打撃系だ」

    こんな感じに。

    だが俺は気が気でなかった。
    センラの久しぶりに見た笑顔と、面白い事って……
    もうすぐ、センラの番だけど……
    あぁ、いい予感がまるでしない……!

    と、そのとき、急にガバァッとこちらに振り向いたオーゾウと目が合う。
    何だ?と首をかしげる前にオーゾウの手にあるメモ用紙が目にはいる。
    ……何か、書いてある。
    文章までは見えないが、あの青色は……

    ……センラの持っているペンの、色と似ている。
    と言うか、そのものだろう。
    つまり、何か、センラはオーゾウにメモを回したってのか?
    一体、オーゾウとどんな関係があるんだ?

    ――カタン

    静かにいすを引く音。
    センラが、立ち上がったのだ。
    ヨウル・ジーリアの方を見て、小さく息を吸う。
    周りの皆は、特に注目もしない。
    普通に名前言って終わりだろう。皆そう思っている。
    俺とオーゾウ以外は。

    センラが口を開ける。
    俺は、思わず息を飲み込んだ。

    「私は、センラ・ホワードだ。
     クラスは、無属性。これからよろしく」

    クラス全員が一斉にセンラを振り返る。
    文章じゃ分かりにくいが、これはセンラの得意技。
    「声帯変化」
    俺ぐらいしか知らない特技だけど、
    とにかく、低い、男だと思えるほどの声をセンラは今出している。

    え……
    誰かが声を出しそうになるのを俺は口に人差し指を当てて、制する。
    ヨウル・ジーリアもセンラの方を向いているから、俺の姿は見えていない。
    それに対して、俺は窓側の最後尾に座っている。
    後ろを振り向いたミコ以外の皆には俺の姿が見えている。
    そしてミコも、皆が息を呑む音で声を出すのをためらう。

    「……えーと、センラ君?センラさん?」
    ヨウル・ジーリアがセンラに質問を投げかける。
    「好きなように呼ぶがいいよ」
    センラは落ち着いて、何の問題もないという風に、答える。
    「じゃあ……センラ、君?」
    「うむ、私も君をヨウル君と呼んでも?」
    「あ、うん、いいよ。これからよろしく」

    センラは、誰が見てもきれいな顔立ちをしている。
    しかし、それは中性的なもので、髪型はどっちつかずの短髪だ。
    さらに今日の服装は、ジャージ。
    しかも体形が出にくい、ゆるいサイズのものだった。
    つまり、これで、ヨウル・ジーリアの中で

    ……センラは男だと言う先入観が生まれた訳である。
  • 20 千茶 id:Ko.xa2M1

    2012-12-25(火) 22:47:54 [削除依頼]
    13:センラの賭け

    カガイノミニ先生にまだ用事があるからと教室から
    ヨウル・ジーリアが連れ出された瞬間、
    教室中の視線がセンラに集まった。

    それを分かっていたかのように、センラはゆっくりと立ち上がった。

    あー、おほん。
    そんな風に咳払いをしてセンラはある賭けを提示した。
    「今のを見てわかってると思うが、
     あの転校生、ヨウル君は私を男だと思っているだろう」
    声はもう少し低めの滑らかな、つまりいつも通りに戻っている。
    「そこで1つ、賭けをしてみんか?」
    ……賭け?
    「ハラには既にメモを回しておるが、何、簡単なことだ」
    そこでセンラは、言葉を切る。
    ――ニヤリ。
    そう、笑いながら。

    「私が1週間以内に女だとばれたら、
     コウ・ナナイは学級委員長になる。
     ばれなければ、コウは委員長にならん」
    「え?俺?」
    「そうだ、どうせコウは委員長になるだろうというのが私の読みだが、
     そこに少しの遊びがあってもよかろうよ、のお?」

    俺を含めた教室中が、ざわめく。
    「え?どゆこと?」
    「つか、ホワードがあんなにしゃべってんの初めて見た」
    「面白そうではあるけど」
    「別に、しなくても」

    ――ガンッ
    乱暴に立ち上がってしまった為、椅子が倒れた。
    という音がする。
    「あっ、ごめん」
    そう謝りながら、オーゾウが立ち上がる。
    「俺は面白いと思う!賛成だよ、ホワード!」

    えー、まじかよ……
    それより、なあ、巻き込まれた俺の意見はどうなの?

    とか、俺が思ってるうちに教室中が
    「賛成!」
    「オーゾウ君が言うなら」
    「新学期そうそう楽しめそーじゃん!」
    勝手に一致団結し始める。

    「では、みんな、協力して欲しい。
     ばれないことにかける人、ばれることにかける人、
     とにかくみんな1週間、私が男であるように接してくれ」

    「もし、ばれなかったらその後、
     答え合わせとして私は学校の制服であるスカートを履こう。
     そしてみんなでもう一度学級委員長選出を行おうではないか!」
  • 21 千茶 id:Ko.xa2M1

    2012-12-25(火) 22:52:47 [削除依頼]
    14:笑顔


    わああああ!
    教室のみんなが盛り上がり始める。
    なんだ、この謎の熱気は……

    俺が多少呆れているところにセンラがやってきた。
    「コウ、巻き込んですまないとは、一応思っている」
    「一応かよ!」
    俺のツッコミにセンラは、

    ――ニ、コリ。

    「!」

    センラは、普通に、笑った……

    …………あの時、以来だ。


    「でも、楽しいだろう?」
    その笑顔のまま問われたら、こう返すしかないじゃないか。
    「……そう、だな」

    いまだに、センラの賭けのどちらにかけるか。
    どうしたらばれないか等で盛り上がる教室で。
    俺とセンラは向かい合って、ただ笑っていた。

    「恩に着るよ、兄弟」
  • 22 千茶 id:OOJAyab0

    2012-12-28(金) 01:02:45 [削除依頼]
    15:きょうだい(回想1)

    あれは1年の時、忘れもしない出来事があった。

    初めての校外実技実習。
    アッジ魔専から約12キロほど離れたところにある、元々魔物の住処だった洞窟。
    過去の魔物討伐によってもぬけの空となった名の無い洞窟は、
    「アッジ魔専校外実技実習場」と命名されていた。
    1年に1回、そこで対魔物訓練が行われる。

    1年生の実習は対魔物戦闘に慣れてくる3学期に、毎年実施される。

    魔物が出そうな場所での実技訓練は、ずっと校内にいるより現実味が伴い、
    いつもだったらふざけてはしゃぐような奴も、
    その時ばかりは大人しく、実習は問題なく進行していった。

    実習は3日に分けて行われた。
    12キロの道のりを往復することで、基礎体力をつけるとか。
    それだけでもきついのに、いつも以上に
    「刀剣系」なら倍素振りを。「銃火器系」なら倍射撃を。
    「道具開発系」なら現地で製作可能な道具を完成……
    かなりハードな内容だ。

    「無属性」の俺は一応「打撃系」「刀剣系」の授業を受けていて、
    両方半分ずつとは言え、疲弊しきっていた。

    そんな、生徒も、教師も体力消耗の限りを尽くしていた3日目。

    ――魔物が、出た。
  • 23 千茶 id:OOJAyab0

    2012-12-28(金) 01:17:58 [削除依頼]
    15:きょうだい(回想2)

    いきなりだった。
    前日実習を終えて学校に俺達が帰ったその夜、
    洞窟に潜み、次の日何も知らずまたやってきた俺たちの前に
    現れた……のだろう、とされている。

    魔物が人の(しかも大人数の)臭いの充満するところに、
    襲ってくることならあるが、住みつくことは、まずない。
    ……今までの魔物の生態では、そうだとされてきた。

    だから、生徒は愚か教師たちも、油断しきっていた。

    洞窟内で暴れだす稀なほどの巨体を持つ魔物。
    逃げ惑う生徒。
    必死になって生徒を守ろうとする教師。

    ――地獄絵図。

    そんなものがあるなら、きっとあれの事だ。

    今ならそう冷静に状況を思い浮かべられるが、
    あの時はそうはいられなかった。
    みんなと同じように逃げようとして、

    できなかった。

    洞窟の天井やら壁が魔物によって壊され、
    入口が閉ざされた。

    俺を含め数名の生徒と、生徒をかばって重傷を負った教師が1名と、
    形容しがたいほど醜く恐ろしい魔物が、

    薄暗く、湿った、魔物が住むのに最適な場所に

    ――閉じ込められた。
コメントを投稿する
名前必須

投稿内容必須

残り文字

投稿前の確認事項
  • 掲示板ガイドを守っていますか?
  • 個人特定できるような内容ではありませんか?
  • 他人を不快にさせる内容ではありませんか?

このスレッドの更新通知を受け取ろう!

ログインしてお気に入りに登録すると、
このスレッドの更新通知が受け取れます。

最近作られた掲示板

お気に入り更新履歴設定

お気に入りはありません

閲覧履歴

  • 最近見たスレッドはありません

キャスフィへのご意見・ご感想

貴重なご意見
ありがとうございました!

今後ともキャスフィを
よろしくお願い申し上げます。

※こちらから削除依頼は受け付けておりません。ご了承ください。もし依頼された場合、こちらからの削除対応はいたしかねます。
※また大変恐縮ではございますが、個々のご意見にお返事できないことを予めご了承ください。

ログイン

会員登録するとお気に入りに登録したスレッドの更新通知をメールで受け取ることができます。

お気に入り更新履歴設定

お気に入りはありません
閲覧履歴
  • 最近見たスレッドはありません