窮屈な革靴43コメント

1 びびっと id:5rWX0WR.

2012-12-15(土) 21:47:49 [削除依頼]
更新は遅いけど、
がんばります!

では、
始めます。
  • 24 びびっと id:P.DJk/4/

    2012-12-17(月) 21:21:13 [削除依頼]
    「はい。」

    あたしは
    教室について鞄を下ろすと、

    すぐに奴のもとへと向かった。

    「へ?」

    奴…
    いや、笠中は
    とぼけたように間抜けた声を上げた。

    あたしが笠中に
    差し出したノートを凝視して。

    「だから、あんたが
    昨日貸してくれたノート。
    返すって言ってんの。」

    ああ…
    もう本当に一つ一つ
    いちいち腹立つ。

    あたしはため息をつきながら、
    さらにノートを前に突き出した。

    「ああ、ごめんごめん
    忘れてた。はい、どーも。」

    数秒遅れて、
    やっと理解したらしい。

    笠中がいつもの笑顔で
    ノートを受け取る。

    …あたしは
    笠中のやさしさを
    踏みにじったんだろうか。


    結局、昨日ノートを
    写す余裕なんてなかった。

    …あるはずなかったのだ。


    1分おきに震える携帯。
    メールはすべて和人から。

    そんな中でノートを
    写そうなんて気には
    さらさらならなかった。

    疲労感でぼんやり
    笠中を見つめる。

    「ねえ、首どうかしたの?」


    …あ。

    やば。笠中にばれた…!?

    不意打ちに言われて
    冷や汗が背中に伝った。

    あたしは笠中に
    目線を向けたまま、
    無意識のうちに
    首元に手を当てていた。

    ちゃんと、
    絆創膏貼ってるのに…

    「怪我でもした?」

    …が、
    それもどうやら、
    あたしの空回りだったようだ。

    笠中は心底
    心配そうな顔で、
    絆創膏でふさがれた部分を
    見つめている。


    …こいつが
    馬鹿でよかった。

    「別に。
    飼ってる猫に
    引っかかれただけ。」

    フっと、
    笠中から目線を外しながら、
    あたしはとっさに嘘をついた。


    …気づかれなくて

    よかった。
  • 25 びびっと id:P.DJk/4/

    2012-12-17(月) 21:29:20 [削除依頼]
    ああ…
    和人なんかと
    付き合わなければよかった…

    だったら、
    こんな目に合うことも
    なかっただろうに。

    あたしはうつろな目で
    受信されたメールを開いた。

    ”今夜7時、
    俺んちの前に来い。
    じゃなかったら、
    この写真ばら撒くから。”


    …は?


    和人から送られてきたメールの
    内容がいまいちつかめなくて、
    あたしは目をみひらいた。

    生物の授業中、
    あたしはただ、
    焦燥感に駆り立てられる。

    先生にばれないように、
    机の下に携帯を隠しながら、

    直感であたしは
    メールに添付されていた
    写真を開いた。


    …!?
    嘘…でしょ。

    その写真をみて、
    あたしはすぐさま
    携帯の電源を切った。


    やばい。
    これを誰かに見られてたら…

    そう思って、
    教室中をみまわすが、
    どうやら写真の中身を
    見たものは誰もいないようだ。


    安堵のため息とともに、
    不安があたしの心を
    支配した。

    携帯を乱暴に
    机の中にしまいこんで、
    パニックに陥りそうな
    頭のまま、
    シャーペンを握りしめる。

    耐える。
    そうだ。

    耐えるしかない。

    あと2時間で
    放課後になってしまう。


    その前に

    あたしは
    怒りと後悔と一緒に
    腹をくくった。
  • 26 びびっと id:P.DJk/4/

    2012-12-17(月) 21:37:07 [削除依頼]
    カチ…
    カチ…

    教室の時計は
    正確に刻を告げていた。

    あたしは
    机に伏せたまま、
    上目使いでその時計を
    見据える。


    夕日が、
    誰もいない教室に差し込んで、
    一層むなしさを感じる。

    もう、
    5時だった。

    あれから結局、
    あたしはここで
    ウダウダと
    時間をつぶしていた。

    約束の時間は7時。

    まだ余裕があった。

    それでも、
    あたしはいくらか
    緊張している。

    …最悪。
    もう何もかも最悪。


    あいつだ。
    あいつがあたしの後ろに
    来てから、あたしは不運になった。

    …なんて、
    すべての責任を
    笠中になすりつけながら、
    あたしは一人
    モンモンと考えをめぐらせていた。


    もう、みんなは
    部活に行っただろうか。

    今日も男子たちに
    遊びに行こうと
    誘われたが、

    さすがに行く気には
    なれなかった。

    あたしは
    あきらめのため息を
    重くつくと、
    覚悟を決めて
    席をたった。

    …早くいって、
    さっさと済ませて、
    和人がシャワー浴びてる
    間にでも、写真を消して
    逃げてやる。

    何もない手のひらに
    力を込めて、
    あたしは和人のマンションへと、
    歩き出した。
  • 27 びびっと id:P.DJk/4/

    2012-12-17(月) 21:47:02 [削除依頼]
    和人に
    ごめんなさい
    …なんてあたしの
    プライドが許さない。

    かといって、
    このまま和人に
    いいようにもてあそばれるのは、
    むかつく。


    とりあえず。

    『3番ホームに電車が付きます。
    白線内に下がってお待ちください』

    閑散としたホームに
    アナウンスが流れる。

    その声とともに、
    あたしはイヤホンを外すと、

    いつも家に帰る電車と、
    反対行きの電車に
    乗り込んだ。

    …和人の家って
    あたしん家から遠いから、
    めんどくさい。

    扉が閉まるのを見届けてから、
    つり革につかまって
    もう一度イヤホンを耳に
    はめた。


    ガタン、ゴトン…

    規則正しくゆれる
    電車に身をゆだねながら、

    あたしは
    ただただ、
    両耳を大好きなアーティストの
    曲でふさいでいた。


    あいたいから、
    あいにいくね。
    すぐにいくから
    おどろかないでね。

    ……


    今のあたしを
    まるで嘲笑うような歌詞に、
    すこしだけつり革を
    握る掌に力がこもる。

    あたしはそんなに今
    浮かれてないのに。

    何なの、彼氏に
    会うのがそんなに楽しいこと?


    …なんて、
    歌詞にいら立ってもしょうがないじゃん。

    そうやって
    自分をなだめるたび、
    無性に悲しくなるのは

    …まあ、
    あたしも
    人並みの感情を
    持ってるってワケで。
  • 28 びびっと id:P.DJk/4/

    2012-12-17(月) 21:57:37 [削除依頼]
    「………大丈夫…」

    呪文のように
    小さくつぶやいて、
    開いたドアから、
    足を一歩踏み出した。


    駅から歩いて
    何分かかるだろうか?

    いつも和人が
    車で迎えに来てくれてたから、
    そこんとこは
    よくわからなかった。

    あたしは
    足早に改札を抜けると、
    和人のマンションに
    ただ、足を進めた。


    たしか、駅を出たところを
    左に曲がって…

    3つ目の信号を右…

    で、坂道に入る…

    曖昧な記憶のまま、
    どうにか進んでいく。

    多分、これも
    和人の嫌がらせだ。

    あたしが電車で
    和人の家に行ったこと
    ないのを知っていて、
    こんな風に呼び出してるんだ。

    …なんて幼稚い奴。

    和人の顔を思い浮かべて、
    鼻で笑ってやった

    しかし。

    順調に来ていたが、
    ここでついに
    歩みを止める羽目になっていしまった。


    あたしの目の前で
    電車の踏切が下がっていく。


    ……
    あれ、こっちであってるよね…?

    踏切なんて和人のマンションに
    行くまでにあったかな?


    …あった。
    あったよ、多分。

    時刻は6時手前。

    ここで迷ったら、
    きっと約束の時間に
    間に合わない。

    そんなことになったら、
    きっと…


    だめ。考えるな。

    無理矢理思考を
    中断させて、
    目の前を
    ものすごい速さで
    横切っていく電車に
    目線を置くことにした。


    電車が通り過ぎたところで、
    急に目の前が
    開ける。





    ん?

    んんん?

    あたしは、
    踏切の向こう側にいる姿に、
    目を凝らした。


    あれは…

    まさか。
  • 29 びびっと id:P.DJk/4/

    2012-12-17(月) 22:06:28 [削除依頼]
    私服姿。
    初めて見た。

    なんだ、おしゃれだし。


    …ってそんなこと
    どうでもいい。

    イヤホンをして、
    片手にコンビニの
    袋を下げている。

    あたしは視力は
    いい方だから、
    見間違うはずない。

    …けど。

    半信半疑で
    反対側で踏切が
    上がるのを待っている
    あいつに目を凝らす。


    やっぱり。
    あれ…


    笠中 圭太だ。

    気づいた瞬間、
    踏切があっけなく開いて、

    ぞろぞろとみんな
    一斉に歩きだす。


    あたしもその波に
    取り残されないように
    ゆっくりと歩き出すが、
    このままいけば、

    …ばれる。

    笠中も
    踏切が上がったことに気づいて、
    ゆっくりとあるきだした。

    あたしと笠中の距離が、
    どんどん近づいていく。


    お願い!
    気づくな。

    警戒心丸出しで、
    笠中の顔を穴が開くほど
    見つめながら歩く。


    まあ、当然といえば
    当然だ。

    あと、もうちょっとで
    通り過ぎれるところだったが。

    「お!?宇智じゃん。」


    携帯から顔を上げた
    笠中と、
    思いっきり目線が合う。

    その瞬間、あたしは
    とっさに視線を足元に
    落とし、

    「いえ、人違いです。」

    と、足早に
    通り過ぎようと試みる。

    が、

    しっかりと腕を
    つかまれて、
    立ち止まるをえない
    状況になってしまった。


    「ちょ!他人のふりすんなよー
    つめたい人ー。」
  • 30 びびっと id:P.DJk/4/

    2012-12-17(月) 22:21:45 [削除依頼]
    かくして。

    「なんで、宇智こんなところにいるの?」

    笠中に半ば強制的に
    連れ去られて、
    今、なぜか隣で歩いてる。


    あたしをどこに
    連れて行く気だろうか。

    おろおろしながら、
    あたしの隣にいる
    笠中の顔を見上げた。

    「どこ、いくの?」

    「そんなの、こっちのセリフじゃー。
    宇智この近所じゃ
    ないでしょ?」

    こちらを向くこともなく、
    笠中は真顔で
    そういってきた。


    …図星。
    あたしは気まずくなって、
    視線を足元に落とした。

    「ねえ、っここらへんに
    マンションある?」

    あたしは思い切って
    話題を変えることにした。

    和人のことは
    口が裂けても言えない。

    特にこいつには。

    足元を見つめたまま、
    あたしは早口でそう聞く。


    「たくさんあるだろー多分ね。」

    適当なこと言うな。

    そう突っ込みたかったけど、
    今はそんな口論に
    なっている場合ではない。

    さっさと和人の家を
    見つけなきゃいけないのに。

    「あ!あたし行くとこあるから。」

    「どこ?」

    「…あんたに関係ないじゃん。」

    しーん…

    だって本当のことじゃん。
    笠中が首突っ込んでいい
    話じゃない。

    「俺、気になってたんだけど…」

    何よ。

    そういおうと思って、
    笠中の顔を見上げた
    その瞬間。

    笠中の左手が、
    あたしの首元に
    目にも止まらぬ速さで
    伸びてきた。


    …ちょ…
    やば。

    そう思っても
    何もなすすべがなかった。


    あーあ。

    「やっぱり。怪しいと思ってたよ。」

    勝ち誇った笑顔で、
    笠中は、あたしの首から
    はぎ取った絆創膏を
    人差し指につけて
    振り回しながら、
    こちらを見ていた。

    「隠すくらい、いやだったんだ。」

    感心したように、
    あたしの首元を覗き込んでくる笠中。

    あたしは警戒して
    すぐさま手で
    キスマークを隠した。

    「…さいってい。」

    精いっぱいの睨みを
    聞かせて、
    笠中を威嚇する。

    「ごめん!本当にごめん!
    別にからかうつもりじゃなくて…
    その、変だなっておもっていたから…」

    言い訳かよ。
  • 31 びびっと id:P.DJk/4/

    2012-12-17(月) 22:30:37 [削除依頼]
    呆れた。
    笠中って本当に
    あたしをいらいらさせる
    天才だと思うよ。

    「もう、あんた
    本当にいやだ。
    死ねば?」

    「…ごめん。本当にごめん。」

    さっきまでの威勢は
    どこに行ったのか、

    笠中はしゅんと
    頭を垂れた。

    立ち止まった坂道で、
    二人の影が
    長く伸びて。

    「ごめん、もう俺帰るから、
    邪魔してごめん。
    本当にごめん。」


    本当に反省しているらしい。

    笠中は無口になって、
    突っ立っているだけだった。

    「あたし、これから、
    このキスマークつけた人の
    ところにいかなきゃ
    なんないの。わかる!?」

    青筋を立てて声を荒げながら
    あたしは時間を
    確認した。

    あと、
    30分しかない。

    「もういい。
    もういいから、
    許してやる。」

    「…いいの?」

    めんどくせえな。

    あたしは躍起になりながら、
    舌打ちをして
    もう一度、

    「許してやるって言ってんの。
    だから…」

    あたしが
    そういい足すと、
    笠中の顔が一瞬にして笑顔になった。

    「うん、なに?」

    「あたしを和人から、
    逃がして。」


    無茶なお願いだってことは
    十分わかってる。

    第一笠中は
    和人がどういう人かさえ
    知らないわけだし、
    他人にそこまでしないだろう、ふつう。


    そう、ふつうなら。


    「わかった。じゃあ、
    早くいこう!」


    …え。

    びっくりして
    笠中の顔を再度
    見ると、
    何食わぬ顔でこちらに
    ほほ笑んできた。
  • 32 びびっと id:5X5Oo4q/

    2012-12-18(火) 21:40:38 [削除依頼]
    どーしてこんなことに
    なったのか。

    …あ、
    あたしが言い出したんだった。

    自慢の茶髪を
    指でいじりながら、

    5歩先を
    歩く笠中を見つめた。

    「ねえ、あんたって
    ここらへんに住んでるの?」


    そりゃあ、
    これくらい聞いてもOKだよね。

    …うん。OKだと思う。

    「うん。そーだよ。
    あっ!そうだ。」

    そういうと
    笠中は振りかえって
    足を止めた。

    そのせいであたしも
    反射的に立ち止まる。

    「これ!コンビニで売ってた
    アイスの新作!限定品。」

    そういって
    笠中は、先ほどから
    手にぶら下げていた
    袋の中から、
    有名なカップアイスを取り出した。


    「これ…今日出たばっかりのやつじゃん。」

    あたしはわずかに
    目を見開いて、
    そのカップアイスに引き寄せられるように
    笠中のもとへと近寄る。

    …う。
    食べたい。
    超食べたい。

    「食べたい?」

    「…うん。」

    …負けた。

    笠中は、
    勝ち誇ったような顔をすると、
    カップアイスのふたを
    強引に開けた。

    「ちょうどコンビニの定員さんが
    スプーン2個間違えて入れてたんだよ。」

    そんなどうでもいいことを
    聞かされながら、

    あたしは一番乗りで
    なめらかなアイスに
    スプーンを突っ込んだ。
  • 33 びびっと id:5X5Oo4q/

    2012-12-18(火) 21:54:14 [削除依頼]
    「うま…」

    「だろうね〜。」

    そういいながら、
    笠中もスプーンで
    アイスを掬った。

    「あ、ほんとだ。うめえ!」

    …だろうね。
    このあたしがうまいって
    言ってんだから。

    がつがつとアイスを
    ほおばる笠中を
    見つめながら、
    あたしは勝ち誇った笑みを
    浮かべた。

    「あ…ここじゃなんだから、
    すぐ向こうに公園あるから、
    そこですわって食べようよ。」

    口に含んだアイスの塊を
    飲み込んだ笠中は
    そういって突き当りを
    指さした。

    「いいけど」


    ・・・・・・・・・・・・・・・

    「ねえ、その彼氏の名前、
    教えてよ。」

    ギーコギーコ。
    ブランコに隣同士ですわって
    無心でアイスを食べていたとき、
    笠中が何食わぬ顔でそういってきた。

    …いやよ。

    「じゃないと、その人の
    家、探せないから。」

    付け足すようにそういわれて
    こちらにほほ笑まれたら、

    あたしはなぜか
    何も言い返せなくなった。


    「和人。」

    ぼそっとこぼすように
    そう呟くと、
    あたしはまた
    アイスを大量にほおばった。

    「和人…か。イケメンっぽいね。」

    「まあね。てか、
    イケメンじゃないと、
    あたし付き合えない主義だし。」

    そっけなくそういってやる。

    あたしは理想が高いの。

    だから、
    そこらへんにいる
    あんたみたいなのじゃあ
    満足できないワケ。

    「じゃあ、おれじゃ
    むりだなあ。」

    …ん?

    さりげなく
    告白すんなよ

    「当たり前。」


    なぜか、
    アイスをたべる
    スピードが上がる。

    「あ…じゃあ、その人の
    名字は?」


    ってサラっと
    行きすぎだろ。

    あんたは今
    あたしにフられたって
    いうのに。


    …まあ、
    どうでもいいか。

    「川崎。 川崎和人。」
  • 34 ぽさぬ id:916JTLq.

    2012-12-19(水) 13:22:36 [削除依頼]
    キャラとか話のテンポが読みやすくて好き
    完結まで読み続けたいです^^


    応援してます!
  • 35 びびっと id:zD3YscL1

    2012-12-19(水) 21:32:25 [削除依頼]
    >ぽさぬさん。
    ありがとうございあああいます!

    がんばって
    更新していきます!
  • 36 びびっと id:zD3YscL1

    2012-12-19(水) 21:45:37 [削除依頼]
    「川崎 和人……あ。」

    何かに気づいたかのように、
    笠中は目を見開いた。

    …なんだなんだ!?

    それにつられて、
    あたしもシリアスな
    空気を醸し出してみる。

    「あれは?」

    は…?

    あたしは、
    笠中が凝視している、
    公園の入り口付近に
    視線をうつした。


    あれは?…って
    こんなとこに和人が
    いるわけ…


    ってあれは!?

    「あれ。あれだよ和人!!」

    あたしはそこにいた人物に
    目線を置いたまま、
    隣にいた笠中の
    裾をきつく握りしめた。

    やばい!
    本当に和人だ

    まぶしいほどの金髪。

    軟骨に開けた
    でっかいピアス。

    「…どうする?」

    声を潜めて
    笠中は聞いてきた。


    …どうするって…

    携帯をいじってる和人。
    多分、誰か待ってるのか…


    まあ、そんなこと
    どうでもいいけど。

    でも、
    入り口に立たれたら、
    逃亡しようにも
    逃亡できない。

    でも、
    どうせ約束の時間まで
    15分を切っている。

    だったら
    素直に今
    見つかっていた方が得だと思う。
  • 37 びびっと id:zD3YscL1

    2012-12-19(水) 21:52:56 [削除依頼]
    「あたし、行くね。」

    「どこに!?」

    あたしの言葉に
    びっくりしたらしい。

    ブランコから
    立ち上がろうとした途端、
    引き留めるように
    笠中は大声を上げた。

    「だって、もうばれるのも
    時間の問題ってやつだし。
    だから、和人を見つけたから
    あんたにもう用はないし。
    だからじゃーね。」

    早口で適当な
    言葉を並べると、
    あたしはためらわずに
    和人が立っているところへと
    歩き出した。

    …笠中の視線を
    大いに背中に感じながら。

    「おい。じゃあ、
    食べかけのアイス、
    おれが全部喰っちゃうからな!」

    最後に、
    あたしを振り向かせようと
    したのか。

    笠中が叫んできた。

    あたしは振り返りもせずに、

    「勝手にしろよ。」

    と呟いた。

    この声は、
    笠中に届いていないけどね。

    笠中から離れていくたびに、
    背中に突き刺さる視線。

    痛い。

    あたしはその視線を
    意識しないように
    心がけながら、
    持っていたアイスの
    スプーンを
    足元に投げ捨てた。

    あーあ。
    和人なんて
    好きじゃないのに。

    どうしてあたしが
    こんな目に合わなきゃ
    なんないワケ?

    …ってあたしの
    自業自得だけどさ。

    顔を上げたときはもう、
    和人がこちらを向いて
    ほほ笑んでいた。

    …いや、
    ほほ笑むなんて
    かわいらしいものじゃない。

    怪しく口角を
    引き上げて、
    あたしを

    待っていた。
  • 38 びびっと id:zD3YscL1

    2012-12-19(水) 22:00:55 [削除依頼]
    「ねえ、誰待ってたの。」

    あたしは和人から
    少し距離を置いた位置で
    立ち止まってそういった。

    「お前をだよ。」

    「嘘つかなくていいから。
    彼女いるならそっち行けばいいのに。」

    安い嘘をつかれても
    別に傷つかないけど、

    でも、
    その余裕ぶってる
    和人の顔が
    嫌い。

    あたしを見るなり、
    携帯をポケットに
    しまいこんだ和人。

    流れ作業のように
    あたしの肩に
    腕を回す和人。


    …あたしに
    拒否権はない。

    だって、
    そのポケットの中にある
    携帯のフォルダの中。

    あの写真さえ
    消してしまえば、

    すべてが
    終わるんだから。

    我慢しろ、聖奈。

    自分に言い聞かせるように
    深呼吸をしながら、
    腕を回されたまま、
    あたしたちは歩きだした。

    和人のマンションへと。

    笠中のことは
    ほっとこう。

    もう、めんどくさい。

    きっとあいつも
    これからあたしたちが
    何をするかくらい
    わかってるはずだ。

    わかっていて、
    見て見ぬふり。

    だから、
    もう、どうでもいい。

    あいつにどう思われようが
    あたしの知ったことじゃない。


    あたしは
    和人の大きな歩幅に
    合わせて、
    小走りで歩いて行った。
  • 39 びびっと id:zD3YscL1

    2012-12-19(水) 22:11:43 [削除依頼]
    バタン。

    むなしく響く
    ドアが閉まった音。


    強引に腕をつかまれて
    あたしは和人ん家の
    玄関へと連れ込まれた。


    さあ。
    さっさとヤることヤって、
    写真消して、

    帰ろう。


    和人に促されるまま、
    あたしは廊下を歩いて、

    見慣れた寝室へと
    先に行く。

    「じゃ、おれ、
    シャワーあびてくっから。
    逃げんじゃねえぞ。」


    …わかってるっつの。

    あたしがベットの
    ふちに腰を下ろしたのを、
    寝室の入り口から覗き込んで、

    和人はバスルームに向かっていった。

    足音がだんだん
    遠ざかる。


    ……あと5分。


    あたしには作戦があった。

    そう、
    絶対に自信がある、作戦。

    「よし。」

    覚悟を決める。
    そうしないと、
    きっと失敗してしまうから。

    あたしは
    足音を立てずに
    寝室を出て、
    和人がいるであろう
    バスルームに向かった。

    和人の家のバスルームの扉は、
    半透明になっていて、
    中に入っている人から見たら、
    外の様子がくっきりと
    わからない。


    …それを
    活用しようと思って。

    あたしはバスルームの
    扉の目の前に立った。

    「和人。」

    「あ?何?」

    くぐもった声が、
    扉越しに聞こえる。

    「あたしも、入る。」

    「…じゃあ、早く来いよ。」


    …ほら引っかかった。

    あたしは勝ち誇った笑みを
    浮かべて

    「すぐ行くね。」

    と伝えてから、
    その作戦へと
    取りかかった。
  • 40 びびっと id:kmkoL2v/

    2012-12-23(日) 21:03:04 [削除依頼]
    久々に
    更新しまーす^^
  • 41 びびっと id:kmkoL2v/

    2012-12-23(日) 21:16:02 [削除依頼]
    あたしはすぐに
    鏡の前に立った。

    鏡の前…

    ふん。やっぱりね。


    和人は風呂に入るとき、
    きまってこの鏡台に
    携帯を置く。


    あたしの観察力、
    抜かりなし。

    あたしは早速
    その携帯を
    慣れた手つきで
    いじっていく。

    ……
    意外。

    なんと!
    和人は携帯に
    ロックをかけてなかった。

    難なく第一関門突破。

    あとは、
    今日送られてきた
    写真を消してしまえば終わり。

    あたしと
    和人の関係も
    プツリってワケよ。

    指先でフォルダを
    めくっていけば、

    「あった…」

    すぐに見つかった。
    あたしが探していた写真。


    それは。

    あの日、和人に
    公園で襲われている最中に、
    和人が勝手にあたしの
    体を撮ったものだ。

    こんなもので
    あたしをつなぎとめようったって…

    無駄なんだっつの。


    勝ち誇った笑みを
    浮かべて、
    ”削除”のボタンを
    ためらうことなく押した。

    その時。

    「おい!なにしてんだお前…
    まさか。」

    風呂場のドア越しに、
    あたしの不審な動きに
    気づいたらしい。

    和人の声が、
    風呂場という域を超えて、
    さらにくぐもって聞こえた。


    やばい…

    あたしはとっさに
    そう思った。

    逃げなきゃ…逃げなきゃ。

    今度こそ
    何されるかわかんない!
  • 42 びびっと id:kmkoL2v/

    2012-12-23(日) 21:27:58 [削除依頼]
    あたしの
    勝ちになるはずだった。

    あたしの完全優勝…

    シナリオ通りに
    行けばの話だけれど。

    「……聖奈!」

    バシャン!

    湯船の水が
    大きく波打つ音が
    聞こえた。

    きっと和人が
    もう上がろうとしているのだろう。


    嫌だ…
    来ないで。

    来るな。

    あたしは本能的に、
    一歩、また一歩と
    後退していき、
    ついに走り出した。

    コけそうになりながら、
    無我夢中で脱衣場を
    走り去る。

    「ッチ!待て!」

    こちらの行動に
    気づいた和人が、
    風呂場の扉を
    開けるのが遠くで
    聞こえた。

    あたしは額に
    大粒の汗を
    にじませながら、
    寝室に駆け込むと、
    ベットの上に置いたままの
    鞄をひっつかんだ。

    「…はあ…はあ…」

    早く。
    早く逃げないと。

    元も子もない。

    それでも、
    逃げ切れるか、捕まるか、
    もう時間の問題だった。

    あたしは寝室を
    走り出て廊下を突っ切ると、
    玄関で自分の靴を拾い上げて、
    靴下のまま外に出た。

    こんなときに
    のんきに靴を履いている
    余裕なんてあるわけない。

    ましてやスニーカーなんて、
    ただのタイムロスだ。

    捕まえてくださいって
    言ってるようなもんじゃない。

    あたしは勝手に
    心の中でボヤキながら、
    ただただ足を前に送った。

    エレベーターの
    表示は2F。

    ここは17Fだから…

    ぜったい間に合わない。

    荒い呼吸のまま、
    エレベーターの
    ディスプレイを見上げるが、
    あと5分はきっと来ない。


    「ああ…もう!本当に
    ついてない!あれもこれも全部
    笠中のせいよ!」

    憤怒の念を
    笠中に押し付けるように
    大声でわめいてから、
    あたしはさらに
    足のスピードを速めた。

    エレベーターの
    脇にある
    非常階段へと足をかける。
  • 43 びびっと id:kmkoL2v/

    2012-12-23(日) 21:39:53 [削除依頼]
    「っ…はぁ…」

    11F

    ……

    10F

    一段とばしで
    強引に階段を駆け下りる。

    途中、
    何度も踏み外して
    顔面から行きそうに
    なったけど
    なんとか持ちこたえた。

    剛速球で
    どれだけ階段を駆け下りても、
    ゴールはほど遠い。

    「もう…無理…だ。」

    とぎれとぎれの呼吸を
    整えるように、
    徐々に足のスピードを
    落としていく。

    トポトポと階段を
    踏みしめながら降りていくと、
    ついに標識が8Fと現れた。

    和人…
    なんで追いかけてこないんだろう。

    …って大体想像は
    つくけどね。

    多分、風呂上りに
    汗かきたくないから、
    エレベーターに乗って、
    今頃一階であたしを待ち伏せって
    とこだろうね。

    そう考えるだけで、
    全身から滝のように
    汗がこぼれた。

    もう、夏が来るのか。

    どうでもいいことなのに、
    あたしはなぜか
    そんなことにすがっていたくなる。

    そうでもしないと
    今にも泣いてしまいそうで、
    怖かった。

    和人という存在が

    ただ、怖かった。


    ほとんど止まりかけていた
    足に視線を落として、
    あたしはその時、

    ふと、あることに
    気が付いた。

    和人が一階にいるなら、
    一階に行かなければいいんじゃん。

    その結論に
    たどり着いた瞬間、
    心の雲が、
    サアーと晴れていくような、
    何ともいえない快感が
    あたしをおそった。

    いままでの
    ネガティブ思考が
    馬鹿みたい。

    そう思えるほど、
    あたしはなぜか
    無性に口元をほころばせる。

    そして、
    目の前に迫っていた
    8Fの入り口へと、
    足を進めた。

    そーだよ。
    一階以外のところを
    うろうろしとけば、
    和人に見つからない…多分。

    8階で適当に
    部屋に入れてくれる
    ところを当たって。

    そこに身を隠しとこう。
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