朽ちる秒針3コメント

1 Yuki id:qkwBskt1

2012-12-15(土) 21:01:26 [削除依頼]



どうか、もう笑わないで。
  • 2 Ren id:qkwBskt1

    2012-12-15(土) 21:20:25 [削除依頼]

    1.

    雨に濡れることなど何の障害にもならなかった。
    一刻も早く取り返すべきものが俺にはあって、
    だから本当は歩みを止める暇などないはずなのに。
    腕の中の、ただただ弱きもののために雨を凌ぐ。

    強さ以外に価値を見出したことはなかった。
    それなのに、今自分がもっとも重きをおいているものは?
    からだは冷えているくせに、呼吸だけは熱い。
    濡れた黒髪が一筋白い頬にひたりとついている。
    憂いげな表情でも浮かべているのだろうか?
    だとしたら、説明はつかないが、笑っていればと思ってしまう。

    俺のからだに頼り切ったようにからだを預けてる。
    応えるように俺は女を両腕で閉じ込めている。
    無意識にわずかな力が腕にこもった。
    雨に濡れて香る女の甘い匂いが心地よく脳を麻痺させた。

    人に非らざる俺が、愚かと知りながら人の女を愛した話。
  • 3 Ren id:qkwBskt1

    2012-12-15(土) 22:28:51 [削除依頼]

    女の冷えたからだと、己の体温が溶け合うのが心地よい。
    もっと。などと、歯止めの効かない欲にからだは忠実すぎた。
    さらに腕の力を強めたら、女は居心地が悪そうに身をよじった。
    たったそれだけのことに、胸に棘が触れる。

    「......逃れたいならそうしろ」
    理性を働かせて力を抜けば、腕は重力に従って簡単に解けた。
    女の様子を伺う。困ったような顔で首を横に振った。
    「逃れようだなんて......」
    「嫌か?」
    女はより強く首を振る。躊躇いがちに口を開く。
    「自惚れてしまいそうになるんです」
    顔だけでなく、女はからだをこちらに向けた。
    「紅蓮様が優しいから、私はどんどん身の程知らずになるの」
    不思議な捉え方をするものだと思った。
    俺は優しくもないし、女が身の程知らずだとも思わない。
    「優しくなどないだろう」
    先ほどから女は俺の言葉を否定ばかりする。
    「紅蓮様は優しいです」
    何と返事をしていいのか、ついにわからなくなる。
    俺が、どれだけの人間を殺めてきたのかを見ていたはずだ。
    では、なぜ?

    「紅蓮様は私のこと殴らないでしょう」

    今まで女がどんな境遇に身を置いていたのか想像するのは容易かった。
    殴らないのが優しい? まったく間違った解釈だと思う。
    あまりに笑顔でそう言うものだから、俺は胸に棘を増やした。

    可能な限り、真の優しさというものを意識しながら、
    俺は笑う女のからだをもう一度抱き寄せた。

    身の程知らずだと女は言ったけど。
    正しい優しさを享受する価値くらいはあるだろうと思う。
    もし、そんな、愚かな優しさに口を緩めるというならば。

    どうか、もう笑わないで。


    (幸せにしてやれるだろうか)
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