ゴールド、金賞13コメント

1 こっこ id:ZvYKU7Z/

2012-12-09(日) 08:29:08 [削除依頼]

          ***
雲ひとつ浮かんでいない、まっさらな空に、吸い込まれそうになる。
――なんて気取った台詞が思い浮かぶのも、毎日歌を歌っているからなのだろうか。
俺は、この学校を卒業しても絶対に忘れない、大切な場所がある。
仲間と歌った大切な場所
青春を感じた大切な場所
喜びを、悲しみを、怒りを分かち合った大切な場所

音楽室
  • 2 なこ id:ZvYKU7Z/

    2012-12-09(日) 08:57:06 [削除依頼]

              ***
    俺はバスケ部だ。
    3年になって中体連とともに引退したときは、かわいい後輩、大好きなバスケとお別れするのに涙を流したとともに、正直ほっとした気持ちもあった。
    だが、俺の中学校生活での部活は、まだ続いていた。

    俺が引退した後の最初の音楽の授業で、俺は山本先生に呼び止められた。
    「河野くん、歌は好き?」
    なんで俺をわざわざ呼び止めて、そんなことを聞くのか分からなかった。
    歌はどちらかといえば好きな方だった。幼い頃から俺は歌を歌うときは誰よりも張り切っていた。だが、小学校の高学年くらいから恥ずかしさやかっこつけで、本気で歌わなくなった。
    「合唱部に、入ってみる気はない?」
    やっと山本先生が言いたいことが分かった。
    俺の中学には合唱部、という部活が存在している。
    合唱部は、毎年夏休み中にあるというコンクールが近くなると、引退した運動部の男子を助っ人としてスカウトする。俺は今までそれを人ごとのように見ていたが、そうだった、俺はもう3年生で引退していた。
    「河野くんは音楽の歌の授業であまりやる気じゃない。でも、私はそれは本当じゃないと思うの。あなたは毎日歌っていたら必ずいい歌声になるわ。」
    そりゃあ、歌が好きだし、声も声変わりしてる方だから、男らしいいい声は出るだろう。
    だが、忘れてはいけない、俺は受験生だ。入試まであと半年しかない。この夏休みにしっかり勉強しようと思っていたのに、合唱部に入るとその時間は一気に削られる。
    「・・・親と相談してみます。」
    相談する気なんかさらさらないが、ひとまずそう言った。
    「そうね、そのほうがいいわ。受験で忙しい時期だもの。無理しなくていいわ。」
    山本先生は最初から諦めていたように微笑んでそう言った。

    これは、人生最初の岐路だ。
    ――うん、これもなかなかいい。
  • 3 こっこ id:ZvYKU7Z/

    2012-12-09(日) 09:14:47 [削除依頼]

              ***
    合唱部に入るのには、いくつか問題がある。
    ひとつは受験生だということ。
    それと、あの勉強にうるさい親が許してくれるかということ。
    もう一つは、合唱部の評判のこと。

    合唱部の部員は頭のいい人が多い。多分どの部活よりも勉強できる人が揃っている。帰宅部は別だが。
    そんな奴らと一緒に過ごせば、頭が悪くなるどころか、影響されて、頭がよくなる可能性だって十分にある。

    そんなことを言って親が許してくれるわかはないが、その問題点についてはとりあえず無視しておこう。

    問題は、合唱部の評判だ。
    合唱部は決していい評判はない。オタクが多いとか、大して練習していないだとか悪いうわさばかりだ。
    でも、コンクールでは必ず入賞する。全校の前で歌を披露するときも、俺は感動することがたびたびある。
    現に、俺の親友は合唱部だ。小学校の時は一緒にバスケ部に入ろうな、と言っていたが、中学校に入ったとたん、あいつは合唱部に入部した。学校で過ごす時のグループは違って、俺は一番目立つバスケ部グループにいるが、本当に悩んでいるときや、本気で相談したい時は必ずあいつに相談する。
    俺は合唱部を悪くは思っていない。
    だから、俺は、合唱部に入る。
    いや、最初から決まっていたんだ。合唱部に入りたかった。
    今挙げた問題点の解答は、うまくつじつまを合わせただけかもしれない。だが、嘘はついていない。
    明日にでも、山本先生に伝えよう。
    俺は夏休みから合唱部だ。
  • 4 こっこ id:ZvYKU7Z/

    2012-12-09(日) 10:12:38 [削除依頼]

              ***
    「じゃあ、合唱部に入ってくれるのね!」
    翌日、俺は昼休みに山本先生のところへ行って、合唱部に入ると報告した。
    「驚いたわ。河野くんが入ってくれると思ってなかったもの。あなたが入ってくれると心強いわ。ほら、うちの部員の三吉大介も、カズが入ってくれると安心だって言ってたのよ。」
    俺だって、大介がいるからはいろうと思った。大介がいなかったら入らなかったかもしれない。
    そのあと、先生と色々話をした結果、早速今日から練習に合流することになった。
    バスケ部仲間の友達は俺が合唱部に入ることを風の噂で知っていた。俺はグループの中でも目立っていた方だったから、みんな心底驚いた様子だった。俺みたいな奴は、やっぱり合唱っていう柄じゃない。今頃少し後悔してきた。
    だが、決まったことは決まったことだ。合唱部として頑張るしかない。大丈夫だ、大介がいる。
    俺は男だ。誰に何を言われようが構わない。何度でも立ち上がる。

    俺はこうやっていままで乗り越えてきた。
  • 5 なこ id:ZvYKU7Z/

    2012-12-09(日) 10:45:54 [削除依頼]

              ***
    放課後、理科室の掃除を終えたあと、早速音楽室に向かった。
    音楽室は、2階の端にある。運動部は体育館を共同で使ったりして、毎日顔を見ながら活動しているが、合唱部は音楽室で合唱部だけで活動しているから、自分たちだけの空間がそこにはあるはずだ。彼らにとっての音楽室は、家と同じようなものなんじゃないか、そんなことを思った時もあった。
    音楽室のドアを開けると、もう大分部員が集まっていた。視線はやはり、俺に向けられた。しかし合唱部は俺の学年、つまり3年生が大半を占めているから、知ってる顔ばかりだった。
    「カズ!」
    後輩と雑談していた大介が、俺に気がついて声をかけた。
    「お前、助っ人してくれるんだって?助かるよ。見ての通り、女子ばっかで男子が少ないけど、居心地がいいと思う。」
    大介は満面の笑みでそう言って、後輩に俺を紹介した。
    しかし、女子ばかりだ。3年生が多いからよかったものの、違う学年ばかりだったらどうなってたかと思うと鳥肌が立つ。中には俺と同じようにスカウトされて入ってきた奴もいた。
    サッカー部の大、野球部の下川、バレー部の康太・・・俺だけじゃなかった、おんなじ仲間がいてほっとした。
    「カズー」
    よく通る、高い声で俺を呼んだのは、部長の高野陽子だった。
    陽子は明るく活発で、勉強もよくできる。みんなからも信頼されていて、まさに「部長」を務めるために生まれてきたかのような人だ。
    「カズは今日から私と同じ、合唱部の一員よ。思ってるより相当大変な練習だと思う。でも最後まで全力で頼むわよ。」
    ショートカットがよく似合う、すっきりした顔立ちが、俺を見つめて言った。
    「こんにちはー、みんな早いね、あ、そうだ、陽子ー」
    気ままにふわふわした声でドアを開けてやってきたのは、副部長の花川鈴だ。
    「わ、びっくりした!カズだ、もしかした、助っ人?」
    驚いた顔から笑顔までの変化が激しい。喜怒哀楽が激しい鈴は、長い髪で毛先にほうがくるくるっとカールしている、キレイというよりは可愛らしい子供っぽい顔をしている。
    陽子も鈴もどちらも活発で、合唱部も少し活気に満ちているように見える。
    「あ、陽子、私今日部活出られないから、陽子頑張ってね。」
    「だってスズ、今日はソロを決めるって先生言ってたじゃない。」
    「それ、明日に回してもらったの。だから大丈夫よ。」
    話の内容が全然わからない俺は、一歩下がって黙っているしかなかった。
    「じゃあね、あ、カズ、これからよろしくね。じゃ!」
    「お、おう・・・」
    俺の返事を聞く前に、鈴は走って音楽室をあとにした。
    発声練習はじめるよーというやっぱりよく通る陽子の声を聞くと、部員たちは元気よく返事をして並んだ。

    俺はどうしていいか分からず、とりあえず大介の隣に座った。
    「カズ、一緒に歌ってくれるか?」
    大介はまだ半信半疑のようで、俺に不安そうにそう聞いた。
    「おう!当たり前じゃん」
    俺は笑顔でそう返した。
  • 6 こっこ id:ZvYKU7Z/

    2012-12-09(日) 12:08:48 [削除依頼]
    「今日は昨日言ったとおり、nコンの自由曲のソロの部分を決めるわ。」
    発声練習が終わって、山本先生は来るなりそう言った。部長と副部が言っていたのはこのことだろうか。
    「ああ、助っ人の人もたくさん来てくれてありがとう。じゃあ、ちょっとこっちで聞いてて。」
    山本先生はそう言って俺たち元運動部を合唱体型から外させた。俺は訳も分からず先生の言う通りに外れた。大介が、「後で教えてやるよ」という風にアイコンタクトで伝えた。
    「これは、nコンの歌よ。言われなくてもわかってるでしょうけど、とても大切な曲だわ。特にソロの人は、自分の出来で結果が変わるかもしれないの。とても大切な役だわ。目立つし、かっこいいと思うけど、責任重大だということも忘れないでね。先生は誰になってもいいと思う。でも、なったからには最後まであきらめないでね。じゃあまず男子からいこうかな。」
    そう言って先生は男子をピアノの周りに来させ、他のパートを座らせた。
    どうやらソロは3年生と決まっているらしい。男子は3年生は二人だけだ。大介と、ちょっと小柄な夕。
    大介は緊張していなかった。口を開けたと思ったら、真っ直ぐなとても力強い男の声がでた。人間は、ひとりでこんなに声が出るんだ、そう思った。
    そのあとも3年生のソプラノ、アルトがひとりずつ歌った。
    部長の陽子はもともと声がよく通る声だから、無駄なものが入っていない、透き通った声が気持ちよく上にあがる。
    ほかのみんなも本当にうまかった。合唱は本当に毎日歌っていたらうまくなるのか。俺がバスケ部でボールを必死に追い掛け回していた時も、合唱部は毎日こうやって歌っていたのかと思うと、不思議な気持ちになった。
    俺はソロは誰でもいいと思った。

    大介に後で教えてもらったが、nコンとは、nhk全国学校音楽コンクールの略だという。合唱部は毎年参加している。金賞、銀賞、銅賞があって、入賞できなかったら奨励賞が与えられる。
    曲は課題曲と自由曲。課題曲は毎年このnコンのために書き下ろされる。
    これからはnコンの練習に励むそうだ。
    そんな大きなコンクールがあるなんて知らなかった。もしかしたら中体連より大きいかもしれない。金賞を取ったらテレビで放送されるのだという。取れなくてもラジオで放送されるらしい。俺はテレビ、ラジオと聞いただけで急に緊張してきた。
    結局この日は鈴がいないということで、ソロは決まらず、課題曲の練習で時間いっぱい終わった。
    俺も、1冊200円の課題曲の楽譜をもらった。なかなか立派な楽譜だ。
    これを持っていると、本当に自分が合唱部になったみたいで少し自分が誇らしくなった。
  • 7 こっこ id:DBXzeks1

    2012-12-10(月) 15:58:59 [削除依頼]

              ***
    土曜日。
    休日もnコンがあるまでは毎日ぶっ通しの練習だという合唱部へ、俺は昨日もらった真新しい楽譜と、弁当を鞄に詰めて音楽室に向かった。
    昨日は音楽室に入るのさえあんなに気が引けたのに、今日はすんなり入れて、それに後輩に挨拶だってされた。
    一日でこんなに変わるものなんだろうか。

    今日は卒業した元合唱部の先輩が来るとかで部員、特に3年生はウキウキ落ち着きがなかった。nコンの練習の進み具合を見に来るらしい。
    高校でもnコンはあって、同時に同じ夢へと向かって頑張っていると思うと、何も知らない俺までなんとなく親近感が湧いた。
    「カズは知らない先輩ばっかりだと思うけど、1年生や2年生もおんなじだから。」
    大介が気を使ってそう言った。1,2年生が知らないということは3年生が1年生の頃の3年生の先輩、つまり今は高校2年生ということだ。
    「あ、でもあれよね、元バスケ部の先輩も一人くるわ。」
    「うん、翼先輩でしょ?かっこいくて、背が高い人・・・。」
    陽子と鈴が言った。
    「え、翼先輩?」
    翼先輩は俺の尊敬していた人だった。キャプテンでかっこよくて、女の子にモテた。
    翼先輩も、合唱部の助っ人してたのか、知らない間に。
    「翼先輩、めっちゃ歌うまいんだぜ。先輩がいたから俺らも本番で自信持って歌えたんだ。現合唱部より頼りになる人だったよ。」
    大介が自分のことを自慢するようにそう言った。

    卒業生が来る前に、鈴がひとりでソロの部分を歌った。
    鈴の声は大人っぽく豊かで、でも軽々しくて、ポーンと上へ飛んでいった。
  • 8 こっこ id:ztzp9yL0

    2012-12-13(木) 19:47:55 [削除依頼]

              ***
    卒業生が来た。
    思ったより多かった。俺は知らない先輩ばかりだったが、その中に一人だけ、懐かしい、慣れている顔があった。
    「翼先輩!」
    俺は見た途端、反射的に名前を呼んだ。
    振り向いた翼先輩は、「おぉ」と大げさにリアクションして、一瞬不思議そうな顔をした。でもすぐどういうことかわかったようで、子供っぽいいつもの笑顔になった。
    「和!久しぶりだなぁ」
    翼先輩は俺のことを和と呼ぶ。って、みんなと同じなのだが、翼先輩の呼び方は、「カズ」ではなく「和」だ。
    なんにも変わっていなかった。
    しっかりセットされた今風のちょっと茶色がかった髪、でもなぜだかチャラいとは思わない。顎にだけある小さなニキビ、乾燥していない唇、大きい手、目力を感じる強い瞳、顔のわりに大きい黒縁メガネ・・・
    翼先輩は、かっこいい。
    イケメンだ。きっと誰もがそう言う。誰かが「カッコ悪い」と言ったとしても、それは嫌み以外のなんでもない。
    「俺、合唱部の助っ人なんです。」
    「おぉ、俺と一緒だなぁ!お前、歌好きだったもんなぁ。頑張れよ」
    翼先輩は語尾を伸ばすように話す。ゆったりしていて、顔にあわない喋り方が、俺は好きだ。ここなら真似できるかもって、顔が出来上がっている分ホッとする。

    ふと合唱部の集団に目をやると、なんだかすごく盛り上がっていた。
    「陽子部長なんだってぇ?すっごい、頑張ってー!」
    女子らしい、高いこえが聞こえた。
    「はい!頑張ります!先輩たちも時々来て下さいねー」
    陽子が笑顔でぴょんぴょん跳ねながらそう言った。ショートカットの髪が、ふわっと空中に浮かび上がる。
    俺は、陽子が好きだ。
    友達とかじゃなくて、恋愛として好きだ。

    きゃー、頑張って、と拍手と歓声が聞こえてくる陽子と先輩の輪から一歩下がって微笑んでいるのは、鈴。
    鈴はしんなりと優しい顔で笑っていた。口角が左右均等に上がっていて、きれいな笑顔だった。
    でも、鈴はそんな笑い方はしない。
    もっと思いっきり口を開けて、本当に楽しいという風に笑う。
    楽しいよ、とでもいうふうに笑っている鈴は、本当は無理をしている。鈴は楽しくないとか、嫌いとか、絶対言わない人だけど、隠すのが下手だ。
    俺が一番よく見てきた。幼馴染だから。
    おまけに、俺もバスケ部の副キャプテンだったから。
    だからよくわかる、いまの鈴の気持ち。本当は自分も見て欲しい、頑張ってねって言って欲しい。でも「副」だからって、本当のリーダーから一歩下がる。
    「副」は、「副」だから。
    本当のキャプテンより大変じゃないから、本当の部長より負担がかからないから。
    「副」は、「本物」を支えていかなければならないから。
    なんとなく寂しい気持ちに、なるんだよな。本当はみんなわかっているのに、自分が一人取り残された気分になる。なんでもできないように感じる。だから目立っちゃいけないと思う。
    でも、投げ出さないで欲しい。
    陽子とふたりで、頑張って欲しい。
    二人で、一緒に。

    鈴は後輩に楽譜を配っていた。
  • 9 凛☆ id:WO4DDQy1

    2012-12-13(木) 21:31:02 [削除依頼]
    面白いね。これからも読ませてもらいます。
  • 10 こっこ id:DfOPRoz/

    2012-12-14(金) 15:51:49 [削除依頼]
    凛☆さん
    ありがとうっ!!
  • 11 こっこ id:DfOPRoz/

    2012-12-14(金) 16:09:46 [削除依頼]

    副部長
              ***
    私は副部長だ。
    山本先生から「スズ」と名前を呼ばれたときは本当にびっくりした。あの時の先生の笑顔、ちょっと不安そうな顔は忘れない。
    わかっている。
    私は副部長にあわない人間だ。

    明るさやユーモアさは陽子にも勝つ自信がある。でも、私は思ったことを言えない。人を怖がって顔色を伺う。陽子みたいに、嫌だとか、いいねとか、感動したとか、涙を流して悲しんだり、喜んだりすることが私にはできない。
    そんな陽子をひっぱていける自信もないし、もちろん合唱部をまとめられる自信だって全くない。

    私は合唱部に行くまでの、音楽室に行くまでの道が好きだ。
    「道」といっても一階の教室から二階の端っこの音楽室に行くだけなのだが。掃除中の生徒や雑談している生徒、先生、通り過ぎる人みんな愛おしくなる。階段を一段とばしで駆け上がる足は、驚く程軽い。
    これからたくさん歌えると思うと言いようのない嬉しさが私を襲う。思いっきりドアを開ければ、一緒に歌う仲間が笑って迎えてくれる。
    私は合唱部が好きだ。
    大好きだ。
    私は一生忘れないと思う。たとえ卒業して高校で合唱をしないとしても、大人になって赤ちゃんが生まれたとしても、私は今一緒に歌ってくれている仲間、いろんなことを教えてくれた先輩、先生、そしてこの音楽室からの風景。
    絶対忘れない。
  • 12 こっこ id:d62FdOB.

    2012-12-15(土) 07:57:10 [削除依頼]

              ***
    助っ人さんとして、カズが合唱部にやってきた。というか、気がついたらいた。
    カズはクラスでも一番目立つグループに属していて、その中でも髪の毛がクルクルセットされて、背が高くて断然かっこいい。幼馴染として、自慢だ。
    そんなカズが、私は好きだ。
    いくらカズでも、いきなり知らない部活に入ったらやっぱり無口になるんだなーと思うが、やっぱり存在だけはこの合唱部にいるとなおさら目立ちすぎている。
    と、私はこんなこと思いに来たわけじゃない。今日はコンサートに行くから急いで帰らないといけないんだ。
    なんて、コンサートで部活休むなんて、副部長として失格か、なんて思いながらも、1ヶ月前からずっと楽しみにしていたんだ、行かないわけにはいかない。
    明日は土曜日だし、誰よりも早く来て部活の準備をして課題曲の練習をしておこう。
    私は陽子とカズにバイバイ、と手を振って、音楽室を出た。
    外に出て、やっぱり気になるものなんだなーと思いながら、陽子頑張れ、と心の中で応援しながら鼻をすすった。
    夏カゼかなー
  • 13 こっこ id:d62FdOB.

    2012-12-15(土) 20:34:13 [削除依頼]

              ***
    家から中学校までの道のりは気持ちがいい。
    昨日のコンサートで夜遅くまで起きてたうえ、昨日のペナルティとして朝早くに家を出た。
    あーまだ眠い。
    でも、私は朝の光を浴びながら大好きな道を歩く。それだけで今日1日嬉しいことばかりがおとずれるような気がする。
    普段は佳奈と一緒に来ていて、お喋りで景色をじっくりと見ないけど、ひとりでゆっくり歩くのもたまにはいいものだ。
    雲はなかった。暑いはずなのにそらは清々しくて、汗が滲んでも心はスースーしていた。
    住宅地を抜けて、赤い屋根のかわいい家を曲がってガソリンスタンドを通り過ぎる。ガソリンスタンドからは、大きな音量の音楽が流れる。たいてい知らない曲だけど。
    その先は川原で、下からは川を見下ろせるサイクルロードを歩く。夏になると小学生がここで遊ぶ。
    私は全力疾走してみた。体はいつも以上に軽々しく、風になったみたいだった。
    長めの髪がふわふわと上がる。走り続けながら音楽室までいけそうな気分だった。
    明日も早く来てみようかなー、今日は絶対良い日になる。

    音楽室の扉を開ける。私以外の部活に来ている人はまだいなく、ギギギ・・・という扉を開ける音がろうかに響いた。
    音楽室にはやっぱり誰もいなかった。いつも早い陽子も、さすがにこんなに早くはこないようだ。
    7時半。ちょっと早すぎたかな。部活は9時半から。まだ2時間もある。
    さあ、何しようか。
    とりあえず、音楽室の窓を全部開けた。朝の風はまだ涼しくて、でもこれから、「暑くなるからなー」と、警告しているみたいだった。
    それから今日は先輩がたくさん来るみたいだから、楽譜を用意しておく。
    久しぶりだな、部長だったさくら先輩も来るし、イケメンで有名だったバスケ部の翼先輩も来る。
    私たちの歌、褒めてくれるかなぁ、まだそんなに上達してないか。
    課題曲の楽譜をコピーして作ったホッチキスどめの楽譜は折り目のないピカピカの状態で積み重ねられていた。真ん中がへこんでいて、「新しい」ということを知らせている。私はそれをピアノの上まで運んだ。ついでに自由曲の楽譜も運んだ。
    バランスを崩して、バラバラ、と、楽譜が床に散らばる。あーあ、と思いながら一つ一つ拾う。
    それからも、メトロノームの準備、楽譜台の準備、床が汚かったので掃除機もかけた。いつもはみんなでしている準備も、一人でやると汗が滲んで疲れるものだ。
    それからピアノで自由曲の音取りをした。私は音程をとるのは得意ではない。自分で歌ってピアノで音を鳴らしてみると全然違う音で、自分でも悲しくなってくる。同じパートの仲間にも迷惑をかけているのではないか、と思えてくる。
    特に♯や♭がついている音は苦手だ。半音、ってどれくらいだかわからない。
    そうこうしているうちに、だんだん部員たちがパラパラと集まってきた。
    最初に来たのはやっぱり陽子で、「すっごい!全部揃ってるね!」と、感動してくれた。陽子は頑張った人を本気で褒めてくれるから、好きだ。
    カズも来た。大介と一緒だった。二人はいまだに仲が良くて、クラスが違ってもなんでも相談しあえる親友だ。
    合唱部は全部で42人。ほかの部よりもかなり多い。
    今日も厳しくて暑くて、楽しい練習が始まる。
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