白痴1コメント

1 名無 id:u5FpnsD0

2012-12-06(木) 16:17:14 [削除依頼]
 山路の急な勾配に気がつかなかった。
 疲れきり寂びた木々やらイエローが腐って臙脂になった空だとかがダリの絵みたいに融解したチーズそのもので、
 それが180℃に俄か反転したものだから心臓が粉砕したスーパーボール如く跳ね上がり、
 それっきり時間が止まった。
 重力に逆らえない定め人間は、
 ホモサピエンスは、
 動物は、
 落ちる。
 無感覚に遊泳するクラゲの気持ち。
 一転、
 もはや誰とも獣とも分からぬ何かの咆哮が耳を劈いて、
 伽藍堂だった半透明に、
 規定値を凌駕したアドレナリンが爆ぜた。
 800匹もの蜂が全身を16000回以上刺し貫いた。
 寸裂マゼンダの裂傷印刷機は際限なく知覚を支配する。
 観念に漂う意識は鳥となり滑空しようとするのだが、
 生憎風は生温く粘り気じみていて、
 鳥は涙に似た熱を伴う雨となり地に降り注ぐ。
 生きている−
 油然としたリフレインと結果への失望と前途に対する生という怠惰。
 先刻目にした、
 長命な夕立による濁流が浮かぶ。
 あの雨の前には、
 清流らしき中で黒く太ったメダカの様な群れが嬉優曲の如く柔らかに泳いでいた。山野に囲まれたそこは青青としていて、
 瑞々しい透明に輪郭の線を引いた鮮明な場所だった。
 蝉の蠢動にも似た金切り声が煩く、
 それがいっそう目に、
 感覚に焼きついた。
 瞬間、
 驟雨が雪崩を思わせる力強さで降りかかる、
 知覚を疑った−
 あまりにそれは殺意に満ちていたのだ。
 自然に脅威を覚え、
 同時にこれは何か人為的なものではないかとも思った。
 それ程に強襲な雨だった。

 波が揺れては離れの鈍痛が襲い掛かる。
 −擦過では済ませない、
 そんな幻聴が聞こえてきそうである。
 自律神経系が狂ったときに似た脳震が絶え間ない。
 見るからに擦過傷以上の傷が刻み込まれているのにもかかわらず、
 出血は思いの外、
 微量に留まっている。
 痛みは感覚を無理やりにでも研ぎ澄ます。
 そうであるのに、
 深い霧が迫る如く、
 睡魔が神経を侵食して止まない。
 精神の渇望に耐えかねて、
 瞼を落とした。
 遍く走馬灯は混沌して、
 カンディンスキーの初期衝動。
 意識は底がなく、
 何処までも沈んでいった。

 仄暗い意識、
 誰かに担がれている。
 微かに、
 水に似た母乳と蜂蜜を混ぜ合わせた匂いが嗅覚を漂う。
 長い黒髪が顔面に纏わりついていた。
 不規則な振動は在りし日の子守唄を奏でた。
 先刻からの霧雨も止んで、
 蒼然たる深緑に包まれていく。

 澄明に冴えた高音の反復。
 囀るその鳥はフリッカーに瞬く。
 朝が来ることの証明。
 夜明け間もない空、
 未だ青白いはずだ。
 瞼開く−
 まず、
 あの女だ。
 埃漂う陰々たる空気。
 首を廻し右腕を眺めると、
 包帯で何層か巻かれていた。
 如何やらあの女か何者かが処置を施してくれたようだ。
 辺りを見回すと、
 箪笥が老人の如く佇んでいた。
このスレには、まだレスがありません
コメントを投稿する
名前必須

投稿内容必須

残り文字

投稿前の確認事項
  • 掲示板ガイドを守っていますか?
  • 個人特定できるような内容ではありませんか?
  • 他人を不快にさせる内容ではありませんか?

このスレッドの更新通知を受け取ろう!

ログインしてお気に入りに登録すると、
このスレッドの更新通知が受け取れます。

最近作られた掲示板

お気に入り更新履歴設定

お気に入りはありません

閲覧履歴

  • 最近見たスレッドはありません

キャスフィへのご意見・ご感想

貴重なご意見
ありがとうございました!

今後ともキャスフィを
よろしくお願い申し上げます。

※こちらから削除依頼は受け付けておりません。ご了承ください。もし依頼された場合、こちらからの削除対応はいたしかねます。
※また大変恐縮ではございますが、個々のご意見にお返事できないことを予めご了承ください。

ログイン

会員登録するとお気に入りに登録したスレッドの更新通知をメールで受け取ることができます。

お気に入り更新履歴設定

お気に入りはありません
閲覧履歴
  • 最近見たスレッドはありません