人類生存禁止令-Change The world-31コメント

1 希罪 id:eCXP6H1/

2012-12-02(日) 08:36:54 [削除依頼]
-Prolog- 「本日、久保総理が《人類生存禁止令》を発表しました」 2150年4月1日、世界は混乱の渦に巻き込まれた。 こうしている内にも、一人、また一人と命の灯が消えていく……。 「君しかいないんだ!」 世界を託された青年。 「行かないで――」 最愛のひとを送る少女。 「仕方ないんだ……」 心の闇に浸食された総理。 ? ≪もう、何が正しいか分からないよ》 >2 Greeting-挨拶- >3?The Characters-登場人物-
  • 12 希罪 id:cFdpx0z1

    2012-12-04(火) 22:06:22 [削除依頼]
    #08

    「世間で、人類生存禁止令は?
    嘘ではないかと噂されているようです」?

    少し息を切らしながら片山は言った。

    「何だとぉ? 私は本気だ。?
    権力の無い者の足掻きだろうな。 わっはっはっ!! 片山、今日の18時に会見を開け。 真実を思いしらせてやるわ」?


    久保は地獄の閻魔のような極悪な笑顔を浮かべ、書類を手にして仕事へと戻る。?片山はその表情に圧巻され、会見の準備を始めた。?
    片山が部屋を後にすることを確認すると、小さく溜息をした。
    そして、唇を噛み……。?

    「全てあいつの、あいつの……」?

    と呟く。?


    窓から入ってきた風は、?
    カーテンを揺らし、紙をめくり、久保の心に深く染みた。
  • 13 希罪 id:cFdpx0z1

    2012-12-04(火) 22:10:48 [削除依頼]

    #09


    そして、18時になった。
    真っ赤に染まった夕日が街を温暖な色に塗り潰し、少しずつだが薄暗さも窺えるようになった。町の電気屋のテレビやビルについている大画面も、会見の様子を映している。
    翔平はある業者へ上司と営業へと向かっている最中だった。

    「あー、やってるなぁ……」

    上司は電化店のテレビのほうを眩しそうに見ながら言った。

    「何がですか?」

    「何がって会見だよ。総理があの令について話すんだとよ」

    いささか気になったのか、そちらのほうから目を離していない。

    「へー」

    翔平はあまり興味がなさそうに軽く流す。

    「ちょっと見てくか?」

    上司は指を電化店のほうに向けながら翔平を誘った。

    「でも仕事は?」

    「大丈夫だろ」

    本当に大丈夫だろうかと思いつつも、仕事の休憩時間だと思えば喜ばしいと翔平は考えて、上司の提案に賛同する。そこで二人は近くの電気屋へ立ち寄った。見にきたのは、二人だけではない。

    買い物帰りの主婦や
    仕事中のサラリーマン。
    元気の有り余った子供等、色んな人が蜜に集ってくる蟻のように群がっている。
  • 14 まな id:hGru5py.

    2012-12-04(火) 22:11:22 [削除依頼]
    お!?
  • 15 希罪 id:cFdpx0z1

    2012-12-04(火) 22:11:38 [削除依頼]
    #10

    「おぉ! 始まったぞ」

    そう誰かが叫んだ。
    翔平は背伸びをして必死に見ようとするが、逆光で周りにそびえ立つビルしか見えない。それに加え、画面の中では記者達のカメララッシュが連鎖し、フラッシュで総理の顔は全く分からない。
    しかし、その歩き方はいかにも堂々としていた。
    マイクの前に立つと、冷たく凍り付いた目つきで、記者達を一通り見渡す。

    『全国民、いや世界中の皆さん。日本国内閣総理大臣の久保晶です。 この度、人類生存禁止令につきましてお騒がせ申し訳ございません』

    久保は本当に申し訳なさそうに頭を下げた。しかし頭を上げた途端、豹変した。

    『私は本気です』

    一文字一文字を強調しながら、しっかりとした口調で言った。

    『総理、この条例によりメリットはあるのでしょうか』

    最前列に構えていた記者がマイクを久保に向けて問う。すると、次々に記者はマイクを構えたり、メモを取り出したりした。

    『この令状によるメリットはただ一つ! この、崩れきった生態系を戻すのです。人間は今まで、いろいろな事をしてきました。 森林伐採、大気汚染。こんなもの、まだまだひとつまみです。そこで、人類がいなくなれば動物は生き返り、植物も伸び伸びと暮らすことができるのです』

    久保は冷淡に、だが熱く話した。あまりの熱弁に拍手を贈る者が現れた。それはだんだん広がる。
    しかし、翔平はその中にははいっていない。未だ、納得がいないのだ。?
    そこである記者が質問をした。

    『総理! 総理自身はこの令状にて、命を絶たれるおつもりですか?』?

    それは、誰もが聞きたかったこと。

    『私は、一番最後に命を断ちます。軍を引き連れ、一般人を送り、軍隊を送り、それから最後に……』

    と、言い終わらないうちに記者の1人が声を張り上げた。


    『そんなの卑怯だ! 私はまだ死にたくない?』


    周りはビクリと驚くが、総理は慌てる様子はなく、警備員と目を合わせると「殺れ」と言わんばかりに首を振る。
    指示を受けた警備員はなにやら無線で連絡をしてから、数人でその記者を会場からつまみ出した。
    他の記者はうろたえはじめる。
    総理は一度、大きく溜息を吐いてから言った。

    「本気ということが……お分かりですね?」
  • 16 希罪 id:cFdpx0z1

    2012-12-04(火) 22:12:47 [削除依頼]
    >14 ありがとうございます。 感動……として捉えればいいのでしょうか(´・ω・`;)
  • 17 ゚+。:.゚*harin*゚+。:.゚(ハリン) id:j1a3XxH1

    2012-12-04(火) 22:17:13 [削除依頼]
    小説書くの上手ですね!
    面白かったし!
    頑張ってください!
  • 18 希罪 id:cFdpx0z1

    2012-12-04(火) 22:23:52 [削除依頼]
    #11

    こうして5分弱という、余りにも短すぎる会見はあまりにもあっけなく終わった。?正直、総理が自分の意見を述べたのは1分足らずだ。4分は記者との質疑応答。?
    そんな、重大感の欠けた総理に街からは非難が飛び始める。

    「はぁ? ふっざけんなよ、あのバカ総理!」

    「最大級の自己中ね!!」

    360度。どこに耳を傾けてもそんな話ばかりだ。

    「久保総理、普通のやつだこ思ってたんだかなぁ……。なぁ千葉。そう思わないか?」

    翔平は急にふられて気がつく。

    「あぁ、そうっすね。最低じゃないすか?」


    結構、適当な返事をした。
    また、クビにならないかが不安になったが、上司はそんなこと気にしてなさそうで安心する。
  • 19 希罪 id:cFdpx0z1

    2012-12-04(火) 22:24:59 [削除依頼]
    #12

    フラッシュが光り、輝く笑顔を振りまく坂口美樹。次々と違うポーズを決め、カメラに視線を送る。

    「mimiちゃん! 一旦休憩よ」

    「ありがとうございました」

    明るく振舞うその姿は太陽そのものだ。
    しかし、彼女には本性がある。いわゆる裏の顔というやつだ。
    折りたたみ式のキャンプで使うような椅子が美樹の休憩時用に置いてあった。それを見るなり

    「はぁ、全く……。あたしにこんな椅子なんて、あたしを何だと思ってんだかっ」

    と、批評の嵐だ。これを見ると、美樹は翔平の様なプライドの高いキレ症に見える。
    しかし美樹は意地をはったのか、椅子には座らずその場にしゃがみこんだ。

    「mimiさんは素直じゃないですねぇ。少しは甘えればいいのに」

    横にいたマネージャーは「またか」というように、クスッと少し笑った。
  • 20 希罪 id:cFdpx0z1

    2012-12-04(火) 22:25:26 [削除依頼]
    >17 ありがとうございます(*/>∀<)/
  • 21 希罪 id:cFdpx0z1

    2012-12-04(火) 22:26:09 [削除依頼]
    #12

    フラッシュが光り、輝く笑顔を振りまく坂口美樹。次々と違うポーズを決め、カメラに視線を送る。

    「mimiちゃん! 一旦休憩よ」

    「ありがとうございました」

    明るく振舞うその姿は太陽そのものだ。
    しかし、彼女には本性がある。いわゆる裏の顔というやつだ。
    折りたたみ式のキャンプで使うような椅子が美樹の休憩時用に置いてあった。それを見るなり

    「はぁ、全く……。あたしにこんな椅子なんて、あたしを何だと思ってんだかっ」

    と、批評の嵐だ。これを見ると、美樹は翔平の様なプライドの高いキレ症に見える。
    しかし美樹は意地をはったのか、椅子には座らずその場にしゃがみこんだ。

    「mimiさんは素直じゃないですねぇ。少しは甘えればいいのに」

    横にいたマネージャーは「またか」というように、クスッと少し笑った。
  • 22 希罪 id:cFdpx0z1

    2012-12-04(火) 22:28:25 [削除依頼]
    #13

    「素直とかじゃないの!」

    と、美樹は頬を膨らませる。

    「mimiさんは可愛いですね」

    マネージャーは美樹を子供のように扱う。

    「なっ、何がよ!」

    と言うと、耳まで赤くなった。そう。美樹の裏とは、強がっていれるが、素直になれない事。
    ?しかし、裏というか、美樹と一回でも話せば、わかる事だが……。
    その、男なら「守りたい」と思うような性格のおかげか去年の「一度は抱きたい有名人」で一位をとっている。本人は「そんな賞いらない」と投げやりだったらしいが。

    「mimiちゃーん。撮影、開始するよ」

    そう一言言われたら、美樹はモデルmimiに変わる。
    また、mimiスマイルを振りまき、フラッシュを身体全体で浴びる。
  • 23 希罪 id:cFdpx0z1

    2012-12-04(火) 22:29:36 [削除依頼]
    #14

    「mimiちゃん、かわいいねぇ」

    カメラマンが言葉のテクニックで、 モデルを惹きつける。

    「カメラマンさんが上手なんですよぉ」

    と、美樹はらしくお世辞を言う。そうしたほうが、好感度は上がり新たな仕事が転がりこんでくるのが分かっていたからだ。

    「じゃあ次は、今話題の人類生存禁止令で、彼氏が死んじゃったときの顔でいける?」

    美樹は、初めてきく単語が多すぎて、戸惑いながらとりあえず好きな人と別れたときの感情になりきった。

    「いいねぇ!」

    「あ、ありがとうございます」

    そういうと、mimiウィンクを決めて、スタジオを桃色に染めた。
    撮影が終わると「お疲れ様でした」の一言を残して、さっさとスタジオをでる。

    「mimiさん、お疲れ様です。次は、TBEでバライティの収録ですよ。タクシーとってあるんで、先行っててください」

    「そー。分かった。で、カメラマンが言ってたけど、人類生存禁止令って何なの?」


    マネージャーは驚く。あんなに世間を騒がせているのに、知らないのか! と。


    「……mimiさんは忙しいでしょうから、テレビを見てないんですね。大変なんですよ? 簡潔にいえば、『5月までに死ね』という令状を総理が発表したんですよ」

    「はぁ? 意味分からない。 そんな権利あんの? なんで、死ななきゃいけないのよ!」

    あまりの唐突さに不安より怒りの感情が先に出た。

    「私もよく分かりませんが、生態系がどうたらこうたら……」

    「何よそれ!」

    「いや……。私にキレられても」

    と、マネージャーは美樹の方を向くと美樹の目は涙が溢れそうになっていた。

    「えっ! あの、mimiさん?」


    マネージャーはどうしたらいいか分からず、あたふたしている。

    「あの……。私はどうしたら?」

    「さっさっと行きなさいよ!」

    美樹は上目遣いでかよわい子犬のように言った。

    「はい……」

    マネージャーは、この場に美樹を置いていってよいのかを?
    迷った。しかし、口答えするとまた、怒鳴られるのは分かっていたのでその場を去る。

    「何よ……。人類生存禁止令って!! ?翔平……」

    不意に出てきたのは「翔平」の名。
    美樹は全ての仕事を終わらし、終電ギリギリで電車に乗り込む。

    「おぉーい、そこの若い姉ぇちゃんや。 一杯飲みいくかぁ?」

    明らかに酔っぱらいのサラリーマンに話しかけられ、その上、肩も組まれた。

    「やめてくださいっ!」

    美樹はすぐさま、腕を振り払い、 違う両へと移動した。
    一息ついて座席に座る。?
    後ろを振り返って外を見るとネオンに彩られて、輝く街が映っていた。?窓から輝く街を見ていると?窓に自分の顔まで映る。?


    その疲れきった顔に癒しを求めて、?君の名を小声で呟くーー。

    「翔平……」
  • 24 鈴美 id:hpjYvxR/

    2012-12-04(火) 22:36:09 [削除依頼]
    小説評価に参りました、すずみです。

    良い点▼
    ?発想が面白い
    人類生存禁止令、今までとは違うジャンルですね。
    珍しい設定に興味がわきました。
    ?文章力の高さ
    総理大臣の本気さなどが見事に表現されています。

    悪い点▼
    ?!や?は半角になおすのが普通です。

    【辛口】Aランク

    感想▼
    中一である私がこんな凄い小説に評価などして良いのか、と戸惑いました(汗;
    それにしても、続きがとても気になります!
    悪い点がひとつしか見つかりませんでした><
    私もまだまだ未熟なので、このような小説をお手本にして
    もっと完成度の高い小説を作り上げていけたらな、と思います。
    よろしければ、私の小説の評価をして頂きたいのですが、
    やっぱり駄目ですかね?書いてるのはキャスフィじゃありませんが……。
    あ、いいんです!無理ならえんりょなく言ってください!
    では、これからも愛読させていただきたいと思います!
    更新、がんばってください^^,


    ≫中一女子が“本気”で小説評価致します!! より。
    評価依頼、ありがとうございました。
    この評価が、あなたの小説にとってプラスになることを祈っています。
  • 25 希罪 id:HKKasGL/

    2012-12-05(水) 06:22:07 [削除依頼]
    >24 ありがとうございました∪・ω・∪ 詳しくは準備板のほうで……。
  • 26 希罪 id:HKKasGL/

    2012-12-05(水) 06:33:41 [削除依頼]
    #15 〜2148年 June 15th〜?

    それは梅雨まっしぐらの昼下がり。
    雨は未だ強く降り続く。 湿度は高く、洗濯物など一日中、日干ししても乾かない。その上、6月にしては高温だったため人々は最悪と言える天候に見舞われていた。?
    22歳の翔平は、社会人になって1年目。早くも浪人暮らしだった。

    毎日毎日変わる仕事。?
    毎日毎日変わる作業。?
    毎日毎日変わる上司。?

    そんな新しい生き方に快楽さえ感じていた。
    この日は、駅前でのテッシュ配り。 なんとも地味な仕事で、その上、この悪天候。翔平は憂鬱の他、何も感じていなかった。

    「宜しくお願いしまーす」

    頭を下げながら、延々と壊れたラジのようにその一言を繰り返す。最初は、笑顔を通行人に振る舞って、沢山のテッシュが手元から無くなったが30分もすれば、

    靴に雨は浸みーー。?
    スーツは濡れーー。?
    髪のワックスは落ちーー。?


    見た目からして、ずぼらな姿になってしまった。?
    そして、翔平は吹っ切れて……。

    「んだよ! クソったれ!!」?

    と叫ぶ。山にでも居たら山彦が軽くできてしまう音量だ。しかし、翔平の声が耳に入ったのは、翔平の半径5メートル以内に居た人が少し迷惑そうに視線を向けるだけだった。
    それだけ、雨がアスファルトを叩く音は大きかったのだ。
  • 27 希罪 id:HKKasGL/

    2012-12-05(水) 06:36:34 [削除依頼]
    #16

    そこに現れたのは、最近できたらしい駅前のアイドルライブステージ「Pan Pan」の、この曇天でもよく映える真っピンク看板を持っている、ロリータファッションの女の子だった。
    その子は、翔平に向き合うように道の端に立ち、

    「宜しくお願いします」

    と言い続けている。
    その水簿らしい姿は、今の翔平を写したようだった。
    彼女はあきらか、アイドルという雰囲気ではない。下手な作り笑いで、?たまに溜息をついて。翔平は見てられなくなる。

    「あの……」

    小声で話しかけた。?
    もちろん、雨に掻き消されて聞こえるはずはない。
    次はほんの少し、大きくだして。

    「あの……!」

    すると、彼女はこちらに振り向き、首をかしげ「私?」と言わんばかりに自分を指差した。

    「あぁ、あんただ。あんた、アイドルかなんか知らねぇが、ものすげぇ暗い顔してる。そんなんじゃ、客の一人も来ねぇぞ」

    翔平は向かい側の道に精一杯な声で話した。?これなら彼女に、普段の話し声くらいには聞こえるだろう。
    すると、彼女は持っていた看板を手放す。カランと軽い音がして看板が地面につく。そして上を向き、雨を顔で受け止めた。
    しばらくすると、顔の位置を戻した。

    「何してたん……だ?」

    翔平が話しかけると彼女は翔平の顔をじっと 見つめた。

    「だから、何してっ?……」

    すると、彼女は首を一回転させて翔平の方へ向かってきた。通行人がいるというのに避けることもせず、ただただ流れに流されないまま、川を渡ってきたように。
    彼女は翔平の前までやってくると、彼女はなめたような顔をして翔平の足先から頭の上まで、汚らわしいものを眺めるように見回した。じっくりじっくり見終わると、?俯き小さく舌打ちをした。

    「なんだよ……」

    「あんたっ! なめないで!」


    彼女はいきなり怒鳴りだした。翔平が「はぁ」と言おうとしたとき、


    「こっちにも色々事情があるんだから……」


    と今度は急に泣き出した。
    いや、雨で顔が濡れているのかもしれない。?しかし彼女の目は充血し真っ赤になっていたことが何よりの証拠となっていた。
  • 28 希罪 id:HKKasGL/

    2012-12-05(水) 06:38:21 [削除依頼]
    #17

    「はぁ? 何泣いてんだよ。勝手に怒って、勝手泣いて……。 意味分かんねぇ。あんたの事情なんて俺は知ったこっちゃない」


    翔平は声を荒げた。
    すると、周りにいた通行人達が、こちらの方をジロジロと見ている。向こうからしたら、これは奇妙な組み合わせに見えるのだろう。

    「そーですか。別にいいですよ。ちっさいちっさいうちの事務所では、あたし達は世間から見て、オタク向けのアイドル。萌え萌えぇー。とかやってそうなイメージなんでしょ!」

    彼女も彼女で生意気に言い返してくる。

    「あぁ、そうかもな。いや、そうだな。確かにあんたは俺からすれば、腐女子にしか見えん」


    「ほら……」


    彼女はさらに落ち込んでいく。
    雨はまだ、強まるばかり。

    「だけどな」

    「……何?」
  • 29 希罪 id:/B/fBxS1

    2012-12-06(木) 06:43:05 [削除依頼]
    #18

    「あんたは立派な社会人だ。俺は商売をする上でおかしい思ったから言っただけだ」

    翔平は言い切ったあと、自分でも「良いこといった」と達成感を感じた。そのときの顔はこの上ないどや顔だったに違いない。

    「あたしのこと、軽蔑しないの?」

    「軽蔑する意味があるか?」


    すると彼女は、弱った子犬のように体を震わせた。

    「なんだよ、まだ怒って……」?

    翔平が言い終わる前に、彼女は翔平の体に飛び込んだ。

    「ちょっ、あんた。何してんだっ!」

    翔平は照れを隠しながら、ぎこちなく怒鳴る。

    「……初めてよ。あたしが売れないアイドルをやってるってだけで、今まで関わった男たちは私を避けてた。初めてなんだよ。こんなことを言われたのが……」

    そのあまりにか弱く、か細い言葉に翔平は胸を打たれた。
    そして翔平は彼女を……美樹を、優しく包み込んだ。


    貴方に惹かれたのは何故ですか??
    そんなの答えられない。分からない。
    1=1なのは理由がないようにーー。
  • 30 希罪 id:/B/fBxS1

    2012-12-06(木) 06:44:26 [削除依頼]

    #19 April 3

    「寝違え……た」

    翔平は昨日変な態勢で寝てしまったのか、 寝違え首が無償に痛かった。
    翔平はいつもの順で朝の仕事を終わらし、仕事へ行くまで一息つこうとテレビを付ける。やはり、あの令状が取り上げられている。それも新しい条件が足されたようだ。

    「んだよ、また? かったりぃなぁ」


    と、軽い気持ちで見ていた翔平だが次第に事の大事さに気付く。
    それは、とんでもないものだった。

    『重大発表です。総理が新たな条件を足しました! 重大発表です。ではVTRをどうぞ』?


    いつもより増して、真剣かつ必至にキャスターは進行する。VTRは総理の会見のようだった。総理は相変わらず平然に現れる。?
    何事もないかのように現れる。

    『全世界の皆さん。突然ですが、人類生存禁止令について変更がございます』

    そして、総理が話し終わると記者達がざわめきはじめる。

    『久保総理、同じ人類として命の尊さを感じないんですか?』


    一人の記者が総理に質問する。少し、怒鳴り混じった声だった。それでも総理は冷静に答える。

    『私は確かに人殺しになるかもしれません。 しかし、人類の何倍もの生命が人類のせいで危機的状況にあります。そう思えば、尊さと言うも感じなくなりませんでしょうか』

    あまりにさらっと言い放つ記者達はついに怒りが抑えられなくなり、総理に飛びかかる。しかし、数人のボディーガードがおりあっさりと一人残らず会場を後にした。後程の行き先は言うまでもない。
    翔平は……いや、全世界の人々が、この追加条令をみて凍りつく。生きた心地がしない。いつ、何時殺されるかもしれない恐怖で胸がいっぱいになった。
    犯罪法律が免罪されたとなると、テロだって安易にできてしまう。 恨みをかっていた者なら、すぐに殺されるだろう。
    こうして、?

    《平和》《安全》《安心》?

    が奪われた。

    本当の戦いはここからーー。


    そう思うと翔平は心が休まらなかった。
    唖然としていると携帯がなり響く。確かこの着信音は仕事関係のはずだ。翔平は急いで携帯を手にとり電話に出た。

    「はい、千葉です」

    『あー、千葉くん。良かった良かった。生きてて』


    聞き覚えのない声。
    もしかすると忘れているだけかもと、 翔平は必至に記憶の中から探す。?

    『あれ? もしかして私のこと、忘れてしまったかい?』?

    図星をつかれ、息が詰まる。

    『それはそうか。6年も経っているからなぁ……。 町田だよ町田。千葉くんが高3だったときの担任の』

    「町田っ、先……生。どうしたんすか?」

    町田と言う男は翔平の恩師だ。高3の頃、進路に困っていた翔平を正しい道へと導いてくれたのだ。結果、フリーターというなんとも恩知らずな仕事になってしまったが。
    たしか、翔平が卒業した頃は40歳程だったから、今は45ぐらいだろうか。細めの体型にメガネをかけたエリート中のエリート。しかし、生徒には親身に相談にのりかなり好感の高かった教師だ。

    『千葉くん! もう君しか残っていない!』

    「何がすか?」

    『実はだな……』

    町田だがいうには、町田は久保の高校の同級生で、今でも交流が続いている。しかし、ここ一ヶ月音信不通で連絡がとれなくなっていたそうだ。
    そうと思えば、人類生存禁止令を出した。?そこで、町田は久保の家へ押しかけると『仕方ないんだ。仕方ないんだ……』と嘆きだしたそうだ。それ以上のことは全く教えてくれず、家を追い出された。
    そこで真実を知るべく、町田は教え子たちに協力を申し出た。しかし、どの者も久保を恐れて協力してくれない。
    そして、最後の望みが翔平だと言うのだ。
  • 31 希罪 id:V9.DCcO0

    2012-12-07(金) 06:32:35 [削除依頼]
    #20

    「俺は遠慮しよ……か……」


    『千葉くん、頼むよ……。本当にもう君しか居ないんだ』


    町田は何度も何度も必至に翔平を推す。その必至さについに翔平が折れた。

    「分かりました分かりました。でも、やるからには徹底にやりますから」


    『ありがとう。その言葉しかでないよ』

    町田はその一言を何度も繰り返す。
    ふと、翔平は時計の針を見た。


    「やっべ、遅刻する! 先生、また後でな」


    翔平は町田が「わかった」と言う前に電話を切りポケットに突っ込むと猛ダッシュで家を飛び出した。

    久保は、書斎の椅子に腰掛け、のうのうと過ごしていた。文学書を開け、のどかに暮らしている。人類生存禁止令を出してから仕事はパタりと無くなった。?
    ノックが聞こえる。?

    「なんだ? 入れ」

    「失礼します」

    と、礼儀正しく入ってきたのは、片山だった。

    「総理、この数時間に届けられた死亡届が、昨日の3倍に到達いたしました」


    その知らせに喜び、笑みが零れる。
    あまりに醜悪な笑顔ーー。
    片山も思わず後ずさりする。


    「そうか、分かった。でていいぞ」


    片山は、少し引き気味に書斎を出て行く。

    「フフッ……。本当の賭けの始まりだな」

    そう言って、机の上にある一枚の写真に問いかけた。
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