【短編】マラカス劇場【SS】72コメント

1 マラカス日和 id:i-guX3syx.

2012-12-01(土) 20:40:06 [削除依頼]
 パンダが死んだという記事が朝刊の一面を飾っていた。
 俺はそれを見て、自分の命はパンダ以下だったという事実を悟らされた。そして不覚にもパンダを怨めしいと思ってしまったのだ。
 ああ、成仏できない理由がまた一つ増える。
  • 53 マラカス日和 id:i-O8wV7SH/

    2012-12-02(日) 22:14:45 [削除依頼]
     風が吹いた。

     砂ぼこりが目に入り、人々は視力を失う。
     盲人は三味線を引く。
     三味線には猫の皮が使われている。そのため猫の数が減る。
     すると鼠が増える。鼠は桶をかじる。

     桶屋が儲かる。
  • 54 マラカス日和 id:i-O8wV7SH/

    2012-12-02(日) 22:14:57 [削除依頼]
     風が吹いた。

     戸の隙間から入る風の音に目が覚める。
     どうやら窓を開けっ広げたまま寝てしまっていたようだ。もう夜中である。
     開いたままの窓を閉めようと、私は立ち上がる。関節が痛む。湿布を貼っておこう。
     おっと、私は湿布をきらしていた。かと言って薬局はもう開いてないな。
     しかもさっきから鼻水が止まらない。
     あ、私は風邪をひいてしまったのか。関節が痛むのも、そのせいだろう。
     となると、関節を冷やすのと頭を冷やすのに、冷たい布が欲しいな。枕元に桶を置いて寝よう。

     桶屋が儲かる。
  • 55 マラカス日和 id:i-O8wV7SH/

    2012-12-02(日) 22:15:09 [削除依頼]
     風が吹いた。

     こんなに風が強くては、バイクが進まない。
     しかも昨日の風邪はまだ全快していないのだ。正直、こんな状態でバイクに乗るのは不安である。
     しかし、これが私の仕事なのだ。仕方があるまい。
     私は出前寿司の配達のバイトをしていた。
     今は、お客様の食べ終わった容器を回収して店に持ち帰っている途中だ。
     と、危ない!
     ……ふー、バランスを崩しかけた。もう少しで転倒するところだったな。やはり病み上がりにこの風は危険だ。さっさと仕事を終わらせよう。
     って、ああ。まずい。バイクの荷台に乗せていた寿司の容器を落としてしまっていた。
     ちゃんと店に返さなければならないのに。
     仕方がないから新しい桶を買って許しを得よう。

     桶屋が儲かる。
  • 56 マラカス日和 id:i-O8wV7SH/

    2012-12-02(日) 22:15:24 [削除依頼]
     風が吹いた。

     こうも強風だと、せっかくのバーベキューが台無しだ。
     もう今日はお開きにするか。お開きと言っても、この川原でバーベキューをしているのは私しか居ないのだが。
     いや、私に友達が居ない訳ではない。バーベキューに誘う友達くらい、私にだって居る。
     ただ、皆が皆「遠慮しておく」の一点張りなだけなのだ。
     ……って、おっと、風に飛ばされて炭の燃えカスが飛んでいってしまった。
     言っている間に引火する。ヤバいヤバい。早く消さねば。
     幸いにも、風が強いせいで辺りには僕しか人が居ない。早く消してしまえば大事にはならないだろう。
     私は水を汲むため、傍を流れる川にバケツを沈めた。
     その時、運悪く私の足が滑る。私は頭から川に転落した。情けない声をあげながら、川辺に這い上がる。
     くそ、さっさと消火せねばならぬのに。
     びしょ濡れになりながらも、私は汲んできた水で火を消した。
     ふう、すっかりテンションが下がってしまった。もうバーベキューはやめて家に帰ろう。風呂に入らなければ、折角治ったのにまた風邪をひいてしまう。
     あ、しかし私の家の風呂は壊れているんだった。仕方がないから銭湯にでも行くか。
     なら帰りに桶を買っておこう。

     桶屋が儲かる。
  • 57 マラカス日和 id:i-O8wV7SH/

    2012-12-02(日) 22:15:34 [削除依頼]
     風が吹いた。

     銭湯から出た私は、風が強いことをすっかり忘れていた。
     突然の強風に驚いて、持っていた桶を落としてしまう。
     あーあ、底が抜けてしまった。帰りにまた新しい桶を買わなければ。

     桶屋が儲かる。
  • 58 マラカス日和 id:i-O8wV7SH/

    2012-12-02(日) 22:15:41 [削除依頼]
     風が吹いた。

     放射能の風が吹いた。人間は阿呆である。

     核兵器を作るな。
     もう耳のタコにタコが出来るくらい聞かされた言葉。
     しかし人間の欲深さと用心深さから考えて、きっとこの世から核兵器が無くなる事はない。それくらいは分かっていた。

     核兵器を持つな。
     これも無理な話なのだろう。
     善悪の問題以前の問題。七十億の人間が、全員と信じ合えるか。
     答えは簡単だ。ノー。

     それでも。それでもだ。

     私は心のどこかで信じていた。というより、決めつけていた。
     人間は仮にも地球で最も賢い生物なのだ。
     “それ”をしたら自分達がどうなるのかくらい、理解出来ていると決めつけていた。

     ――核兵器を使うな。

     そのくらい守れよ。
     ああ、人間は阿呆である。
     たくさんの死体が転がる世界で、生き残った私は呆然と突っ立っていた。

     棺桶屋が儲かる。
  • 59 マラカス日和 id:i-.ajPcC8/

    2012-12-03(月) 21:07:02 [削除依頼]
    【酸性雨】
  • 60 マラカス日和 id:i-.ajPcC8/

    2012-12-03(月) 21:07:13 [削除依頼]
     横山博士は長年の研究を遂に完成させた。
     いわゆる『何でも溶かしてしまう液体』の開発である。
     その液体の威力は王水の数百倍にも及び、不動態である銀すらも融解してしまう程だった。
     横山博士はこの液体を“神酸”と名付けた。
     この神酸において何よりも特筆すべき点は、『水で薄めても威力が落ちない』という事である。
     二十五メートル四方のプールにコップ一杯の神酸を流し込んだ場合、プールの水が全て神酸と同じ威力を持つことになるのだ。
  • 61 マラカス日和 id:i-.ajPcC8/

    2012-12-03(月) 21:07:23 [削除依頼]
     横山博士は試験管の中の液体を、並々ならぬ期待と共にビーカーへと注いだ。博士の計算では、これによって神酸が完成するハズだったのだ。
    「よし!」
     二つの液体が混ざり合ったビーカーを見つめて、横山博士は嬉しそうな声を上げた。
     早速、その効果を実験するべく、横山博士は銀の延べ棒を取り出した。
     しかし、博士は次の瞬間には呆然としていた。ビーカーの底が、神酸によって溶けていたのだ。
  • 62 マラカス日和 id:i-.ajPcC8/

    2012-12-03(月) 21:07:36 [削除依頼]
    「あ」
     思いがけないアクシデント。自分が見過ごしていたミステイクに博士が気付いた時には、神酸は既に金属製の机を溶かし始めていた。
    「しまった!」
     慌てて雑巾を取り出した博士だが、それで神酸を拭いた所で意味が無いことくらい、即座に理解した。
     博士は、神酸が机に大きな穴を開けていくのを黙って見ているしか出来なかった。
     十秒もしない内に神酸は床へと到達し、今度は床を溶かした。
     この研究室は一階にあるため、これ以上の被害は広がらないだろう。
     博士は少しだけ安心すると、この神酸をどうするべきか考えた。
     この間にも神酸は床を溶かしている。コンクリートがどんどんと蒸発していく。
  • 63 マラカス日和 id:i-.ajPcC8/

    2012-12-03(月) 21:07:41 [削除依頼]
     中和する事も考えたが、これ程の酸性を持つ液体に塩基物質をかけるなど危険極まりない。
    「一体どうすれば――」
     博士が頭を抱えた瞬間、何かが吹き出す音がした。
     床を溶かしながら進んでいく神酸が、水道管を破壊したのだ。
     涌き出る泉の如く、水が噴射していた。
     神酸の混ざった水が、まるで雨の様に、博士に降りかかった。
     博士は悲鳴を上げたが、雨が止むことはなかった。
  • 64 マラカス日和 id:i-Rhdruto/

    2012-12-04(火) 18:08:25 [削除依頼]
    【メカニカル】
  • 65 マラカス日和 id:i-Rhdruto/

    2012-12-04(火) 18:08:39 [削除依頼]
    「んー、気持ちの良い朝だ」
     お父さんが呟いたので、僕は目を覚ました。同時に小鳥の囀りが青空に響く。耳を撫でるような、美しい音色だ。
     とてもありふれた、この朝は、しかし僕にとって記念すべき朝となった。
    「父……さん? 起きたのかい? 父さん!」
     今起きた現実に、僕は思わず立ち上がった。お父さんが目を覚ましたのだ。二十年前から植物状態だった僕のお父さんが、遂に。
    「お前、は……もしかして、雄介、か?」
     お父さんはとても喋りづらそうに言うと、僕の頭をポンと叩いた。二十年間も寝ていたのだ。無理はない。
  • 66 マラカス日和 id:i-Rhdruto/

    2012-12-04(火) 18:08:55 [削除依頼]
    「そうだよ。雄介だよ。父さんったら、二十年も寝てたんだから」
    「二十年? おい、おい、本当か。じゃあ、今、何年だ?」
     お父さんは上体を起こそうとしたが、体が動かないのを悟って諦めた。二十年のブランクを埋めるには、これからのリハビリが必要だろう。
    「二千三十年だよ」
     僕が答えると、父さんは目を剥いた。
    「そんなに、経ったのか。じゃあ、もしかして、車は空を、飛んでるのか」
     父さんが余りにもありきたりな未来予想図を口にしたので、僕は思わず吹き出した。
    「いやあ、それは無いけど……でも、車が速くなったよ。そうだなあ、二十年前でいうと、飛行機くらい」
  • 67 マラカス日和 id:i-Rhdruto/

    2012-12-04(火) 18:09:07 [削除依頼]
    「危なくないか」
    「大丈夫。運転するのはコンピュータだから」
     僕は財布から免許証を取り出すと、それが父さんにも見えるように近付けた。
     二十年前とはあまり変わっていない自動車の免許証に、父さんは少しだけ笑って見せた。
    「じゃあ、あれだ。ロボットは、いるか」
     父さんの声は弾んでいた。目は期待に輝いている。
     だから僕は嬉しくなった。その質問の答えなら、父さんに満足して貰えそうだからだ。
    「いるよ」
  • 68 マラカス日和 id:i-Rhdruto/

    2012-12-04(火) 18:09:20 [削除依頼]
    「本当か」
     父さんの目は一層に希望を帯びた。
     僕は父さんに向かって言った。
    「ロボットなら、いるよ。僕の目の前にね」
     父さんは驚いたように、部屋を見渡した。ロボットを探しているようだった。でも、それらしき者が居ないので、父さんは再び僕の方に視線を戻した。
    「なあ、ロボットは、どこニ、イルん……ダ……ヨ……」
  • 69 マラカス日和 id:i-Rhdruto/

    2012-12-04(火) 18:09:31 [削除依頼]
     ピーっと、電池切れの音がした。
     僕は研究室のベッドで寝ている父さんを抱き上げて、その背中を見た。
     二十年前、食料問題を解決するために全ての人間をロボットにする計画が発令された。
     僕も、父さんも、当然ロボットになったけど、父さんだけは何故か電源をつけても起きなかった。
     だから僕は、ずっと一人で待っていたのだ。父さんを治すためにロボット工学者になって、自分の研究室で、ずっと、ずっと。
     二十年前から歳を取っていない僕は、二十年前から歳を取っていない父さんをベッドに下ろして、小さく呟いた。
    「バッテリー、替えナク……チャ……」
  • 70 マラカス日和 id:i-Rhdruto/

    2012-12-04(火) 18:09:37 [削除依頼]
     ピーっ。
  • 71 アイル id:b27o.Z1/

    2012-12-04(火) 18:30:10 [削除依頼]

    お久しぶりです。
    サーバ炎上とのことで日和さんの小説どうなっているのかと思っていたのですが、上がっているのを見つけて飛んできました。そして【火事場の馬鹿】に腹筋崩壊しました。
    オチが予想できないモノばかりで、不思議な世界観にもグッと惹きこまれて、どれも本当に大好きです。
    新しく更新された中では【ごっこ遊び】が一番印象に残っています。場面場面での緊張感やふっと笑えるところがはっきりしていて、画面の前で「そう来るかっ!!」と叫んでたりしました(笑
    そして【ドライブ】がまた読めたことに感謝です。好きだわ、あの話(´`*)
     
    と、突然お邪魔してすんませんでした!!
    これからも応援してます。
  • 72 マラカス日和 id:i-0KCgwrh0

    2012-12-10(月) 23:14:33 [削除依頼]
    >>71 うわああああコメント頂いてたなんて気付きませんでした! テスト期間だったんだよと言い訳させて下さいすみません! 火災前のデータは全て保存してあったんですが、投稿し直すのは書きかけていた『ごっこ遊び』を書き切ってからにしようと思って少し遅れました。 あのオチは結構気に入ってます。でももっと捻ればもっと面白くなりそうなので、もっと考えてみますね。 これからも引き続きよろしくお願いします!
コメントを投稿する
名前必須

投稿内容必須

残り文字

投稿前の確認事項
  • 掲示板ガイドを守っていますか?
  • 個人特定できるような内容ではありませんか?
  • 他人を不快にさせる内容ではありませんか?

このスレッドの更新通知を受け取ろう!

ログインしてお気に入りに登録すると、
このスレッドの更新通知が受け取れます。

お気に入り更新履歴設定

お気に入りはありません

閲覧履歴

  • 最近見たスレッドはありません

キャスフィへのご意見・ご感想

貴重なご意見
ありがとうございました!

今後ともキャスフィを
よろしくお願い申し上げます。

※こちらから削除依頼は受け付けておりません。ご了承ください。もし依頼された場合、こちらからの削除対応はいたしかねます。
※また大変恐縮ではございますが、個々のご意見にお返事できないことを予めご了承ください。

ログイン

会員登録するとお気に入りに登録したスレッドの更新通知をメールで受け取ることができます。

お気に入り更新履歴設定

お気に入りはありません
閲覧履歴
  • 最近見たスレッドはありません