ブラウ・グルント Blau Grund19コメント

1 二番機 id:GeAv6xR/

2012-11-30(金) 19:18:48 [削除依頼]
 純粋なものを作ろうとすれば
 どうしても、不純物は出る

 ところで、
 どちらが不純物なのだろう
  • 2 二番機 id:MJuMnJP1

    2012-12-01(土) 01:11:00 [削除依頼]
    1.

     私がこの平和から島流しの地へ取材に来たのは、今回が初めての事だった。
     本土から遥か南東の太平洋に浮かぶ、全周6キロばかりの絶海の孤島、空ノ鳥島。平べったい小さな島全体が、一つの航空基地となっている。選別を受けた子供たちが、この形骸化した戦争の始まった当初から、立ち代り入れ替わり、季節も変わることなく、空の上で永遠に戦いを強いられる場所。残忍な社会システムだと自分の中では思っていたけれど、それが社会の維持に必要なものである事も、十分に理解していた。
     島を訪れてから、早くも三日目を迎えた。私は今日も、首に掛けたカメラを手に持ちながら、太陽の照りつける外を散策し、島の日常をファインダ越しに切り取って廻る。
     高い青空。
     白い庁舎。
     滑走路を横切るヤドカリ。
     戦闘機と整備士たち。
     名も知らぬ南国の花。
     太古の大戦で使われた、赤錆びてボロボロの戦車。
     海岸に群がるアジサシの群れ。
     白い砂浜に埋もれた、旧日本軍のトーチカ群。
     水平線、空と海の境目。
     ………………。
     それらは皆、のどかに佇んでいた。
     宿舎に戻る途中、私は一人の少年と出会った。同室の穴吹という少年だ。犬のジュンも一緒だった。
     彼は、この基地の戦闘機パイロットだ。
     ネルク。
     彼らはそう呼ばれていた。二度と地に降りぬ子供達。
     私がこの島に着いた初日、部屋に二つあるベッドが一つ余ってるという理由から、この少年の部屋をあてがわれたのだった。余っていたベッドは、私がここに来る一週間前までは別のパイロットが使っていたのだという。
     その彼は、今はもう、ベッドを使う必要も無いのだが。
     穴吹が居たのは、庁舎の前に少し拓けた芝生の広場。橙のフリスビで、ジュンと戯れている。
  • 3 二番機 id:1qGmrvC.

    2012-12-02(日) 00:33:59 [削除依頼]
     穏やかなその光景を収めたいと思い、私はカメラを向けた。
    「あ、イワナミさん」
     ピントが合いかけた時、穴吹はこちらに気が付いた。
    「やぁ」
     私は撮るのを諦め、カメラを下げながら応えた。
    「いい記事書けそうですか?」
    「ぼちぼちだよ」
    「それは良かった」
     ジュンがしっぽを振りながら、フリスビをくわえて戻ってきた。穴吹はしゃがんで、相棒の頭を撫でる。
    「今日は飛ばないのかい?」
    「予定では。任務は何もありませんから」
    「そうか……」
    「ええ」
    「……なあ、アナブキ」
    「何ですか?」
     私は青空を仰ぎながら続けた。
    「君は、この戦争の事、どう思ってるんだ?」
    「どう思ってるって?」
     彼は質問の意味が分からない、といったふうな声で聞き返す。
    「何と言うか……。おかしいと思ったりはしないのか」
    「うーん、どうかな。考えたことがないです」
    「ほんとに?」
     私は視線を彼の方に戻した。
    「イワナミさんは、何かおかしいと思っているんですか?」
    「もちろん」
    「何を?」
  • 4 二番機 id:1qGmrvC.

    2012-12-02(日) 23:54:58 [削除依頼]
    「オトナ達が、自分たちの社会の平和を維持する為に、ほんの一部とは言え、子供達を犠牲にするってのはなぁ……。やっぱり何か間違ってるよ」
    「そうかなぁ」
    「そうさ、きっと」
     しばらく沈黙が続いた。穴吹はジュンを撫でながら、こちらを向こうとはしない。
     私は手に持ったカメラを持ち上げながら言った。
    「写真、撮ってもいい?」
    「いいですよ」
     立ち上がりながら、彼は答えた。
     私の向けたカメラに、彼は僅かに微笑んだ。
     しかし、その透き通るような目は、どんな表情をも表してはいなかった。
  • 5 二番機 id:zNzO4L91

    2012-12-09(日) 01:38:51 [削除依頼]
     その日の夕方、私は談話室で記事の原稿を書いていた。愛用の古いノートパソコンで。木製の低いテーブル。庁舎の中にあるこの談話室は、縦長の部屋だった。瓶入りの冷えた飲み物が入った冷蔵庫があって、奥には黒い小さなピアノが置いてあった。窓から溢れる日差しが、空気を茜に染めている。白い壁も。遠くの雲も同様に。
     ふっと、時間が流れるのを忘れたのかと、錯覚しそうになる。
     私は、自分の手から打ち込まれて画面に流れる文章を見ながら、心の奥底で、何かが警鐘を鳴らしているような感覚に陥る。
     何かがおかしい。
     この島に来てから、ずっと。
     それが何か、と聞かれれば、答えられそうにはないけれど。
     別に体調が優れないとか、暑さに慣れないとか、そうではない。
     むしろ、都会に居るよりも、ここの空気の方がずっと落ち着く。
    でも、確かに。
     何かがおかしい。
     それなのに。
     それが何なのか、分からない。
     妙な不快感となって、心の奥底に留まっていた。
     誰かが廊下を渡る、堅い足音。近づいてくる。
     きぃ、と扉を開く音。
     一旦画面から目を離してそちらを見ると、パイロットの少女が一人。彼女は私の方を一度だけちらりと見て、何も言わず、そのまま冷蔵庫まで歩いて、瓶を一つ、中から取り出して、私とテーブルの対角線に位置する席に座った。時間帯と服装から見て、ついさっき空から戻ってきたようだった。
  • 6 二番機 id:zNzO4L91

    2012-12-09(日) 01:39:50 [削除依頼]
    2.

     その日の夕方、私は談話室で記事の原稿を書いていた。愛用の古いノートパソコンで。木製の低いテーブル。庁舎の中にあるこの談話室は、縦長の部屋だった。瓶入りの冷えた飲み物が入った冷蔵庫があって、奥には黒い小さなピアノが置いてあった。窓から溢れる日差しが、空気を茜に染めている。白い壁も。遠くの雲も同様に。
     ふっと、時間が流れるのを忘れたのかと、錯覚しそうになる。
     私は、自分の手から打ち込まれて画面に流れる文章を見ながら、心の奥底で、何かが警鐘を鳴らしているような感覚に陥る。
     何かがおかしい。
     この島に来てから、ずっと。
     それが何か、と聞かれれば、答えられそうにはないけれど。
     別に体調が優れないとか、暑さに慣れないとか、そうではない。
     むしろ、都会に居るよりも、ここの空気の方がずっと落ち着く。
    でも、確かに。
     何かがおかしい。
     それなのに。
     それが何なのか、分からない。
     妙な不快感となって、心の奥底に留まっていた。
     誰かが廊下を渡る、堅い足音。近づいてくる。
     きぃ、と扉を開く音。
     一旦画面から目を離してそちらを見ると、パイロットの少女が一人。彼女は私の方を一度だけちらりと見て、何も言わず、そのまま冷蔵庫まで歩いて、瓶を一つ、中から取り出して、私とテーブルの対角線に位置する席に座った。時間帯と服装から見て、ついさっき空から戻ってきたようだった。
  • 7 二番機 id:zNzO4L91

    2012-12-09(日) 01:40:57 [削除依頼]
    >5>6
  • 8 二番機 id:zNzO4L91

    2012-12-09(日) 01:42:32 [削除依頼]
    2.

     その日の夕方、私は談話室で記事の原稿を書いていた。愛用の古いノートパソコンで。木製の低いテーブル。庁舎の中にあるこの談話室は、縦長の部屋だった。瓶入りの冷えた飲み物が入った冷蔵庫があって、奥には黒い小さなピアノが置いてあった。窓から溢れる日差しが、空気を茜に染めている。白い壁も。遠くの雲も同様に。
     ふっと、時間が流れるのを忘れたのかと、錯覚しそうになる。
     私は、自分の手から打ち込まれて画面に流れる文章を見ながら、心の奥底で、何かが警鐘を鳴らしているような感覚に陥る。
     何かがおかしい。
     この島に来てから、ずっと。
     それが何か、と聞かれれば、答えられそうにはないけれど。
     別に体調が優れないとか、暑さに慣れないとか、そうではない。
     むしろ、都会に居るよりも、ここの空気の方がずっと落ち着く。
     でも、確かに。
     何かがおかしい。
     それなのに。
     それが何なのか、分からない。
     妙な不快感となって、心の奥底に留まっていた。
     誰かが廊下を渡る、堅い足音。近づいてくる。
     きぃ、と扉を開く音。
     一旦画面から目を離してそちらを見ると、パイロットの少女が一人。彼女は私の方を一度だけちらりと見て、何も言わず、そのまま冷蔵庫まで歩いて、瓶を一つ、中から取り出して、私とテーブルの対角線に位置する席に座った。時間帯と服装から見て、ついさっき空から戻ってきたようだった。
  • 9 二番機 id:zNzO4L91

    2012-12-09(日) 01:43:42 [削除依頼]
    またミス >5-7 が誤り
  • 10 こっこ 平田しゃんlove☆ id:sCM9yfg1

    2012-12-09(日) 06:18:51 [削除依頼]
    描写が上手っ!
    (上からでごめんなさい。)
  • 11 二番機 id:TUSaTVA/

    2012-12-17(月) 00:45:59 [削除依頼]
     私はそっとパソコンを閉じた。話し出すきっかけがほしかったのだ。
    「お疲れ」
    「どうして?」
    「さっき帰ってきたところだろう? 空から」
     わざとらしく天井を指差しながら言った。
    「あぁ……、そういう事。ありがとう」
     彼女は金属の栓を抜いて、コップに注ぐ。細やかな気泡。丸いガラスの形に沿った液体が、通り過ぎゆく光を歪曲し、不思議で美しい曲線をテーブルに投げかける。すぐに彼女に持ち上げられて、消え去る儚さを潜めながら。
    「貴方も飲む?」
    「いや、さっき勝手に貰ったから」
    「そう」
     曲線が消え去った。彼女は半分ほど飲んで、再びコップを置く。
     ここで、私は一つの質問を投げかけてみた。かねてから聞いてみたかったこと。
    「今、どんな気分?」
    「どういう意味?」
    「任務を終えて、地上に戻ってきて」
    「気分かぁ」
     そう言って、彼女は天井を仰ぎ見る。壁に映った彼女の影も同時に、しかし少しだけ大げさに動く。「偵察対象、変化なし。敵機二機撃墜。こちらの損害はゼロ」
     私はくすっと笑い、それ、気分じゃないよ、と答えた。
    「分かってる。でも……」
    「でも?」
     いつの間にか、部屋が暗くに感じてきた。
    「それ以外、何もないもの」
    「心が空っぽってこと?」
    「少し違うかな。空を飛んでるときは楽しいんです。そこはとても簡単な世界だから。そこにあるのは、上と下、青と白、高度と速度、自分と相手だけ。それだけしか要因がない。だから……。ごめんなさい、意味わからないですよね」
    「いいや。続きを聞かせて、良い記事の材料になりそう」
    「……それだけしかないから、汚れるものが何一つなくって、研ぎ澄まされるような感覚を覚える。地上に戻っても少しだけそのふわふわした感覚が残っていて、それが今の状態。でも、言葉に還元できないし、言葉にしたら消えてしまいそうな何か。そんな気分」 
  • 12 若宮 鈴音 id:ez-u9//d12/

    2012-12-17(月) 00:49:01 [削除依頼]
    ホント、描写上手ですね!!
  • 13 二番機 id:TUSaTVA/

    2012-12-17(月) 01:36:36 [削除依頼]
    描写なんかどうだっていいんです
  • 14 二番機 id:TUSaTVA/

    2012-12-17(月) 02:15:34 [削除依頼]
    「へぇ……」
    「分からない?」
    「正直に言うと」
    「そうだよね、普通は」
     彼女は空になったコップを手に持って、立ち上がった。
    「ただ……、天使みたいだよね、君たちは」
    「え?」
    「変な意味じゃなくて、どこか、人智を超えたところがある、みたいな」
    「天使……」
     壁の向こうの、どこか遠くを眺めている。
    「何か、気に障った?」
    「いや、まったく。でも少し、意外だった」
    「そうかい?」
     彼女はテーブルの上の物を片付ける。いつの間にか、窓の外の空に夜が忍び寄っていた。
  • 15 二番機 id:TUSaTVA/

    2012-12-17(月) 02:49:40 [削除依頼]
    「そうだ、アナブキから聞いたんだけど、ピアノが上手なんだって?」
     私は部屋を出ようと立ち上がった時、ふと思い出したように訊ねた。
    「上手って程じゃないけど……」
    「少し弾いてみてくれる?」
     部屋の奥、忘れられたように置かれているピアノを指差しながら。
     彼女は何も言わず、すっとピアノまで歩み寄って、椅子に佇み、鍵盤の蓋を開けた。黒光りする正面に、彼女の顔が仄かに映って見える。
    「何の曲がいい?」
     座ったまま、こちらを振り返る。
    「好きなので良いよ。そんなに詳しくないし」
    「分かった、じゃあ……」
     そう言うと、鍵盤の指の位置を確かめ、ゆっくりと、紡ぎだすように奏で始めた。それは、聞いたこともないのに、なのに私にとっても懐かしい、不思議な曲だった。まるで、この島の空気に同調するような旋律。また思い出す、あの違和感。
     何故、こんな子供たちが、戦争をしなければならないのだろう。
     いや、それではない。
     何故、彼らは、自分たちが戦争を行うことに何の抵抗も持っていないのだろう。
     彼女の、今日も空の上で二つの命を奪ったそれと、まったく、同じ指で奏でられる、旋律。
     …………。
     私はこの旋律の中から、どうにかして血生臭さを感じ取れないものかと試みたが、無駄に終わった。
  • 16 二番機 id:TUSaTVA/

    2012-12-17(月) 03:18:40 [削除依頼]
    3.

     その2日後、彼女は東太平洋上空で飛行中に敵と遭遇し、再び島に戻ることは無かった。
     さらにその3日後、今度はアナブキが空で攻撃を受け、何とか戻っては来たものの、着陸目前で力尽き、そのまま滑走路に墜落した。私はその様子をカメラに収めたが、後で基地守備兵に取り上げられた。それでも、脳裏に焼き付いたあの事故の光景を忘れることは二度とないだろうか。

     それから4日後、この島を経つ時が来た。小さな古いプロペラの旅客機のタラップを上り、座席に着く。島の光景が、エンジンとプロペラの音とともに流れ、加速していき、空に上った。
     パソコンで自分の書いた記事を眺めたが、どうも納得がいかなかった。
     どのひとつの言葉として、彼らの核心を表すようなものが無いように感じたのだ。半ば衝動的に、私はそのテクストデータを抹消した。
     そして新しく書き直そうとしのだが、どんな言葉も浮かんではこなかった。

    END
  • 17 二番機 id:TUSaTVA/

    2012-12-17(月) 03:24:55 [削除依頼]
    あとがき ブラウ・グルント  Blau Grund     青の理由 >>1-5+9+11+14-16 小説に成りかけの、何か。
  • 18 二番機 id:0jcSc8H1

    2012-12-18(火) 00:19:35 [削除依頼]
    訂正 >16 誤:あの事故の光景を忘れることは二度とないだろうか。 正:あの事故の光景を忘れることは二度とないだろう。
  • 19 二番機 id:i-wT0GgSE0

    2013-03-16(土) 18:37:44 [削除依頼]
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