天使は、空を飛ばない15コメント

1 吉永エリ id:20h4RsP1

2012-11-30(金) 19:07:15 [削除依頼]



2人の天使が、地上に落ちていく。

その身に背負うものは、原罪か、現罪か。

2人は、翼を捨てることを選んだ。


 漆黒の闇の中に月が在る。
 漆黒の闇の中に星が在る。
 例え薄暗い光でも、そこに光があることは希望となる。
 彼女は悲劇の結末で、薄暗い光を見た。


―天使は、空を飛ばない―
(The angel does not fly in the sky.)
  • 2 吉永エリ id:20h4RsP1

    2012-11-30(金) 19:19:25 [削除依頼]



    第1章 再会は悲劇の始まり

       1


    『は、初めまして。いいい1年3組の飯田と申します!』

    ポリポリポリ。

    『ず、ずっと白岡先輩のことを見てて・・・』

    サクサク、パキッ。

    『白岡先輩のことが好きです!どうか付き合ってください!』

    ゴックン。モグモグモグ。


    『・・・・・あ、あの、聞いていらっしゃいますか・・・?』


    その声に、ようやく1人の少女が顔を上げた。
    片手にはクッキー、口の中におせんべいを頬張ったままで。
  • 3 吉永エリ id:20h4RsP1

    2012-11-30(金) 19:26:08 [削除依頼]



    日本人とは似つかない翡翠の瞳が、彼女の目の前に立つ男子生徒に向けられる。
    普段なら温和で澄んだ瞳に、明らかに苛立ちの色が混じっていた。
    それまで食べていたおせんべいをようやく飲み込むと、彼女はギロリと男子生徒を睨んだ。


    「何だ。我をこのような場所に呼びつけておいて、あろうことか
     おやつの時間の邪魔立てをするつもりだったのか」

    なんとずうずうしいやつだ。
    そう吐き捨てると踵を返す彼女に、さすがの男子生徒も声を荒げて引き留める。

    『待ってください!告白の返事を聞かせてもらっていません!』
  • 4 真咲*´Å`*SEKAI NO HAJIMARI  id:xoKOIAi.

    2012-11-30(金) 19:44:04 [削除依頼]
    更新、がんばってください!!* なんか、>1に引き込まれました!!
  • 5 吉永エリ id:20h4RsP1

    2012-11-30(金) 19:48:34 [削除依頼]



    「はて、告白とはなんだ?」

    こてん、と首を傾け、心底わからないといった表情を浮かべる少女に。


    『聞いていなかったんですか!?・・・まさか噂以上に白岡先輩が鈍感なんて・・・』

    ぽつりと男子生徒は呟くと、再び少女を見つめる。
    少女は(よくわからないが)何か重要なことを聞き逃したということだけは察して、
    背筋を伸ばして男子生徒の言葉を待った。


    『・・・あ、あのですね。僕、白岡先輩のことが好きなんです!』


    勢いに任せて言い切ると、顔がみるみる赤く染まっていく。
    そんな男子生徒の様子に、少女は目を輝かせた。
  • 6 吉永エリ id:20h4RsP1

    2012-11-30(金) 19:57:19 [削除依頼]



    「す、好きとは、」

    『はい』

    「すなわちっ」

    『はい!』


    ようやく意味が伝わってくれたようだ、と彼は内心涙を流した。
    期待を込めて少女を見ると、少女は手にしていた菓子類を全て投げ捨てて、
    男子生徒に抱き着いた。


    「―――まさか、ようやく同じ菓子好きと出会えるとは!」
  • 7 吉永エリ id:20h4RsP1

    2012-11-30(金) 20:07:03 [削除依頼]



    この世の奇跡だ、と少女は潤んだ目で男子生徒を見る。
    艶めいた彼女の様子に魅入られながらも、男子生徒は慌てて少女の体を引きはがしにかかる。
    しかし彼女は感涙にむせび泣いていて、一向に離れない。むしろさらに抱き着いてくる。


    『(どうしよう、僕、殺される!)』

    ぐるぐると思考が回る。世界が回る。
    これからのことを思い蒼白な顔をした男子生徒は、
    これから先さらなる”この世の終わり”に絶望することになる。


    「おお、まさかわが同士についに出会えるとは奇跡だな。世俗にまみれた世の中で、
    菓子好きと・・・菓子好きと出会えるとは。よし、先ほどの失礼極まりない言動も
    なかったことにしよう」

    『いや、あのですね、どうか離れて』

    「離れる?どうして離れる必要があるのだ。それよりもお前はクッキーとビスケット派どちらだ?
    さあ、答えてみるがいい。まさかビスケットなどと言ったら本気で怒る!我は怒る!」

    『どうでもいいです!クッキーとビスケットなんて、たいした違いもないでしょう。
    それよりも、離れてもらわないと本気で困るんです!・・・まあ僕は嬉しいんですけど』

    そう男子生徒が言った途端、少女の後ろに並ぶ下駄箱の方から混じりけのない殺気を感じた。
  • 8 吉永エリ id:20h4RsP1

    2012-11-30(金) 20:10:51 [削除依頼]
    >4 真咲*´Å`*SEKAI NO HAJIMARIさん ありがとうございます!  非常にマイペース更新ですし、シリアスとコメディの差が・・・大きいです。  最初はコメディ展開ですが、後半になるにつれシリアス一色になる予定です*  わざわざコメントを書いてくださり、本当にありがとうございました。
  • 9 吉永エリ id:20h4RsP1

    2012-11-30(金) 20:22:12 [削除依頼]



    青ざめるを通り越してもはや顔から色が消えた男子生徒は、
    背中に冷たい汗が伝うのを感じた。


    とりあえず、もう―――


    『それよりも、早く告白の返事を下さい!』

    「いや、先ほどから言っているはずだが」


    目の前にある地獄をないものとしてスルーし、
    勇気をもって叫んだ男子生徒。

    会話の食い違いを感じて、ついには少女まで押し黙ってしまう。


    そこへ。男子生徒にとっては死の合図、少女にとっては聞き慣れた声が
    あたりに響いた。


    『―――スウル、一体何の話をしてるの?』


    ニコッ、と天使のほほえみと等しい笑顔を浮かべる女子生徒に、
    スウルと呼ばれた少女は笑顔を返した。


    「いや、彼が我率いる調理部に入りたいと、”告白”してきたのだ」
  • 10 吉永エリ id:20h4RsP1

    2012-11-30(金) 20:26:51 [削除依頼]



    『はあっ!?』

    『それは良かった。新入生が足りなくて困ってたものね。
     ・・・ちょっとそこの男子、スウルから離れろ』


    最後の言葉は吹雪より冷たい呟きで、彼のことを凍りつかせるには十分だった。
    固まった男子生徒を、荒々しくスウルから引き剥がし後ろに投げ捨てる。


    「映見、なんか不機嫌ではないか?」

    『ええ。でも大丈夫よ。そろそろ調理部に行きましょうか』
  • 11 吉永エリ id:20h4RsP1

    2012-11-30(金) 20:37:10 [削除依頼]



    「おお、なら先ほどの男子生徒を連れて行こう」

    『駄目』


    キッパリと言い切った映見に、スウルは戸惑って視線を揺らした。


    「彼は新入部員なのだぞ・・・?連れて行くのは当然ではないのか」

    『残念なんだけど、さっき”やっぱり入部はやめておきます”って言って
    帰っちゃったのよね』


    大嘘つき!どこからかそんなかなきり声が響いた。


    「・・・今なにか聞こえなかったか」

    『え?きっと空耳よ』


    そう言うと映見はスウルの手を取って歩き出すと、下駄箱を後にした。


    『・・・っ、このろくでなし鬼鬼鬼鬼――――――っ!!!!!』


    後ろに投げ捨てられた男子生徒は、目をぎらつかせて彼を見つめる
    自称”白岡スウル親衛隊”という名の非公認ファンクラブ集団に囲まれて、
    絶叫した。
  • 12 吉永エリ id:20h4RsP1

    2012-11-30(金) 20:39:08 [削除依頼]



    【01】


    ―――どうして、苦しいのだろうと、思った。


    * * *


    口の中に入ってきた液体に、呼吸が奪われ、視界が歪む。
    目の前に広がるのはただただ水の世界で、ゆっくりと体が深海に沈んでいく。


    「・・・っ、か、はっ」

    確実に迫りくる”死”に、少女は体を震わせた。そして、そっとまぶたをおろす。
    こうすることを望んだのは自分だった。もともと、生きていてよい存在ではない。
    産まれる前からこの身は真紅の血で穢れ、悪を呼び寄せる。
    少女はその力から、周囲に忌み疎まれていた。


    しかし、周囲に拒絶される以上に、少女は自分のことを拒絶していた。
  • 13 吉永エリ id:20h4RsP1

    2012-11-30(金) 20:46:11 [削除依頼]



    彼女の伸ばした手はいつも空を切った。
    誰も彼女の言葉に耳など貸さない。
    きっと伸ばしても無駄だと、いつからかあきらめに近く悟ったのは、いつからだっただろう。
    それでも―――


    「ファ…レっ、」


    彼女は届かないと知りながらも、ただ愛する人の名を口にした。
    ゴポゴポと、水中に泡が散る。
    それはまるで、彼女の命のように儚くて。
    それでも、芯の強いひたむきさがそこにあった。


    「ファレン・・・!」
  • 14 吉永エリ id:20h4RsP1

    2012-11-30(金) 20:56:53 [削除依頼]



    知っていた。手が届かないということぐらい。
    自分の身には余る願いをいつしか抱えてしまってから、
    彼女はずっと悩み続けていた。
    それでも、手をとってもらえたあの日のことを。
    今でも、彼女は思い出すのだ。


    ―――ファレン、愛してた。


    声にならなかった呟きは、夜色に塗りたくられた水中に、溶けて消えていった。
  • 15 吉永エリ id:20h4RsP1

    2012-11-30(金) 20:57:07 [削除依頼]



       2


    【白岡スウル -0719 高2】


    モデル並みのスタイルと、見事な容姿を兼ね備えている。
    翡翠の瞳に、肩につく程度の長い黒髪。
    薄い唇に、すっと通った鼻筋。
    白く透き通るきめの細かい肌。
    その眉目秀麗さで、男女問わず彼女のファンは多い。

    非公認ではあるが、白岡スウル親衛隊というファンクラブまでもが存在する。

    クラスは2年1組。生徒会の副会長を務める。
    時代錯誤な古風な口調や鈍感さも、
    また素敵だと評判である。
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