翁の放浪記6コメント

1 テチ id:i-NUxI8Fz0

2012-11-28(水) 00:17:08 [削除依頼]

飄々と連なる山河を幾度と越えたことか、複雑に枝分かれした深山の奥道を滑り落ちるかのように下っていくヒトガタ。
汗の染み込んだ黄土色の作業着に泥をこびりつけて、胸元辺りまで永遠と茂る厚き草の壁を乱暴に掻き分けながらその歩みを止めれずにいた。
  • 2 テチ id:i-NUxI8Fz0

    2012-11-28(水) 02:20:10 [削除依頼]
    ひとつ、またひとつ、迫り来る蛍火の群衆にヒトガタは身を震わした。うっすらと霧の残る山中は身隠れするには丁度都合の良い気象ではあったが、こう岩肌の出っ張った山道ではいつ足を滑らし奈落の底へご案内をされるのか、気がきではないことも確かであった。
    おまけに背高い草むらを掻き分けながらとなれば、音を発てないように神経を鋭く張り詰めさせながらの移動が不可欠となる。
    ヒトガタは心身共に身固く構え、血にまみれた裸足でゆっくりと山を下って行った。
  • 3 テチ id:i-NUxI8Fz0

    2012-11-28(水) 20:34:35 [削除依頼]
    暫くすると、先程までヒトガタの周囲に点々と存在していた鈍光の灯が、跡形もなく消え去っていた。生い茂る草や枯木も徐々に数を減らし、痛みに耐えながら足を引きずるヒトガタだけが砂漠染みた草原にひとり。
    逃げることに一心で、追っ手の在る無しに構わずでだったヒトガタも、さすがに周囲の変化に気付き歩むことを止めた。
    そして、前方に広がる小原の先に淡く光る谷間のを見つけ、常時引きつっていた頬の筋肉をほろりと緩めた。
  • 4 テチ id:i-NUxI8Fz0

    2012-11-28(水) 21:00:18 [削除依頼]
    「越えた……」

    今にも折れそうな膝の頭に両手を乗せ、前のめりにその場に崩れ落ちる。あの谷の下に漠然と広がっているであろう"シーグレルの街"は、ヒトガタが辿り着くべくして辿り着いた、懐かしき故郷であった。
  • 5 テチ id:i-NUxI8Fz0

    2012-11-28(水) 21:51:35 [削除依頼]
    谷間の崖縁を添うように歩いていると、街に降りる為に作られたのか、御世辞にも渡り易そうとは言い難い一本の小さな石垣作りの階段を見つけた。
    この足で凹凸の激しい、狭く急な階段を降りることに微かな不安さえあったものの、なにより早く街に入って水の一杯でも飲みたいと、躊躇するところなく膝を折った。
  • 6 テチ id:i-NUxI8Fz0

    2012-11-28(水) 21:52:02 [削除依頼]
    ざらつく土の壁に右手を添えながら、ひとり故郷を目指すヒトガタは、遠くの山頂から漏れ走る朝日の目映い光を見積め上げ、懐かしさに心だけを浸らせた。溢れる期待に速まる胸の鼓動を押さえつけながら、ただひたすら慎重に階段を降りていく。
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