無題という名の短編集9コメント

1 りょっち id:PyLIkOW/

2012-11-26(月) 21:40:38 [削除依頼]
とある高校の文芸部員です。
更新は気が向いたらそのときに。
ということで早速一作目です↓
(人生二作目)
感想お待ちしてます。
  • 2 りょっち id:PyLIkOW/

    2012-11-26(月) 21:41:36 [削除依頼]
    超短編ですがメモ帳にでもコピペして印刷してから読むことをお勧めします。
    楽しんでいただけたら幸いです。


    「卵焼き」


    午前十一時四十分 三限 化学

     いつもなら教科書を枕に夢を見ているこの時間も、今日は目が冴えている。昨日の夜、遅くまで歌の特番
    を見ていて朝の登校時間ぎりぎりまでぐっすりだったことに重ねて、そのために朝食を抜いて来てしまった。
    一度も欠かしたことなかったのに。
     いつもの睡魔に代わって空腹感があたしを襲う。
     ああ、お腹空き過ぎて死にそう。早くお昼になんないかな。今日のお弁当、お母さん何入れてくれたかな。
     なんて考えてると、チャイムが鳴った。
     「それでは次回は酸化・還元反応の実験をしますから、化学教室に必要な物を持って来て下さい。」
     やっと終わったぁ。早速お昼にしますか。
     お弁当箱を開けると色鮮やかなおかず達の運んできた美味しそうな香りが鼻をくすぐる。今日のメニュー
    はウィンナー、ナポリタン、ほうれん草とカボチャのサラダ、アスパラベーコン、プチトマト、それと……。
    「あ、美味しそうな卵焼き。」
    「あーっ。あたしの大好物をー。」
    つまみ食いしたのはナナ。お昼はいつも一緒にいる。
    「ありがとう。ユウカのは美味しいね。」
    「『美味しいね。』じゃないよ。あたしまだ食べてないのに。」
    「ごめん。つい、ね。それよりさっきの化学でさ、燃焼のところ分かった?」
    「ううん、全然。ていうかあたし聞いてなかったー。」
    「えっ、でも今日は珍しく起きてたじゃん、ユウカ。」
    「それがね、昨日の夜特番やってたんだけどさ、それ見てたら……。」
     ほんと、今朝は大変だった。久しぶりに夜ふかしして、朝もしっかり眠っちゃったんだよね。それなのに
    疲れは取れてないし、学校まで全力ダッシュでへとへと。今日こそは死ぬと思った。
    「もう、まだ今週二日も残ってるのに夜ふかしとか有り得ないよ。」
    「あはは、ごめんごめん。」
    「なんで私に謝るの。私よか、お母さんに謝った方がいいんじゃない? 毎朝時間に間に合うようにお弁当
    作るの大変なんだよ? それなのに遅刻したらお母さん報われないじゃん。」
    「うん……。ナナは自分で作るんでしょ? 忙しいのに大変だね。」
    「まぁ、お父さんの分もあるから大変だけど、もう慣れた。」
    「そっか……。」
     自分のだけじゃないからレパートリー考えるのも面倒なはずなのに、それでアタシより勉強できるんだか
    ら、ナナには少し憧れる。
    「そういえばユウカのお弁当ってさ、いつも卵焼きが入ってるね。」
    「うん、あたしが一番好きなメニューだから必ず入れてもらうの。」
    「ユウカのお母さん、焼くの上手だね。すごくふわふわで甘さもいい感じ。私もがんばってみるんだけど、
    どうしても柔らかさと甘さの調節が思うようにいかなくて……。チーズとかグリーンピースが入ってる時も
  • 3 りょっち id:PyLIkOW/

    2012-11-26(月) 21:42:26 [削除依頼]
    あるでしょ? あれも美味しそうだと思った。」
    「ああ、あれね。他にもしらす入りとか、ほうれん草入りとか、あと、かにかま入りとか。いろいろバリエ
    ーションがあるんだ。」
    「そうなんだー。」
    「あっ、それでね、卵焼きで思い出したんだけど、あたしのお弁当に一回だけ卵焼きが入ってなかったとき
    があったの。」
    「えっ、そうなの?」
    「うん。ナナ、幼稚園にいた時の遠足、覚えてる?」
    「ああ、鈴蘭公園まで行って遊んだよね。あの時は確かユウカと同じキリン組で、バスでも一緒だったよね。」
    「そう、その日にお弁当持って行ったでしょ? だから前の日に『ぜったいにたまごやきいれてね。』ってお
    母さんにお願いしたの。あたしすっごく楽しみにしてて、その夜は本当に眠れなかった。だけど次の日公園
    に着いて、お昼にお弁当を開けたらね、卵焼きが入ってなかったんだ。その時悲しいっていうか、急に寂し
    くなっちゃってね、涙がぽろぽろと出て来て家に帰るまでバスの中でずっと泣いてたの。それで着いてお母
    さんの顔を見たらなんだか安心しちゃって、『なんでたまごやきいれてくれなかったのっ。』ってそのままお
    母さんに思いっきり泣きついちゃってさ、エプロンがびしょびしょになるまでしっかりしがみついてたんだ
    よね。でもその後何度も確かめたんだけど、お母さんは約束どおりにちゃんと卵焼きを入れておいたって言
    ってるし、結局どうして入ってなかったのか分からないままになっちゃったんだ。」
    「言われてみれば、あったね。そんなこと。」
    「まあ、今ではもうただの思い出話にしかならないけど、あの時のあたしにはただごとじゃなかったと思う
    んだ。」
    「ねぇ、私、思い出したことがあるんだけど、本当はちゃんと卵焼き、入ってたんじゃない?」
    「えっ。」
    「ほら、あの日は道が渋滞してて、公園に着いたのはお昼過ぎだったでしょ。だから行きのバスの中で先生
    が、お腹の空いた人はおにぎり一個くらいなら食べてもいいって言ったじゃん。きっとユウカ、その時に卵
    焼きも食べちゃったんじゃない?」
    「あれっ、そうだったっけ?」
    「多分……。そうじゃなかった?」
    「うーん。はっきりとは思い出せないけど、でも確かにバスは遅れてたね。それでお腹空いちゃって……。
    あたし我慢できなくて食べちゃったかも。」
    「あはは、やっぱりかぁ。ユウカらしい。」
    「仕方ないじゃん。まだ子供だったんだし。」
    「予定より長いバスの中で寝ぼけてたんだね……。あっ、もうチャイム鳴っちゃったじゃん。次の授業何だ
    っけ?」
    「地学だよ。」
    「分かった。ありがとね。」
     さてと、あたしも授業の準備しないと。それにしてもあたしが食べてたなんてほんとバカみたい。でもあ
    の時は外で食べるお弁当なんて初めてだったし、かなり楽しみにしてたからなぁ。バスの中で寝て、食べた
    ことまで忘れるなんてあたしっぽいけど、頑固だったからそんなことも信じられなかった。「ユウカちゃんが
    食べちゃったんじゃない?」っていう先生の言葉も悔しくて、それは酸素のようにあたしの幼い悲しみをよ
    り一層激しく燃え上がらせるだけだったんだ。それほどお母さんの卵焼きが大好きだったから。あの時の卵
    焼きはどんな味だったっけ。すっごく美味しくしてねなんて言ってたからもしかして特別な具が入っていた
    かもしれない。もう忘れちゃったけど。そんなことを考えながら午後の席に向かう。
  • 4 りょっち id:PyLIkOW/

    2012-11-26(月) 21:43:21 [削除依頼]
    午後十二時三十分 四限 地学

     はぁ……。地学って苦手なんだよね。テンション下がるなぁ。つまらないからって寝る訳にもいかないし、
    先生の話は長いし。
    「流水によって侵食された岩石は運搬され、堆積するが、これが繰り返されることで地層が出来上がってい
    く。」
     お弁当か……。
     私にとってもお弁当はやっぱり特別な物だった。中身は出来合いのおかずでも自分で考えて詰めれば立派
    なお弁当になった。
     それにしても遠足なんて懐かしい。
     もうかなり前のことだけど、まだはっきり覚えてるなぁ。初めての遠足だったし、あの日はもう興奮しち
    ゃって……。でも、何か変だ。バスに乗って公園へ向かったところまでちゃんと覚えてるのに、公園に着い
    た後のことを思い出そうとすると記憶が絡まってまたバスの中に戻っちゃう。あの時公園で起こったこと、
    幼い私に強い衝撃を与えた何かがあるような気がするのに……。
     先生が黒板に地層の絵を描いていく。
    「これが火山灰を多く含む層、そしてこれが泥の層。こうして次々に堆積していくことで美しい層が作られ
    ていくのだが……。」
     黄色いチョークの層と白いチョークの層が先生の話に合わせて黒板の上に交互に堆積していく。その美し
    く織り重なった層はどこかで見たような気が……。
    「普通、下へと辿っていくほど古い、昔の層になっている。」
     ……思い出した。あの時私が食べた卵焼き……ユウカの卵焼きも、ちょうどこんな、綺麗な細かい層を作
    っていた。
     幼い頃にすでに両親が離婚し、男手一つで育てられてきた私。お父さんは忙しい上に不器用で、台所に立
    つなんてできなかったからいつも食卓に上るのはスーパーのお惣菜だった。
     あの日、公園で一緒にお弁当を食べていたユウカがトイレに行った時、私は自分の衝動を抑えることがで
    きなかった。ユウカのお弁当を開けると黄色と白のコントラストに姿を変えた卵が私を誘惑し、私はそれに
    耐えられないままユウカの大好物に手を出してしまった。その時は罪の意識なんてひとかけらもなくて、初
    めてのお母さんの味になぜだか懐かしさを覚えていた。生まれた時から一度もお母さんの手料理を食べたこ
    となんてなかったのに、どんな顔だったかさえ覚えてないのに、懐かしくて仕方なくって、少し寂しくなっ
    た。あの時、確かにバスは遅れていたけどユウカは「たのしみにとっておくの。」なんて言ってお弁当を開け
    ようとはしなかった。そんなユウカが羨ましくて、思わず私はユウカの卵焼きを取っちゃったんだ。その時
    の味も今は思い出せる。それはほんのり甘くて喉の奥で溶けて無くなってしまうような口当たり。特別な具
    材は何も入ってないのに、世界で一番美味しいと思った。でも後から出てきたユウカへの罪悪感が記憶を掻
    き消してしまったんだ。
     ユウカに謝らなくちゃいけない。本当のことを言わないと……。でも、どうしたら分かってくれるかな。
    ……ユウカはあの日の卵焼きをまだ食べてない。だったら食べて欲しい。ユウカのお母さんのようにいかな
    いのは分かってるけど、それでも私の知っている味を作りたい。明日全部を話して、私の卵焼きを食べても
    らうんだ。
     今日だけは、夜ふかししてもいいよね。
  • 5 *れるう* id:T39m5Tn1

    2012-11-26(月) 21:51:25 [削除依頼]
    頑張ってください
  • 6 りょっち id:PyLIkOW/

    2012-11-26(月) 21:59:41 [削除依頼]
    ありがとうございます
  • 7 *れるう* id:T39m5Tn1

    2012-11-26(月) 22:08:38 [削除依頼]
    文章作るの上手ですね

    これからも応援してます
  • 8 りょっち id:PyLIkOW/

    2012-11-26(月) 23:54:46 [削除依頼]
    こちらこそよろしくお願いします!
  • 9 冬咲 花音* id:2PczFH6.

    2012-12-21(金) 19:51:44 [削除依頼]
    評価に来ました
    辛口と言われましたので辛口で。

    文章作りが上手です。
    でも一レスに投稿する文章が長すぎると思います。
    私からの観点なのでどうとは言えませんが。

    文法のほうで
    「」の最後には「。」をつけないことは基本だそうです。
    実際そうですし。

    まぁそこを改善しましょう。

    では。
コメントを投稿する
名前必須

投稿内容必須

残り文字

投稿前の確認事項
  • 掲示板ガイドを守っていますか?
  • 個人特定できるような内容ではありませんか?
  • 他人を不快にさせる内容ではありませんか?

このスレッドの更新通知を受け取ろう!

ログインしてお気に入りに登録すると、
このスレッドの更新通知が受け取れます。

最近作られた掲示板

お気に入り更新履歴設定

お気に入りはありません

閲覧履歴

  • 最近見たスレッドはありません

キャスフィへのご意見・ご感想

貴重なご意見
ありがとうございました!

今後ともキャスフィを
よろしくお願い申し上げます。

※こちらから削除依頼は受け付けておりません。ご了承ください。もし依頼された場合、こちらからの削除対応はいたしかねます。
※また大変恐縮ではございますが、個々のご意見にお返事できないことを予めご了承ください。

ログイン

会員登録するとお気に入りに登録したスレッドの更新通知をメールで受け取ることができます。

お気に入り更新履歴設定

お気に入りはありません
閲覧履歴
  • 最近見たスレッドはありません