翡翠のインセウィオ28コメント

1 *美癒那* id:mKWz7vs.

2012-11-15(木) 19:50:20 [削除依頼]
0.はじめに

 人生は、誰も読んだことのないような辞書に似ている。普通の人であれば知らないまま死んでいくようなことが、既に誰かの手によって書き記され、常に加筆修正がなされているからだ。そして僕もあの日をきっかけに、加筆修正を繰り返している。
 なぜ、って?
 僕の体験している日常というものが、おおよそこの世界の誰も体験したことのないような驚きに満ちているからだ。
 また、同じようなことを考えている、感じている人間はいくらでもいるだろうが、それらが全く同一の「The surprise」を指すことは決して有り得ない。この加筆修正は僕にだけ許された権利なのだ。

 その権利の割り当てのことを、人は「運命」と呼ぶ――。
  • 9 *美癒那* id:TGYnEX/.

    2012-12-08(土) 23:58:19 [削除依頼]
    「では、戻りましょうか、尾羽」
    「おう、おうよっ」
     呑気なもんだ。やっぱり尾羽は莫迦だ。その方が都合がいいのだ。莫迦な彼と歩いていれば、少なくとも僕が莫迦に見えることはあるまい。そうして階段を上ろうとした時だ。足元に何かが見えた。
    「おっふぁ! 札だ!」
     尾羽が変な擬音と共に驚き、拾い上げる。これは…………。
    「日華事変軍票か……専門店に持っていけば数万円で売れるな、ラッキー」
     僕にはよく分からんが、明らかに古紙幣である。というか尾羽がその名称を知っていたという事が驚きだ。ただの莫迦じゃなかったか、いや、莫迦古紙幣オタクだったのかこいつは。だが、古紙幣ねえ?
  • 10 *美癒那* id:TGYnEX/.

    2012-12-08(土) 23:59:35 [削除依頼]
    「すいません、落し物をしたのですが……。日華事変軍票知りませんか?」
     彼女だ。和同開珎と寛永通宝の彼女だ。やっぱりだ。知ってた。
    「ああ、この古紙幣ですか……」
     尾羽の手から奪い取って渡す。尾羽は僅かに不服そうな表情を浮かべた。
    「ありがとうございます。……ところで、考査の結果は見に行かれましたか?」
    「ええ、ついさっき見てきたばかりですよ。僕は学年首席でした。自慢じゃないですが、こいつは最下位なんですよ。笑えるでしょう」
     僕は自分を控えめに、尾羽を引き立てるように紹介をする。尾羽は苦笑いをし、彼女ににこりと微笑を見せ会釈した。「どうも、一年生で最下位の尾羽といいます」
    「ええ、じゃあ私も仲間ですね!」
     彼女は少し嬉しそうに言う。古銭を自動販売機に突っ込むような人間だから、さぞかし学業成績も芳しくないのだろうが「私も学年首席です」学年首席だという。嘘だろ。
     そして彼女は親近感が湧いたのだろうか……古紙幣に詳しい尾羽になのか、あるいは僕になのかは知ったことではないが、
    「あっ、私は二年の岡エリーと申します」と、誰にも要求されていないのに自己紹介を行った。
    僕は、一年G組の只井マーと申します……。
  • 11 かむこ id:fsjQ/qA/

    2012-12-24(月) 16:41:21 [削除依頼]
    初コメ券を利用しにきました
    シュールっていうんですかね すごい世界ですね
    文自体に流れがあって面白いし比喩も独特で素敵です あと名前がナチュラルに素晴らしい
    他にこんな雰囲気で書かれていたりする作品あったら知りたいです
  • 12 *美癒那* id:JIKr26y0

    2012-12-26(水) 16:15:43 [削除依頼]
    >>11 ご利用ありがとうございます、車掌の*美癒那*です。嘘です。 何も考えずに書いたら、こういう変な世界観になっちゃうんですよね… お褒めの言葉をありがとうございます、特に名前。 あまり他の作品は読まないので、すいませぬ…。
  • 13 かむこ id:cXl.bYg0

    2012-12-26(水) 22:32:02 [削除依頼]
    あ 言葉足らずでした;
    *美癒那*さんの作品でですb
  • 14 綾瑠子*Aruko* id:CleZ6Th0

    2012-12-29(土) 01:37:00 [削除依頼]
    とても面白い小説ですね。人生というものを全く異質な世界観と融合させるような、そのような文体で引き込んでいるように見えました。比喩表現も御上手で是非とも参考にさせて頂きたいなと感じました。
  • 15 *美癒那* id:3e44gBO0

    2012-12-29(土) 01:47:15 [削除依頼]
    >>13 そちらでしたか。 あいにく、これ以外に執筆作品はないもので……。 >>14 お褒めの言葉をありがとうございます。 実はこれ、全部実話なんです。嘘ですけど。 もし、酒飲んだ勢いで書いてしまったような小説から学べるところがあれば、ぜひ盗んで行ってください。
  • 16 *美癒那* id:3e44gBO0

    2012-12-29(土) 01:59:19 [削除依頼]
    3.お年玉と憲法

     人生は、お年玉の使い道に似ている。先のことを考えず、いきなり自らにとってプラスの出来事が起こると、冷静な判断ができなくなってしまうからだ。それは必ずしも金銭関係だけではなく、権力であったり、名誉であったりさまざまだ。だからこそ、子供のお年玉を握る親という存在が必要なのだが、残念ながら思春期以降の子供にそれは受け付けてもらえない。
     さて、僕の名は只井マー。アイムホームではない、只井マーだ。温和勤勉で人格者であると、主に僕の中で評価されている高校一年生だ。
     成績優秀、容姿端麗。母から「マーは、弥生時代ならモテモテだったよね」と褒められたことが人生における誇りの一つである。……だが、実をいうとそんな僕にも、引け目を感じることがある。特定の部に所属していないことだ。
     周りを歩く少年少女たちは皆、全員と言っていいほど何らかの部に籍を置き、思い思いの青春を謳歌している。僕も”帰宅部”という部に籍を置いていると言えないこともないのだが、所詮は正式な活動ではない。自らの頭の中で”学校帰り道草ルポ”や、”電柱にかけられた犬の小便の周期表”などを製作してはいるのだが、なにぶん発信する機会がないものなのだ。
  • 17 *美癒那* id:3e44gBO0

    2012-12-29(土) 01:59:42 [削除依頼]
     時期は六月も半ばである。当然、既にどこの部も新入生勧誘を終えてしまっている。友人がいるわけでもなければコネがあるわけでもない、特定の先生と仲がいい訳でもない僕が、今から部活動に加入するというのは至難の業だ。友人と言っていいのか分からないが、尾羽は帰宅部だ。彼のような変人がどこかの部に所属したとしたら、間違いなくそのクラブは破滅への一途をたどるだろう。マヤ暦、あるいはノストラダムスの人類滅亡預言と同じだけの信憑性がある。
     とりあえず誰かに声を掛けるのも癪なので、放課後に校内をそれとなくうろつき、声を掛けられるのを待つという作戦に出た。これが成功する確率は限りなく低いと思うのだが、失敗したらしたで縁がなかったと開き直ればいいさ。
  • 18 *美癒那* id:3e44gBO0

    2012-12-29(土) 02:00:19 [削除依頼]
     まず三階にある教室を出て、特別教室棟へ向かう。管楽器の音色が音楽室から鳴り響き、隣の美術室では生徒たちが彫刻を彫っている姿が見られた。それとなく視線を送りつつ、普段より二割ほどスローペースで歩を進める。顧問の先生と視線を合わせようとするものの、部員たちの指導に忙しいのかこちらを見ることはなかった。
     誰にも気づかれなかった僕は、特別教室棟の奥にある部室棟の方へ向かう。特別教室を持たない文化部、例えば新聞部や文芸部、演劇部といった面々が顔を揃える。「部活動を見に来ました」という雰囲気を極力醸し出さないようにしつつ、僕は歩みを進めていった。
  • 19 *美癒那* id:3e44gBO0

    2012-12-29(土) 02:00:54 [削除依頼]
     すると、棟の奥の方からひときわ明朗な声が聞こえてくる。演劇部だろうか、波長で三半規管が壊れてしまうのではないかと感じるほどに抑揚が付けられていた。というか、旋律もついていた。……ミュージカルか、なにかだろうか?
    「日本国民はァー! 正当に選挙されーたァー……国会における代表者ァー!!」
     日本国憲法前文を熱唱する部活はどこだ。
    「われらぁーとぉー、われらぁーのぉー、子孫のたーめーにぃー……」
     曲調が変わった。先ほどのような絶叫から行進曲風にアレンジがなされ、幾らか耳に入る声も心地よくなってきた。
    「我が国全土にわたってッ! 自由のもたらす恵沢を確保しッ! 政府の行為によってェッ!」
    「もし、おたくは何の部活ですか……」
     思わず話しかけてしまった。急に選手宣誓風に変わるものだから、意表を突かれて思わずつっこみを入れたくなってしまった。
  • 20 *美癒那* id:3e44gBO0

    2012-12-29(土) 02:01:26 [削除依頼]
    「はいッ! 我々は演劇部でありますッ! 私は部長を務めさせていただいておりますッ、岡エリーと申しますッ!」
    「あなたですか……」
     このような奇行に出るのも、納得の名前である。
    「岡さん。廊下で絶叫したりしてどうしたんですか。動物園の猿山への憧れを隠しきれなくなったのですか」
    「んー? いやあ、今日は嬉しいことがありましたからね!」
     いいこと、とやらに興味はないが、とりあえず訊いてみよう。
    「何が、あったんです?」
     すると岡エリーはひときわ嬉しそうな表情を見せ、
    「さっき、無くしたと思ってた文久永寶を見つけたんです。嬉しいの、なんの」
  • 21 *美癒那* id:3e44gBO0

    2012-12-29(土) 02:02:25 [削除依頼]
     ……まあ、そういうことだとは気付いてた。気付いてたさ。奇遇だな、どうせ古銭絡みだろうと思っていたところだ。
    「ほんとに、いつも、古銭ばっかりで「ぶちょーう! 先生が呼んでますよー!」
     突然、僕の声を遮るように二階から声がした。岡エリーを呼んでいるのは後輩だろうか、こんな先輩の元にもついてくる者がいるのだな、と不思議に感じた。
     階上に向けて「ごめーん、千和ちゃん! 今行くから!」と叫んだ岡エリーは、「よかったら、演劇部をよろしくね!」と笑顔を見せ、階段を駆け足で上っていった。残されたのは、呆気にとられる男子生徒が一人のみ。そして、先ほどのやり取りを回想して思う。
    「……莫迦、誰が入るか」

    「ごめんなさい済みません許してくださぁい!」
     彼女の声が階下まで届く。なぜか微笑ましいと思った。
  • 22 *美癒那* id:3e44gBO0

    2012-12-29(土) 02:06:25 [削除依頼]
    こんばんは。寝ぼけ眼の*美癒那*です。ひらがな表記すると*みゆな*です。ヘッドフォンでJ-ROCK聴きながら書きました。
    今回は正直なところ、前の2つよりも出来は悪いと思います。今まで思いつきで書いてきたのですが、今回は思いつきを下手にいじくっちゃった感がるもので……。

    関係ないですが、アスタリスクってすごく大切だなと思います。
  • 23 *美癒那* id:N5jR3hW.

    2013-02-26(火) 23:17:23 [削除依頼]
    【幕間ミニ小説】
     左足がない少年がいました。彼はちょうど一年前、クリスマスイブの日に事故に遭ってしまったのです。少年は悲しい気持ちにならないよう、布団の中でその日を過ごすことにしました。足を見なくて済むからです。
     しかしその様子を、サンタさんが見ていました。
    「可哀そうに。私からとっておきのプレゼントをあげよう」

     翌朝、少年が起きると、枕元に細長い箱が置いてありました。少年は怪訝な表情をして箱を開けました。そしてこう言ったのです。
    「右じゃないんだけどなあ」
  • 24 *美癒那* id:N5jR3hW.

    2013-02-26(火) 23:53:41 [削除依頼]
    4.アヒルと善意

     人生とは、みにくいアヒルの子に似ている。外見が醜悪であれば、それだけ周りから疎まれるからだ。……と言っても、僕は他人に避けられるような容姿の持ち主ではない。せいぜい「理屈っぽそう」「眼鏡が本体」「頭をもげば動かなくなりそう」と言われる程度だ。そして尾羽でさえもこの例えには該当しない。彼もまた彼で、無難な容姿をしているのだ。彼が莫迦であると悟らせない程度には。
     さて、今日は休日だ。実に二週間ぶりの休日だ。週休二日制のこの国で高校生が「二週間ぶりの休みだ」と言うのも変な話ではあるが。我が校は一応進学校というくくりなので、模試がわりと頻繁にある。土曜授業とかいう机上の独学平面美術の時間だってある。僕たち学生は、学校に拘束されて生きている。誰かに強制されたわけでもないが、その道から外れたものをオカシナヤツと見なし、自らと同じ立場で考えるのを放棄してしまう、そんな国民性が如実に表れてしまうのだ。要するに何が言いたいのか。うん、いい質問だ。今ここにいる僕の状況を、要素を取り上げて説明しよう。
     まずは「いつ」なのか。これはわざわざ言うまでもない、休日だ。それも、二週間ぶりの。僕も高校生だ、休日は皆と遊びに行くことだってある。
  • 25 *美癒那* id:N5jR3hW.

    2013-02-26(火) 23:55:19 [削除依頼]
     そして「どこ」か。今日はみんなと遊びに出歩いたわけではなく、一人でデパートへ行ったのだ。目当ての品物を購入し、ちょうど昼時になったので、店舗内にあるフードコートで食事でもしようと思ったのだ。
     続いて「だれ」か。これは勿論僕の事だ。ただ、目の前の席には見覚えあるシルエットの女生徒と、流浪者にしか見えないおっさんが座っているのだが。
     最後に「どうした」のか。ここを細かく説明せねばなるまい。
     腹を空かした僕はフードコートにふらりと引き寄せられた。そしてカウンターで適当に安めのラーメンを頼み、番号札を持って席についた。
     数分経って、僕の番号札の数字を呼ぶ声がする。ラーメンが出来上がったのだろう、椅子から立ち、お目当ての料理を取りに行った。ここまでは、問題ない。
     カウンターの方を見ると、なにやら揉め事が起きているようだった。いわゆるホームレスのような風体をした男の横で、若い女性が何やら喋っている。料理にゴキブリが入ってただの、具が足りないだの、そのようなクレームか何かだろうか。いずれにせよ、僕には関係のない話。隣のカウンターへと向かった。
  • 26 *美癒那* id:N5jR3hW.

    2013-02-26(火) 23:56:21 [削除依頼]
     しかし僕は聞いてしまったのだ。その女の声が、最近よく耳にする誰かの声と酷似していたのだ。そして振り向いてしまった。これが僕の最大にして唯一のミスだったのだ。
    「お! マー君!」
     かくして予感は的中する。もう何も言うまい、彼女の名前は岡エリーだ。アホにして秀才にして演劇部長、そしてアレな高校二年生……。
    「聞いてくださいよ、私さっきこのおじさん拾ったんですけど」
    「ひ、拾った、ですって?」
     おじさんは全身を小刻みに震わせながら、小さく「うむ、うむ」と頷いた。放置された虫歯が痛々しい。煙草と生ごみの臭いが漂ってきて……そう、臭い。臭いんだ。
    「そう、あまりに震えてて可哀そうだったからね、ご飯でも買ってあげようと思って」
    「……はあ」
     彼女はお人よしなのかただの莫迦なのか。いや、お人よしな莫迦なのか、あるいは普通の莫迦だ。いずれにせよ莫迦なのは間違いない、そこに「お人よし」が加わるかどうかの違いしかない。
    「なのに、店の人が売ってくれないんですよ。これだから下町人情のない人は」
     ここは下町ではない。とりあえず、彼女の握りしめた財布を見て、事情は分かった。
    「え、ええ。把握、しました。まずですね……」
  • 27 *美癒那* id:N5jR3hW.

    2013-02-26(火) 23:57:01 [削除依頼]
     彼女の財布の中にある永楽銀銭が現代では使えないということを、ゆっくりと説明してやった。少しだけ不服そうに頬を膨らませたが、最終的におじさんが「いや、オラは、ええがら。ゴミ箱さ、落ぢでる弁当ば、拾って食うがら……」と、寂しげな表情で去って行ったので、一見落着した。帰る途中にこちらを何度もチラチラと見て、出口付近ではもはや鬼の形相で睨んできたけれど。
     そして銀銭をしまった岡エリーはというと、「やー、しょうがないですね。ここは私のとっておき、現代通貨を出しちゃいましょう」と高らかに宣言して財布から100円玉を取り出すと、楽しそうにアーケードゲームをプレイし始めた。
     そして僕はというと。
    「お客さん、ラーメン」
     そんなことをした後のラーメンの味は――それはもう。
    「冷めて伸びて不味いんだよ……」
  • 28 *美癒那* id:8QmbIPS0

    2013-02-27(水) 18:40:27 [削除依頼]
    【幕間ミニコント】

    A「三日坊主の対義語は、半永久ロン毛だと思うんだ」

    B「なにそれ気持ち悪い」
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