Day Dreamer9コメント

1 零 id:xr53r95.

2012-09-22(土) 14:41:31 [削除依頼]

 濁ったものは何もない。
 どこまでも透き通っていて。
 喜びも悲しみも、何もない。
 何も変わらない。
 何かが生まれない代わりに、何かを失うこともない。
 誰にも出会わない代わりに、誰とも別れることはない。
 明日が来ない代わりに、忌まわしい過去もない。

 こっちは、怖いくらいに純粋な世界だよ。


————Day Dreamer デイ・ドリーマ
  • 2 零 id:xr53r95.

    2012-09-22(土) 15:07:46 [削除依頼]
    *****

     そういえば、僕は存在している。

     これが一番しっとりと馴染む表現だった。
     目に写る景色は、枯れ草が風になびく何処までも続く荒野。吸い込まれそうな薄青い空。たったそれだけだった。
     目に写る景色、と言ったけれど、本当は嘘。
     僕は目を持っていない。それどころか、体すら無いんだ。
     生きているのかどうか、自分でもわからない。
     そもそも、自分が何者かも知らなかった。
     でもどうしてか、意識だけは確かにある。それは間違いないと思う。

     ここは何処だろう。
     僕は、少しだけ考えてみた。
  • 3 零 id:xr53r95.

    2012-09-22(土) 15:38:31 [削除依頼]
     けれどやっぱり駄目だった。
     記憶が、これっぽっちも無かったから。
     数秒前に初めて存在し始めた気もするし、数千年前からずっとこの世界に居た気もする。
     でも、みんな泡みたいに曖昧になっていて、何も思い出せない。

     見上げた高い空に、薄い雲が掛かっているのを感じた。
     何もない、寂しい世界。なのだろうか。
     今の僕には、その“寂しい”も分からないけれど。
  • 4 零 id:xr53r95.

    2012-09-22(土) 18:12:20 [削除依頼]
     ……こんな世界に、人が居た。
     一人の少女が、荒野を歩いていた。
     時々立ち止まっては、枯れて倒れた長草を拾っている。

     僕には気づいていないのだろうか。
     僕には姿が無いのだから、それは当たり前だけど。

     風が吹いている。何もない世界で。
     いや、少女だけが居る世界で。
  • 5 零 id:xr53r95.

    2012-09-22(土) 18:52:06 [削除依頼]
     落ち穂を集めて、少女は何かを作り始めた。
     纏めて、束ねて、編んで。
     それは、僕の“カラダ”だった。

     “カラダ”を手に入れた僕は、少女に支えて貰いながら、ゆっくりと立ち上がった。とても粗末でお世辞にも上出来とは言えない“カラダ”だったけど、とても嬉しかった。

     やがて僕は、一人で荒野に立つことができた。
     何もない、何も変わらないはずの世界で、僕は出会い、僕が生まれた。

    「おめでとう」

     少女は優しく笑いながら言った。

     ありがとう。

     僕も答えた。口が無いから聞こえたかどうかは分からないけど、心の中で。草で出来た“カラダ”は、どこか暖かかった。
  • 6 零 id:xr53r95.

    2012-09-22(土) 20:51:21 [削除依頼]
     暖かさ。
     昔みたいな。
     何だろう、この感触は?
     記憶にないほど遠い昔、同じ暖かさを感じたことがある。

     僕はこの何もない世界で、初めて微かな“記憶”を見つけた。

     そうだ。昔はこんな所には居なかったと思う。
     此処とは異なる、別の世界。

     「どんな世界?」

     はっきりとは思い出せないんだけど。
     いつも、わくわくしていた気がする。
     自分が生まれ変わるのが。
     自分が新しくなるのが。
  • 7 零 id:xr53r95.

    2012-09-22(土) 21:14:30 [削除依頼]
     この暖かさ……。
     作ってもらう暖かさ。
     何だろう……。

     しばらく歩いていると少女は何処からか拾ってきた“タネ”をポッケから取り出した。
     小さな手で地面を掘って、彼女はその“タネ”を植えた。

     それは、何の種?

    「君のお友達だよ。……ううん、君の“コドモ”かな」

     コドモ? 僕の体を作っている草のことだろうか。

    「そう、“今度こそ”立派に育ててあげないと」

     今度こそ?
     
     その言葉に何か引っかかったけど、彼女の楽しそうな顔に懐かしさを感じた僕は、何も言わずに作業を見守っていた。

     “懐かしさ”を感じた自分に、少し驚いた。
     僕の中で、昔が蘇りかけているのかもしれない。

     何時しか荒野は緑の草原に変わっていて、風が吹いていた。
     日が暮れようとしている。
     久々に、時間の流れを感じた。
  • 8 零 id:xr53r95.

    2012-09-22(土) 21:48:18 [削除依頼]
     それから毎日、彼女はタネに水をやった。
     周りに生えている草を刈り取り、焚き火にして肥料にしたりした。
     僕も手伝っていた。

     彼女は本当に楽しそうだった。
     でも僕は同時に、何かのデジャヴも感じ取ってしまっていた。
     過去に何かあったのに筈なのに、僕が何かであった筈なのに、思い出せないのがもどかしい。
  • 9 零 id:xr53r95.

    2012-09-22(土) 22:22:33 [削除依頼]
     やがて、そのタネは芽を出した。
     緑色の双葉をつけた、元気のよい芽。

     あっ……、この芽は……。
     その姿に、僕の記憶が呼び覚まされる。
     僕な彼女に言った。

     思い出したよ。
     昔、僕が居た世界のこと。
     少しだけだけど。

     「そう……どんな世界だった?」

     彼女は僅かにうつむいて、何故か悲しそうな顔をして答える。
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