-Run-9コメント

1 タナカヒロシ id:i-GONZ.AL0

2012-09-15(土) 22:52:46 [削除依頼]
「父ちゃん!キャッチボールしようよ!」
父ちゃんが俺に野球を教えてくれた。ばかでかいドームで、豪快にホームランを打つ父ちゃんに憧れていた。
「龍(トオル)も大人になったら父ちゃんみたいに、あのスタジアムで野球をするよ!」
「対決だな、龍」
なんで・・・・・・。

冷えきった床に涙が落ちた。
  • 2 タナカヒロシ id:i-GONZ.AL0

    2012-09-15(土) 23:23:33 [削除依頼]
    「おい、屋島、金出せよ」
    坊主頭にはくっきりとラインが入っている。つり目の男が三人、いわゆるカツアゲをしていた。
    「も、もうお金がないよ」
    その瞬間、黒谷の野球バットが屋島の身体を打ち付ける。屋島はどさりと地面に崩れ落ちた。
    「金がねぇだぁ?バイトでもなんでもして稼げや」
    「ぶ、部活が」
    「うるせーんだよ!弱者野球部のキャプテンがはったりぬかしてんじゃねー!」
    再びバットが降りおろされた。しかし、今回は金属音をたてて屋島の身体の脇を強振した。
    「な、なんだ?」
    黒谷の横にボールが転がっている。どうやら、空振りの原因はこれらしい。
    「バットはボールを打つためにあんだよ」
    「あぁ?」
    後ろには見たことのない少年が立っていた。身長はけして低くないが、身長183センチの黒谷に反抗するのには無理があった。「てめぇ、いい度胸じゃねーか」
    「黒谷」は学校、いや、地元では相当有名な不良だった。町を歩けば、他校の生徒は道をあけ、消して顔をあわせない。
    「でかいタッパしてんな。野球部か?」
    「調子にのんな!」
    黒谷がバットを投げた。馬鹿力の黒谷から離れたバットは狂ったように少年に襲いかかった。しかし、少年は軽くしゃがみいとも簡単にかわしてみせた。
    「あぶねーなぁ。だから、バットは―――」
    少年の言葉を遮るように、次は野球ボールが少年の頭めがけて飛び込む。
    パシンッ!
    「!」
    「とっ・・・・・・とった」
    少年は片手でボールを掴むと、肩を回した。
    「中学生にしてはいい球投げんじゃん。だけど、肩の入れかたがあまいな。こうやって」
    少年は片足を振り上げた。
    「笑わせてくれる」
    黒谷は口を歪めた。
    「肩を入れれば」
    「!」
    黒谷は地面に倒れこんだ。壁に跳ね返った球が少年の足元に転がる。
    「な、なんだ・・・・・・今の」
    屋島は鳥肌がたった。
    「はっ、はやい」
    屋島はバッティングセンターの130キロの球を連想した。高校生の投球だ。
    「お、おめぇ、どこの高校だ?」
    黒谷の顔がひきつっているのが分かる。屋島がこんな姿の黒谷を見るのは初めてだった。
    「高校だぁ?ばかいえ、お前らの中学に転校してきた・・・・・・野上龍だ」
  • 3 タナカヒロシ id:i-c/yaEGV0

    2012-09-16(日) 10:34:47 [削除依頼]
    「野上・・・・・・龍?」
    黒谷は眉を寄せた。どこかで聞いたことがあるような。
    「野上だか、何だか知らんが、ふざけた真似しやがって。ただじゃすまさねーぞ」
    黒谷の隣にいる木村が言うと、またその隣にいる渡部が吠えた。
    「ところで、野球部はどこだ?」
    「野球部って、君、もしかして野球部に入るの?」
    屋島が目を輝かせた。
    「あぁ。グラウンドに行ったんだが、誰もいなくてよ。もう放課後なのにさ」
    「笑わせんな」
    黒谷は立ち上がって、制服についた土を払った。
    「野球部だぁ?そんなもんうちにはねぇよ。あんな球を放るところを見ると、それなりにいいピッチャーなのかもしれんがな」
    「な、なにぃ!野球部がない?」
    野球部がない中学校は珍しい。龍は想像もしていなかった。
    「い、いや。野球部はまだ―――」
    「うるせぇ!」
    黒谷は屋島を睨みつけた。
    「野球部だぁ?部員は俺達四人。野球はな、九人でやるもんなんだよ」
    屋島は顔を伏せたまま、涙をこぼした。
    「そういうわけか」
    龍は納得したように頷いた。
    「じゃあ、集めればいい。俺を含めてあと四人」
    黒谷は鼻で笑った。
    「それはいい考えだ。是非、頼むよ。新人くん」
    黒谷は、木村と渡部を引き連れてその場を去った。
    「なぁ、本当に野球する気なのか?」
    木村は黒谷の顔をのぞきこんだ。
    「んなわけねぇだろ。集まりやしねーよ」
    ・・・・・・俺がいる限りはな。
  • 4 タナカヒロシ id:i-c/yaEGV0

    2012-09-16(日) 15:38:30 [削除依頼]
    「屋島だっけ?」
    「そ、そうだけど・・・・・・」
    「早いとこ、集めちゃおうぜ。この学校、それなりに生徒数多いみたいだし、声かければすぐ集まんだろ」
    「無理だよ」
    屋島は素っ気なく言った。
    「黒谷くんがいるんだよ、うちの野球部には。他の生徒は近づけない」
    「アイツ、そんなにすげーやつなのか?」
    屋島は力なく頷くと、ひどく腫れた片目を抑えた。
    「じゃあ、アイツを説得して―――」
    「無理だって!」
  • 5 タナカヒロシ id:i-c/yaEGV0

    2012-09-16(日) 15:58:40 [削除依頼]
    「僕と黒谷くんは幼馴染みで、シニアから四年間、一緒に野球をしてきたんだ」
    屋島は転がっている野球ボールを見つめたまま、青く腫れた目から涙をこぼした。
    「黒谷くん、すごいスラッガーだったんだよ。僕達のチームが全国大会に行けたのも、黒谷くんのおかげなんだ。練習熱心で、努力家で、優しくて・・・・・・チームをひっぱってた。一緒に中学でも野球しようねって。僕達は中学に入って、迷わず野球部に入部した。黒谷くん、中学でもすごく活躍して、一年生から四番を打ってた。だけど・・・・・・」
    屋島の涙は勢いをました。下のコンクリートが黒く滲む。
    「先生が野球部の部室で煙草を見つけたんだ。その頃、僕達一年生で、二年生は野球部にいなかった。僕達、知ってたんだ、三年生が煙草を吸っているの。僕、三年生に脅されて・・・・・・それで・・・・・・」
    ―――
    「黒谷、お前だな」
    「ち!違います!僕じゃありませんっ!監督、信じてください!」
    「三年生が話してくれたよ。お前のためにな。すごく辛そうだった」
    「そんな・・・・・・。そうだ!屋島に聞いてください!アイツなら僕じゃないって、知っているはずです!」
    「屋島も正直に話してくれた。アイツは嘘はつかない」
    ・・・・・・屋島。屋島も正直に話してくれた・・・・・・屋島も正直に話してくれた・・・・・・屋島も・・・・・・。
    ―――
    「黒谷くん、停学処分になって。三年生が卒業して、戻ってきたんだ。もう一度、野球部として。だけど、黒谷くんはもう二度とユニフォームを着ることはなかった。黒谷くんはそれから問題行動を次々に起こして・・・・・・。僕のせいなんだ。全部、僕が悪いんだ」
  • 6 タナカヒロシ id:i-c/yaEGV0

    2012-09-16(日) 19:47:49 [削除依頼]
    「そっか。まぁ、俺には関係のない話だ。野球がしたくないやつはしなければいい。お前らの都合で野球ができないやつもきっといるはずだぜ」
    「僕達の都合・・・・・・」
    ―――
    「野球部募集!野球部に入りませんかぁ?初心者も大募集ー」龍は学校中にチラシを張った。「野球部募集」。
    「野球部だってさ」
    「アイツ、転校生だろ?黒谷のこと教えておかないとマズくないか?」
    ―――
    「見ろよ、黒谷。野球部大募集だってよ」
    黒谷はチラシになど見向きもしなかった。野上龍。面白いやつだ。
    ―――
    「よぉ!屋島!」
    「龍くん・・・・・・ずいぶんと派手にやってるね」
    「まぁな。早く集めないと、来年まで時間がないし」
    「そ、そう。そうだよね」
    「ところでお前は野球部続けるんだよな?」
    「え?それは、その・・・・・・」
    チャイムが鳴る。
    「あ、次、体育だし、早くグラウンド行こう」
    「おう」
  • 7 タナカヒロシ id:i-c/yaEGV0

    2012-09-16(日) 20:16:12 [削除依頼]
    「それじゃあ、いつものチームに分かれて、ゲームを始めろ」「ゲーム?」
    龍は首を傾げた。転校してきて初めて体育の授業だ。龍が「いつもの」を認識できないは当然だ。
    「野球だよ」
    「ま!マジか!テンション上がるぜ!」
    「龍」
    先生が龍を呼ぶ。
    「お前はAチームに入れ。ポジションは・・・・・・ピッチャーだな」「うぃーす」
    屋島が嬉しそうに笑った。
    「龍くん、Aチームのキャッチャーは僕だよ」
    「お、よろしくな」
    皆がポジションに入る。屋島はふと立ち止まった。「ポジションは・・・・・・ピッチャーだな」。何か引っかかる。妙な沈黙だった。
    ―――
    「プレイボール」
    「いいかぁ、屋島、気抜くなよ?」
    「龍くん、僕はこう見えてもキャッチャー出身だよ」
    龍くんの球が速いのは知ってるけど、僕だって四年間―――
    「!」
    ガツンッ!!!
    「や、屋島!大丈夫か?」
    先生が駆けつける。
    「な・・・・・・何だよ、今の」
    「いま、何が起こったんだ?アイツが投げたんだよな?」
    「大丈夫です、マスクに当たっただけなんで」
    速い!まるで見えなかった。指から離れて、気づいた頃には・・・・・・。
    「だから、言ったのによー。まだ力を抜かないと駄目か?」
    「お、おい、今のが本気だろ」バッターボックスに立っていた生徒の身体は震えている。先生が笑った。
    「アイツはまだ本気なんか出してないよ。三年前、シニアで全国の頂点に立った・・・・・・」
    ―――
    黒谷、木村、渡部のいつもの三人組は野球部の部室にいた。木村が天井を眺めながら呟く。
    「そういやぁ、野上龍ってどっかで聞いたことあるような・・・・・・」
    黒谷は野球ボールを握りながら、静かに言った。
    「野上龍。元プロ野球選手、野上総一の息子だ」
    アイツだよ。三年前、全国を騒がせた天才球児。野上龍。
  • 8 タナカヒロシ id:i-BybBdgv1

    2012-09-17(月) 19:13:14 [削除依頼]
    「野上総一って、あの野上か?レイダースの」
    「先生、勝手にベラベラ話さないでくれる?」
    「あ、悪い、悪い。先生、熱血的な野球ファンでな」
    先生は頭をかくと、申し訳なさそうに頭を下げた。
    「あの人、亡くなったんじゃないっけ?たしかクライマックスシリーズの最終戦で・・・・・・」
    「よせよ、気の毒だろ」
    内野手の話し声は全て龍の耳に入っていた。誰よりも驚いているのは屋島だ。
    「野上総一の息子・・・・・・」
  • 9 タナカヒロシ id:i-BybBdgv1

    2012-09-17(月) 19:30:42 [削除依頼]
    その噂は瞬く間に広まった。
    「すげーなお前、野上総一の息子なんて」
    「どうりで、野球がうまいわけだよ」
    いつかはこうなると思っていた。龍はシャープペンをいじりながら、考えごとをしていた。早く集めないとな、野球部。
    「いい気分だろうな、野上」
    聞き覚えのある声。木村だ。もちろん、黒谷と渡部もいる。
    「また、お前らか。今度はなんの用だよ」
    「素人相手に本気でボールを投げたんだってなぁ?」
    黒谷は口を歪めた。木村は甲高く笑っている。
    「んなわけねぇーだろ?力抜いたよ」
    「まぁ、部員集め頼んだよ、新人くん」
    木村は龍の肩を叩くと、またニヤニヤと笑出した。
    「お前ら、野球部だったのか?」
    「あぁ?」
    龍は木村の笑方を真似した。
    「この前、俺が軽く投げた球でしりもちついてたからよ。野球部だったら、あんな抜け球でビビるわけないだろ?」
    「言ってくれるじゃねーか」
    龍は立ち上がった。
    「勝負しねーか?一打席勝負だ。俺が投げて、お前が打つ。お前が負けたら・・・・・・野球部はやめてもらう。俺が負けたら・・・・・・」
    「うさぎ跳びで、グラウンド百周してやるよ」
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