LIE〜偽りの学窓〜22コメント

1 聖蓮 id:0DkI9.x1

2012-08-31(金) 01:17:13 [削除依頼]
初めまして。

初めて投稿させていただきます。
これは別サイトで自分が書いて放置していたものを、加工、掲載させていただくということなので、ご了承ください。。

この作品は、少々Blackでダークな面もありますが、一応学園モノ、恋愛です。

読んでいただけると、嬉しいです。
  • 3 聖蓮 id:0DkI9.x1

    2012-08-31(金) 01:37:27 [削除依頼]
    ―――「LIE」。
     彼らは、その存在をそう呼んだ。
     偽りと、闇に溺れた、孤高の存在として。

     都会の、鬱蒼と茂るビル群の陰。

     黒いタンクトップを着た、黒髪の真っ白な肌の長身の男が、暗がりで機械的な嘲笑をしていた。
     その隣に立ち不敵な笑みを見せるのは、黒いパーカーを着た、流れるような漆黒の長髪の少女である。

    「誰かがいきなり襲い掛かってきたと思えば……、クスッ」

     音を立て吹き抜ける乾いた風に、冷たく冷艶な声がある種の潤いをもたらす。

    「これからは、相手に、気をつけることだ」

     冷めた目で、横たわる二人の男を見下ろす男の声は、少女のそれより更に感情を含まず、冷冷然としていた。
    只者ではないオーラを発する二人の足元に転がるのは、彼らを奇襲し、敢え無く返り討ちされ一撃で失神した、彼らにとっての「虫けら」だった。

    「……最近は、物騒だな」

    「ちょっと、シメなきゃいけないかもね」

    「俺が、やり方標的その他諸々(もろもろ)は練っておこう、お前は、受験勉強でもしていろ」

    「……、……、受験勉強……? 勉強なら今まで遊ぶ暇なくして、嫌という程やっている……、そんなことは、お前も百も承知でしょ……?」

     少女はパーカーのフードを深く被りながら、微かに不機嫌な声で言った。
     二人の言葉には横たわる姿を面白がるような様子さえあった。だがそんなことは一瞬で、数秒とたたないうちに、虫けらのことなどは、既に二人の眼中から外れていた。
     それだけ、二人は数多くの場を経験しているのだろう。


     二人は細い線となって上からのぞく遠く青い空を見上げ、いたってクールに言葉を交わした。
    「フッ、だな。ただ……、桜里生として、俺が、ちょっと教えてあげても、いいよ?」

     だが突然、男は脇に立つ少女の肩を掴み、壁に一回り小さい身体を押し付けるとその耳元でささやいた。男の冷たい声は、鮮やかで蜜のような響きを持った物に瞬間的に変化していた。

    「……、何? あたしなんかに―――しかも年下に、勉強を教えていたら、君がそうやって口説いてきた彼女達が、相当怒るんじゃないかな? それにこのあたしに右手である君が手を出すなんて、どうなの?」

     少女は、うつむいたまま、フードの下でニヤッと笑いながら応戦した。そうして壁に押し付けられたから、見事に一瞬で男の腕をすり抜け、黒い身体の背後に立った。

    「……、四月になったら桜里だから。 又、押さえは抜いて、派手に統制できるでしょ……?」

     男は「チッ」と小さく舌打ちすると、少しだけ笑いながら、横目で黒いパーカーを見た。

    「待ってるぜ。……、つうかお前も、演劇部はいるか? 部員、少ないけど」

    「それもいいかもね」

     再び冷然とした態度に戻っていたが、硬い表情の下では静かに笑いながら、二人は暗い道を、光の差す方へと抜けていった。
  • 4 聖蓮 id:0DkI9.x1

    2012-08-31(金) 01:44:08 [削除依頼]
    一人の男が、白く大きな建物へと入っていった。
     そこは、この国の首都における、最高偏差値を誇る公立高等学校、「桜里高校」。
     激しい受験戦争を見事勝利した秀才と天才しか入学を許されないエリート校で,この学力最重視の学力社会の典型を示すような、天才とガリ勉の巣窟として著名なこと限りなしの超難関進学高校である。
     勿論学習内容も相当高度であり、彼らの勉強量は半端ではない。
     しかし、生徒達による活動は相当盛んであり、国からの予算も多くいっぱしの私立高校以上の環境が整っている。私服登校が許可されており、部活もどれも全国レベル、イベントも数多く行われている。

    ―――そして、忘れてはいけない、その全てを管理する桜里高校生徒会の執行部のメンバー達。激戦の選挙を、全生徒から評価されて勝ち抜いた、優遇対象に正式に認められた屈指の秀才天才達……、のはずなのだが。
     彼らは、今日も生徒会室で勉強のベの字もなく、ゆるーい各々のリラックスタイム(?)を過ごしていた。

     桜里高校生徒会部室は、管理棟4階、本館との長い連絡通路の先、学校の一番奥に位置している。
     黒い扉を開ければ、まるでどこかのオフィスのような設備の広い室内には、支給された一人一個()以上のデスク、パソコンに最新タブレット端末(計20台以上)があるに加えて、絶えず動くコピー機、数々の書類、資料ファイル、アンケート用紙、何かのレシート、スケートボード、フリフリレースのピンクの枕、何やら解せぬ字の書かれた年代物の掛け軸、ホルマリン漬けの古そうな生物(謎)、募金で集めたお金、段ボールの山、筋トレマシーン、保健室のベッド、2リットルの空の炭酸飲料のペットボトル、その他よくわからない私物が大量におかれていた。
     それぞれ用途があるのかは一見不明だが、これだけで強烈な個性がうかがい知れる。
     
  • 5 聖蓮 id:0DkI9.x1

    2012-08-31(金) 01:46:29 [削除依頼]
    「おい、小藤ぃ〜! 今月の海外への募金活動、いくら集まった〜?」
     一番整頓されていない机に土足で座って、カフェオレを飲みながらボリボリ激辛ポテチを食べる、茶髪でどこからどう見ても不良っぽいチャラ男が、相手に背を向けながらのんきに言った。
    「……」
    「……、無視するなよ……、って……ハァ、こいつ……!」
     制服を格好良く着崩すこの茶髪男は、自らをシカトした仲間の少女のデスクに目を向けると、けだるそうにため息をついた。
    ―――果たして、名前を呼ばれた少女、小藤 愛衣奈は、小銭の入った箱を机脇に放置し、書類を枕に机に突っ伏して爆睡していた。
     実に愛らしい真っ白な顔が安らかな寝息を立てる姿は、本当に背中に羽を描けそうである。
     だが対照的に、だらしなく開いた口からはツラツラとよだれが流れ落ちていた。

    「……ってオイ! 寝てるのは未だしも、アンケート用紙汚すな!よだれ!オイ、お前起きろっての!」
     ところで、事態に気がついた茶髪男が大騒ぎしている背後では、ひっきりなしにピーピーと機械音がなり、カタカタと機械的なタイピングの音が止まずに続いていた。

    「仕方ない、敷島。小藤が寝てるのはいつもの事……、原因は、私にもわからないけど。まぁ、窓から突き落としても、彼女どうせ起きないから、起こそうってのは無謀ね……突き落としたいのは山々だけど」
     茶髪、敷島の言葉を受け、サラッと暴言を吐いたのは、さっきからずっとパソコンに向かい手を動かし続けている、不思議オーラの鳶色の長髪パッツンの眼鏡少女だ。

    「それより小藤、せっかく『病弱な誰かさんが倒れた時用』のベッドがあるんだから、使っちゃえばいいのに。椅子で寝てると関節痛くなるのに。そうしたら、怒られて本当に突き落とされたりして……」
    「あとちょっと、」と手を動かしながら、敷島の視線を無視してぼそっと小さな声で呟く。
    「……、ところでお前、今日は株式やりながら、一体何調べてんの……? 今度は個人個人の好きな人に続いて、学生リストに、それぞれ個人の家族構成とか家庭状態とか、はたまた家系図とか? なんか、変なもん載せようとしてんじゃないよな? それともあれか、好きな人がわからなかった奴らへのリベンジ調査か?」
    「……、家系図なら、大方集まってるが、バカね。今日はふざけてない……、できた。見て? レポートなの」
     深緑の眼鏡の彼女は、あっさり敷島の言葉を掃き流すと、ようやくキーを打つ手を止めた。
     敷島は机に土足のまま立ち上がると、高く並ぶパソコンの上空をひとっとびし、彼女座る椅子の横に着地した。
    「あー? 何よ何よ……? 何やってんの……?」
     敷島が覗き込んだ先にある明るい画面のテキストは、こまごまと極小の字で何やらびっしりと書かれていた。
    「……、へぇ……?」
     敷島は目を鋭く光らせると、無言でそれを読み始めた。
  • 6 聖蓮 id:0DkI9.x1

    2012-08-31(金) 01:48:02 [削除依頼]
    続く……。

    いやぁ、この先のレポートが悩みです。
  • 7 ブラック id:ZmQ1LWc.

    2012-08-31(金) 02:14:52 [削除依頼]
    わたしも今日から書き始めました!
    お話、とっても面白いです。
    おたがいにがんばりましょう!!(^v^)
  • 8 聖蓮 id:0DkI9.x1

    2012-08-31(金) 02:17:51 [削除依頼]
    【2年6組 上守 沙柚(うわかみ さゆ)〜現代社会における、学生裏社会の実態とは〜】

    ――この国に存在する、数多くの学校。特に人口の集中する首都圏には、数え切れないほどの小学校、中学校、高校、その他諸々の教育の場が敷かれている。
     だがそれらのウラには必ず、閉ざされた「闇」が広がっている。

     その「闇」が集う場所、それがこの国における首都圏一帯の、暗黒の学生裏社会である。

     そこに暮らす「闇」の持ち主は、もちろんの如く膨大な数の小学生、中学生に、高校生達だ。
    学校内の小さないじめから、警察沙汰の傷害事件、金品巻上げに盗難、ちょっとした殴り合いから、はたまた―――。彼らが行うのは、この荒れた国の学窓にて日々絶えぬ、「非社会的」な学生達の「非行」。

     近年のマスメディア一般は、何においても彼らの行動に注目し、彼らを営業のおいしいネタとして散々に取り扱う。おかげで国は日々闇に生きる学生達の存在に、いっそう不安定に揺らぎ、崩壊への一途を辿る。
     秩序のない、乱れきった社会の鏡として。

    だが、闇の世界にも「秩序」は存在する。形態は、支配者である「帝王」を中心とする、弱肉強食ピラミッド型だ。
     
     多くの学生がップ「帝王」を目指し、日々暗闇の中で戦う。実力主義であるこの世界に、血筋や身分、金、学力、そんなものは何一つ関係ない。そして彼ら学生は、それに憧れてこの世界に入ったものが大多数で、争いと支配が、彼らの本望なのだ。

     負けは許されない、生き残るには常に、「勝者」であらねばならない。全てを支配する真の「勝者」に必要なのは、数々の修羅場を生き残り、仲間や敵を蹴落として這い上がる事のみ。

     そして「勝者」は敗者達を従え、自らを頂点とするグループとシマ作り、周囲の同様の連中を喰らい支配することで、全ての頂点へとのしあがろうとする。
    「勝者」は、常に自らのグループ内に目を光らせ、裏切り行為を防ぎ止めながら、周囲の連中の攻撃や侵入と日々戦う。時には複数のグループと連合を組み、ひとつの大きなグループを破滅へと導く。学生達のグループは日々発生と消滅を繰り返し、争いは絶えることを知らない。

     因みに激しい体力戦から嘘と裏切り騙し合いの頭脳戦、その戦い方は様々であり、無数に在るそれぞれのグループの個性もまた、同様である。

     だが闇世界に、「帝王」と呼ばれる絶対最上の支配者は、すでに君臨していた。

     「帝王」にとって、日々戦いを繰り広げる彼らはもはや、闇のさらにその影でコソコソと発生と破滅自滅を繰り返す、取るに足らない虫ケラでしかなかった。
     闇の世界、その全てを牛耳る「帝王」は、皆さんご存知だろう……、「偽り」の名を持つ―――「LIE」。
     
     漆黒の面紗(ベール)に身を隠す、正体不明のたった一人の少女である。

     だがここ一年間、「LIE」が裏社会の表舞台に姿を現したことは、たったの一回足りともない。
     
     彼女を支える支配者達も最近は然り、である。彼らの存在が、闇社会の中で軽視されはじめている今。
     下層部の学生達が数多くの「非行」を繰り返す中で、彼らは一体何をしているのか。

     「帝王、LIE」。それも、既に過去の物語となりつつあるのか?―――
  • 9 聖蓮 id:0DkI9.x1

    2012-08-31(金) 02:20:20 [削除依頼]
    「……、過去って、なんだ……、上守?」

    「……」
     7人中たった3人しかいない生徒会部室を、重々しい静寂が包んでいた。

    ―――その時だった。

    「……あの、上守さん、敷島さん。何、やってるんですか……? 頼んでおいた、募金の集計とアンケート用紙の各クラスへの分配は……って、……小藤さんは、又、寝てるんですか?」
     
     白い扉を開けて、長身のヒョロっとした男が、困った顔で静かに室内に入って来た。
     
     「病気か……?」と思うぐらいの真っ白な肌に、顔にかかる巻き髪は対象的な漆黒だ。黒縁の眼鏡をかける彼は誰がどう見ても、典型的なガリ勉派の桜里生だ。なんとも控えめな表情が、その陰気さを物語る。しかも彼の周辺の空気だけ、どんよりジメジメと嫌な湿気を含んだものに感じられそうな勢いだから、見事である。

    「又、僕が全部仕事やるんですか? はぁ」
     
     執行部のメンツの怠け具合を知った男の周囲の空気が、どんどん重苦しくなっていくのは、もはや言うまでもなかった。

    「まずいんじゃねえ? おい上守、お前どう思う? 怒ってる?」

    「さあ。でも、主犯者は小藤だから」

    「だからなんだよ!」

    「キレたりはしないと思う」
     ぼそぼそと切羽詰まった顔色で話しかける敷島に対し、上守は見た目非常に冷静に見えた。

    「敷島、仕事、今日もサボったんですか?」
     ふと、男の笑顔に影が奔る。

    「あ!静夜(せいや)先輩〜!」
     しかし、その時部屋奥から、寝息の代わりに可愛らしい甘い女子の声がとんできた。
     同時に、男は、さっきまでの、困った笑顔に無事戻った。

    「げ、小藤、起きやがった……! なーんで!? つうか五柳(こりゅう)、今日は、どっかの高校に。演劇部部長&生徒会会長として、何か話しに言ったんじゃなかったっけ? 帰ってくるの早えーな」

    「……お帰りなさい〜会長っ!仕事、がんばってくださいね」

     微笑む小藤と、困ったした五柳は一瞬だけ、その視線を交差させた。
     彼らは皆、小藤のクリクリした目に浮かぶ、喜びとまったく別の色に、気づかなかった。

    To be continued......
  • 10 聖蓮 id:0DkI9.x1

    2012-08-31(金) 02:24:02 [削除依頼]
    ※すみません。

    行間に慣れなくて、つい狭めてしまいました。

    それと、ダッシュが――ではなく、―――となっていました。
    すみません。
  • 11 *玲乃*【mai】  id:aHam.i1.

    2012-09-01(土) 15:38:50 [削除依頼]
    【あなたの小説読んでみたいな】

    文の開け方も『…』の使い方もOKだと思います!

    描写もよくできていて、大抵の事は文章を読んでいて

    想像できました!!

    アドバイスは『!』や『?』ではなくて『!』や『?』と

    少し小さめに書いてみると見やすいかもと思います!!

    ぜひ参考にしてみてください。

    以上!ご利用ありがとうございました!

       by/*玲乃*
  • 12 聖蓮 id:f.3Ugf4.

    2012-09-17(月) 02:42:43 [削除依頼]
    「おお〜深來(みらい)ちゃんが来たぞ〜! おはよう〜!」
    「ハハッ、今日もカワい〜ね〜! アハハハハ」
     都内にある、とある優等学校。私立開央学園高等部。この国の私立高校の中でも、なかなかのお金持ちが集まった、比較的偏差値の高い、有名進学校である。
     
     梅雨の雨が静かに音を立てる、どんよりとした空の下。
     きちんと整備された校舎の廊下では、一時間目の授業を終えた5〜6人の男子生徒達が、廊下でおしゃべりを始めていた。
    「そういえば、俺、みらいちゃんに『好きな男いるの?』って聞いてみた」
    この学校の制服の、グレーのズボンとジャケットを着た、金髪の生徒が言った。顔つきから、どうも外国の血が混ざっているようである。
    「マジ〜? うわ、なんて言ったの? お前のことスキって?」
    「――嫌、あいつ、その後なんて言ったと思う?」
    「何〜?」
    「『わ、私、芸能人とか、興味、無いんで……』だってよ! 意味わかんなくね?」
    「は、流石
    さすが
    みらいちゃん! やっぱ頭オカシイわ〜」
    「アハハハハハハハ」
     彼らはリーダーらしき金髪に青の瞳の男を中心に、冷たく嘲笑した。
    「……?」
     ふと、教室の扉に寄りかかっていた黒髪の一人が、廊下の階段に続く方に視線を向けた。
    「わ、来た来た〜! 今日も遅刻だぜ?」
    「噂をすれば影、いいタイミングじゃん」
     とたん、彼らは陰のあるニヤニヤした笑顔で、その方向を見た。
     その視線と声の先から教室に向かってくるのは、汚れ、黒ずんだ制服を着た、ダサい三つ編みの女子だった。
     赤い眼鏡をかけうつむいたまま、そわそわと挙動不審に歩く。
    「おはよ〜! みらいちゃん! 今日も、カワイーね〜」
    金髪の生徒が、翳った笑みで白い手を女子の肩に置く。
    「……!」
    女子はそれに一瞬体をビクつかせると、慌てて肩を手から離す。
    「アハハハハ」
     男子生徒たちの汚い嘲笑に彼女は怯え、逃げるように教室に入った。
     でも、そこに待っているのは、クラス全員の冷たい視線。
     それが、いつもの朝の風景。
    ―――だが、今日は違った。
    「黙れ、雑魚」
     冷ややかな殺気を帯びた声とともに、黒い髪がサラッと靡く。
    「!!!!!!」
    金髪の男は、手を掴んだ驚くほど強い力に、目を丸くする。
    次の瞬間、すでに彼らは地に転がっていた。
    「ちっとも面白くないから? そうだ、お詫びに、金、いただくから」
     痛みにうめく彼らの、かすんだ目に映るのは、いつもの三つ編みの少女ではない。
    ―――黒髪の、鋭い目つきの猛獣だった。
    「……ま、まさか、LIE……!?」
    少女は不敵に微笑み、教室に飛び込んだ。
    教室が、悲鳴であふれるのは、そのすぐ先のこと。
  • 13 聖蓮 id:f.3Ugf4.

    2012-09-17(月) 02:43:24 [削除依頼]

    ―――楽に、なりたい。苦しい。悲しい。寂しい。……辛い。
     いつになったら、この痛みから、開放されるのか。
     運命の悪魔に、見逃してもらえるのか。
    ―――それとも、勝つしかないのか……?
     何も、わからない。
     コレが、私なんて。
    ―――LIEって、こんな情けない奴だったっけ……?
     誰か、助けてよ。

     その日も、彼女が微かに想像したような、大事件が学校に起こることはなかった。

     彼女は、今日も、クラスと学年中の遊戯の対象となり、あげるとキリがない程の、幼稚で過酷で陰質で、残忍ないじめに、ひたすら耐えるしかなかった。
     そして、疲れ切った淀んだ表情で、俯いて家への帰路につく。

    ―――その時は、突然訪れた。

    「あれ、みらいちゃんじゃね? おーい! みらい!」
     午後四時、急いで校門を出た矢先、のろのろと歩く女子高生の背中を、若い男の笑った声が追いかけた。
    (……っ)
     少女はそれを聞き、一瞬戸惑いがちに目を細めると、進む速度を急に早めた。
     たどたどしく不安定に繰り出されていた足は、ぎこちなさを残したまま速度を増し、些かならない違和感を醸していた。
    「ッチッ、おい! お前のせいでみらいちゃん、逃げちゃっただろ! ……そうだ、家まで尾行してみね?」
     少女と同じ校章を付けた金髪の男子高校生が、先ほど叫んだ茶髪の仲間をニヤニヤしながら睨みつけた。そしていいことを思いついたと言わんばかりに、陰った笑顔で笑う。
    「いいね! やろう、気づかれないようにね」
     彼ら二人と一緒にいた、巻き髪に淡い化粧をした女子高生が、茶髪と同様にそれに同意した。三人はターゲットの同級生を視線だけで追いながら、道の端を素早く進んでいく。
     一方、少女は人の多い商店街へと歩みを進めた。
     車の通行は殆どないものの、多種多様の店が並ぶ道は、ただでさえごった返している。三人は内心、「よくも面倒くさい道を通ったな!」とイラついていたが、最早少し気をそらせば標的を見失ってしまいそうな状況で、遠くに見える制服姿を追うことに集中していた。
     一方、少女は後方からつける三人組の姿に、気が付いていた。
     商店街は本来の帰宅ルートとは大逸れたものであったが、それは三人を撒けるとよんだからだった。
     しかしどうやら、三人はわるふざけだったのが、相当真剣になってしまったらしい。それにしても、結構な人通りの中よくもまあ見失わないなぁと、思わず舌を巻きたくなる。
    (走ろう、かな……?)
     耐えかねた少女は、思わず走って振り切る道を選択した。
    「あ、みらいちゃん、走り出したよ!」
    「チッ、むかつく……、この状況じゃあ、人が邪魔で走れねえし」
     三人はすぐさまそれに反応したが、人の列が邪魔になってなかなか走る、なんてことはできない。相手も同じ人ごみの中を走っていたわけだが、少しばかり気をせかしていた三人は、そのことに気が付かなかった。
    「あれ、あっ、見失っちゃったよ……?」
    「ハァ、疲れたな」
    「その程度でか? でも、俺も見逃した。悔しいな。みらい」
    「またさ、今度おっかけてみようよ? でさ、今日はせっかく商店街来たんだからさ、名物クレープでも食べて遊ぼうよ。いいでしょう?」
    「……取り敢えず、ここまで来たんだ。それも悪くない。キミの希望だったらな」
    「そうだね〜、俺も、クレープ食いてえ。腹ガチ減ったんだけど」
     突如角を曲がって視界の奥から消えた少女の姿を追うのは諦め、結局三人は、クレープ片手に商店街で遊ぶことにした。
  • 14 聖蓮 id:f.3Ugf4.

    2012-09-17(月) 02:43:36 [削除依頼]
    (撒いた……? いや、曲がったところを見られたかもしれない……)
     少女は、後ろを気にしながら、まだ、ぎこちなく、走っていた。
     撒けたのならいいのだが、三人が「おとり」であるということもある。こっちが撒いたと油断し一息ついたところで、別に追っていた奴らが絡んできたりするかもしれないし……、油断はできない。
     少女の視線は一見怯えているように見えたが、実は隙なく後方を観察していた。
     やがて、割と細い住宅地の路地に入り込む。流石にただの高校生は、ここまで深追いしてこないだろう。それに人気もないし、ここまできたらもう安全だ、少女はようやく、後ろを振り向きながら走るのを、止めようとした。
    ―――その時、白いシャツが、視界にうつり込んだ。
    「っ……!?」
    「キャアッ!」
     少女が、小さな悲鳴をあげた。わき腹に勢いよく何かがぶつかり、勢いよくバランスを崩す。
     突然の事で、なまった身体は動かなかった。代わりに目だけ、道に立つ家が傾くのを抜かりなくとらえた。
    ―――倒れる!
     だが、その直前、背後から腰を締め付けられた。
     傾いた世界はそこで動きを止め、ゆっくりとまっすぐに引き戻された。
    「あ……」
     どうやら、誰かにぶつかったらしい。そして、その相手が助けてくれたようだ。力からして男であるのは間違いない。
    「だ、だいじょうぶ、ですか……?」
     少女を腕の中に抑えたまま、白いシャツの男は言った。
    「はい……、……、……!?」
     青年は、眼鏡の下、不安げな優しい眼で、少女の瞳を覗き込んだ。
     だがその瞬間、少女の瞳孔が最大限に広がった。
     悪寒のような、恐怖に近い感覚が、背中から手足の先まで一気に広がった。鳥肌が立っていた。
    ―――怖かった。
    「……? ……。……、どうか、しましたか? どこか、痛いんですか?」 
     少女の表情が明らかに硬化したことに、青年は少し押し黙り、また不安げにまばたきを繰り返した。
     少女の顔を見つめるのは、黒い巻き毛に黒縁眼鏡をかけた、整った顔立ちの本当に色白の青年だった。
     白いシャツの胸のポケットには、桜をモチーフにした金色のピンが刺さっていた。
     この地区の学生誰もが知るそのエンブレムに、思わず尋ねる。
    「さ、桜里……?」
    「あ、ああ、いや、うん。それで君は、開央の生徒さん……だよね?」
     青年が、いかにも自信なさげな声で言った。
    「あ、は、はい……大丈夫です……す、すみませんでした、失礼します!」
     だが、少女は明らかに震えた声で認めると、前髪を片手でいじりながら、慌てて青年の腕を振りほどいた。そのまま背後を振り返らず、住宅街を全力でひたすら駆け抜けた。

     その場に一人残された青年は、暫く、遠ざかる後姿をキョトンとしたような顔で見つめていた。
    ―――なんだろう、この違和感は? 何故、あれほど慌てて逃げた?
     微かに眉を細め、視線を下に落とした。
    「……?」
     すると、青いポケットサイズの手帳のようなものが、地面に開いたまま落ちているのに、気が付いた。
    「学生、手帳……? 今の子の物……?」
     一瞬周囲を見回すと、青年はそれを、屈んで手に取った。
     パラ、と左手でページをめくると、なにやら落書きらしいものや、破った跡などが数多く見受けられた。だがひとまずそれは流し、「私立開央高等学校 生徒手帳」と書かれた表紙の、裏をめくってみた。
    「……小林 未來
    みらい
    、私立開央高等学校2年C組12番……」
     小さな声で、呟いてみる。
    「未來……。みらい……? み、らい……!?」
     だがその名を繰り返すうち、青年の目つきは、はた目から見てもわかるぐらいに鋭くなった。
     ハッ、と息をのみ、その名と貼り付けられた陰気な証明写真をまじまじと見る。
     記憶の中から、フードの少女が小さく告げた別れの言葉が、浮かび上がった。
    「まさか……コレは返す前に、上守
    うわかみ
    に調べてもらった方が、よさそうだな」
     青年は、自分のズボンのポケットに、少女―――未來の学生証を突っ込んだ。
     その表情は、今までの臆病そうなものとは、まるで別人のものだった。
  • 15 聖蓮 id:f.3Ugf4.

    2012-09-17(月) 02:47:21 [削除依頼]
    「おはよう」
    「おはよう、加藤くん」
    「おう、お早う」
     時刻は、朝7時45分。
     生徒が続々と登校し始め、今日も「勉強大好き桜里」の、真面目な一日がはじまった。
      
     生徒たちは規定の黒鞄に教科書、本、参考書やらを詰め込み、基本的に硬い表情で個々歩みを進めていた。
     知り合いに多少あいさつすることはあっても、そこで仲良くしゃべる、等ということはない。
     冷徹というわけではないが、人間関係に淡泊であり、基本勉強第一。それが、桜里生がり勉派の特徴である。
     因みに言っておくが、もう一部の少数の天才くん、つまりは桜里を賑やかしている連中は、基本的に定時に登校することがないので、必然的にこうなるわけだ。
    ―――だが。
     例外、というのは、必ずどこにでも混じっている可能性がある。
    「ヒヤアァーーーーーーーーーーーーーーッツホーゥ!」
     奇声をあげながら、物凄い勢いで、スケートボードで生徒を突き抜けた者、役一名。
    「し、敷島……」
    「……危ないですよ。……」
     彼は、派手な茶髪に365度、面も裏も加えて上下ともに、いかにも不良な外見をしていた。
     今日は、早朝にしては人が多いな、なんて思いつつ、そのまま猛スピードで廊下に突入する。
    「あああああ、どいてどいて〜〜〜〜〜! 俺、五柳より早くついて仕事しないと、今日こそこの世が終わっちまうゼ〜〜〜〜〜〜〜ッ! だからてめえら、どけーーーーーーーッ!」
     だが本人は、相当切羽詰っているらしい。周りの眼を全く無視し、スケボを暴走させて長い廊下を驀進していた。
     ふと、左手のアナログ腕時計で時間を確認する。
    「まだ6時45分! いや、今6分になったッ! よっしゃアー助かったゼ! もらったあッ!」
     そしてわずか3分で、不良茶髪の敷島は目的地、生徒会部室の前に辿り着いた。
    「これで、いつもの五柳のまま……第二の人格は眠ったままだッ……!」
     敷島は息ひとつ乱さないまま、光が照らす生徒会の黒い扉を開けた。
     その先の薄暗い空間には、誰もいない。
     それを見て敷島は、ニヤッと笑った。
  • 16 聖蓮 id:f.3Ugf4.

    2012-09-17(月) 02:47:48 [削除依頼]
    「うし! 一番乗り。でもって多数決の持ち票プラス1〜! ぜってー、持ち票集めて制服の改造可能を校則に付け加えてやる」
     電気をつけるとしたり顔で生徒会部室を見回し、言った。
     因みに、持ち票というのは執行部の話し合いにおける多数決の際の、一人あたりの投票可能な票の数である。
     基本的に事項を決定する多数決は一人一票なのだが、桜里の生徒会執行部は何故か、一人複票という原則をとっていた。
     そして、毎日、その票を部室到着が一位だった執行部員が手に入れる、というわけだ。
     持ち票が増えればそれだけ生徒会での決定権が掴める。そうすれば大きなアクションができる。
     厳密に言えば、更に持ち票についてのルールは更に詳しく決まっていたが、この早い者勝ちルールのおかげで、生徒会執行部のメンツのやる気が保たれている部分もあった。
     敷島はニヤニヤしながら、カラフルに落書きされた黒い鞄からパックの紅茶飲料を取り出し、ストローを飲み口に刺した。
    「モーニングコーヒーじゃなくてモーニングティー。へへ、おしゃれジャン? 俺ぃ。さあ、仕事〜」
     紅茶を一口吸いながら、定位置――回転式椅子の上にしゃがみ、笑う。
     だが、その笑顔はすぐに凍りついた。
    ――7時49分、そして50分。
     机の上のデジタル電波時計が光り表す時間。6時じゃなくて、7時。ありえない。
     敷島は、カッコイイと思ってつけていたアナログ時計を、呪った。……デジタルにすればよかった!
    (この時間なら間違いなく、五柳来てるよな……上守も。小藤は例外として、ヤバい……)
     首をギギギギギ、と動かし、左奥部屋の一番奥の窓を見る。
    (ぜってー、こっち見てるだろ……!)
     だがそこにある生徒会長の机には、どれだけ目を凝らしても予想していた男の姿はなかった。
     しかし、安堵をすることはできない。こういう時は更に不味い。あいつは背後に立っている……。
    「こ、五柳……?」
     だが、振り向いたそこにも、予想していた男の姿はなかった。
     敷島が行動に困っているその時……。
    ――黒い扉が、ゆっくりと開かれた。
    「ああ、敷島。遅かったわね」
    「あ、う、上守……? 五柳は……?」
     そこにいたのは、生徒会執行部書記、長髪の眼鏡女子、上守沙柚だった。会長、五柳の姿は無い。
     敷島が尋ねると、上守は感情の薄い眼を変えないまま、口の端を軽く上げた。
    「フッ……、何かしらね、さっき用事があるって帰ったわ……? よかったわね」
    「……帰った? 五柳が? 今日、議会あんだぞ? 会長が欠席って、どうすんだよ!」
    「さあて、それは授業後いざ議会にならないとわからないわ……でも、相当顔面蒼白で焦ってたように見えたから、静夜、よっぽどのことがあったようね」
     上守は、表情一つ変えぬまま、書類を腕に抱え、答えた。
    「あいつが、顔面蒼白? おまえ、何か知ってるのか?」
    「……さあ。私の情報収集能力を持ってしても、静夜は掴みきれない男だから。でも、開央の女の子の生徒手帳持っいて、彼女について調べて欲しいとかなんとか言われたから、私はとある線で調べて教えてあげたけど?」
    「女? あ、もしかして、五柳の彼女とか……?」
     敷島が真顔で考える。
    「ああ、それあるかも。でも、裏に何かあるのは間違いないわね」 
    「おう……まあでも気になるけど、探りいれるのは止めとこうかな? 下手に調べてしまうと、あいつの第二人格を起こしかねない」
    「フフッ、人には触れられたくない事ってのも、あるからね」
     上守はそういうと、微かに表情を和らげた。
    「それにしても、あなた、怒らせなくてよかったわね。いい加減仕事片づけておかないと、今度こそ明日、会長さんの第二人格を呼び覚ましちゃうわよ?」
    「ハイハイ! わかってるっての、上守」
     上守の忠告を受け、敷島は紅茶を片手にフッと笑って答えた。
  • 17 聖蓮 id:f.3Ugf4.

    2012-09-17(月) 02:48:12 [削除依頼]
    そのころ黒髪の男は、金のピンが付いた白いシャツを、部屋のベッドに脱ぎ捨てた。
     黒いタンクトップの上に、漆黒のパーカーを羽織り、フードを目深に被る。
     白いシャツの上に、プラスチックフレームの黒縁眼鏡が投げ捨てられ、部屋の扉が閉まった。

     男は、久々に、部下たちの前にその姿を現すことにした。
    「LIE……」
     男の小さなつぶやきが、ビル群の間の暗がりに消えていった。
     
  • 18 聖蓮 id:f.3Ugf4.

    2012-09-17(月) 02:51:19 [削除依頼]
    ※すいません、15前にコレが入ります
    あと、14ですが、深來の名前が間違っている部分がありました。
    また、ふり仮名を上手く消すのを忘れており、もうしわけありません。

    白いシャツに黒ズボンをはいた青年が、今日もいつもと変わらない早朝に、学校に登校した。
    「ああ、五柳君、今日も早いね」
    「い、いえ……、先生も、あ、おはようございます」
    「ああ、おはよう。……今日も生徒会、頑張りたまえ」
     白く大きな校舎を見上げる門の前には、登校時ばったり出くわした青年と一人の男以外に、人気はなかった。
     どこか近くの道でたびたび車の走行音が通り過ぎる中、男と青年は軽い挨拶をかわした。
    「は、はい。もちろんです。鎮野(しずの)先生……」
     黒いスーツを着た男―――鎮野に、青年は頭を掻きながら慌てて返答した。
     黒い短髪をワックスできっちり整え、黒い背広をしっかり着込んだ教師、鎮野は、傍から見るとどこかのIT企業社長や政治家といった業種の人間に見える、存在感と威厳を放っていた。
     一方、その生徒である青年は、背が高いのにまさしくガリガリでありしかも色白、何度も「大丈夫か?」と確認したくなるほどのひ弱なオーラを放っていた。
     今こうして二人の並んでいるところを見ると、どうも「主人と下僕」のような主従関係に見えてきてしまう。
    「……、ああ、頑張ってくれ……それにしてもお前は、相変わらず……」
     その「主人」の方は、どうやら無意識にそれを感じていたらしい。目の前の桜里高校生徒会長の姿をつま先から髪先まで眺めながら、気まずそうに眼を細めた。
     もう慣れたとはいえ、やっぱりヒヨヒヨの生徒会長の姿は、いつみても本当にらしくないと思う。
    「え? ……あ、じ、じゃあ僕は、そろそろ……。任されてしまった仕事があるので。では、失礼します」
     だが、こんな門前の中途半端なところで、長いこと立ち話をする訳にもいかなかった。
     青年は言葉を切った鎮野の顔を少し不思議そうに見返しつつ、軽い会釈をするとその場を去った。
    「……どうも、掴めない奴だ。本気であんな性格なのか、それとも他の性(さが)を秘めた仮面なのか……」
     鎮野は、遠ざかっていく青年の姿を厳しい表情でしばらく見送り、自らもそれとは反対の方向へ歩き始めた。


     青年、五柳
    こりゅう
     静夜
    せいや
    は校内における自らの仕事場、生徒会部室に向かって一人、白い廊下を歩いていた。
     校内の一番奥にある生徒会室までの道を、ひたすら冷たい足音が進む。
     やがて、静夜は白い廊下の奥、窓からの光が照らす、黒いドアにその手をかけた。
     無表情で、ノブを回して部屋に足を踏み入れる。
     一瞬、胸で金のピンが煌
    きら
    めいた。
     「……敷島、今日も俺の方が早かったな……」
     静夜が、静かに笑った。
     
  • 19 聖蓮 id:f.3Ugf4.

    2012-09-17(月) 02:52:30 [削除依頼]
    首都の一部、政府によって立ち入り禁止区域にされている廃屋群に、百人は超える人影が並んでいた。
     大きな空間には、昼前になって曇りだした空の下、いつしかの「高層ビル」の果てた姿が、寂しくそびえている。

    「……お前ら、しっかり話を聞け!」
     男の声が、周囲に響いた。
     そこは、崩れたコンクリートが作り上げる、大きな要塞のような吹きさらしの空間だった。
     広がる灰色の汚れた硬い地面に姿勢を正して並ぶのは、多種多様な容姿の学生たちである。
     有名私立中学から、不良の巣窟と名が知れた下流高校、そこらの小学生、と年齢も社会的所属もバラバラに入り混じっているのだが
    、。彼らは皆、そろって同じ一方を見つめていた。
     「要塞」の最も奥、深く、高く。
     その手前の、かろうじてまだ光を浴びる場所に、数人の男女がいた。
    「……」
    「……」
    「……」
     足を組み、頬杖をついて黒い扇子で自らを仰ぐ、黒いドレスの女、寝っ転がってゲーム機をいじっている眼鏡の黒髪小学生、傾いた柱にもたれている、白い髪にロングコートの男、有名私立の制服を着た、外人が混ざっているらしい金髪の双子女子中学生2人、等。
     そして大衆より高い位置で過ごす彼らもまた、ある一点を目に捉えていた。
    「……俺たちの、この組織の、長とは一体誰だ!?」
     彼らの背後に立ち、大衆の前で言葉を発するのは、金に紫のメッシュを入れたウルフカットの男子高校生らしき男だった。
    「俺たちの組織は、首都において第二位につく、学生裏組織を代表する大集団だ……」
    「……」
    「だが、王『DRAGON』が姿を消してはや一年以上、消息が絶えてから半年を超える!」
     男の言葉に、大衆の隅の方が少しばかりざわついた。
     一方、直ぐそばの数人はそろって男から目をそらした。それからというもの、無言で俯いたままである。
     男は一瞬反応を確かめるように小さく間をとると、再び大きな声で言葉を放った。
    「おかげで、俺たちの力は以前にも増して衰退した! 最近は、虫けらだったクズどもが集まり、組織転覆を企てたり、領地を荒らしたりするのが頻繁に起こっている。王座に王の居ない組織は、なめられ、つぶされるか、それとも自ずと崩れていく道を辿る!」
    「……」
    「俺はもう、DRAGONの帰りを待つことはできない!」
    「……!?」
    「お前ら、よく聞くんだ! この組織の王は誰だ!?」
     男の大声が、空に響く。
    「もう、DRAGONの時代は終わった……王は、王は……」
     そういうと男は、その場で静かに目を閉じた。
     そして、息を腹一杯に大きく吸い込み、叫んだ。
    「今この時から王は、……俺だ! ……、……っつ!?」
  • 20 聖蓮 id:f.3Ugf4.

    2012-09-17(月) 02:52:42 [削除依頼]
    ――だが。
     黒い影が、その場で目に留まらない速さで動いた。
    「……うあアあああッっっっ……!?」
     思い打撃音がした瞬間、男の体は、勢いよく宙へと弾け飛んだ。
     男のシルバーの眼鏡が、ガチャリと音を立て、その場に落ちた。
    「……!?」
     男の手前で話をなんとなく聞き流していた数人は、一瞬の空気の変化に瞠目し、目の前の宙に舞ったその姿に目を凝らした。
    「……!!」
     ドサッという鈍い音と小さなうめき声を共に、金髪の男は、1、2mは下の大勢の並ぶグラウンドに、横たわっていた。
    「……だ、誰だ……? 誰が、俺を、蹴った……?」
     男は自らの身に起こった一瞬の出来事を「蹴られた」としか理解できないまま、体中の痛みに目に涙を浮かべ、かすれた声でうなった。
    「凄い、蹴り……? 一発で、あんなに飛ぶなんて……?」
    「一体、誰が……?」
     金髪の少女二人は、その姿をコンクリートの淵に身を乗り出して見下ろす。
     そして、ゆっくりと背後を振り返った。
    ――雲の隙間からの光が、空間の奥の暗い闇に、一人の影を浮かび上がらせた。
     冷たいゆっくりした足音が、コツコツ、と妙に辺りに響いた。
     現れた男の姿に、そこにいた恐らく全員の目が、最大限に見開かれる。
    「揺るぐことなき王は、俺だ……」
     男の静かな声は、冷たく強く厳しい響きを含み、不思議と空間全体に響き渡った。
    「DRAGON……」
     黒扇子の女が呟いた。
    「フッ……久々だ。暫く手を加えなかった間に、多少乱れが現れてきたようだ……」
    「みだ、れ……」
     いつの間にか起きあがりあぐらをかいていた黒髪の小学生が、言葉を繰り返した。
    「……あぁ。『乱れ』。この中に、俺が力を失って消えたと思っていた奴は何人いたのだろうか……? ……だが、今堕ちたそれがいいところだ。今居ない者も、直に知るだろう。俺は……、……粛清を、開始する」
     黒い服の『王』は、大衆の前で、冷たい声でそう言い放った。
     こうして、dragon――真の名を五柳 静夜は、数か月ぶりに裏の表に姿を甦らせた。 
     そして静夜や大衆を一瞥し、言葉を発した。
    「それともう一つ……、各種グループリーダーはじめ、管理者たちに告ぐ!」
    「……??」
     疑問を顔に浮かべる配下たちに、静夜は珍しくニヤッと、笑いかけた。
    「組織外の反抗勢力を、弾圧しておけ。……帝王が、その椅子に座りやすいように……」
     静夜はそれだけ言い残すと踵を返して再び闇へと姿を消した。
  • 21 聖蓮 id:SVK4ADe1

    2012-09-24(月) 17:10:43 [削除依頼]
    ここから先、ほとんど考えてない!

    ヤバし。止まった。
  • 22 聖蓮 id:SVK4ADe1

    2012-09-24(月) 17:21:19 [削除依頼]
    っていうか、こっちを進める余力がない……。
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