桜の季節に巡る思いは。13コメント

1 しろ太。 id:V4sfylb.

2012-08-25(土) 13:59:02 [削除依頼]
僕は、忘れられなかった。

忘れてはいけなかった。

君を助けられなかった僕に、
忘れる権利なんてないのだから。

そう、僕に忘れる権利はない。

けれど、君は違った。
全てを忘れる権利が、君には―…。
  • 2 しろ太。 id:V4sfylb.

    2012-08-25(土) 14:00:59 [削除依頼]
    どうしても、忘れられなかった。

    水面に浮かぶ桜の花びらが、
    どこか異世界のような雰囲気を漂わせ、
    その周りを取り囲む薄桃色の桜の木達が、
    外の世界を拒むようにして不可思議に揺らめいた。

    君は、真っ白な、だけどどこか美しい、
    そんな着物を身にまとって、
    ただ花びらの浮かぶ水面を、
    じっと見つめていた。

    それは、まるで人形のように僕には思えた。
    そこにいるのは、君とそっくりな人形なのではと。
    いや、そうだと思いたかったのかもしれない。

    じきに小さな少女が、目隠しの赤い布をして、
    小さな声で彼女に告げた。

    「時間です。」

    彼女はその言葉を聞くと、
    視線はまだ水面をうつしたまま、

    ゆっくりと歩きだす。

    一歩、また一歩。
    そうして、水の中に少しずつ足を踏み入れる。

    足が水に浸かって見えなくなったくらいで、
    彼女は不意に振り返った。

    …忘れられなかった。

    あんなに綺麗な笑顔を見たのは、
    初めてだった。

    綺麗で、そして哀しみを隠した笑顔。
    それは涙を流すことさえ出来なかった彼女の、
    僕に向けた、最後の嘆き。

    そして、彼女は言った。

    『また、見つけてください。』

    声には出さなかったけれど、
    はっきりと伝わった。

    そのまま彼女は水面に倒れ、
    役目を終えて散った、桜の花びらとなった―。
  • 3 nansa♪ id:JGqrSs60

    2012-08-25(土) 14:11:23 [削除依頼]
    面白そうです!

    更新頑張ってください♪
  • 4 しろ太。 id:V4sfylb.

    2012-08-25(土) 14:27:32 [削除依頼]
    「…っ!」

    急に目が覚めて、
    バッと身を起こす。

    何が起きたか、一瞬で悟った。

    「また、あの夢…」

    飛び起きたベッドを見ると、
    汗でかなり濡れている。

    胸の奥に違和感を感じて、
    そっと手を押し当ててみる。

    「…落ち着け…もう慣れたろ…?」

    自分で自分に言い聞かせる。
    これで今月9回目だ。

    毎年、決まって4月にこの夢を見る。
    4月1日から、4月30日まで、ずっと。

    「ん…9、回目…?」

    ………あぁ、今日からまた学校か。
    今年で高校3年生だったかな。

    忘れられずに、もう18年も経った。
    いや、生まれ変わる前も含めてもっとだ。

    4月になると、必ず見る夢。
    これは、忘れるなという意味だろうか。
    それとも、僕が忘れられないだけなのだろうか。

    それでも、忘れる気なんてもとよりない。
    君を助けられなかった僕に、
    忘れる権利なんてものは存在しない。

    僕はいつのまにか強く拳を握り締めていた。

    「………あぁ、そうだ。学校なんだった。」

    早く準備をしないと。
    そういえば、入学式も今日だったかな。

    まぁ、あんまり…いや、全然興味はないけれど。
  • 5 しろ太。 id:V4sfylb.

    2012-08-25(土) 14:28:57 [削除依頼]
    ありがとうございます!
    頑張ります^^
  • 6 しろ太。 id:V4sfylb.

    2012-08-25(土) 14:59:45 [削除依頼]
    「いってきまーす。」

    なんとなく言ってみた。
    家には誰もいないけど。

    母も父も海外で仕事をしている。
    兄弟もいない。
    親戚の家に預けられたこともあったけれど、
    どうにも落ち着かなかった。

    一人でいるときが、一番落ち着く。
    静かすぎて、余計なことを
    考えてしまうこともあるけれど、
    騒がしい環境は、好きじゃない。

    高校は、一番近いところを選んだ。
    徒歩で10分かかるか、かからないかくらいのところ。
    いつも一人でいる分、勉強面には自信があった。
    というわけで、難なく志望校に入れたが、
    まぁ特にかしこい人が通うような高校でもなく、
    一言で言うと普通、だ。

    そんな感じで、いつもと同じ道を歩いていく。
    一緒に通学するような友達はいない。
    というか、小さな頃から友達はほとんどいなかった。
    しいていうなら、幼稚園から、
    何かと僕を巻き込もうとする奴が一人いるけど、
    ………友達…か…?

    「おっ、彼方じゃーん!」

    ………。

    「あれ?彼方だよな?」

    ………。

    「なんだよー、やっぱり彼方じゃーん!」

    ………。

    「え?どしたの?元気ないな?」
    「………どうして君がこっちから来てるの?」
    「あ、俺と一緒に登校できて嬉しい!?
     だよなー!!だって俺達『親友』だもんなー!!」

    ………。

    「…どうして君がこっちから来ているの?と
     聞いているんだが。」
    「………彼方さん、目が怖いです…。」

    …こいつは、宮元 颯(ミヤモト ハヤテ)。
    例の人を巻き込む迷惑人間だ。
    小さな頃から何かとかかわってきて、
    高校まで一緒だと知ったときは、
    さすがに悪夢だと思った。

    「いやー、実はさー、春休みの間に、
     父ちゃんがいきなり引っ越す!とか言い出してー。
     ほら、ウチの父ちゃんって、
     言い出すと聞かない性格じゃん?」

    いや、知らねぇよ。
    というかいきなり引っ越すとか言い出すって
    どんだけ思い切ってんだよ。

    「で、母ちゃんは父ちゃんにベタ惚れだしよー。
     ウチのチビ共も乗り気で。」

    どんな家族だよ…。

    「でも俺、人見知りする性格だからさー、
     新しい高校でやっていけるかなって。」

    さすがに嘘だろ!

    「んで、あそこのマンションの部屋借りてー、
     一昨日からあそこで一人暮らししてんのー。」

    颯の指差す先には、最近できたばかりの
    マンションがあった。

    …ん、あれ、待てよ…。

    あそこの隣って確か。

    「そういえば、お前の家って隣だったよなー!」

    ………。

    「あ、ちなみにー、俺の部屋は、2階の右端です☆」

    それ2階の僕の部屋の隣…だよな…。

    「そういえば、今日たまたま起きたばっかで
     パジャマ姿の彼方君を激写しちゃいましたー!」

    そういって奴が差し出した携帯の画面には、
    紛れもなく僕がうつっていた。
    しかも、パジャマ姿で寝癖つきの。

    「…ちょっと携帯貸してくれる?」
    「んー?いいぜー。」

    そういうなり、僕は彼の手から携帯を奪い取り、
    キレのいい動きで携帯を半分にへし折った。

    「はい、返す。」
    「ありが…ぎぇぁぁぁぁぁあああああああ!!!!!」
    「さーて、早くいかないと♪」

    まぁ、こんな日々なら、少しくらいいいかもしれない。
  • 7 菜穂 id:8ojWq/V1

    2012-08-25(土) 15:04:49 [削除依頼]
    私こういうの好きです!
    更新頑張ってください!毎回チェックします☆
  • 8 くさったドリアン id:av0.vhN0

    2012-08-25(土) 15:07:07 [削除依頼]
    Wow!(笑)
  • 9 しろ太。 id:Ya2WUio/

    2012-08-31(金) 12:31:12 [削除依頼]
    コメントありがとうございますw^^
  • 10 しろ太。 id:Ya2WUio/

    2012-08-31(金) 12:53:37 [削除依頼]
    「おーい、彼方待てよー!」

    まだ来るか…しつこいなぁ。

    それでも僕は歩く速さを変えない。
    こんなやつのために走るなんて、
    体力の消費が勿体無さ過ぎる。

    「もー、待てってー。
     アンニュイ彼方くーん!」

    遠くから颯の声が聞える。
    アンニュイねぇ…。
    その言葉はきっと僕にぴったりなのだろうけど。
    アイツに言われるとなんかむかつくなぁ。

    「はぁ、はぁ、やっと追いついたー。
     彼方歩くの速すぎ!」
    「…なんで僕にそんなに付きまとうの?」
    「えー?何のことー?」

    いつもコイツは笑ってごまかす。
    この質問だけは。

    「…まぁいいよ。別に。
     あと、もうひとつ。」
    「んー?」
    「なんでいつもその髪留め外さないの?」

    颯はいつも前髪を後ろにあげて、
    ピンで留めている。
    まぁ日常生活では外すことは少ないだろう。
    だが、僕は奴の髪留めを外すところを、
    一度も見たことがない。
    幼稚園から一緒にもかかわらず、だ。

    水泳の授業でも外さない。
    修学旅行の入浴の際でも。
    何があっても、外すことはない。

    きっと、あの髪留めに
    強い思い入れか何かがあるんだろう。

    と、僕は思ったのだが。

    「んー、髪が邪魔だから、さ。」
    「それだけの理由?
     誰かの形見とかじゃなくて?」
    「形見?…じゃあ形見ってことにしといてよ。」
    「は?意味分からん。」
    「なんでもいいっしょー。ははは。」

    そういって颯は笑って空を仰ぐ。

    「…だって、思い出しちゃうじゃん。」

    その声は、俺の耳には届かなかった。
  • 11 しろ太。 id:Ya2WUio/

    2012-08-31(金) 13:20:52 [削除依頼]
    「わー、久しぶりの母校ー!颯感激ー!!」
    「ほんの2,3週間来てないだけだろ。」
    「にしても、やっぱ母校の桜は綺麗だねー。」
    「無視かよ…。」

    校門は、入学式に向けて
    華やかに飾り付けられていた。

    「入学式って確か…。」
    「午後からだね☆」
    「うん、君に聞いてないかな。」

    午後からか…。
    去年と同じ手はずなら、
    午前は、僕達は入学式の準備だ。
    案内係とかも決めないといけないし。

    うーん、面倒だな…。
    準備は仕方ないとして…。
    入学式はサボるか…。

    「あー、お前、サボる気だろー。」
    「うるさいよ、馬鹿。」
    「ま、止めないけど。そういうの、
     お前嫌いだもんなー。」
    「何で知ってるの?ストーカーっぽい。」
    「ストーカー!?」

    一人でショックをうけている彼を置いて、
    僕はさっさと下駄箱に向かう。

    あー、そういえば、クラス替えも発表か…。
    僕は何組かな…っていうか、何組でもいいけど。
    アイツと一緒じゃなかったら。

    「えーと、斎藤…、斎藤…。
     …あった。」

    そういえば、僕の苗字を、
    今ここで明かした気がするんだが。
    主人公より紹介が早いアイツは一体何なの?

    「かーなたー!俺達一緒のクラスだぜー!!」

    主人公より紹介が早いアイツ来たー!

    「これで3年間、クラス一緒だなー!」

    3連覇したぜ!みたいな調子で言うな。
    こちとら大迷惑だよ!

    「なんだよー、相変わらず冷たいなー。
     ほら、ハイタッチしようぜ!ハイタッチ!」

    笑顔で僕の前に両手を出す颯に、
    ついにイラッとしてしまった。

    「…いいよ………。」
    「…え…?あ…や、やっぱいいです…。
     っていうか…顔怖っ…あ、何でもな…。」
    「遠慮しなくていいって。」

    そして、ハイタッチ…(?)の構えをする。

    「うおりゃぁぁぁぁぁああ!!」
    「やめ…ぎゃぁぁぁぁぁぁああああ!!!」

    ボキッみたいな音がした気がするけど、
    まぁ気のせい、かな?

    「腕…腕がぁぁぁぁああああ!!!!!」
    「あれ?どうしたの颯。骨折?
     保健室に行ったらどうかな?」
    「…かっ…彼方の鬼ぃぃぃぃぃいいいい!!!!」

    そういってアイツはどこかへ走り去ってしまった。

    「あー、静かだなぁ…。」

    僕は改めて一人きりの平和をかみ締めた…。
  • 12 しろ太。 id:Ya2WUio/

    2012-08-31(金) 13:41:07 [削除依頼]
    まぁ、そんな経緯で、
    教室に辿り着いた僕は、
    窓際の自分の席に座った。

    窓の外から見えるのは、
    綺麗に咲いた満開の桜達だ。

    僕の通う高校、桜麗高校は、
    その桜の美しさからその名がつけられたという。
    春になると満開の桜が、
    高校を取り囲むようにして、美しく咲く。
    裏庭なんかは、桜の花びらが地面に広がり、
    花びらの絨毯ができることもある。

    確かに、綺麗だとは思うけれど…。
    僕は、この風景があまり好きではない。
    どうしてもあの光景を思い出してしまって、
    切ない気持ちが胸の奥から溢れそうになる。

    だから、窓際の席は嫌なのに。
    毎年どうして窓際の席になるかな…。

    この高校は、席は50音の出席順で、
    1度席が決まると、1年間席替えは行われない。
    まぁ、それはいいのだが。
    クラス替えがあって、50音の出席は
    毎回変わるはずだというのに、
    何で僕はいつも同じ番号なのだろうか。

    …まぁ、そんなことを考えても、仕方ないか。
    どうせ、5月までの辛抱だ。
    この桜も、あの夢も。
  • 13 しろ太。 id:4.yNW6I1

    2012-09-01(土) 12:22:53 [削除依頼]
    そして、いつの間にか時間が経って、
    始業式の時間に近づいた。

    そういえば、また颯は来ていない。
    …大丈夫なのか?

    まあ、アイツなら大丈夫だろうね。

    そう思っていると、突然、校内放送がかかった。

    『生徒に連絡します。
     間もなく始業式となりますので、
     全校生徒は体育館に集合してください。
     繰り返します―…』

    これは数学担当の水嶋の声だ。
    去年赴任してきたばかりだが、
    僕は彼女をいい教師だと思えない。
    なんというか…生徒を見下しているというか。

    「はぁ…行くか。」

    *

    「おーい、彼方ー!」

    体育館につくと、そこには何故か
    颯が先についていた。
    …右手に包帯を巻いて。

    「…腕、大丈夫?」
    「おー?あぁ、こんなのかすり傷だって!」

    …かすり傷ではないだろ。確実に。

    「ま、明日には治るっしょ。
     俺の回復力をなめたら痛い目見るぜ!」

    …素晴らしすぎる回復力だな、おい。

    「おーい、そこの生徒ー!
     はやく並べー!」

    ふと見ると、赤ジャージの教師が
    俺達に向かってそういっていた。

    「ヤベ、谷口だ。アイツ怒らせると、
     説教が長いんだよなー。
     早く行こうぜ。」
    「あぁ…。」

    面倒なことになるなら、
    避けない他ない、か…。
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