平凡な僕の世界創造論。320コメント

1 アイル id:vjrSW7b0

2012-08-24(金) 12:45:36 [削除依頼]
 
 
 平々凡々。
 どこにでもいるような高1男子である僕、氷室 祐(ヒムロ ユウ)。
 気が付いたときから、ファンタジックな日常でした。
 
 
 こんな僕とあんな世界と何だかんだでそんな話。
 
  • 301 アイル@藍流 id:rm5Cf/U.

    2013-06-17(月) 21:38:49 [削除依頼]
    「遠慮するなって。ほら、何が飲みたい?」
    「……いいの? じゃあ、はちみつレモンがいいな」
     了解、と浩太がおどけたポーズで承諾したら、花峰はくすくすとおかしそうに笑う。
     本当に、良い雰囲気だった。
     二人は互いに想い合ってるんじゃないかって思えるほど、和やかだった。
     このままくっついてしまえば僕としても嬉しい、なんて柄にもなく考えていると、浩太は腰を浮かせて自販機のある一本向こうの道へと歩き出そうとする。それを、イアが止めた。
    「待て。やっぱり私もついていく。自販機のペットボトルを吟味してやるのだ!」
     右手をがっと上空に突き上げた少女は言い終えるやいなや飲み物を買いに行こうとしていた男のシャツの裾を捕えた。
    「さあ行くぞ! ちゃんとお金は持っているのか、浩太!」
    「お、おう、持ってるぞ! じゃあちょっと行ってくるから二人は待ってて」
     服を掴まれているからなのか少し体勢を崩した格好で、浩太はイアに引っ張られていく。少ししたら道を曲がってしまって二人の姿は見えなくなった。
     残された僕らの周りで、噴水の流れる音がやけに響く。
     花峰はまた前方の空をじっと眺めている。
     数秒の間沈黙が流れた。なぜかその空気を重く感じた。
     だから、何か話さなければと思い、僕が口を開こうとしたとき、
    「っ! ごめん花峰、またすぐ戻ってくるから」
     首筋に、一片の痛みが走った気がした。否、気のせいなどではなく、それは今まで毎日のように感じ、尚且つここ数日感じていなかった感覚――真白の世界への招待だった。
     どうしてこのタイミングで、と心の中で舌打ちする。
     最近ぱたりと止まっていたのに、よもや無関係な彼女が隣にいる状況下で再開されるとは。
     僕は風景が徐々に白く染まっていく現状を視認しながら、少しでも彼女から距離を取るために、広場を離れようと足を動かした。
     花峰が何かを言っていた気もするが、一々反応していられない。さすがにあの静かな空間の中二人きりの時に真白の世界へ飛んでしまえば、確実に不審がられてしまうだろう。
     音が遠のいていく。茜色が白濁していく。
     ちょうど、広場に隣接して伸びる道までたどり着いたとき、静寂に満ちた夕初めの世界はひっくり返った。
      
     
     声の主を識別できないほどの一瞬で、微かな――鈴虫の鳴き声のようにひ弱な、『ごめん』という言葉を僕の鼓膜の中に反響させたまま。
     
     
  • 302 アイル@藍流 id:vfdjd3Z1

    2013-06-20(木) 17:19:33 [削除依頼]
     視界に入るのは延々と続く白のみ。透過性など皆無に等しい真白の色は僕をすっぽりと包みこんでいる。懐かしさすら込み上げて来そうな光景に、しかし喜びなどあるわけがなく。
     それ以前に、
     それ以前に――、
     どうして花峰の声が、あれほどクリアに聞こえたのか。
     音量こそ小さかったものの、その声ははっきりと彼女のであると認識できた。ここは真白の世界だろ? ならどうして、茜色を浴びる彼女の声が――――?
     混乱する頭は、だけど確かに答えを導いていて。
     嘘であると、
     夢なのだと、
     必死に自身に言い聞かせ、前方に送った視線の先にはただ濃白が広がるのみ。
     振り返る勇気はなかった。
     振り返った瞬間に訪れる未来に、身を投げる勇気はなかった。
     でも、冷静に現実を傍観している僕がいる。意識に反して自分の足は無情に動くんだ。
     そうして、背後を見据えた。
     淡い希望とひどく崩れた表情を宿して。
     宇宙人がいるはずの視線の先には、やっぱり――、
    「どうして……? 花峰」
     悔しいほど幼い声が僕の口からこぼれ落ちた。
     まっすぐこちらを見据えているのは綺麗な黒髪が印象的な彼女の姿。ほんの数分前に浩太と笑いあっていた彼女の姿。
     二十メートルほど離れた場所でこちらを見る人影は、口を開く。
    「……ごめんね。私は君を殺しに来たの」
     何故この少女からそんな言葉が放たれる。僕の知っている宇宙人からは一番かけ離れた、ごく平凡な女の子じゃなかったか。
    「どうして……」
     同じ言葉しか零れてこない。
     同じ言葉しか絞り出せない。
    「イザークさんがやられちゃったら、次に効果的なのは氷室くんの隙を突ける私が出てくる事だから。どっちにしろ、いずれこうなったことなんだよ」
     花峰は悩むそぶりも見せないで伝言事項を伝えるかの如く淡々と言葉を紡いだ。それは彼女が宇宙人である事を確立させていた。瞳は射抜くように僕を捉えて放さない。自身の両手に淡い黄色の光を集め、短剣を出現させている間も後も、変わらず僕を見据えてる。
     結局はその程度だったのか。
     今日浩太の誘いに乗って遊園地へやって来た事なんて、僕に近づくための手段でしか無かったのか。
     あれほど楽しそうで幸せそうだった笑顔ですら、嘘であるとでも言うのだろうか。
     腹が立った。
     ――でもやっぱり、一番は悲しかった。
    「引いてはくれないのか……?」
    「これがウィルアさんの望みである以上、引けない。だから――君も私を殺すつもりで闘って」
  • 303 アイル@藍流 id:vfdjd3Z1

    2013-06-20(木) 17:22:01 [削除依頼]
     花峰は凛とした声で言葉を投げ捨てた。
     悲しいぐらいに見覚えのある“宇宙人”としての表情で。
     彼女は両手に握っている短剣を構える。姿勢良く佇んでいるその姿のままこちらを見据える。
     早くして、とでも言うかのように。
    「何で……こんな事に」
     僕は思い切り歯がみした。
     仮にも花峰は浩太の想い人だ。彼女の身に何かがあったらきっと哀しむだろう。僕だってクラスメイトを傷つけるような事はしたくないし、何より、ほんの少しでも同じ時間を共にしたんだ。今までよりも会話があって、本当に楽しかった。
     僕は彼女に――花峰風香に刃を向けれるのか。
     自分の身を守るためには剣を取らねばならない。だけど剣を取ってしまえば目の前の彼女を傷つけてしまう。
     散々自身の身を守るために闘って来た僕は、今回も同じ理由を掲げて長剣を振るうのだろうか、と。
     客観的な答えが欲しくて視線を自分の右手へと落とした。知覚できたのは薄蒼に発光する鉄の塊だった。
     重さなんて感じない、自然に現れて自然に消えるそれを見た僕は、思わず苦笑い。
     僕の内に居座る《バーサーカー》の意思は情の欠片も無いほど戦闘が好きなようで。
     しかし手中の剣を拒む理由なんて自分にはなかった。嫌だとは思ったけど、ここで刃を取らなくても、きっといつか自分は身を守るためと称して彼女を傷つけるだろうから。ならいっそ、自身の力に身を委ねてしまえば良いとさえ思う。
    「……僕は謝らないよ」
    「私も、その方が良い。遠慮なんてしないでね」
     僕が長剣を硬く握ったことに気付いた花峰は薄く微笑んでいた。けれど何かを諦めたように愁いを含んだ微笑は、数秒も経たずに消え去る。
     彼女の表情に浮かんだそれに僕が違和感を覚えた時、すべてをかき消すような声量で、ソプラノの音が真白の世界を震わせた。
    「いくよ……《バーサーカー》!」
     短く鋭利な武器がかすかに輝いた。と、思った時には花峰の足は地面を蹴っていた。
     規則正しいリズムを刻んで、大きく弧を描くように彼女の体は軌跡を作る。ためらいという言葉が当てはまらない機敏な動きに、僕は改めて剣を握った。
     花峰が望むのなら。
     たとえ彼女を傷つけてしまうとしても。
    「……ごめん、浩太」
     前を見据えた。右手の得物を強く握った。頭の中がクリアになる。聞こえていた宇宙人の足音も意識の外へと弾き出されて、僕には“僕”しか見えなくなる。
     ごくりと喉が鳴った。
  • 304 アイル@藍流 id:ztgYqvf0

    2013-06-21(金) 20:47:28 [削除依頼]
     宇宙人はもうすぐそこまで来ている。僕は軽く全身を沈ませ、右脇に刃を引く。
     後数歩でこちらに届くであろう地点にて、宇宙人はより力強く一歩を蹴りつけた。同時、僕は沈んだ体を地面すれすれで滑空させる。頬を叩きつけていく空気抵抗。相対的に生まれる風。宇宙人の体が今まで以上に大きく見えた。
     両者の息を吸い込む音がわずかに聞こえる。
     視線と視線が絡み合って、世界を震わす金属音が炸裂した。火花すらもたらしたその衝撃を短剣で受け切った相手は、衝突の勢いを使って自身の体を大きく後退させた。僕は反動で少し後ろへ下がった自分の体を逆に前へと押し出す。
     地面に剣尖を擦り付け、甲高い音を辺りへ散らせながら、宇宙人の足元から頭部にかけて斜めに切り上げる。
     風をまとった第二撃目を、目の前の敵は自らの短剣を合わせて止めた。しかし衝撃の振動が伝わったのか、その表情がにわかに歪む。
     また、相手は後退した。僕は再度追撃する。今度は旋回させた身体ごと叩き込むようにして得物をふるう。彼女は全身を後ろへ引いて剣技を避けようとしたが、かすった剣尖が重ね着されたトップスの端を布切れとして飛翔させた。
     ――切れる。切れてしまう。
     僕はまた、一歩を踏み出す。かすかに薄蒼の光を生み出す軌跡が彼女の元へと向かう。
     花峰はただ避けた。避けるだけだった。それ以外の動作は行わない。反撃なんてしてこない。
     そんな、一貫された動作は隙だらけだった。
     僕の長剣は花峰のリズムに乗ってきていて、少しずつ、金属塊が彼女の体を蝕み出している。
     あまりにも弱い。
     戦闘慣れした彼らとはかけ離れすぎた、粗雑な動き。このままではきっと彼女を殺せてしまうだろう。手応えなどなく、至って自然的に。
     何で? 花峰は宇宙人なんだろ。何でいとも簡単に僕が有利になる? 傷を受けずに勝ってしまう? 何で――――、

     何で、まるでそう仕組まれたかのように、僕の剣技が花峰を傷つけていく……?
     
     ひときわ大きく繰り出した切り上げ技を、変わらず花峰は後退する形で避けた。空気が切り裂かれる音が真白の世界にこだまする。赤い飛沫こそ出ていないものの、彼女は見るからに苦しそうで、肩が激しく上下していた。
     解らない。
     彼女の考えている事が理解出来ない。
     だけど、だけど確かに。
     言葉を投げ捨てていた時だって、花峰の表情は今にも泣き出しそうな子供みたいにくしゃくしゃで。
     ああ、そういうことか、と。
     彼女の想いを理解することはできた。できてしまったら、次の行動を考えながら僕は、小さく笑みを形作っていた。
  • 305 アイル@藍流 id:ztgYqvf0

    2013-06-21(金) 20:48:58 [削除依頼]
     花峰と僕の間に空いている距離を今度は僕自らが大きく開く。数回のステップで作り上げられた十数メートルの白い直線に、視線の先にいる彼女は戸惑っているようだった。しかし、そんなことはどうでもいい。
     だから僕は叫ぶ。
    「なあ花峰! お前は僕を殺したいんだろ!?」
     真横に両腕を広げて、狂ったように笑って見せた。
     彼女の真意に気が付いた。
     それ故にやらなきゃならないことがある。
    「ならさっさと終わりにしよう」
     自分の唇を悪戯に引き上げる。
     今の花峰に僕のことはどう映っているのか。自分の思考を読まれた、と、いぶかしんでいるかもしれない。突然の不可思議な行動に、氷室祐は馬鹿げた奴だと嫌悪を抱いたかもしれない。
     何でも良かった。
     どうでもよかった。
     僕が眼を向けているのは、花峰風香のたった一つの感情だけだから。
    「早く来いよ、僕を殺しに」
    「何、言って……」
     突飛すぎる言葉に困惑したのか、曖昧に語尾を霞ませて彼女は音をこぼした。それには答えず僕は口を開き続ける。
    「元から殺しにきたんだろ? 何をためらってる。それとも何か――――、」
     ピクリと、視線の先の華奢な肩が震えたのがわかった。
     さあ、花峰。
     お前は何を思いながら今日を過ごしていた?
     もしもそこに、真白の世界なんてチラつかない感情があったのなら。
    「大切なモノを失うのが怖くて、僕を殺せないとでも?」
     教えて。叫んで。なら僕は、君に刃を向けずにすむ。
     花峰は大きく目を丸めていた。一面の黒がさらに幅を増して瞳を埋める。
    「ち、……がう……っ!!」
     絞り出すかのような声。こちらを睨みつける目。そのどれもが震えているように感じるのはただの思い過ごしではないのだろう。
    「ちがう違う!! 私は氷室くんを殺せる! 失うモノなんて何もない! あるわけ無いんだ!!」
     花峰は何度も首を振って、まるで自分に言い聞かせるかのごとく言葉を吐き出した。長い黒髪に縁取られた顔の前で短剣を構え、がむしゃらに僕の元へと突っ込んで来る。それを、ただ両手を広げて待ち構えた。右手に持っている長剣を床へ落とす。花峰は僕のその動作に気付いているだろう。しかし彼女の足が止まることはなかった。
     それで良い。
    「来いよ花峰!!」
     顔全体に笑みを貼り付ける。あの青年にひどく似通った笑みを。
    「っ……はあああっ!!」
     声が、世界を掌握した。
     彼女が放った自身を奮い立たせるための音は四方へ飛び散り、僕の鼓膜を揺らして駆ける。
     花峰の疾走は、荒々しくて。
     ほんの少しでも隙を突けば、たちまち転んでしまいそうで。
     それでも足を動かす理由が彼女にはある。必死になってここまで辿り着く理由が彼女にはある。
     花峰の体はもうすぐそこまで来ていた。黒の瞳の前で組まれた短剣が鈍く光っている。
     僕は彼女をただ眺めた。
     空気を移動させて駆ける、全身をひねるように短剣を繰り出す、僕の首筋に冷めた塊をあてがう、そんな一連の動作と、
     ――僕の首筋に短剣をつけたまま、それ以上動こうとしない……否、動けない姿を。
    「ほら、やっぱり花峰は僕を殺せない」
  • 306 アイル@藍流 id:fdjXTMu0

    2013-06-22(土) 08:55:59 [削除依頼]
    「っう……、くっ!!」
     かたかたと小刻みに震える鉄の塊を、それでも必死に動かそうとする。しかし、動くことはなかった。
     動くわけないじゃないか。花峰自身が僕を殺すことを拒否しているのだから。
     こちらを見上げる小さな子供のような瞳は必死に救いを求めているかのよう。ほの明るい世界の光を反射できる程度に湿っている。けれど苦しそうな表情に反して、目の前の口から放たれたのは罵声だった。
    「どうして……! どうして私を殺してくれないのっ!!」
     彼女は両手に握った短剣のうち右手の手中にある方を投げ捨てる。渇いた音を響かせて転がるそれには目もくれず、僕の胸ぐらを空いた手でつかみ上げる。
     シャツの布にシワを寄せた白い手の上に、どこまでも落ち着いた動作で、僕は自分の手を重ねた。
     口を開けば息が吹きかかる距離で言葉を告げる。
    「なら、逆に花峰は。何で僕を殺そうとしない」
     彼女の表情が今まで以上に歪んだ。だからこそ言葉を続ける。
    「何で、避けてばかりいる? 反撃できるくせにしてこない? わざわざ分かりやすい隙を作って戦う? ただの敵であるはずの僕に――最初に“ごめん”と誤った?」
    「うるさい!! 何も解らないくせに言わないで!! ただ剣を握ってよ!」
    「……僕は人の思考を読めるほど頭のきれた人間じゃない。でも君の想いなら解る。解るよ」
     花峰は、浩太が話しかけるとすごく嬉しそうだった。楽しそうに返事を返して、柔らかく微笑んでさえいた。
     花峰は、そんな浩太が僕のことを親友だと言った時すごく哀しげな表情を浮かべていた。消え入りそうに小さな、ごめんという言葉をこぼしていた。
     花峰は、宇宙人で。
     僕を殺すために僕の周りに居るだけの存在で。
     それ以外の思いなんて持っていなかったのだろう。
     でも浩太が現れた。
     屈託無く笑って、心からの言葉を言って、純粋すぎる感情を秘めたあいつが。
     ただただ誰かを殺すために息を潜めていた彼女にとってはとても特別な出来事。失いたくない陽だまり。
     だから花峰風香はためらうんだ。
     親友だと断言した僕を殺したせいで、浩太が傷ついてしまう事を恐れて。
     ――理解出来るよ、その感情。だって僕にも、大切な陽だまりができたから。
    「君の想いを解ったからこそ、剣は握れない」
     同情なんかじゃない。もっと単純な感情。ただ思うんだ。もしも彼女が死んだら、きっと浩太は悲しむだろうって。そんなあいつは見たくない。だから僕にも剣は握れない。
  • 307 アイル@藍流 id:fdjXTMu0

    2013-06-22(土) 08:57:18 [削除依頼]
    「解ったなら……」
     花峰は未だ顔を歪ませながらまっすぐこちらを見つめていた。小さな口がゆっくりと動いた。
    「解ったなら殺してよ」
     それは苦痛に彩られた表情などではなく、眉根の寄せられた、深い愁いが浮かぶ表情。奥底に薄い赤色が挿している頬に、透明な道が伝い落ちた。
    「氷室くんがいなくなる事がウィルアさんの望み。私にとって、ウィルアさんは無くてはならないの。彼がいなかったら私は生きていない。彼がいたからこうしていられる」
     僕の首筋にかすかな痛みが走った。冷たいものが当てられている感覚は明らかに、短剣によって首の皮膚が切られた事を示していた。
     少量の液体の首筋を伝っていく薄気味悪い感触が、全身を撫で回す。
    「本気で私に接してくれる青木くんのこと、好きだよ。でもね、ウィルアさんのことも大切なの。家族みたいに大切なの。裏切りたくない。裏切れない。だから……こんな感情苦しいから、早く殺して欲しかったのに……っ!!」
     また、彼女の放つ言葉の語尾が強くなる。押し殺していた感情が爆発したかのように音がなだれ出す。
     そのどれもが矛盾した感情だった。
     浩太の事を傷つけたくない。ウィルアの事を裏切りたくない。
     花峰は、私情の狭間で押しつぶされそうだから、僕に殺されるという、どちらの願いも叶えられそうな未来を選んでいる。
    「ふざけるな……」
     何故だか胸がざわついた。ぐちゃぐちゃの黒い塊が胸の辺りまで押し寄せているかのように思えた。イライラする。吐きそうなくらいイライラする。
    「結局逃げてるんじゃないか! ただお前は、自分自身が傷つきたくないから殺してくれと言う! でもお前が死ねば浩太が傷つくのはどうやったって明らかな事なんだ!! ウィルアだって裏切られなかったらそれで満足か!? 違うだろ!! それはお前のエゴだ! どうして気付かない!?」
     僕は首元に据え付けられた金属塊を片手で握り込んだ。鈍い痛みが手中を伝って暴れまわり、鉄の生臭い臭いが鼻腔を撫でる。しかし押し寄せる不快感なんて構い無しに、固く握りつけている金属塊を勢いよく床へ叩きつけた。
     格好の悪い軽い音を立てて、あっけなく転がる短剣。花峰が驚きのあまり怯んだ一瞬に、今度は僕が彼女の胸倉を掴み上げた。
    「お前はどうしたい。どちらの望みを叶えたいんだ」
     浩太を傷つけたくないから戦いたくない。ウィルアを裏切りたくないから戦う。
     相反する感情に、自分がその場を逃げるという甘い答えを出した花峰が許せなかった。それは、もしかしたら彼女が自分と重なったからなのかもしれない。
     ――戦いたくないという思いを抱きながら、戦い続けてしまっている自分自身と。
  • 308 アイル@藍流 id:fdjXTMu0

    2013-06-22(土) 08:58:36 [削除依頼]
    「……選べないから、私は殺して欲しいと言ったの!」
    「選べないんじゃない。選んでないだけなんだ!!」
     目の前から息を飲む音が聞こえる。何かを発しようと口が開かれるが、言葉となる音が漏れることはなかった。
    「もう一度聞く。……花峰はどうしたい? 今まで何をされたとか、この先何が起きるとか、そんなの全部取っ払って。“今”の君は……、誰の隣に居たいと願ってる?」
     僕は握っていた彼女の胸倉をゆっくりと解放した。その時、まっすぐにこちらを見上げる瞳と視線がぶつかり合った。そこに写り込んだ“僕”と目があったのもつかの間、あっという間に映っていた“僕”は崩れていって、彼女の頬を滑り落ちていく。
     床に滴り落ちた雫の上に、花峰の体が重なった。
    「……私は、」
     へたり込んだままふるふると首を振って視線を落とす。でも彼女がちゃんと答えを出すという確信があった。あったからこそ問いかけ続けられた。
     この数日間花峰が行動を起こさずにいた――僕が真白の世界に連れ込まれなかったのは、きっと花峰が悩んで悩んで悩み続けて、答えを失っていたからなのだろう。それはもう、暗に、彼女が出す答えを示しているではないか。
    「……私は、青木くんの、傍に居たい」
     絞り出されたかすかな声は、ちゃんと真白の世界に響いていく。
    「ウィルアさんのことも大切だけど、きっとそれ以上に私は……青木くんのことが……」
    「……そっか」
     花峰はこちらを見上げた。
     彼女の表情はどこか寂しそうなくせして、抱えていたものすべてを吹っ切ったようにも見えた。
     白い頬を一筋の透明な雫が走り去る。地面と接して四方へ飛び散る。涙の動く音が聞こえてきそうなほど静寂に包まれた空間の中で、僕は彼女の前に座った。同時に揺れた自分の黒髪が、緩やかな風に乗って泳ぐ。
     それは、花峰が本当に答えを出した証だ。
    「今の言葉、面と向かって言ってやったら、きっと浩太は喜ぶと思うぞ」
     自分の口元に笑みを刻めば、何故だかとても温かい気持ちになる。
     花峰も笑った。まだ完璧とは言い難いけど、今日始めて見たあの優しげな笑顔に近かった。
    「……ごめんね、巻き込んで」
    「気にするな。三年もこの暮らしなんだから、もう慣れてる」
     僕は腰を浮かし、自分の左手を彼女に差し出した。一瞬ためらってから花峰はその手をつかむ。
     ウェーブのかかった黒髪を頭の斜め上辺りで結んでいる少女は、立ち上がりながら言っていた。
    「氷室くんは強いね。心が、すごく強い」
     僕は耳を疑った。自分の事を言われているとは思わなかった。だから、しっかりと言葉の意味を理解した時、僕の口元を彩ったのは苦笑だった。
    「違うよ。最後にちゃんと答えを出した花峰が強いんだ」
    「ふふっ、そして氷室くんは口も上手い」
     彼女は笑う。次第に強くなりつつある風に全身を預けながら。
    「さっきの言葉、本当に浩太に言ってやって欲しい。絶対あいつ、喜ぶからさ」
    「……うん。改めて考えると、何だか恥ずかしい事言ってた気がするなあ」
     花峰は僕に背を向けた。故に、そんな言葉をどんな表情で呟いたのかは分からなかった。
     僕らの足元はまるで海の上に立っているかのように波打っていて、バランスを保ち続けられているのが不思議でもある。風と波。真白の世界が崩れ去る二つの合図を感じながら、ただ花峰の後ろ姿を眺めていた。
     答えを見つけて、自ら世界を崩そうとする少女。ひらひらと風にたなびく淡い色彩の服と、真っ黒な髪が、とても綺麗だと思った。
    「――ごめんなさい、ウィルアさん」
     顔を覆いたくなるほどの強風が駆け抜けて行った時、彼女の涼やかな声が耳を打った。聞き間違いなどではない、本当に発せられた言葉だった。
     哀感の漂うその言の葉。
     消えかけの世界に響いたその言の葉。
     彼女の表情はうかがえない。だから答えを知る術はない。
     でも、でも確かに、

     ――花峰風香は微笑んでいたのだろう。

     
     
     
     
     
     
  • 309 アイル@藍流 id:fdjXTMu0

    2013-06-22(土) 10:39:12 [削除依頼]
        ‐まとめ‐       プロローグ  >3 >6-11+13-15+18-25     第一章 それは、出会いと呼ぶには突飛すぎて >28-29+34-36+42-43+47+53-56+58+60-61+63-70+73+75-85     第二章 宇宙人論 ≠ 地球人論 >90-113+115+119+122-128     第三章 世界は、僕を巻き込んで回りだす。  >132-134+138-157+161-165+167-172+175-194     第四章 仮想宇宙の空中楼閣   >198-204+206-213+218-219+221-232+234-237+241-242+244-249   間章 >250     第五章 守りたい意思 守るべき意思 >252-254+257-262-266-268+272-280+283-291+293-308     −−−−−− うおおおおお(中略)おおおおっっ!!!! 終わりました第五章! 夢じゃないよねここまで来たんだよねっ!?(とび膝蹴り げふんげふん。あまりの嬉しさにテンション上がりましたごめんなさい、こんな作者を許して下さい。 さて、何から話していこうか。今回の章変わり挨拶は饒舌ですよ(← とりあえずは章のタイトルからかな。 “守りたい意思 守るべき意思”。あれは、それとなく風香の心の中を表しています。浩太を傷つけたくないっていう個人的に守りたい意思と、ウィルアを裏切りたくないっていう大切な人のために守らなければならない意思。 この章の主題は、どちらかを取ればどちらかを捨てなきゃならないっていう風香の心情なのです。それを表すために使った場面が真白の世界での戦闘。悩んだ末に自分で意思を選択することを放棄した彼女。私的には、ああいう話って結構王道っていうか――使い古されているような気がするんです。あ、個人的な意見なので客観的にはそうではないのかもしれないですけどね; とにもかくにも、風香の心情を表すには使い古されていてもあれが一番最適かなあと思い、チャレンジしてみました。そして小説を書くことのむずかしさを知りました(←) この章のラストの一連の流れは、やっぱり描写の仕方を間違えたらすごく薄っぺらい心情変化になっちゃうんですよね。故に今までにないくらい辞書とにらめっこして頭をフル回転させましたとも。単語小テスト対策そっちのけで((蹴  あの場面は風香の心情を中心としていますが、祐の心情とも対比させていたつもりです。なんかもう上手くいっているのか謎なんですけども、ちゃんと伝えられていたらいいなあと思います。 まあ、心情心情とか言ってだいぶ堅苦しいですけども、五章を一言で表すなら、総まとめ、です。 今まで動かしてきた物語で培われた、祐とイアの距離感、校内宇宙人の正体、浩太と風香のお話。 それらの明示としての挿話が五章です。 花峰風香=校内宇宙人、は、そりゃもう浩太が風香に恋をしだす前から決まっていたので、やっと書けたぜ! とうひゃっほいしております← ……うん、なんかね、言いたいことが上手にまとまってないけどね、とりあえず第五章終了です。 少しでも、ワンフレーズでも、印象に残る話であったのなら嬉しいです。   さてさて、次は終章のみ!! “平凡な僕の”――祐の物語としてはまだまだ続きますが、“世界創造論”としては次で終わりです(´`*)/ ここまで読んで下さった方々、本当にありがとうございました。 残りわずか、お付き合い下さったら幸いです。 ではっ!    
  • 310 狐面 id:wcH21DH1

    2013-06-22(土) 12:30:03 [削除依頼]
    以前のコメントに返してくださった「もっと聞きたい」との言葉。それは叫んでいいということですね?駄目でも叫びますよ?…よし、叫ぼう。

    あびぎゃぁぁぁぁぁぁぁあ!ナニコレさいこぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!
    なんですかコレ!祐君すっげえかっこいい!!
    風香ちゃんが宇宙人だと発覚したところではどうなっちゃうのかハラハラしていたので、風香ちゃんが告白してくれたときにはには心の中で「よっしゃよく言ったぁ!」とガッツポーズをとりましたよ!実際にもとりそうでしたよ!
    祐君もよく気づいてくれた!いいよ祐君かっこいいよ!!
    そしてイアちゃん可愛い!遊園地をあんなに無邪気に楽しんでるとか案外幼かった!もちろんロイも可愛いよ!ロイは出て来るだけで可愛いよ!
    で・も・っ・て、今回1番好感度が上がったのは浩太君ですよ!!
    なんだよあの子!一緒に帰ったことであんなに嬉しそうとか!ああもうこの純情ボーイめぇ!!
    風香ちゃんといる時のシドロモドロ感が!見てるこっちがニヤニヤしちまうわ!!くっそうリア充爆発しないで!!
    今後の二人を考えるとドキのムネムネが止まらない!

    ……なんか異常に!が多いですが、コレは自分のテンションが異常に高いからです。アイルさんの作品が素晴らしすぎるからです。文字化けではありません。
    今回はあまり自重せず叫びまくりましたが、大丈夫、ちゃんと引かれる覚悟でやりました。なので存分に引いてくれて構いません。今更やめる気はないですがね!←
    ともかく、やっぱり面白いです。もう少しで終わりだと思うと少し名残り惜しさも感じますが、最終章がどのようになるのかという楽しみのほうが上回ります。
    この頃は暑くなってきましたし、どうぞ体調に気をつけながらの更新を。
    続き、楽しみにしています。
  • 311 アイル@藍流 id:fdjXTMu0

    2013-06-22(土) 19:43:07 [削除依頼]
    >310 狐面さん うわっほおーいっ!!d( ∀´◎)d 叫びをありがとうございますノ 聞きたかったです、聞きたかったですとも!! 引くだなんてとんでもない。逆に飛びつきますよ、全力ダッシュですからねっ!← たまたま私の使っていた端末が、“リア中爆発”で行が変わってたんです。だから、爆発しろって続くのかっ!? と思ってたら、まさかの爆発しないでだったという(爆笑← コメントを読み終わった後はもう腹筋崩壊でした。昨日筋トレで筋肉痛だっていうのに腹筋を鍛えてしまいました(( 最終章は短めのエピローグなのですけども、楽しみにしてくださっているならば幸いでする。 ふっふっふ、“世界創造論”は終わるけど、まだまだ終わらないんですよ!!(ぇ いや、本当は“平凡な僕の世界創造論。”という一つの小説として終わらしたかったのですが、予想以上に長くなってしまいそうなんですよね;; だから“平凡な僕の○○論。”というタイトルで今後も続いていきそうです。 “完”結まではまだまだ遠い……(´`;)←   何だか長くなってしまいましたが、暖かなコメント、本当にありがとうございました/ 最近の雨降りで気温が下がって、朝は逆に寒いと思ってしまうこの頃です(笑 しかし今後は本格的に夏ですしね。狐面さんもお気を付け下さい。 明日にはエピローグを投稿できそうですσ(´・∀・`)←    長々と失礼しました。      
  • 312 アイル@藍流 id:wr4lteB0

    2013-06-23(日) 10:51:50 [削除依頼]
     
     
    ‐エピローグ‐
     
     
     
    「まさか風香が校内宇宙人だったとはな」
     遊園地に行った日以来お気に入りとなった、クリーム色のチュニックに黒の半ズボン、さらにその上から白衣を羽織るという格好の少女は、抱えた黒猫の頭を撫でながらぼやいていた。冷たいのかすら謎な、とりあえず冷気であろうクーラーの風が僕らを撫で去っていく。
     ガラガラと音を立てる買い物カートを左手で押しつつ、僕は空いた手で持っている“特売”と書かれた肉を睨んでいた。
    「うん、戦ったのは校内じゃなかったけど、彼女がそうだったんだよな……っと、んー、こっちの方がお得かな」
     持っている肉と商品棚に陳列された肉を交互に見比べ、持っている方を買い物カート上のカゴに入れる。すでに様々な食材で満たされているカゴの上部で、それは器用にバランスを保ちながら鎮座した。
     またガラガラと、たいらで綺麗に磨かれた床の上をカートが滑り出す。
    「それにしてもさ、何でイアは気付かなかったのかなー。そうすりゃ、戦わなくてすんだかもしれないし、こんな目立つところに傷なんて付かなかったかもしれないのになー」
     わざとらしく語尾を伸ばした。首元に右手を添え、横目で少女を見る。
    「ぐぅっ! 部屋に閉じこもっていたのだから、顔を知らないのも仕方が無いだろうっ!?」
     彼女は怒り任せに、思わず立ち止まった僕の方へ黒猫を突きつけてきた。眼前でどアップになったふさふさでくろくろな物体に嫌な予感を感じる。恐る恐るロイの向こうにいるイアへ視線を投げたら、これでもかというほど唇がひん曲がっていた。
    「いけ、ロイ! 性悪ご主人にぶちかませ!!」
    「うおあっ!? ちょっ、やめろって!! ロイも素直にぶちかまさなくていいからっ! ごめん許して僕が悪かったぁっ!!」
     真っ黒で小さな足が僕の髪をかき乱し、数本の糸をばらまいていく。幸い爪が伸びている事はなく肉球部分で叩き回されただけだったが、これがまた痛いのなんの。あの小さな体のどこにそんな力があるのかは知らないけど、将来の頭皮の心配をするには充分すぎるダメージだ。
    「ふん。祐が悪い」
     抱え上げていた黒猫を胸の位置で抱え直し、少女は勝ち誇ったようにこちらを見上げる。
    「……ごめん。いろいろ突っ込みたいけどなんかごめん」
     頭から血が流れていない事を確認してから、僕はまたカートを押し始めた。
     現在、午前十一時前。九月下旬の土曜日。カレンダーで位置付けするならば第四土曜日である今日。飽き飽きするくらいくすぶっていた残暑にも終わりが見え、半袖一枚で過ごすのがちょうど良い季節となっている。
     そんな中、僕は一人と一匹を連れだって家の近くのスーパーまで来ていたのだった。
    「とりあえず買う物は全部カゴに入れたし、レジに並ぼう」
     背後でじゃれ合いながらついて来ていたお供に告げる。しかし返事は返ってこない。まあ返事欲しさに告げた言葉じゃないから良いんだけども、何と無く気になって背後を振り返った。すると視界に入って来たのは、天井に向かって綺麗にまっすぐ片腕を伸ばす少女。
    「セルフレジを希望!」
    「……了解しました」
     苦笑いを浮かべ、カートの進行方向を要望通りの方向へ向ける。がらがらと、そこそこのボリュームでカートは動き出す。
  • 313 アイル@藍流 id:wr4lteB0

    2013-06-23(日) 10:52:33 [削除依頼]
     いつの日だったか、始めてイアと買い物に来た時から彼女のお眼鏡にかなったセルフレジは、有人のレジに比べて使っている人が少なかった。
     その内のひとつに大量の品物が乗ったカゴを置けば、隣からイアの声がかかる。
    「ロイを頼むぞ」
    「うん。じゃあ品物を頼みます」
     僕がロイを受け取れば、少女は腕まくりをしてさっそくバーコードの読み取りを始める。
     規則正しいリズムを刻んで鳴る電子音に耳を傾けながら、ふと出入り口のドアへと視線を向けた。ガラス張りであることもあってなのか、隣接する道路の様子がよくわかる。歩道を進む人々の容姿だって視認できるほどなのだから。
     スーツをしっかり着こなして颯爽と進んでいくサラリーマンらしき男性。向かい側の歩道にいるので細かいところまでは流石に分からないが、対照的に、少し長めの金髪と体の一回りは大きそうなビビットカラーのパーカーを羽織っている青年も歩いていた。そして、
    「あ、浩太と花峰」
     僕の言葉にイアの体がピクリと動く。視線を同じ方向へ向ける気配がした。
    「でーと、というやつだな」
    「だな」
     二人はこちらの状況に気付かず、仲の良げな談笑風景を惜しげも無く見せながらスーパーの前を通り過ぎていった。

     先日、青春男に聞いた話では、あの二人が互いの想いを伝え合ったのは遊園地に行った日の帰り道だったらしい。

     僕と浩太では家の方向が正反対なのだが、浩太と花峰ではほとんど同じ方向なのだ。故に、茜色の空の下を彼ら二人っきりで帰る事となった。そして、そんな良い雰囲気だったであろう時間が終わり、花峰の家の前についた時。珍しくも、浩太から口を開いたんだそうだ。
     話を聞いた瞬間思ったさ。
     よし、浩太良くやった! ってな。
    「祐に彼女はいないのか?」
    「お前、答えを知ってて訊いてるだろ……」
     苦笑を漏らしつつ抱いている黒猫を撫でていたら、腕の中からふにゃーっと声が聞こえた。まるで元気だせよとでも言われているかのようで、余計に虚しくなる。
    「よし。祐、終わったぞ」
    「ん、ありがと」
     イアの言葉でうなだれかけていた姿勢を正し、清算のために財布から取り出した紙幣を料金投入口へ押し込んだ。重い機械の音が響いたと思ったら、お釣りの小銭が吐き出される軽い音が鼓膜を震す。
     動くのをやめた小銭を拾って財布の中へしまいこんでから、僕は購入品の詰まった袋を手に取った。
    「さて、帰るか」
    「おう! 肉料理の待つ我が家まで!!」
    「まだ待ってないから。それ夕飯のメニューだから」
     たわい無い会話を交わしながら、僕らはスーパーの自動ドアをくぐった。
     真上で照りつける太陽は、ギラギラよりもキラキラという擬音の方が正しいだろう。
     果てない空が広がる世界はどこまでも澄んでいて。淡い陽光を受ける街路樹はさんさんと輝いていて。
     そんな、淡い光と和やかな温度が包み込む世界の中を、僕らは自宅に向かって歩いていく。
     イアは隣でロイとたわむれながら歩を進めていた。僕は品物とビニル袋が奏でる音楽を聴きながら歩を進めていた。
     今の僕の口元は、きっと緩んでいる事だろう。
     宇宙人と相対して、毎日のように剣を握って、こんな泣けちゃいそうなほどファンタジックな日常にはやっぱりため息をつくしか無いけれど、――けど。
     まあ、ほんの少しは色付いたかもしれない。
     気が付いたら増えていた一人と一匹は、たぶん、きっと、明日も隣に居てくれるだろうから。
      .
      .
      .
      .
    「今日の夕飯、唐揚げにでもしようかなあ」
    「!!? 聞いたか、ロイっ! 夕飯は唐揚げらしいぞ!!」
    「にゃああぁぁっっ!!!」
      .
      .
      .
      .
     ――こんな僕と、
       そんな日常の、

       廻りだした世界の話。
      
     
     
     
     
     
     
     
     
    2013.06.23,
     ...To be continued
  • 314 アイル@藍流 id:wr4lteB0

    2013-06-23(日) 10:53:26 [削除依頼]
        ‐まとめ‐       プロローグ  >3 >6-11+13-15+18-25     第一章 それは、出会いと呼ぶには突飛すぎて >28-29+34-36+42-43+47+53-56+58+60-61+63-70+73+75-85     第二章 宇宙人論 ≠ 地球人論 >90-113+115+119+122-128     第三章 世界は、僕を巻き込んで回りだす。  >132-134+138-157+161-165+167-172+175-194     第四章 仮想宇宙の空中楼閣   >198-204+206-213+218-219+221-232+234-237+241-242+244-249   間章 >250     第五章 守りたい意思 守るべき意思 >252-254+257-262-266-268+272-280+283-291+293-308     エピローグ >312-313 −−−−−− これにて、世界創造論は終幕です。 幕引きの挨拶、読んで下さる方は次レスへどうぞです↓
  • 315 アイル@藍流 id:wr4lteB0

    2013-06-23(日) 11:00:19 [削除依頼]
     
     
     
     ・ちょいとしゃべろう(規制されたんで二レスに分けて、)
     
     
    全313レス。すっげえ長い(←)。しかし何とかここまでたどり着きました。
    この場で何を書こうかなーと考えてみましたが、章ごとに言いたい事とかはレス番まとめの時に言ってるのでもういいかなあ、と。あまりぐだぐだ語るのも面白くないですしね。
    お礼だけ書き込んで逃げます←
     
     
     ‐ Special Thanks! −
     ※勝手に名前を上げさせて頂きますが、不快に思った方はすいません。
     
     愛姫キルちゃん くさったドリアンさん 虎辻凪さん  
     杏咲鈴音さん ミシシッピさん あいりさん
     
     >そーちゃん(蒼麻)
     最近会ってないけど、元気にしてますか。
     初めてそーちゃんのスレに書き込んで、私の小説を読んでくれていると知った時の感動は今でも忘れられません。
     いつもいつも温かいお言葉ありがとうございました!
     心の底から感謝してるぜ、My エンジェル!!笑
     
     >狐面さん
     章が終わるごとに来てくれてうれしかったです。
     狐面さんがいたからこそここまで来れたようにも思うのです。
     登場人物(+一匹)たちに対する愛の雄叫び、しかと受け取りましたぜ!笑
     本当にありがとうございました!!
     
     >しんちゃん(帽子屋さん)
     二人の出会いはとある小説杯なのであった……←
     しんちゃんがTAMAりばに誘ってくれなかったら、私はもうここにいなかったと思う。
     あの皆と出会えたのはしんちゃんのおかげです。ほんとにありがとう。
     コメントくれた時は飛び上るほど嬉しかったです(笑 愛してr((殴

     >美空さん
     何度も何度もここに足を運んでくれて嬉しかったです。
     頂いた温かいお言葉の数々、胸に染み渡っております(笑
     もう幾分と昔のことになりますが、本当にありがとうございました!!
     
     
     そして、多量な話を読破し、丁寧な言葉を下さった評価屋の方々。
     一度でもこのスレを覗いてくださったすべての方々に感謝をこめて。
     心の底からお礼申し上げます。
     ありがとうございました!!
     
     “世界創造論”は終わりましたが、“平凡な僕の”は、終わりを知らず(←)まだまだ続いていきますので、次回でもお会いできたら光栄です。
     ではっ!
     
     
     
  • 316 アイル@藍流 id:wr4lteB0

    2013-06-23(日) 11:01:35 [削除依頼]
     
    結局、二レスに分けずに済んだね←
  • 317 狐面 id:aYjP.M11

    2013-06-27(木) 19:07:04 [削除依頼]
    遅れましたが『世界創造論』の終了、おめでとうございます!
    なんかものすげぇありがたいお言葉をもらってしまい軽くあたふたしました。
    私の叫びが少しでも力になるのなら、これからも喜んで奇声をあげまくりましょう。
    前のコメントで思いっきし叫んじゃったんで今回は自重してこの辺で。

    次の『平凡な僕』、楽しみにしています!
  • 318 浦島心太郎 id:pURo4cu/

    2013-06-28(金) 15:09:23 [削除依頼]
    うおああああ!!!!!!!!叫んでごめんなさいでもやっぱ叫びたかった(
    テスト期間中に完結したことをしって今やっと読み終えましたb いやもう、とりあえず完結おめでとござます(興奮)
    受験もはさんで大変だったろうけどここまでペースよく更新してるアイルさんスゲエっていっつも思ってました、めっちゃスゲエ。
    個人的に第五章がお気に入りなんですけどもイアちゃんの可愛さに悶えますn((殴 一緒にゆうえんち行きたい。
    ってゆうかむしろ登場人物みんな好きです。担任の先生もいいキャラb 祐君はいけめんだしイザークやばいしロイは癒しだし浩太君カップルは微笑ましいし宇宙人もそうだ、オネエのやつが懐かしい笑
    とにかく、みんなみんなおもしろかったです(強引に纏める)
    ウィルアのこととかまだ気になることはいっぱいあるし、次回作が楽しみ。ずっと読み続けてるからね!応援しまくってます(´`*)フレーフレー

    ちょっとどころか大分ごちゃごちゃですみません( 文章にするのがむずかしいから叫びたいんだ!!うおああああ!!!!!!
    まじでおめでとうありがとう。作品ごとアイルさん愛してr((殴
    それじゃ、乱文失礼しましたノ

      
  • 319 アイル@藍流 id:GoTNfgS/

    2013-07-01(月) 22:34:20 [削除依頼]
      返信遅れてごめんなさい。 >317 狐面さん ありがとうございます! こちらこそ、こんなに暖かなお言葉をもらい続けて大丈夫なのだろうかと思っておりますよ(´`*;) 是非とも叫んでください!!  だって聞いてて楽しいんだものっ!(笑 本当に、何だかこう……もっとちゃんとした言葉を並べることが出来たらいいのですが、上手に浮かばなくてすみません。 ただ、本当に、今までありがとうございました! そして図々しくも、これからも宜しくお願いします!!   >318 しんちゃん 叫ばれた(゜∀゜)Σ笑 おー! ってことはもうテスト終わったのかな? お疲れ様です。そして私はテスト本番明後日からです(聞いてない いや、もうなんか嬉しいこと言ってくれるねえ、このやろーうっ!!←嬉しさ故のけんか腰 オネエ、ねw 懐かしいわあ、もうすぐ一年が経つぞ(∀)/ 私ももっといろいろ叫び返したいけど、ものすんごく長レスになるから割愛( うっへっへっへへへーいっ!!!蹴 久々に会えて嬉しかったです。また絡みましょうぞノ こちらこそ、ほんとうにありがとう!    
  • 320 アイル@藍流 id:equlreH0

    2013-08-27(火) 20:45:48 [削除依頼]
     
    続編のスレタイとスレ番を報告してなかったので、今更ですが書き込んでおきます;
     
    タイトル:平凡な僕の情想相反論。
    スレ番 :1372684615

    何だかんだで、“平凡な僕の”をキャスに書き残し始めてから一年が経ちました/
    ここまでやって来れたのがどうしようもなく嬉しいです。
    この掲示板で出会えたすべての方々に三つ指ついてお礼したいぐらいです(笑
     
     
     
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