OAZO〜天国〜9コメント

1 ピヒット2500 id:Ze6f78e.

2012-08-05(日) 19:39:23 [削除依頼]
自分には関係ないと思っていませんか?
自分には絶対に起こらないと考えていませんか?
周りがきちんと見えていますか?
相手が傷つかない言葉を選べていますか?
相手を大切に思っていませんか?
あなたは……『いじめ』を簡単に考えていませんか?
  • 2 ピヒット2500 id:Ze6f78e.

    2012-08-05(日) 19:48:35 [削除依頼]
    0.
    「今、ここにいるあなた方全てに問いかけます」
     真っ白い空間に映える真っ赤なドレスでたたずむ少女は、その長い黒髪を優雅に揺らして、高く抑揚のある鈴のような声でその言葉を紡いだ。
    当然、この場には彼女しかいない。
    ここにいる人にどれほど問いかけようが、答えは返ってこない。
    当たり前過ぎてわざわざ言うことでもない。
    しかし、彼女はその言葉をずっと繰り返している。
    ふわり、とドレスを揺らして、彼女は『こちら』を向く。鈴のような声は空間に反響した後に消えてしまい、もう何も聞こえない。
    「見ぃつけた」
    少女はそういって微笑んで、長い髪から顔を表した。
    彼女の真っ黒な瞳にとらわれてしまえば、もう終わりかもしれない。
    ……ここには最初から彼女しかいなかった。
  • 3 ピヒット2500 id:Ze6f78e.

    2012-08-05(日) 20:02:46 [削除依頼]
    1.
     漫画や小説やアニメのようにこの世界は、そうそう上手くいくわけではない。誰でも小さい頃から知っていることだ。もちろんここにいる少年もそのことを知っていた。
    彼がいるのは何もない空間。ただひたすらに真っ白くて何もない空間。
    彼には何故自分がここにいて、自分が誰なのか思い出せなかった。
    「俺は……誰だ?」
    この場には彼ひとり。誰も答えてくれはしない。
    床はある。壁もある。なのにフワフワしたようなそんな感覚しかなかった。
    『はじめまして』
    少年はそんな声を聞いて辺りを見渡した。真っ白い空間が続くだけで、やはり誰もいない。
    「お前は誰だ!」
    少年の声は空間に悲しいほど反響した。
    『私はここです。私の存在はここにしかありません』
    当然のことで、少年には意味を理解できない。
    その声はふふっ、と楽しそうに、とても愉快そうな声をもらした。
    『では、あなたに問いかけましょう』
    すぅ、と息を吸う音が聞こえて、少年は思わず身構えた。
    『あなたは……どんな人ですか?』
  • 4 ピヒット2500 id:Ze6f78e.

    2012-08-05(日) 20:20:23 [削除依頼]
     少年にその答えを知るすべはなかった。だから口をつぐむしかなかった。
    やがて少女は笑い声をたてて、言った。
    『ああ、ごめんなさい。知りませんよね』
    その声はからかっているようで、何か他の色を含んでいるようにも感じた。
    『では、教えてあげましょう。あなたが何者で、どんな人なのか』
    その声が聞こえた瞬間。彼の視界がグニャリと歪み、真っ白い空間は一気に色づいていった。

     空間に映し出されたのは、学校だった。少し赤みかがっているのを見ると、放課後だろうか。映されたのは校舎のほんの隅っこ。男子生徒数人に囲まれた男の子がいた。少年にその男の子が誰かは分からなかった。
    「なんでお前、まだ生きてんだよ」
    囲んでいる真ん中の男の子がそう言うと、周りの男子もそうそうと頷き始める。
    ああ……これはダメだ。見ちゃいけない。関われば巻き込まれてしまう。少年は目をそらそうとして、ある声にそれを止めた。
    『逃げるの? あなたも彼をいじめるの?』
    先程の声と同じなのに、ひどく近く思えて、恐る恐ると振り返った。
    赤いドレスを着て長い黒髪を持つ少女がそこに立っていた。
    「いじめる? なんで俺が? なんにもしてないだろ?」
    少女は髪を揺らして、ふふっ、とまたバカにしたように笑った。
    『そう思っている地点で、あなたは彼をいじめている』
    少女は楽しそうに少年に近づいていく。赤い靴がカツン、カツンと音を鳴らす。
    『ねぇ、あなたってどんな人なの?』
  • 5 ピヒット2500 id:Ze6f78e.

    2012-08-05(日) 20:42:42 [削除依頼]
     がくっ、といきなり力が抜けて、少年はそこで崩れこむ。少女は少年の目をのぞきこんで、きれいな笑顔を見せた。
    『何もしないことで、いじめの加害者から逃れられるとでも思ってたの? 見てみぬふりをすること。それも立派ないじめ』
    少年はそんな少女の顔から、顔をそらそうと少女の瞳から、目を離した。
    「俺は関係ないだろ? いじめられるやつだって問題があるんだよ!」
    少年は男の子に囲まれた男の子を指差して言った。それを聞いて少女は本当に楽しそうに笑った。
    『問題があればいじめていいの? 人と少し違うくらいでいじめていいの?』
    「……そんな正論聞きたくない! 人間ってのはそんな生き物なんだよ! 自分さえ良ければそれで……」
    少女はすっ、とそのきれいな長い指をある場所へと動かした。少年の目はその指を追う。
    ……影から校舎の隅を見ているのは『少年』だった。
    『……あなたは彼を助けられた。けどそれをしなかったのは……あなたの勝手な思い違いのせい』
    「あれが……俺?」
    少女はこくり、ととても悲しそうな顔をしてうなずいた。
    『彼はどうなると思う? 考えられる?』
    少年は首を振る。そんなの関係ないと。
    『自ら命を絶つ……』
    少女の口からそんな音が紡がれる。
    『……分かる? あの場で一番彼を苦しめるのは……あなたなの』
    嘘だ。嘘だ。嘘だ。と口から言葉が落ちていく。
    少女はもう一度少年を向いて笑いかけて、もう一回少年に問いかけた。
    『あなたってどんな人?』
  • 6 ピヒット2500 id:meckbm60

    2012-08-06(月) 09:06:39 [削除依頼]
     少年が『目覚めた』のは学校の校舎隅だった。少し赤みかがったところを見ると、放課後だろう。
    「なんでお前、生きてんだよ」
    目の前には、男の子を囲む数人の男子生徒。男の子は涙かがっていた。
    「ご、ごめんな……」
    真ん中の男子生徒は男の子の後ろの壁を強く打ち付けた。
    「聞こえないなぁ」
    くすくすと周りが笑いはじめる。
    ああ、なんてなんて下らない……
    「やめろよ」
    自然だった。少年からその言葉が出たのはあまりにも自然だった。
    男子生徒はこちらをひどく恐ろしそうな顔で見て、やべぇぞといいながら逃げていった。
    下らない。下らなくて愚かだ。
    いや、それは違うだろうか。
    人間はそういうものだ。
    愚かで間違いに気づけない。
    度を過ぎればそれは凶器にだって変わる。
    でも、反対だってあるだろう。
    「あ、あのありがとう……えと、君は」
    少年は心の中のたったひとつの名に気づく。先程ぽっかりと空いた穴にそれがきちんとあった。
    「俺の名は……」

    『今、ここにいるあなたに問いかけます。あなたはどんな人ですか?』

    最後に彼女は笑っていた。
    最期に彼女も笑っていた。
    少年はやがて気づくだろう。
    彼女が何者かを。
    しかし、今は
    世界に溺れて、気づかない。

    『あなたに幸あらんことを』

             1【天野 雄太】
  • 7 カン id:JA9.8Nq1

    2012-08-06(月) 11:51:43 [削除依頼]
    面白い世界観ですね。
    続きを読みたいです。
  • 8 ピヒット2500 id:meckbm60

    2012-08-06(月) 13:31:23 [削除依頼]
    挨拶
    はじめまして、ピヒット2500です。
    名前の由来は特にありません。適当に響きが気に入ればいいなと思って……
    タイトル『OAZO』は楽園という意味です。
    現在社会問題とまでなってしまった『いじめ』を主題にしております。
    この小説が誰かの心に響いてくれれば幸いだと思います。
  • 9 ピヒット2500 id:meckbm60

    2012-08-06(月) 13:44:04 [削除依頼]
    2.
     自分が一番がいい。誰でも持っているそんな感覚。優越心にひたりたい。正義をふりかざしたい。
    気に入らない人がいたら削除してしまえばいい。
    そうすれば自分が一番になれるという。
    みにくい人間の一部分。

     人より少し頭がよくて、人より少しお金持ちで、人より少し権力を持った女の子がいた。
    女の子は一番が好きだった。
    周りの子より劣るのが嫌いだった。
    なんでも手に入ると思って
    嫌いな人間は自分から消していった。
    数年後、
    女の子は歳をとり、やがて気づいた。
    自分の周りには誰もいないことを。
    自分は誰よりも劣っていたことを……

     真っ白い空間に映える真っ赤なドレスを着た少女は、本もなにもない空間で物語を紡いでいた。
    彼女はふと口を止めて、口の端を緩めた。
    「いらっしゃい。新しいお客様」
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