其は薔薇の如く甘く ―浪漫の乙女たち―23コメント

1 ユングの娘 id:VO4ZTST0

2012-07-31(火) 22:49:32 [削除依頼]
こんにちは。
普段は別の名前で物書きをやってる、ユングの娘と申します。
この夏休み中に完成を目途に、がんばっていきますのでどうぞよろしく^^

*注意事項*
※1 この物語はフィクションです。実在の人物・王朝・事件などが登場しますが、史実とは一切関係ありません。
※2 舞台が大正時代に設定されているため、身分、また性別の違いによる蔑称などが使われることがあります。できるだけなくそうと努力しましたが、時代背景を表すのに必要だと思われる分は表記しています。なにとぞご理解ください。作者に差別助長の意図はありません。

*凡例*
・( ) 読み仮名
・(※ )語句の注
・(※1)語句の注(長くなってしまうのでそのレスの一番下に)

尚、この小説は大正時代が舞台なので、登場人物の年齢は数え年で考えてください。
生まれた時を一歳、お正月が来るごとに一歳ずつ年を取ります。
つまり、「来年のお正月で15歳」と言ったら、今の年齢は数え年で14歳、現在の数え方だと13歳になります。
  • 4 ユングの娘 id:TKgbxQ90

    2012-08-02(木) 00:20:19 [削除依頼]
     ――ああ、この世にこんな方がいるなんて!
     お梅は純粋に感動した。
     豪奢な着物を身にまとったご令嬢は、まるで人形のように透きとおった肌をして、線の細い美少女だったからだ。
     「お梅、とおっしゃるの」
     貴子は華やかに破顔した。
     「どうぞおよろしゅうね」
     「……はいっ」
     お梅は慌てて頭を下げた。
     「わたしはこれから仕事があるのでね。ここでしばらく話でもするといい」
     この屋敷の主――西小路伯爵は微笑して、その場を去って行った。
  • 5 ユングの娘 id:TKgbxQ90

    2012-08-02(木) 00:36:45 [削除依頼]
     「あなた、おいくつ?」
     本を閉じて、貴子は静かに尋ねた。
     「八つと、少しばかり…」
     眼前の美少女が出す空気に圧倒されて、お梅はうつむき加減に答えた。
     すらりとした指が本を置く様子を眺めていると、己がよりみすぼらしく見えるのと同時に、自分が今この場所に居合わせていることに幸福を感じてしまう。
     「あら、同じだわ」
     貴子は嬉しそうに言った。
     ――こんな方のそばで働けるなんて…!
     華族のお嬢様と聞けば、尊大な、気位の高い少女を想像していたお梅は、安堵した――が。
     「……だったら、いろいろできそうね」
     不意に貴子が言った。
     「おじょうさま?」
     「何でもないわ」
     貴子は首を振ったが、なおも首を傾げて見ているお梅の視線に、少し目を逸らして答えた。
     「…ほら、年上のひとだと、お説教が多いのですもの」
     「お説教?」
     お梅は聞き返した。
     「おじょうさま、おいたをすることがおありなのですか!?」
     「おいた、というか、あのね――」
     「――でしたら、あたしだってお叱りすることもございます」
  • 6 ユングの娘 id:TKgbxQ90

    2012-08-02(木) 00:51:23 [削除依頼]
     お梅は大真面目に言った。何しろ、「伯爵家の一人娘を、申し分のない完璧なご令嬢に育てる」ために、お梅もここで働くことになったのだから。
     「もう、堪忍してよ」
     突然、先ほどまでの凛とした雰囲気とは一転して、貴子の口調が軽いものに変わる。
     「わたしは『華族の女子(おなご)たる者は…』みたいなの嫌いなのよ。毎日毎日ばあやと目があえばそればっかり! いい加減、苛ついてくるわ」
     「おじょうさま……?」
     「わたしはもっと外に出ていろんなことがしたいの。お父様やばあやが言うような『お嬢様』にはなりたくないの!」
     それからお梅の手を取り、眉尻を下げた顔を近づけた。
     「ね、お梅。お願いだから、わたしのやること許してね? ばあやに言いつけたり、しないで?」
     「…はい」
     お梅はただ頷くしかなかった。
     伝え聞いた物語に出てくる、なよ竹のかぐや姫のような深窓の姫――という幻想は一瞬で打ち砕かれてしまった。貴子は「お嬢様」にはなりたくないらしい。
     それでもお梅は、この少女が嫌いにはならなかった。むしろ、いったいどんなことがしたいのだろう、と興味さえ湧いてきたのだった。 
  • 7 meruto id:yrGgYpr0

    2012-08-02(木) 01:03:12 [削除依頼]
    更新ガンバb
  • 8 ユングの娘 id:TKgbxQ90

    2012-08-02(木) 01:05:09 [削除依頼]
    >meruto♪さん
    ありがとうございますっ!
    がんばります^^
  • 9 ユングの娘 id:TKgbxQ90

    2012-08-02(木) 23:53:15 [削除依頼]
     お梅は問うた。
     「おじょうさまは、何をなさりたいのですか?」
     「木登り」
     即座に返ってきた答えに、
     「は?」
     と間抜けな声が出る。
     「冗談よ」
     貴子は笑って言った。
     「別に、木登りじゃなくたっていいのよ。男の人がやって、女はだめと言われるようなことがしたいの」
     「では、川遊びなんかは?」
     お梅は少しはりきって尋ねた。実家のすぐそばに、透きとおった水の流れる川があったのを思い出したのだ。
     「やりたいわ! それに、はだしで外を走り回りたい!」
     「追いかけっこをして」
     「ばあやを困らせて」
     「お屋敷の中でも?」
     「おとうさまにいたずらしましょう!」
     二人の少女は、顔を見合わせて笑った。
  • 10 ユングの娘 id:tPpZqkU/

    2012-08-03(金) 00:04:50 [削除依頼]
     「わたし、あなたとはいいお友達になれてよ、お梅」
     貴子が興奮したように言う。
     「お友達……」
     その言葉は、お梅をこの上なく幸せにした。けれど――、
     「でも、あたしはただの小間使いです」
     「それが何だって言うの?」
     貴子はさも驚いたように目を見開いた。
     「そんなもの関係ないわ。わたしたち二人とも、ただの子どもじゃない。この屋敷ではね、女中であろうと、おとうさまに頼めば学校にだって行けるのよ」
     「学校に!?」
     その事実に、お梅の胸は高鳴った。
  • 11 超超超バカ id:GhEQtbW/

    2012-08-03(金) 00:17:53 [削除依頼]
    ルーナのファンタジー小説と楽しい仲間たち

    っていうブログ見てね
  • 12 ユングの娘 id:tPpZqkU/

    2012-08-03(金) 00:25:01 [削除依頼]
     最近になって、この国の教育水準は高く安定してきている。
     寺子屋の名残のような粗末な学校ではなく、設備の整った新しい建築が、全国に建てられるようになった。
     当初は数が少なく、また建設の費用を近隣住民や生徒から取るということで、学校の普及は思わしくなかった。つまり、生徒はその金が払えるものに限られてしまい、結局教育の平等は為(な)されていなかったのだ。
     それでも近頃は、制度が見直され、およそほとんどの子供たちが、初期課程である尋常小学校に通うことが可能になった。
     そのため、貴子の言ったようなこと――奉公に来ている小間使いが一般民と机を並べて勉学に励むこと――は、論理的には可能なのである。
  • 13 ユングの娘 id:tPpZqkU/

    2012-08-03(金) 00:25:23 [削除依頼]
     実はお梅は、密かに勉強したいと思っていた。それは生半可な気持ちではなく、ずっと前から考えてきたことだ。
     上の学校に行くのは金銭的な問題で諦めざるを得ないが、尋常小学校だけは出て、自力で勉強し、男に立ち混じって働けるような女になるのがお梅の夢だった。
     「そうよ、今度お願いしてみたら?」
     貴子が言った。
     「わたしたち、もう八つですもの。ぐずぐずしてたら置いて行かれてしまうわ」
     「おじょうさまも、学問に興味がおありですか」
     「ええ。女は文字を書けなくて結構、なんて言ってる男の鼻っぱしを明かしてやるのよ」
     随分と大胆で、自信に満ち溢れた発言だ。お梅はさらに、貴子に親近感を覚えた。
     「わたしも、ってことは、あなたも?」
     貴子は楽しそうに尋ねた。
     「はい」
     お梅は強く肯(うなず)いた。
  • 14 ユングの娘 id:Fa6ORzv.

    2012-08-14(火) 11:55:33 [削除依頼]
     三、

     西小路伯爵が遠出の仕事から帰ってきたのは、桜の花が散り始める頃だった。
     「やはり京都は良いな。我々公家には、上方の――いや関西の文化のほうが合うようだ」
     帰ってくるなり伯爵は、一種の望郷のような目をして言った。
     「東京が嫌いなわけではないが……。さて、それより土産じゃ」
     伯爵は気を取り直したように言うと、荷車の上から今まさに降ろしている荷物を一瞥した。
     「今回は、何を買ってきてくださったの?」
     貴子が無邪気に尋ねる。
     「これだよ」
     伯爵は微笑して、細長い箱を二つ差し出した。
     「開けてもよろしい?」
     「ああ」
     貴子は父の返事を聞くと、そっと箱のふたを開けた。
     「きれい……!!」
     その声に、お梅も箱を覗き込む。
     その中にあったものを見て、お梅は息をのんだ。
  • 15 ユングの娘 id:Fa6ORzv.

    2012-08-14(火) 12:12:08 [削除依頼]
     「これは?」
     娘の問いに、
     「西陣の帯だよ」
     伯爵は笑顔で答えた。
     箱に入っていたのは見事な装飾のなされた帯。一つは貴子に合いそうな華やかな赤で、花々が乱れ散っていく文様のもの。もう一つは浅緑と水色を基調として水の流れが描かれた涼しげなものだった。
     「ありがとう!!」
     貴子は伯爵に飛びついた。
     その情景を見て、お梅は少し寂しく感じた。
     もしも父が生きていたら、出張の帰りに土産の一つでも買ってきてくれただろうか。父がどんな人なのかは知らないけれど、毎年命日に形だけの墓へお梅を連れていくのみならず、月命日には父が飛び降りた崖に行っていた母を思い出す。
     あそこまで母が思っていた人なのだから、きっと優しい人だったに違いない。
     そんな気持ちが顔に出ていたのか、伯爵がお梅を呼んだ。
     「なんでしょうか」
     「おまえにも、土産があるんだよ」
     「えっ……?」
     お梅は目を見開いた。
  • 16 ユングの娘 id:Fa6ORzv.

    2012-08-14(火) 12:26:13 [削除依頼]
     伯爵は瀟洒(しょうしゃ)な小箱を取り出した。
     「開けてみなさい」
     お梅は震えながらそのふたを取った。
     中にあったのは、精巧なべっこう細工の櫛と、紅珊瑚の簪(かんざし)、そして裏に西陣を張った小さな鏡だった。
     「この中で働いていても、おしゃれができるようにな。お梅も女の子なのだし」
     「ご主人さま……」
     涙が溢れそうになるのを必死に堪える。
     「ありがとう存じます」
     貴子がそっとお梅の肩に手を置いた。
     そのぬくもりから、お梅は貴子が自分のことのように喜んでいるのを知った。
     「おとうさま、ほんとうにありがとう」
     貴子は不意に真剣な表情になって言った。
     「でもね、お土産はなくてもよかったの」
     「おや、何故(なぜ)?」
     伯爵は優しい顔で首を傾げた。
     「だってわたし、おとうさまにおねだりしたかったのだもの」
     「何をだい? 言ってみなさい」
     貴子は大きく息を吸うと、凛とした声で言い放った。
     「わたしを学校にかよわせてほしいの!! もちろんお梅といっしょに!」
     「え…?」
     これには、伯爵どころかお梅も吃驚したのだった。
  • 17 ユングの娘 id:nL7NR8s0

    2012-08-23(木) 23:08:34 [削除依頼]
     「おじょうさま! どうしてあんあこと……。それにあたしも一緒にだなんて!」
     貴子の部屋に戻ると、お梅は叫んだ。
     貴子が思いつきであんなことを言うはずはない。あの一言で、伯爵もお梅が勉学に興味を示しているらしいと勘付いてしまったはずだ。
     一介の女中の身で、なんと出すぎたことを言う娘か、と呆れられてしまったに違いない。
     「だってほんとのことですもの。わたしが学校に行きたいのも、あなたが学問をしたいのも」
     貴子はさも当然というように言った。
     「でもあたしは、ただの女中です!」
     「言ったでしょ。これからは華族だって女中だって関係なしに学校へ行けるのよ?」
     「女中は、働く者です」
     何も疑問に思っていない様子の貴子に、お梅は静かに言った。
     「たとえば、朝ご主人さまがお仕事に行かれたあと、あたしたちはお召し物を洗い、裏で干します。乾くまでの間、ご主人さまのお部屋をそうじして、そのあと洗濯物をたたんでたんすに入れます。帰ってくるまでの間、居間や廊下をそうじして、最期に玄関ぽうち。夕方お庭を掃いて、お帰りを待ちます。もちろんお夕飯の準備を手伝うこともあります」
     「……」
     「昼間にやる仕事はこの通り、何人いても忙しいくらいなんです。あたしはおじょうさま付きの小間使いでもありますから、ご主人さまの身の回りではなく、おじょうさまの身の回りのお世話をいたします。それももちろん、おじょうさまがおけいこに行っている間に済ませてしまわなければなりません」
     「…………」
     「だから、どんなに勉学をしたくても、学校に行く時間はないんです。ほかの女中さんたちにも迷惑がかかるし」
  • 18 ユングの娘@お久しぶりです id:kkMa0W80

    2012-12-18(火) 19:50:01 [削除依頼]
     今や貴子は、完全に黙ってしまっている。
     「お気持ちは、ありがたいです。でも…」
     申し訳ないのと、やっぱり学校に憧れてしまう自分がいて、お梅は涙をこらえて言った。唇を噛み締める。
     「わたしは…なんにも知らないのね」
     しばらくして、貴子はうつむいて言った。
     「なんて世間知らずな…、ずっとお梅といたのに」
     「おじょうさま」
     「でもね、わたしはお梅と学校に行きたい。勉強…したくないわけじゃないんでしょ」
     貴子は破顔した。
     その笑みに、純粋にきれいだと思う。これが、自分が知っている貴子だ。明るくて、優しくて、強くて。
     「あたしは…きっと身の程知らずな子だと思われました」
     お梅は呟いた。
     「そんなことないわ。おとうさまはお話がわかる方。何かお考えがあってよ」
     貴子は勝ち気にうなずいた。
  • 19 ユングの娘@お久しぶりです id:kkMa0W80

    2012-12-18(火) 20:06:59 [削除依頼]


     突然、娘の貴子が学校に行きたいと言い出した。
     文字の読み書き、その他の稽古は師匠を付けて屋敷の中でさせている。だが、娘はそれ以上のことを望んだ。貴子の性格からして、おそらく外の世界に出てみたいだけなのかもしれないが、悪いことではない。
     しかし、八つでは女学校には早すぎる。かといって、伯爵の娘が尋常小学校へ行くというのも、釈然としない。幕府が崩壊してから何十年も経て、身分にかかわらず公平に勉学に励める世が来たといっても、進んだ考えを持つ伯爵でさえ、少し抵抗があった。
     ――さて、どうしたものか。
     伯爵は悩んだ。悩んだ末に、貴子付きの小間使い、お梅を呼んだ。
     「お梅……そなたも、学校へゆきたいか?」
     呼んで早々、単刀直入に伯爵は尋ねた。
     「あ…い、いいえ」
     お梅は慌てたように首を横に振った。
     「あれは…、おじょうさまが勘違いなさったのでございます。おじょうさまが学校のお話をなさるから、『いいですね』とあいづちを……」
     子供の言い訳など、すぐにばれる。
     「ふむ…、ゆきたいか、やはり」
     意地悪く言った伯爵に、
     「ご主人さま!!」
     お梅は真っ赤になって言い返した。
  • 20 ユングの娘 id:Hd8sZeW0

    2012-12-19(水) 23:14:33 [削除依頼]
    〔つぶやき〕
    きょうは、いっぱいこうしんします。
    ユングの娘は、はやくこの小説をおわらせたいのです。
    いままで、かんけつした作品がないのです。
    すっきり、したいのです。

    wwwwwwww
  • 21 ユングの娘 id:Hd8sZeW0

    2012-12-19(水) 23:34:58 [削除依頼]
     「おじょうさまのお気持ちは、本物です。どうか…叶えてさしあげてください」
     お梅は深々と頭を下げた。
     そのまま、
     「失礼しますっ…!」
     と部屋を出て行ってしまう。
     ――どうしたものか。
     伯爵の頭の中には、先ほどと全く同じ、単純で難解な悩みが占めていた。

     女中たちは騙せても、育ててきた父親は騙されない。貴子のお転婆な性格は、伯爵にはとうにお見通しだった。
     算術、英語、ドイツ語、その他の教育をするのに、屋敷に新たな教師を呼ぶのでは娘は満足しないことを知っている。貴子は、外に出たいのだ。
     そして小間使いのお梅も、学問に興味を持っている。だが彼女の仕事から考えれば、学校に通わせるのは難しい。
     結局、西小路伯爵が出した結論は――、
     「貴子は学校に行け。幸い、わたしたちのような家の者が多くいる学舎があるらしいからな」
     「ほんとう!? いいの?」
     父の言葉に、貴子は目を輝かせた。
     「お梅は、夕刻だけ開く塾があるらしいから、そこへ行け。学費は給料から引く。もっと勉強したくば、貴子に教えてもらいなさい」
     「ご主人さま……!!」
     お梅に至っては、もはや涙目だ。
     二人の少女は顔を見合わせて笑い合い、声をそろえて言った。
     「ありがとうございます!!」
  • 22 ユングの娘 id:Hd8sZeW0

    2012-12-19(水) 23:48:34 [削除依頼]
     四、

     それから六年が経った。
     貴子は抜群の成績で女学校に入り、「西小路家のお嬢様は優秀らしい」という評判はあちこちの社交場で聞くようになっていた。
     一方お梅のほうはというと、近頃は塾には行かず、もっぱら女中仕事に精を出していた。それは行く時間が無くなってしまったのではなく、行く必要がなかったのだ。生来の呑み込みの早さが幸いして、お梅は文字の読み書きや簡単な計算などを、あっという間に覚えてしまった。そこからは塾でも一番を争うようになり、当初は白い目で見ていたほかの女中たちからも一目置かれるようになった。当然、勉強の仕方を学べば上達は早く、塾に通う数が少なくなっても、その分貴子が持って帰ってきた教科書を借りて勉強を続けていた。そのせいか、塾では教えてもらえないドイツ語さえ、お梅はものにしていた。
  • 23 ユングの娘 id:vzQDPaa.

    2012-12-26(水) 13:29:20 [削除依頼]
     実はそれだけではない。
     西小路伯爵の寛大な心により、お梅も一時期は尋常小学校に通っていた。塾へ行く許しを得てすぐの頃だ。
     伯爵はお梅の学問をしたいという熱意とその上達により、学校へ行くことを勧めた。お梅はもともと貴子付きの小間使いであったが、その貴子も昼間は学校へ行っているため、お梅の仕事は少なくなる。ならば女中の仕事は夕方からで良い、と伯爵は言ったのだ。
     しかし、お梅の心が、それを許さなかった。
     ただでさえこの華族の家にお世話になっているのに、これ以上は甘えられない、と思った。
     学校へ行く学費を(給料から引くという形であっても)出してもらい、女中の仕事も減る。女中という立ち位置が薄くなったら、お梅はここで“働かせてもらっている”労働者ではなく、居候しながら手伝いをするただの小娘になってしまう。それは、お梅の誇りが許さなかった。
     そんなわけで、お梅は尋常小学校をすぐにやめてしまった。
     事実、貴子に教科書を見せてもらえれば、勉強するのに不足はなかったのだ。
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