神様の言うとおり。7コメント

1 マラカス日和 id:i-DgONswk0

2012-07-26(木) 22:30:09 [削除依頼]
《主人公》


 道路に浮かぶ白と黒のコントラストの上を、軽快に歩く男がいた。
 彼こそが、後に悪の大魔王から世界を救い、世界中の貧富の差を無くし、演説一つで戦争を止めることになる男。
 つまり、この物語の主人公で――あ、車に轢かれた。
 死んだ。
  • 2 マラカス日和 id:i-DgONswk0

    2012-07-26(木) 22:32:03 [削除依頼]
    《魔王と勇者》


    「親父の! 仇だッ!」
     勇者の剣が、魔王の体を両断した。
     重々しく、そして威圧的な音を上げながら、魔王の体は真っ二つになった。赤い血飛沫がヒビ割れた床に舞う。
     三世紀に渡って世界を支配し続けていた魔王の驚異は、これにより消え去ったのだ。
     勇者はボロボロになった自分の姿に苦笑しながら、伝説の聖剣を杖にして床に座り込んだ。
     ――数えきれない程の血を流した。
     その血は、自分の血であり、仲間の血であり、敵の血だ。
     数えきれない程の犠牲を払った。
     その犠牲もまた、自分であり、仲間であり、敵である。
     まだ幼さの残る顔を歪めて、勇者は笑った。
     高く、大きく、笑った。
     その声は世界中に響いて、人々に闘いの終結を知らせた。
     父親を魔王に殺された少年は、それから十数年、魔王を討ち取り、父親の仇をとることだけを考えていた。
     そして、その闘いも終わったのだ。
    「勝ったぜ、親父……」
     主を失った魔王の城。その最上階で、勇者は小さく呟いた。


     ――その姿を、五歳になる魔王の子供が見つめていた。
  • 3 マラカス日和 id:i-DgONswk0

    2012-07-26(木) 22:34:18 [削除依頼]
    《コール》


     人気タレントの入江 優子は、心身共に疲れ切っていた。
     と言うのも、一ヶ月前から謎のストーカーに付きまとわれていたのだ。
     毎日毎日、夜道を歩いていると必ず尾行されるし、家に居ても無言電話がかかってくる。
     警察に言っても、実質的な被害が無いから取り合ってくれない。
     そして、昨日の電話で「明日の昼もかけます」とストーカーに言われてから、優子は電話に対して心底怯えていた。
     昼の十二時。優子は電話の前で固まっていた。いつかかってくるか、と身構えていたが、十分経っても、十五分経っても、電話は来ない。
     その内、優子の中で緊張の糸が切れた。何だ、かかってこないのか。と、ホッとして胸を撫で下ろした……その瞬間だった。 電話が鳴り響いた。大きな大きな音だった。
    「ぎえっ!」
     優子の心臓がショックを起こし、そして止まった。
     その体が崩れ落ちる時、右手が電話に当たって受話器が取れる。
     優子は床に倒れると、呆気なく死んだ。
     それから数秒を置いて、電話から剽軽な声がした。


    《タモリだけど、明日来てくれるかな?》


     まさにテレフォン・ショッキング。
  • 4 マラカス日和 id:i-DgONswk0

    2012-07-26(木) 22:35:26 [削除依頼]
    《衝動的な殺意》


     そいつは、僕より直向きに頑張っていただろう。
     そいつは、僕よりひたすらに生きることに前向きだったろう。
     時の流れは残酷だ。いくら謝ろうとも、反省しようとも、僕はもう何もしてあげられない。
     一度の過ちは、もう二度と改められないのだから。
     僕が無慈悲にも叩き潰したその命は、僕がどれだけ許しを得ようと必死になろうが、帰ってこないのだから。
     そんな風に考えれば考えるほど、僕の一生は汚れている様な気がしてならない。
     とにかく。
     とにかくだ。
     僕はただ、足元に倒れている名前も知らない彼に向けて、一言だけ謝った。


    「……ごめん、ゴキブリ」
  • 5 マラカス日和 id:i-DgONswk0

    2012-07-26(木) 22:36:15 [削除依頼]
    《蚊》


     ある朝、目が覚めると、僕――長谷川は蚊になっていた。
     ベッドの上で寝たハズなのに、朝日を感じて意識を取り戻すと、蚊になっていたのだ。
     なんだ。夢か。と、僕は至って冷静にそう思い、せっかく蚊になったんだから飛んでみるかー、と、単純な思考で羽ばたいた。
     ぷーん、と、あの耳障りな音が響いて、不快になった僕は早速飛ぶ気を失う。
     その感情の変化がとてつもなくリアルで、僕はそれが夢では無いように思えてきた。
     部屋から出ようと試みたが、窓も扉もピタリとしまっていて、出られない。
     不安になって着地しようとしたその時、部屋の扉が開け放たれた。お母さんだ。その右手には、何故かマッチが握られている。
    「たかし! あんた、もう学校の時間で……あら、いない?」
     近付いたら叩き潰される予感がしたので、僕は扉から離れた場所でジッとしていた。
     するとお母さんは肩をすくめてから、マッチに火を付けてこう言った。
    「おかしいわねー。いつの間に学校行ったのかしら? ま、いいわ。もう夏だし、蚊取り線香に火を付けといてあげましょう」
     言い終わるや否や、マッチを近づけられた蚊取り線香から煙が上がる。
     僕が逃げようと飛び立ったら、お母さんは部屋から出ていった。
     ――しっかりと、扉を閉めて。
  • 6 マラカス日和 id:i-DgONswk0

    2012-07-26(木) 22:37:13 [削除依頼]
     僕はその日、とある能力に手に入れた。
     何故そうなったかは分からない。朝、目が覚めると同時に、僕はこの力にも目覚めていたのだ。
     その無敵すぎる能力の名前は『有言実行』。
     僕が呟いた言葉が何でも現実になるという、まさしく最強の力だ。
    「億万長者になる」
     と呟けば、僕の手元には大量の札束が現れ、
    「空を飛びたい」
     と呟けば、浮遊能力が得られる。
     むかつく奴は片っ端から殺した。
     片想いだったあの子と、相思相愛になった。
     反対する親を黙らせて、超かわいい犬を飼った。
     いつか食べたいと思っていた霜降の牛肉も食べた。
     ――有言実行。
     口にしたことは現実になる。物理法則も何もかも、全てを無視できる能力。最強だ。僕は今、地球上の誰よりも最強の生物なのだ!
     歓喜のあまり、僕は思わず呟いた。


    「まるで夢のようだ!」


     ――目が覚めた。
  • 7 マラカス日和 id:i-DgONswk0

    2012-07-26(木) 22:37:59 [削除依頼]
    《バカ》


    「このバカ!」

     一郎は憤慨した。

    「バカという奴がバカだ」

     二郎はそれを鼻で笑った。

    「いや、バカという奴がバカ、という根拠の無い言葉を使う奴もバカだろう」

     三郎が顎に手を当てながら言った。

    「人を侮辱する際にバカという言葉しか使えない奴も、またバカだな」

     四郎は冷めた口調で指摘した。

    「じゃあ、そもそもバカとは何だ?」

     五郎の言葉に、皆が沈黙した。

    「バカとは、ろくな経済力も無いくせに子供を六人も産んだ、僕らの親のことだろう」

     六郎の言葉に、皆が納得した。
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