櫻散れ31コメント

1 蒼緯 id:VOjm3n00

2012-07-07(土) 12:59:26 [削除依頼]

「――散れば良いのに、」
  • 12 蒼緯 id:VOjm3n00

    2012-07-07(土) 14:20:53 [削除依頼]

    書き込めません(汗
    エラーばかり出ますw
  • 13 蒼緯 id:VOjm3n00

    2012-07-07(土) 14:22:58 [削除依頼]

     其の弐
  • 14 蒼緯 id:VOjm3n00

    2012-07-07(土) 14:24:08 [削除依頼]


     椎葉キョウカと出会って数日、俺は彼女の名前を校内で見掛けた。
     生徒会役員立候補者一覧って言うのが職員室近くの掲.示板に貼り出されていて、その副会長の欄に椎葉鏡架とあったのだ。
     それで鏡に架と書くと分かった。まあ、分かった所で何もないんだけど。

    「サボり魔じゃない」
  • 15 蒼緯 id:VOjm3n00

    2012-07-07(土) 14:25:22 [削除依頼]

     その日の昼休み。購買に行こうと人が多い廊下を歩いていると声を掛けられる。

    「あー、噂をすれば、椎葉鏡架さんじゃないっすか」
    「噂って何よ」
    「副会長になるらしいな」
    「なるって決まったわけじゃないわよ。選挙だってまだだし、それに副会長に立候補しているのはわたしの他に二人もいるんだから」

     そう言えば、そうだった。彼女の名前の下に後二つあった。

    「けど、こうして会ったわけだし、わたしに投票しなさいよね」
    「俺、生徒会演説会に出ねーよ」
    「出なさいよ。来週の金曜の六時間目だから」

     昔から人込みは苦手だ。
     だから、集会とか体育館に集まって何かするなんて言うのは意識的に避けて来た。

    「椎葉鏡架って書きなさいよ」
    「画数多いじゃん。少ない方に投票しとく」
    「――ってことは来てくれるのね」

     しまったと思った時にはもう既に遅い。
     椎葉は勝負等してないのに勝ち誇った様な笑みを浮かべ、俺を見上げている。

    「も、もし行けたらの話をしただけで」
    「言い直しは無効よ、雨宮くん」

     やっちまった。

    「じゃ、来週の金曜日、楽しみにしてるわ。約束よ」

     呆然とする俺を横切り、椎葉は廊下を走って行く。
     約束事なんてしたのはいつ以来だろう。小学校の時ですら、誰かと約束なんてしたことないかも知れない。
     大体、約束なんてして何になるのだろうか。裏切るかも知れないじゃないか。そんな不確かなことを如何して信じていられるのだ。
     なんて、そう考えてる自分はだいぶ人間を信じれなくなっているのかも知れないな。
  • 16 蒼緯 id:VOjm3n00

    2012-07-07(土) 14:30:30 [削除依頼]

     ピンポンパンポーンッと容赦なく大音量で流れた放送で俺は目を覚ます。
     あれから、俺はパンを買い、飲食禁止となっているが誰もいない図書室で食べてそのまま寝てしまっていた。
     それで今のこの放送で起こされて至る。

    『二年A組の雨宮未散くーん。みーくんは直ぐに職員室に来て下さい。繰り返します』

     俺のことをみーくんなんて呼ぶのはこの学校でただ一人だけだ。
     アイツ――全校放送で俺に恥を掻かせやがって。
     俺は言われるがままに職員室に向かった。
  • 17 蒼緯 id:VOjm3n00

    2012-07-07(土) 14:45:17 [削除依頼]

     勢いよく引き戸を引いて、職員室の中に入る。
     ズカズカと歩き進む俺に周りにいた教師達は変な目で見て来たが気にしない。

    「藤和先生」

     ある女教師の席まで来て、俺は足を止める。

    「待っていたよ、みーくん」
    「誰が放送にあだ名で呼ぶんですかっ」
    「だってーその方が楽しーし?良いじゃん。楽しければ全て良しだよ」
    「終わり良ければ全て良し、じゃないですか」

     現国の教師じゃなかったのか、コイツ。
     無駄にスタイルが良い教師――藤和はニコリと笑顔を保ったまま、足を組み直す。

    「で、何の用ですか」
    「近頃、授業に全く出ないらしいね。ほら、君の担任の先生――えっと、誰だっけ」
    「さあ?俺も覚えてないです」
    「まあ、良いや。その先生がね」

     あまり良くないだろ、それ。
     一応、一緒に働いてる同僚だろうに。

    「あたしによく言って来るんだよ。雨宮を授業に出させる様に言ってやってくれって。ほら、みーくんとあたしは甥と叔母の関係だからさー、言われるんだよ」
    「そうですか。それはすみません。ご迷惑お掛けしました」
    「礼儀正しいのは良いことだけど、本当に悪いって思ってるの?その場の雰囲気で謝ってない?」

     図星だったが、俺は顔に出さず、申し訳なさそうな風にしてひたすら謝る。

    「すみません。出来れば、出る様にします」
    「君が誰もいない図書室で一人勉強してる事は良いけどさ、勉強するんだったら教室でしない?それと毎回あたしを使って教室の自分の机に溜まったプリント取りに行かすのも止めてくれない?」
    「俺と先生の仲じゃないですか」
    「そ、そうだけど」

     それで揺らぐってことは多少仲良いとでも思ってたのかよ。

    「用はそれだけですか?」
    「そう。あ、それと、みーくん」

     あれだけ言っといてまだ言うつもりらしい。

    「椎葉っちと会ったそうだね」
    「あー、椎葉さんですか」
    「あの子、良い子でしょ?あたしの一押しだね。副会長にも是非なって欲しいし」

     良い子か如何か分からないが、正義感強くて曲がったことは気に食わないタイプだろうな。

    「友達になってあげてね」
    「え」
    「それなりに話せる人はいるらしいけど、仲の良い友達はいないっぽいからさ、君となら仲良くなれそうだし、なってあげて」

     冗談じゃない。
     俺は“もう”友人等作るつもりなんか。

    「言っとくけど、これ、叔母命令だからね」
    「はあ、じゃあ、考えて置きます」
    「保留、だね」

     保留って言葉は本当に都合の良い言葉だと思う。
     一旦それを遣っといて後は放置しときゃ良いんだから。
  • 18 蒼緯 id:VOjm3n00

    2012-07-07(土) 14:50:14 [削除依頼]
    >5 藤和詠羽 (とうわ うたう) 二十四歳。 未散の叔母。
  • 19 蒼緯 id:VOjm3n00

    2012-07-07(土) 15:02:22 [削除依頼]

     授業に出ていないせいか、俺の一週間は流されるままに進んで行く。
     気付けば、もう金曜日――生徒会演説会の日になっていた。
     椎葉曰く六時間目だったらしいが、俺は行く気が全くなかった。

    「困った物だね。みーくん、もっと自分に素直になろうよ。本当は行って、椎葉っちに投票したいんでしょ?」

     顔を上げると藤和が肘を付いてこちらを見ていた。

    「いたんですか、先生」
    「金曜の五時間目は空いてるからね。でも、何でこの図書室誰も来ないんだろう」
    「誰も本を読もうとしないからじゃないですか」

     俺が一年の時からずっとそう。図書室には人一人居やしない。利用者がいないのだ。

    「何でだと思う?」
    「此処の図書室、古い本ばかりだからじゃないですか?新しい本増やせばもっと人が来るんじゃないかと」
    「なるほどね。今度、図書委員担当の先生に言っとく」

     誰もいなくて居心地が良かったって言うのに下手なことされて人が増えるのは困る。

    「別に良いじゃないですか。誰も来なくて」
    「それはみーくんの都合でしょ」

     まともな正論に何も言い返せなくなる俺。
     情けない。もっと会話能力が高ければ出来ただろうに。

    「ってもう授業終わるよ。ほら、体育館行こうよー」

     藤和が俺の右腕を引っ張る。
     如何しても行かせたいらしい。

    「行きませんよ。俺の投票で何か変わるんですか?」
    「可愛くないねー、変わるかも知れないじゃん。一票差とかだったらさ、君のおかげでもう一度再投票になるわけだよ?」

     そんなこと滅多に起きるわけない。
     言い返してやりたがったが、また可愛くないとか言われるだろうから止めた。

    「よし、じゃ、行ってくれたら、何か奢ってあげる」
    「奢るって何をですか」
    「みーくんが好きなコーヒーとか。美味しい喫茶店知ってるんだよね」
    「……」
    「あ、やっぱ、食堂で良い?今月、金欠でさ」
    「――分かりました。それなら、行きます」
    「現金な奴」
    「何か言いました?」
    「ううん。何でもー」

     俺は席を立つ。
     別に行きたくて行くわけじゃない。コーヒーの為に行くだけだ。
     って、何言い訳してるんだ、俺。
  • 20 蒼緯 id:QSBL8j10

    2012-07-08(日) 12:13:52 [削除依頼]

     六時間目のチャイムが鳴り、生徒達より遅れて体育館に入るとお決まりの様に辺りはざわついていた。
     舞台には立候補者が椅子に座っていて、直ぐに椎葉の姿を見付けられた。

    「……」
    「二年A組でしょ?早く行きなよ」

     振り返ると藤和が。
     背中を押される様にして俺は自分のクラスの空けられている場所に座る。
     勿論、周りは驚いた様に俺を見ていたが。

    「えっと、雨宮くんですよね」

     丁度隣に座っている控え目そうな眼鏡の女子生徒が話し掛けて来た。

    「そうだけど」
    「私、教室だと雨宮くんの隣の席何です。覚えて――ないですよね」
    「悪い」
    「いえ、影薄いですから、私。ですけど、演説会には来たんですね。ちょっと驚きました」

     そりゃあ誰もが来ないと思っていただろう。

    「あ、私、三崎礼奈って言います。三崎で結構ですので」
    「ああ、どうも」

     三崎礼奈。
     そう言えば、中学一緒じゃなかっただろうか。

    「三崎さんって七中だった?」
    「そうです。雨宮くんも七中でしたよね。同じクラスにはならなかったですけど」

     他愛のない会話をしている間に選挙が始まった。
     まず始めに生徒会長を立候補している生徒が前に出て演説を行なう。
  • 21 蒼緯 id:QSBL8j10

    2012-07-08(日) 12:23:45 [削除依頼]

     選挙終了後。
     ホームルームがあるらしく、生徒達は教室に戻って行く。

    「じゃ、俺行くから」
    「あ――はい。さよなら、です」

     律儀に一礼して礼儀正しい三崎は前に歩いている女子(友人だろう)の方へ走って行った。

    「へえ、あなたにも話す相手いたのね」

     嫌味なことを言うのは一人しかいない。
     足を止めて声をした方を向く。

    「正直、来てくれるとは思ってなかったわ。で、ちゃんとわたしに投票してくれたかしら」
    「ああ、してやった」
    「上から目線ね。だけど、ありがとう。投票してくれて」

     面と向かってお礼を言われて俺は思わず視線を逸らす。

    「折角出たんだから、ホームルームも出ましょうよ」
    「悪いけど、鞄、図書室だから。そのまま取って帰る」
    「あっそ。じゃ、また」

     椎葉が走って行って、体育館は誰もいなくなる。何気なく振り返ると、そこには笑顔の藤和がいた。

    「えへへっ、嬉しいよ。ありがとうね、椎葉っちと話してくれて」
    「何でそんなにお礼を言われなきゃいけないんですか」
    「あの子がまともに喋ってるの初めて見たかも知れないなー」
    「――何で他にそう言う奴がいないんですか」
    「色々とあるんだよ。色々とね。さっ、購買寄ってコーヒー飲もうよ」

     藤和は俺の右手をいきなり握って歩き出す。

    「ちょっ、離して下さい。誤解されます」
    「そのみーくんの言ってる意味分からないんだけど。それにしても、君は年上には警戒するよね」

     “年上”には。

    「……」

     ――かも、知れなかった。あれ以来、俺は年上の女性を意識して避けている。トラウマの様な物だろう。

    「みーくんはー砂糖とか入れる派?あたしはミルクも入れちゃうんだけどー」
    「すこぶる元気ですね、先生」
  • 22 蒼緯 id:QSBL8j10

    2012-07-08(日) 12:25:56 [削除依頼]
    >5+18 三崎礼奈 (みさき れいな) 未散と鏡架のクラスメイト。 大人しい性格で眼鏡を掛けている図書委員。
  • 23 蒼緯 id:NMrhuyZ0

    2012-07-08(日) 12:38:13 [削除依頼]

     其の参(番外)

     “あたし”の甥はあの日以来過去を引き摺り、何の興味も示さなくなった。
     小さい頃は好奇心旺盛であの子と一緒に外を駆けずり回って夕方になるとくたくたになって帰って来る――なんて風に子供らしい子供だったのに。
     今では冷めた視線を大人達や同級生に向け、誰にも邪魔されない図書室に引き篭もって一人勉強している。

    『あ、もしもし、詠羽?』

     週一くらいに来る姉からの電話。
     姉はあたしが勤務している学校に通っているみーくん――息子を気に掛け、様子をよく聞いて来る。

    『如何?未散、ちゃんとやってる?』
    「やってるよー」
    『あんたに聞くと何時もそんなのばっかりだから心配よ。変な女に騙されたりしていないでしょうね?』
    「大丈夫だって。変な女なんていないし――ねえ、お姉ちゃん」
    『何よ』
    「朔菜ちゃん、元気?」
    『……』

     通信障害とかじゃないだろうけど、終始無言。

    「聞いてる?お姉ちゃんってばー」
    『あの子のことはもう知らないわ。隣町の女子高の寮で元気にやってるんじゃない?』
    「たまには電話ぐらいしてあげなよ。何なら、あたしがしたいくらいだしさ。番号、教えてくれる?」
    『あなたまであの子に……っ、もう止めてよっ』

     姉はあれ以来、朔菜ちゃんの話題を出すと異常なくらいにヒステリックになる。
     だけど、そうなってもおかしくはなかった。あたしだって、実の娘があんなことしたらそうなるかも知れない。

    「ごめん――って。じゃ、もう切るね。お姉ちゃん」

     向こうの返事を聞かず、あたしは通話終了ボタンを押した。

    「はあ」

     ケータイをしまって、溜め息を吐く。
     このままじゃ、誰も前に進めないのに。みーくんも、朔菜ちゃんも、皆。その為にあたしが出来ることはないのだろうか。

    「ま、ないんだろうけどさー」
  • 24 蒼緯 id:NMrhuyZ0

    2012-07-08(日) 12:43:53 [削除依頼]

    一章あとがき

    主に其の壱と其の弐が未散サイドで其の参が詠羽サイドになります。
    以上で一章でした。

    無駄に無気力で何の興味も持たない少年と偉そうで副生徒会長に立候補した少女の話ですが、ヒロインは椎葉ではないと言う(汗
    真ヒロインはこれから出て来る予定です。
    って、この小説、読んで下さってる方いるのか否か曖昧ですがw

    二章からはもっと未散と椎葉は絡んで来ると思うのでこれを読んで下さった方は引き続き二章も読んで下さると幸いです。
    それでは、蒼緯でした。
  • 25 蒼緯 id:NMrhuyZ0

    2012-07-08(日) 12:44:57 [削除依頼]

    如何でも良い一人称等

    雨宮未散→俺

    椎葉鏡架→わたし

    藤和詠羽→あたし

    三崎礼奈→私

    地味に全て違っていますw
  • 26 蒼緯 id:/xduW37/

    2012-07-09(月) 12:40:10 [削除依頼]

    二章

     其の四

     四月下旬に入ると桜はすっかり散ってなくなる。登校下校途中にもう目に入ることもないと思うと何処か安心してしまう自分がいた。それくらい俺は桜が嫌いなのだろう。

    「サボり魔、おはよう」

     坂道で立ち止まっている俺に誰かが話し掛けて来た。

    「無視しないでよ。雨宮くん」
    「――椎葉さんか」
    「何よ。わたしだったら、何か悪いの?」
    「別に」

     ピンポンパンポーンッ
     後ろの校舎の方から放送の音が聞こえる。

    「副会長に当選したんだろ?早く帰って良いのか?」

     生徒会演説会の翌日、朝の放送で当選者が発表された。
     椎葉は断トツでぶっちぎりの一位で当選したらしい。

    「今日は会議も何もないから。あなたこそ、部活動とか入らないの?」
    「入りたかったらもう入ってると思わないか?二年だぞ」
    「それもそうね」

     軽く頷いて椎葉は歩き出し、俺を追い越す。

    「ね、」

     振り返って俺を見る椎葉。

    「あなたは如何して何に対してもやる気がないの?」

     穢れて等いない純粋な眼差しを椎葉は俺に向ける。
     正直、その眼差しが俺にとっては痛かった。いかに俺が穢れてしまっているのが再認識させられて。

    「何だって良いだろ。こう言う人間だっているんだよ」
    「理由になってない。藤和先生に聞いたけど、何か原因があるそうよね」

     アイツ――余計なこと喋りやがって。

    「わたしで良ければ、話ぐらい聞いてあげるわよ。副会長だし、中学の時は学級委員だってやってたんだから、頼りにしなさい」
    「結構だ。気持ちだけで十分」

     だが、椎葉は引き下がらない。

    「話しなさいよ。役に立つかも知れないでしょ?」
    「――ならねーよ」
    「なっ――わたしが役立たずって言いたいの?」

     そこまで言ってない。
  • 27 蒼緯 id:/xduW37/

    2012-07-09(月) 12:52:09 [削除依頼]

    「自分の問題は自分で解決しろって言うだろ?お前が出来ることなんてないから」
    「……あなた、自分で解決出来るの?」
    「つーか、もう自然解決したし」

     二年も前のことだ。
     もう終わったことであって、わざわざ蒸し返すのも難儀だろう。

    「そこまで言うのなら、分かったわよ。けど、何かあったら相談しなさい。乗って上げるから」

     変わった奴だ。
     人間はほとんどが自己中心的なのにコイツは他人に構う余裕がある。

    「いかに椎葉さんは今幸せなのか」
    「――何それ。まあ、確かに有意義な生活を送っているわよ」
    「でしょうね」

     羨ましいとまでは行かないが、何の災難にも遭わなかったんだろうなと思うと少し僻んでしまう。

    「雨宮くん」
    「何だよ」
    「あまり思い詰めない方が良い、と思うわ」

     ごもっともな意見だ。
     有難く受け取って置こう。

    「そりゃあどうも。参考にしとく」
    「如何だか。聞き流してないでしょうね?」

     いつしか俺等は肩を並べて歩いていた。
     多分、傍から見れば何処から如何見ても――友人か恋人だと思うだろう。
     俺、コイツとこんなに仲良くしてる覚えないんだけど。

     その時――、

    「未散」

     ふんわりとした声が聞こえた。
     まるで“アイツ”を思い出させる様なくらいに似ている声。
     振り返ると、

    「――三崎、さん」

     三崎礼奈があどけない笑みを浮かべて立っていた。
  • 28 蒼緯 id:/xduW37/

    2012-07-09(月) 12:59:15 [削除依頼]

     三崎、だよな。何処から如何見ても、三崎礼奈何だが、何処かあの生徒会演説会の時より少し違っていた。

    「ねえ」

     小声で隣の椎葉が俺の制服の袖を引っ張って来る。

    「如何した?」

     同じく声を潜めて尋ねれば。

    「三崎さんよね、あの人」
    「お前、クラスメイトだろ。毎日、教室で顔合わせてるのに覚えてねーのかよ」
    「だ、だって、ちょっと様子がおかしいじゃない」

    「違うよ」

     俺等の会話に入り込んだ三崎。
     俺と椎葉は顔を合わせる。

    『如何言うこと?』

     と言った様に椎葉がアイコンタクトして来るが、俺にもさっぱり分からない。

    「愛奈は三崎愛奈だもん。ねえ、未散」

     呼び捨て――前までコイツは雨宮くんだとか呼んでなかったか?

    「愛奈じゃなくて礼奈じゃないの?三崎さん」
    「愛奈だよ。未散、この人、誰?」

     三崎は椎葉を指差す。

    「誰って、クラスメイトの椎葉じゃないか」
    「クラスメイト?如何して?愛奈は一年何だよ」

     如何にも話が噛み合っていない。
  • 29 蒼緯 id:/xduW37/

    2012-07-09(月) 13:10:05 [削除依頼]

    「三崎愛奈。十五歳で高校一年生なの」

     等と三崎はそう言い張るが。

    「三崎礼奈でしょうが、あなたはっ」
    「えーと、椎葉先輩だっけ。確かに愛奈が着ている制服はお姉ちゃんのだけど、お姉ちゃんじゃないよ」
    「お、お姉ちゃん?」

     隣を見ると椎葉は訳が分からない様で困っていた。
     如何にかしてやりたいが、俺も訳分からないから出来ない。

    「もっかい言うよ。愛奈は三崎愛奈。椎葉先輩が言ってる三崎礼奈の妹。分かった?」

     誰が分かるか、そんな説明で。

    「三崎さんにそっくりじゃない」
    「よく言われるよ。お姉ちゃんに似てるって。ちなみに今日は愛奈がお姉ちゃんのフリをしてたんだよ」

     何となく分って来た気がする。

    「要するにお前は今日一日、三崎さんに成り済ましてたってことか?」
    「流石、未散。椎葉先輩と違って物分り良くて助かるー」

     椎葉がむっとするのが分かる。かなりお怒りの様だが。

    「じゃあ、本当の三崎さんは如何してるんだ?」
    「風邪で寝込んでるの。愛奈の学校は今日、創立記念日だから休みなわけね。それで、こっそり、お姉ちゃんに成り済まして来ちゃった」
    「来ちゃったじゃないわよっ、あなた、自分が何してるか分かってるの?」
    「煩いな、椎葉先輩。別に悪いことでもないでしょ、バレなきゃ良いんだから」

     もう一度、三崎の妹だと言い張るコイツを観察する。
     やっぱり……三崎にしか見えないんだけどな。

    「あなたの言ってることが分かったわ。だけど、一つおかしい所があるわよ」
    「何処かな?」
    「如何して、雨宮くんを未散って呼び捨てしているの?初対面のはずでしょ?」
    「違うよ。愛奈は未散と会ったことあるもん」

     ――え。

    「二年ぐらい前かな。中央病院で会ったよね。あの時、愛奈は骨折して入院してるお姉ちゃんのお見舞いに行ってて、未散も誰かのお見舞いに来てたんでしょ?」

     記憶がない。
     中央病院に通っていた時期はあったが、コイツと会ったことなんてあっただろうか。
  • 30 蒼緯 id:E6cP9D0.

    2012-07-10(火) 12:06:40 [削除依頼]
    >5+18+22 三崎愛奈 (みさき あいな) 高校一年。 礼奈の妹。
  • 31 蒼緯 id:E6cP9D0.

    2012-07-10(火) 12:17:03 [削除依頼]

    「悪いけど、覚えてないんだ」

     はっきり言ってやると三崎妹は一瞬しょんぼりとした様な表情になったが、直ぐに笑顔に戻す。

    「そっか。二年も前だからね。覚えてなくてもおかしくはないよ。軽く自己紹介したくらいでバイバイしただけだから」
    「まあ、思い出すかも知れないしな」
    「うん。ところで、未散は誰のお見舞いに行ってたの?」

     上手くその質問の回答から遠ざけたつもりだったんだが。
     三崎妹は如何しても知りたいらしい。

    「答えなさいよ。せめてもの償いって奴、したら如何?」

     中々、答えない俺に椎葉が突っ掛かって来る。
     こうなったら仕方ない。答えざるを得ない。

    「姉だ」
    「お姉さん?へえ、あなた、一人っ子じゃなかったのね」
    「面会謝絶で会わせて貰えなかったけどな。無駄に通ってた」
    「ふーん。で、お姉さん、何で入院してたのよ?」
    「怪我だよ」

     それだけ言うと椎葉はもう何も聞いて来なくなった。

    「あっ、もう直ぐ四時半だよね。愛奈、用事あったんだった。これで失礼するね」
    「え、ええ。どうぞ」
    「じゃあ、未散、椎葉先輩、バイバイ」

     三崎妹は慌しく坂道を駆けて行った。所々、こけそうになりながら。

    「嵐の様だったわね」

     はあ、と椎葉は溜め息を吐く。
     同感だった。
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