微睡の宙に、13コメント

1 あおい id:kxYQW0G0

2012-06-28(木) 19:00:55 [削除依頼]
ひとつの旋律をゆるりと紡いで――、
  • 2 蒼緯 id:mW6GBFK/

    2012-06-28(木) 19:39:59 [削除依頼]

     若干名前被っててすみません(汗

     面白そうです。
     更新頑張って下さい^^
  • 3 あおい id:8Hk1P6S.

    2012-06-29(金) 20:37:27 [削除依頼]
    蒼緯さん
    あわわ、わたしの方こそすみません´`

    短編集の予定なのでいろんなジャンルがひっちゃかめっちゃかになるかと笑
    応援のお言葉嬉しいです、ありがとうございます*
    がんばります、
  • 4 あおい id:8Hk1P6S.

    2012-06-29(金) 20:38:58 [削除依頼]
    「いつか僕をやめるとき、僕のために歌っておくれよ」
     
     いつもはゆるりと笑って済ます彼女でも、今回ばかりは固まってしまった。
     息を忘れたかのように、美しい彫像へと化す。
     滑らかな白い肌に、対照的な赤いマフラー、漆黒の長い髪をゆったりと肩に下ろしてじっと僕の方を見つめていた。
     
     だけど、それも束の間。
     くしゃっと美しい顔を歪めて、「いきなりどうしたの?」と無邪気に尋ねてくる様は、いつもの彼女だった。
     
    「どうって……べつにどうもしないけど」
     
     何となく、と続けると、そっか、彼女はまたゆるりと微笑む。悠はいつもいきなり変なこと聞いてくるんだもん、困っちゃうなあ。そういえばさ、この前もだったでしょう? どうしたら儚く散ることができるんだろう、なんて乙女チックなこと言っちゃってさ、ほんと困っちゃう。
     眉間へ僅かにしわを寄せながら、僕の手をそっと握る。
     しょうがないなあ、と。悠はいつも甘えん坊なんだから、と。
     
     彼女とこうやって過ごす冬の午後が、大好きだった。
  • 5 あおい id:8Hk1P6S.

    2012-06-29(金) 20:41:57 [削除依頼]
    「悠、見てみて、空がきれいだよ」
     
     彼女のすらりと伸びた白い指が指すその先に、青く広がる空があった。
     画用紙に青の絵の具を散りばめ、そこにクレヨンで描いた白いベールが薄く広がっているよう。
     
    「うん、きれい」
     
     短く答えると、まったく、と彼女は安心したように冬の空を吸い込んだ。
     
     純粋に綺麗だと、そう思う。
     星空も、南極で見ることができるオーロラも、日曜の朝も、雨の匂いも、全て等しくきれいだと思うけど、やっぱり。
     大切な人の傍で、同じ空の下で、きっとこうやって息をすることが一番の幸せだと思うのだ。
     
    「何ひとりで笑ってるの?」
     
     怪しいよ、と声をたてて彼女は笑う。
     彼女は彼女で、僕は僕。
     僕の存在を確かなものにしたのは、彼女だ。
     
     彼女なしで、僕は生きてなどいけない。
     
    「べつに笑ってない」
     
    「嘘、笑ってた」
     
    「笑ってない」
     
     不満げに顔をしかめ、握る力を僅かに強める。
     痛い、と言うと、くしゃっと顔を歪ませ、悠のせいだよ、悠が嘘言ったからいけないんだよ、と楽しげに僕の手をひいて歩き出した。
     握る力は、いつものそれと同じに戻っていた。
  • 6 あおい id:8Hk1P6S.

    2012-06-29(金) 20:44:23 [削除依頼]
    「そう、いえばさ、悠がこの前言ってた僕をやめるとき、ってどういうこと?」
     
     顔を俯かせているうえに長い黒髪が覆いかぶさっているから、彼女の表情は窺えない。
     泣きそうな眼をしているのだろうか、眉間にしわを寄せてしかめっ面をしているのだろうか、よくは分からないが、恐らく彼女の白い肌に微笑みはないだろう。
     
    「僕が僕でなくなるとき、あるいは死」
     
     彼女はいつか僕のことを単調だと言った。モノクロだと。
     素っ気ない、あまりにも淡々としている、あなたにも感情だってあるのでしょう?
     だから僕が涙を流したとき、彼女はひどく驚いていた。だけどすぐに笑って、良いんだよ、悠はそれで良いんだよ、と優しく背中を撫でてくれたのを、今でも覚えている。
     
    「何、それ?」
     
     だけどいつも優しいわけではないわけで。ふいに顔をあげ、鋭い眼差しで睨みつけてくる。悠が悠でなくなるときなんて無いでしょう? だって悠は悠だもの。悠以外に何があるっていうの? それに、死ってどういうこと? 確かに皆いつかは死んじゃうけど、皆死ぬために生きてるわけじゃない。死を覚悟して生きるということ、人によっては大事かもしれないけど、でもそんなの楽しくない。死を前提で生きるのと、そうでないのとは全然違うもの。ねえ悠、そんな事もう二度と言わないで。歌なんて、歌わないから。悠のために歌うことなんていつでもできるの、でもそういうのは本当に嫌、嫌なの、だからやめて。
     最後には、消え入りそうな声で。だけど確かな希望を帯びた声音で。
     彼女は静かに囁いた。
     
    「悠、どこにも行かないで」
     
     僕のコートの裾を引っ張り、項垂れる彼女の艶やかな黒髪をゆっくり撫でる。
     彼女が、ただ愛おしかった。
     いつも傍にいてくれる彼女が。
     僕を必要としてくれている彼女が。
     ただただ、純粋に愛おしかった。それだけだった。
     
    「わかった、約束するよ」
  • 7 あおい id:8Hk1P6S.

    2012-06-29(金) 20:46:31 [削除依頼]
     きっと別れの刻は確実に近づいているわけで、そのための歩みを止める術というものがあったとしても、僕らは知らない。
     だから、せめて彼女の傍にありたいと、強く願う。
     
     彼女は今日も僕の隣で静かに歌う。
     
     僕を僕に、確かな存在にしてくれた一人の女の子。
     それはあまりにも儚くて、触れたら壊れてしまいそうなほど繊細な――。
     僕はいつか、この手で崩してしまうのかもしれない。
     
    「ねえ、悠」
     
     彼女と過ごす冬の午後が大好きだった。
     もうすぐ新芽が顔を出し、鳥のさえずりが春の訪れを告げるだろう。
     乾いた空気も、オリオン座も見れなくなってしまう。
     
     でも、それでも。
     
    「見てみて」
     
     この手で崩してしまっても、大好きな午後が過ごせなくなったとしても。
     僕は、きっと――。
     
    「空がきれいだよ」
     
     
     
     
     
     

     
     
     
    01*僕が僕をやめるとき、
  • 8 あおい id:Fh2yIIN0

    2012-06-30(土) 23:41:00 [削除依頼]
    「何でそんなに笑っていられるの?」
     
     彼は笑う。いつも笑う。
     幸せそうに、頬をふにゃりと歪ませて。
     彼はわらう。
  • 9 あおい id:Fh2yIIN0

    2012-06-30(土) 23:42:13 [削除依頼]
    「しかめっ面で毎日を過ごすより、笑ってた方が断然お得だと思わない?」
     
     視線を合わせるように少し前屈みになって、私の顔を覗き込んでくる端整な彼の顔。
     整った目鼻立ちに、セットで付いてきたような眩しい笑顔がそこにはあった。
     
    「別に」
     
     彼はいつも私の隣にいてくれる。
     私だってそれがどんな意味なのかということぐらいわかってる。
     わかってるけど、あえてそれは口に出さない。
     出してしまえば終わってしまうことに、気づいていたから。
     
    「まったく、これだから紫音は」
     
     だから彼はわらう。
     気づかないように、お互いの隙間にある溝を何かで埋めるように。
  • 10 あおい id:Fh2yIIN0

    2012-06-30(土) 23:43:39 [削除依頼]
     透明な何かを探すことよりも、目の前にある何かに全力になってしまえば良いと、彼は言った。全力になればなるほど、周りのことは見えなくなる。危険だけど、紫音にとっては良いんじゃないかなぁ。透明なものって見えないし、不確かだし、それに何よりも、存在を維持し続けることが難しいと思う。紫音がそれで良いのなら僕も良いけど、透明な”それ”よりも、もっとこう――。
     あまりにも、遠回しだった。
     
    「紫音がそれで良いのなら僕も良いって、そんなの違う」
     
     そんなのあなたじゃない、と続けてみたけれど、彼の大きな手が私の口を塞いでしまったせいで、その声が彼に届いたのかはわからない。
     彼は私の口を塞いだまま悲しげに顔を歪ませて、ありがとう、とひどく掠れた声でわらって言った。
     あるいは自嘲的なわらいで。
     
    「紫音、ありがとう」
     
     今度は私の耳元に口を近づけて、そう囁いた。
     彼の表情は窺えなかった。
  • 11 あおい id:Fh2yIIN0

    2012-06-30(土) 23:44:53 [削除依頼]
    「歌って」
     
     彼は私の頼みをいつも聞いてくれた。
     眠れない夜は傍で私の手を握り、いつも子守唄を歌ってくれる。
     そんな彼が、愛しかった。
     
    「わかった」
     
     彼の声は綺麗だと思う。
     透明なものよりもはるかに透明で、純粋で美しく、夕焼けにかざせば蜃気楼のような向こう側が望めると思った。
     だからわたしはいつも彼に歌をせがむ。
     私だって駄々をこねたいわけじゃないけど、それでも彼の歌に対する気持ちは、いつまでも幼いままでありたいと思った。
     
     ずっと、このまま時が止まれば良いと。
     永遠に続けば良いと。
     
     彼に対する想いが、彼がこの世界に対する想いが、溢れだした瞬間だった。
  • 12 あおい id:Fh2yIIN0

    2012-06-30(土) 23:46:22 [削除依頼]
     ある晴れた日の午後だった。
     いつものように針は1秒の刻を刻み続ける。
     時計屋で聴くことのできる時間を叩く針の声が大好きで、いつか彼は紫音に似合うと、一つの懐中時計を差し出してきた。
     
    「あげる」
     
     静かなところで耳を澄ますと、微かに針の進む音がする。
     弱々しくも、芯の通った強い音。
     命の音だと、彼は言った。
     
    「ありがとう」
     
     私の右胸のポケットに、いつも大事にしまってある。
     命の音を、私はいつも感じていた。
  • 13 あおい id:Fh2yIIN0

    2012-06-30(土) 23:48:31 [削除依頼]
     何事もない、平和な日々を私はおくっていた。
     その中に彩は確かにあるわけで、それが彼の存在なのだと、いつしか私は気づくようになっていた。
     
    「歌って」
     
     彼に笑顔はこのうえなく似合っていて、彼の笑顔がすべてだと思う。
     彼の声もすてきだと思うけれど、最後にはきっと。
     
    「わかった」
     
     ゆるりと笑って彼が旋律を紡ぎだす。
     チッ……チッ……チッ……と鼓動と脈動、彼の声が比例し合う。
     お互いに反発し合って、重なり合って、そうして一つの命が生まれる。
     この瞬間が、私は大好きだった。
     愛おしくて、いつまでも大切にし続けたいとそう思う。
     
    「ありがとう」
     
     透明な旋律の中で、どちらが言ったのかはわからない。
     もしかするとどちらも言っていないのかもしれない。
     定かではないけれど、そんなことはどうでも良かった。
     
     針が命の音を刻み始める。
     夕日が、地平線をとかしていく。
     闇が柔らかに降り注ぐ。
     
     彼の中に、私は溺れた。
     
     
     
     
     

     
     
     
    02*日常
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