Lost Memory 12コメント

1 如月 颯 id:ktUd4AU0

2012-06-14(木) 20:30:58 [削除依頼]


――何のために生まれてきたのだろう
――何をするために此処に居るのだろう
 
 
 最近、頭の中には愚問ばかりが募っていた。
 たぶんそれは、俺自身がこの世界に絶望していたからなんだと思う。
 
 
  • 2 如月 颯 id:PZpVyp11

    2012-06-17(日) 10:33:34 [削除依頼]

    ‐作者から‐

    スレ立てて、二日ほど放置してしまった作者です。すいません。

    そしてもう一つ謝らなきゃいけないことがあるんですね。
    この小説と同じ題名の物がいろいろあるみたいなんです。先ほどググってみてわかったことなので、私自身、同じ題名の物があると知らなかったのです。って、言い訳にしかならないですね。
    でも、これは私の考えた話なので、決してパクリの類に入る物ではありません。
    わかっていただけると有難いです。

    さて、今年で中三のスレ主。いわゆる受験生とやらです。なので更新速度が遅いことは勘弁してください。
    ちなみにこの小説はファンタジーになります。


    長々と失礼しました。
    少しでも多くの方に読んでいただけることを願って、書かせていただく所存です。
    宜しければ、お付き合いください。
     
     
     
  • 3 如月 颯 id:PZpVyp11

    2012-06-17(日) 16:47:09 [削除依頼]



    序章
     
     

     ひらり、窓から眺める庭に一枚の花びらが舞い落ちた。
     透き通るような青空の下、城下町は町人の話し声や鳥のさえずり、川のせせらぎ、様々な音で溢れかえっていた。その活気にあふれた風景とは裏腹に、高々と強かにそびえ立つ城内の質素な一室では、ただただ無言を貫き通す、チェス盤を境にして座る男が二人。日差しが差し込む窓際に座り、そこから見える庭園へと視線を投げかけながら感慨深げな視線を向けていた男――二十歳前後だと思しき彼は、窓の外から視線を外さずに目の前に座る赤髪の少年へと語りかけた。
    「……人の世も、散っていく花のように儚い物なのだろうか」
     愁いに満ちた瞳で放った言葉に少年は自嘲するように笑う。物音一つしないその部屋に、少年の声は幾度も響いた。
    「ああ、君の言うとおりだよ。儚い物さ、人の世なんて」
     目の前に広がるチェスの駒へと手をのばし、自分の駒である白のポーンを手に取って少年は語り続ける。
    「この世は不完全で、嘘や疑念に満ち溢れてる。散っていく花のように美しくもないのさ。ただ、儚く終わる。それだけの話。だけどほら、そんな世の理を変えられるような力があるとしたら、誰だってその力を欲さずにはいられない。この世の性さ。人は力に惚れる」
     少年は持っていた白のポーンで相手のキングを弾いた。乱雑な弧を描きながら床へと落ちるキングが、カツンと乾いた音を響かせたのを機に、チェス盤の駒をキングの上からぶちまけた。
    「それがもし、自らが望んでいない力だとしても、欲さずにはいられないんだよ。この駒達のように」
     また、部屋を静寂が包み込む。青年は静かに席を立ち、無造作に散らばった駒へと手をのばした。
    「キングが力……か。確かにそうなのかもな」
     ふっと口の端をゆがめた青年の瞳に、先ほどまでの愁いの色は見られない。彼の漆黒の瞳に映るのは、憎悪と哀愁、ただそれだけだった。
    「僕らも、そのキングが欲しいのさ。この世の理を変えるために、ね」
     青年の青髪を慈しむように撫でながら、少年は微笑んだ。そして、窓の外へと視線を投げかける。
     

    (そう、僕等には力が必要なんだ。運命を変えることができるくらいの……)


     彼の瞳が、わずかに揺れた。
     
     
     

     
  • 4 如月 颯 id:amSpY201

    2012-06-19(火) 15:24:13 [削除依頼]
      

     
     
    第一章

    1,15の祝いに
     
     
     
     夢を見てた。遠い昔の、懐かしいのかすらわからぬ夢を。

     
     数時間前に朝日が昇り始めて、しだいに青く染まり始めた空。今では光り輝く太陽が燦々と大地を照らしていた。夜毎聞こえていた風の音も、この時間の鳥のさえずりには到底かなわない。青々と茂った木々に囲まれた閑静な、それでいて広々とした一軒家の扉をくぐったその先の一室で寝ていた彼も、その音で目を覚ました。
     ゆっくりと体を起こし、ダルそうにあくびをする。ひとしきり行動を起こした彼が部屋に掛けてある時計を見て、もう一度ベッドに入りなおそうとしたとき、部屋にドアをノックする音が響いた。
    「……誰?」
     早く帰ってくれとでも言わんばかりの仏頂面と声色で尋ねたその問いの応答が返ってくる前に、勢いよくドアが開け放たれた。
    「グッドモーニング! 今日も元気ハツラツなロイ君だぜぃ!! 起きてるかい、ヒイロ」
     瞬間、部屋中を凍りついたような空気が包み込んだ。
     それは今が冬だからでも、この部屋に冷房が効いているからでもない。単純な話だ。ベッドの上で下半身を掛布団の中へと潜り込ませていたヒイロと呼ばれた彼が、冷ややかな視線をドアの傍で両手を広げて満面の笑みで立っている人影に送っていたからである。
     暫しの沈黙が続いた中、ヒイロがふっ、と呆れたような笑みを漏らしながら鼻を鳴らした。
    「ちょっ、おい。 そのリアクションはないだろ……!」
    「悪いが俺は、お前と違って常識人なんでな。ふざける相手を間違えたんじゃないのか?」
     至って冷静に振る舞うヒイロとは対照的に、ドア付近で喚いているロイ。
     彼らの外見は瓜二つだった。日の光をそのまま取り込んだかのような金色の髪、長身で引き締まったその体も、どこからどう見ても瓜二つ。唯一違うところと言えば、その性格とロイの右目だろうか。ヒイロの瞳はは双眸とも透き通るような青色であるのに対し、ロイの瞳は、右目が青色、左目は髪と同じ金色のオッドアイだった。
  • 5 如月 颯 id:UaFf3A9/

    2012-06-21(木) 07:38:01 [削除依頼]
    「お前が俺の双子の兄だと思いたくないな」
     ヒイロの言ったその一言に対し、ロイはあからさまに項垂れてみせる。よよよっ、と、泣き崩れるようにその場にしゃがみ込んだロイを一瞥してから、ヒイロはひらりと手の平を返した。
    「用がないならさっさと出て行ってくれ。俺はまだ眠いんだ」
     お得意の涙目戦法を使っても少しもたじろがないヒイロ。それを見て、これ以上やっても無駄だと思ったのか、ロイは立ち上がると何事も無かったかのように部屋から出ていこうとした。
     と、ドアを半分ほど開けたところでまた、つれない弟へと向き直る。
    「そういや、母さん達が呼んでたぜ。今日は久しぶりに家族全員で朝食をとろうってさ」
    「……わかった。着替えたら行くから」
     ヒイロの返答に満足したのか、「りょーかい」と、ブイサインを見せて、ロイは部屋から出て行った。
  • 6 如月 颯 id:OG4f1pf.

    2012-06-22(金) 16:16:50 [削除依頼]
     ドアが閉まる音を最後に、先ほどまでのこの場を包んでいた明るい雰囲気はしだいに消え去っていった。それが不思議と、無性に寂しく思える。早く出て行けと言ったのは自分自身なのに。
     静寂が包み込んだ部屋で一人、ヒイロはベッドから降りて部屋の隅に置いてある戸棚の前へと歩を進めた。そして、棚の上に置いてある写真に手をかけ、愁いを含んだ笑みを見せた。
     目の前に映る家族全員の笑顔。今より少しあどけない顔立ちなのは、数年前に撮ったからなのだろう。若かりし頃の父親に頭を撫でられて、仏頂面で少し恥ずかしそうにブイサインをしているのは、明らかに自分自身。でも、ヒイロは思い出せなかった。この頃のことを。幸せそうに微笑んでいる、家族全員と過ごした日々を。ほんの数年前の事のはずなのに。
    (記憶がないのも、虚しいものだな)
     自嘲的に微笑んで、手に持っていた写真を見えないように棚へと戻す。その行動は、何かを諦めているようで……。
     何処ともいわず、重い空気が部屋を包み込んだ。
    (今更こんなことを言っても変わらない、か)
     少しばかり熱くなってきたこの季節。寝汗を掻いた服を脱ぎ棄て、戸棚を開けて真っ新のシャツに腕を通す。そうするだけで、不思議と気分は軽くなった。
     部屋のドアノブに手をかけたところで、ふとロイの顔が脳裏に浮かぶ。あまり遅くに出向いたら、また何かどやされるのだろう。少し早歩きで行くとするか。
     こうしてヒイロは、部屋を後にした。
  • 7 如月 颯 id:OG4f1pf.

    2012-06-22(金) 17:04:27 [削除依頼]
     
     *
     
     
     
    「遅いぞ、ヒイロ」
     予想通り。
     すでに父も母も席についているリビングにヒイロが赴くと、ドアを開けた瞬間に、ふてくされたような顔をしてどっかと椅子に腰を据えているロイの、明らかに気分を害している声がとんできた。
     うるさそうにだるそうに、ひらりと手を振ってヒイロは席に着く。これが嫌だから早歩きで来たはずなのだが、というヒイロの思いなどつゆ知らず、何度も遅いと連呼するロイに対して嫌気がさしたのか、しだいにヒイロも仏頂面になってくる。
     険悪な空気がリビングを包んだ。
     母はまだ幼い子供の兄弟喧嘩を見るような微笑ましい目つきで二人の事を見ていたが、父は違った。未だ仏頂面で向かい合っている息子二人よりも一層眉間にしわを寄せ、近寄りがたい空気を醸し出している。その空気に二人も気が付いたのか、ヒイロとロイはゆっくりとお互いから視線を外した。
     ヒイロが席に着いたのを見て、父は口を開いた。
    「今日は仕事もないので久しぶりに家族全員で朝食をとろうと思ったのだが、いきなり険悪な空気はやめてほしいものだな」
     父に鋭い視線を送られて、ヒイロも、いつも明るく冗談ばかり言っているようなロイも肩をすくませた。二人にとって、父の存在は何よりも偉大なのだ。いや、恐ろしいと言った方がいいのか……。
    「ところで、お前たちは三日後15歳になる。その意味も、しっかりと理解しているだろう?」
     父の問いかけに口を開いたのは兄であるロイだった。
    「この家の家訓で、15になったら正式な跡継ぎになるのでしょう? 俺かヒイロ、どちらかが。俺はこういう事に興味がないので、この家の跡継ぎはヒイロに頼みたいのですが」
     12歳を過ぎたころだっただろうか。ロイは跡継ぎの話になると毎度のように言っていた。実質、双子と言えど長男であるロイは正当な跡継ぎのはずなのに「俺は跡継ぎになんてなりたくない」、と。後を継げば財産だって、家の名だって、すべてが手に入る。昔はこの国の王付きの騎士を仕事としていたオルセイン家の名と財産が入れば、一生遊んで暮らすことだってできるだろう。それでもロイは拒むのだ。跡継ぎになることを。
    (まあ、跡を継がなかったら自由だからな。家の名に縛られることもない)
     ヒイロ自身は自由などどうでもよかった。記憶のない者が自由になっても、その意味すら見いだせない。なら自分は、家の型にはまってただ生きていくだけだ。兄は自由を、弟は財産を。彼等兄弟の利害は一致していた。
    「俺はそれで構いませんよ。ロイが継がないのなら、俺が継ぎますから」
  • 8 如月 颯 id:CmzF28j0

    2012-06-25(月) 16:29:14 [削除依頼]
     ただただ、言った。何かに言葉をぶつけるように、言い放った。
     その言葉をヒイロの父はどのように受け取ったのかはわからないが、少しの間をおいて、ロイへと問いかける。
    「ロイもそれでいいんだな?」
     斜め右に座る息子が肯定のしぐさをとった。もちろんだ、とでも言うように微笑んだロイを見据えてから、父はまた口を開いた。
    「お前たちの15の誕生日、つまり三日後だ。この屋敷で、後継者が決まったことを祝してパーティーを開こうと思う。それが終わればヒイロには跡継ぎとして覚えなければならないことを叩き込んでやろう」
     ふっ、と口の端をゆがめた父の瞳には、跡を継ぐと言った息子の顔が映っていた。
    「さあっ。堅苦しい話は終わりにして、朝食をいただきましょう」
     今まで口を閉ざしていた母が手を叩いて空気を換えた。それを合図に傍で控えていた給仕係たちが一斉に動き出す。と言っても、さすが屋敷の給仕係とでも言うべきだろう。慌ただしさは一切感じられず、テキパキと、それでいてどこか優雅に朝食をテーブルの上へと並べだした。部屋中に広がる食欲をそそるようなスパイスの香り。ロイとヒイロの喉がごくりと鳴った。
     最後に母の前へと料理がセッティングされ、丁寧に礼を言う母に、とんでもないと頭を下げながら後ろへ下がる給仕係が部屋を出て行った後、リビングにフォークとナイフ、皿が擦れる音が響いた。
     
     
     そして、日は流れ、双子の誕生日でもあり、後継者披露パーティーの当日でもあるその日は、翌日へと迫っていた。
     
     
     
  • 9 如月 颯 id:CmzF28j0

    2012-06-25(月) 17:33:17 [削除依頼]
    「なあ、ヒイロ。明日、俺らの誕生日だなぁ」
     夜風が部屋に吹き込み、窓際に掛けられているカーテンが揺れていた。すでに辺りは真っ暗闇で、かすかな月明かりだけが道行く人々の足元を照らしているようなこの時間帯に、ヒイロの部屋の窓際にロイは腰かけていた。そんな彼が言った言葉は感傷的な響きを含んで、目線の先にある夜空へと、吸い込まれていく。開け放たれた窓から入ってくる夜風に月の光を浴びて一層輝いている金髪が揺れた。自分の兄のどこか物憂げな言葉と態度が、部屋の中のベッドに腰掛けていたヒイロをも感傷的にしていた。室内を支配しているのは風の吹くわずかな音だけで、ただそっと、体中で音を感じ取るかのように、双子は口を閉ざしていた。
    「……本当にあれでよかったのか」
     先に口を開いたのはヒイロだ。迷いのある声色で尋ねた相手は、振り返ると微笑んだ。優しく頷いてみせる。
    「いいんだ。俺は自由が好きな男だからな。型にはまった人生じゃ、楽しくないだろ? だいたい、そのセリフは俺のものだ。弟のお前に責任全部押し付けて、家を出ていこうとしているようなものだしね」
     申し訳なさそうに語尾を小さくした兄を見て、やるせない気持ちになる。
     いつもはふざけて冗談ばかり言っていても、兄は兄なのだ。ちゃんと、弟の心配をしてくれている。それが少しばかり嬉しくて、同時になぜか切なく思った。
    「これは俺が選んだ道でもある。ロイが自分を責めることなんてないんだ」
     いつも人に見せない優しい笑顔で微笑んだヒイロを見て、虚を突かれたように目を丸くするロイ。ヒイロはそうやって笑ってたら可愛いんだけどな、と、言い終わるか言い終わらないかのうちに、弟からの鉄拳を受けてうずくまった。
     激痛の走った腹を撫でながら、少しぐらいは手加減しろよ、と苦笑いを浮かべてよろよろと立ちあがる兄を、ヒイロは鼻であしらった。
    「男に可愛いなんて言われて良い気はしないのに、ロイに言われると尚更腹が立つ」
    「まあまあ、そう言うなって。……俺、ヒイロと兄弟になれてよかったよ。出会えてよかった」
     突然の言葉に、身動きの取れなくなるヒイロ。まっすぐに見つめたロイの表情には、微笑みが浮かんでいた。
    「……んだよ。脈絡なさすぎだろ」
     ぼそりとつぶやいた弟の言葉に、気が付いているのかどうかはわからないが、ロイはヒイロの頭を、撫でた。不意の行動に体をびくつかせる弟に、兄は話しかける。
    「なーに照れちゃってるんですかー?」
    「なっ! べ、別に照れてない!!」
     にやにやと顔を覗き込んでくる兄が言った言葉に反論しながら、ヒイロは頭の上に置かれた手を振り払った。

     窓から吹き込んだ風がカーテンを揺らす。
     世界を包み込むように広がる空に、「ツンデレ君はっけーん」というロイの明るい声が響き渡った。
     
     
  • 10 如月 颯 id:G3CbM.A/

    2012-06-27(水) 13:14:49 [削除依頼]

     
     
     月下、ロイが自室へと戻った後もヒイロはベッドの上に腰掛けていた。
     視線は宙に固定。心ここに非ずといった表情で小さくため息をついた彼は、ゆっくりとベッドへと倒れ込む。布団へと体が投げ出されるような音を耳で聞きながら、またもやヒイロはため息をついた。

    『ヒイロと兄弟になれてよかったよ。出会えてよかった』

     幾度も頭に響く兄の声。先刻聞いたばかりなのに、まるで何十年も昔に聞いたような不思議な感覚がヒイロを襲っていた。
     それはなぜか? 自分自身に問いかけても答えは見つからず。それどころかより一層、疑問は募るばかり。
    (……ガラじゃないこと言うから、だよな)
     結果として、出てきた結論はこれだった。なぜ兄の言葉を懐かしく感じたのかはわからないし、これ以上考えたとしても納得のいく結論など出そうにない。
     物憂げな態度に、唐突に言われた言葉。少しばかり不安になる。まるでこれから居なくなるんじゃないかというような雰囲気すら感じられた兄。
    「アイツに限って、そんな訳ないよな」
     自らをなだめるようにつぶやいた言葉は、虚しく部屋の空気を震わせるのみだった。
  • 11 涼泉 id:OFaL1QG1

    2012-07-10(火) 21:19:53 [削除依頼]
     
     
     
    2,祝日と凶日
     
     
     
     祝い事の始まりはあっと言う間に近づいて、すでに数時間後へと迫っていた。
     とんとん拍子に決まったこの席も、時間が経つにつれて主役であるヒイロに緊迫した空気を背負わせている。
     屋敷にある大広間で開かれるパーティは、始まった直後から豪勢な食事で来客者を持て成し、少々の間を開けて広間の舞台にて跡継ぎの話がヒイロとロイの父親――現オルセイン家侯爵――から持ち出されることとなっている。その際、主役であるヒイロも一言二言の演説を仰せ付かっているのだが、何度も範唱した今も完璧に語りきる自信はないようだった。だからこそ、ヒイロは緊張しているのだが。
     自室にて刻々と気を刻む針を眺めながら、彼は静かに息を吐き出した。重い緊迫感がより一層部屋の中を包み込む。刹那、その空気を吹き飛ばすかのような垢抜けた声がヒイロの耳にこだました。
    「調子はどうだい、マイブラザー!」
     バーン、という効果音がぴったりだと言っても百人中百人が頷くような勢いで部屋の扉を断りもなく開け放ったのは、言うまでもなくロイである。
     ヒイロとは打って変わった明るい表情は、一瞬にして部屋の空気を入れ替えた。
    「……少しは空気を読んでくれないか」
     ため息交じりに唸るヒイロ。思いもよらぬ登場の仕方に緊張とは違う重苦しい疲れが彼の肩に伸し掛かった。
  • 12 如月 颯 id:OFaL1QG1

    2012-07-10(火) 21:37:21 [削除依頼]
    「え、何その反応。せっかく兄貴が来たのにさ」
     あからさまに肩を落とすロイの行動に対して、常人には真似のできないほどの冷ややかな視線を注いだヒイロは改めて自身の兄へと向き直る。両手広げて降参のポーズをとった彼は、しっしと手を動かして、帰ってくれと意思表明をした。
     しかし、行動の意図を読み取ったのか読み取っていないのかわからぬ兄は、またもや扉をくぐる気配はない。それ以上に、近くにあった椅子へと腰掛け、祝いの席が始まるまでは帰ってくれそうにもなかった。
    「俺は愛する弟を訪問しに来たのですよ。絶対緊張してるだろうから……ね?」
    「ね、じゃないだろ」
     相変わらずすぎるその言動に多少の苛立ちを感じたものの、やはりここは兄だ。緊張をほぐしに来てくれたのか、と、内心では素直に喜ぶヒイロだった。……内心では。
    「うるさい奴のせいで疲れた。今日何かあったらお前のせいな」
    「え、何それひどい」
     さらっと毒づいたヒイロの表情は心なしか先ほどより明るくなっている。対するロイも、いつもと変わらぬおちゃらけぶりでヒイロと言葉を交わしていた。
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