夢現幻想譚7コメント

1 たいら id:ez-./xqbsF.

2012-06-14(木) 01:40:57 [削除依頼]
少年は夢を見る。


剣を持ち、仲間・・・友人と共に、見知らぬ世界を旅する夢。


現実と幻想を行き来しながら、少年が手にするものは何なのか。


答えは魔王のみぞ知る。
  • 2 たいら id:ez-./xqbsF.

    2012-06-14(木) 01:41:52 [削除依頼]


    “また”だ。


    眠りに落ちていく意識の中で、少年・・・ユウは確信していた。
    今宵もまた、異世界へ旅立つことを。


    暗闇の中に、色が滲む。

    あちらで目覚める前に、前回の冒険を復習しておこう。
  • 3 たいら id:ez-./xqbsF.

    2012-06-14(木) 01:44:39 [削除依頼]
    「おーい、ユウ!」


    道場で木刀の素振りをしていると、背後から名前を呼ばれた。

    振り向くと、村では珍しい金髪の少年が、大剣を肩に担ぎながらニヤニヤ笑っていた。


    「何だ、コータか」

    「何だとは何だよ。しかし、朝から精が出ますなぁ」


    言いながらコータは道場を見回すと、首を傾げた。


    「あれ?師匠は居ないの?」

    「バアちゃんの墓にお供え物あげに。ていうか、いつジイちゃんに弟子入りしたんだ」

    「まぁまぁ、細かいことは気にするなよ!」


    コータは白い前歯を見せながら楽しそうに笑う。

    こっちでも、こいつは変わらない。


    素振りを終わらせ、木刀を床に置く。


    「もう止めるのか」

    つまらなそうにコータが言う。


    「お前が来る前から素振りしてたし、こんなことをいくら続けても奴は倒せないからな」

    「ま、それもそうか。ところでさ」


    コータの口元が、右側だけ吊り上がる。
    禄でも無いことを考えているときの癖だ。


    「村外れの山に魔獣が出たらしいぜ」
  • 4 たいら id:ez-./xqbsF.

    2012-06-14(木) 01:46:31 [削除依頼]
    鬼の居ぬ間に洗濯・・・もとい、ジイちゃんの居ぬ間に魔獣退治。


    居間の机の上にコータと出掛ける旨の書き置きを残し、手短に準備を済ませて家を出た。


    村の出口へ続く砂利道を歩く。

    横を見ると、コータは腰からぶら下げた皮袋を漁りながら

    「えーと、いちにぃさんしぃ・・・4つもあれば大丈夫かな」

    「何を数えてるんだ?」

    「薬だよ、薬草をすり潰したやつ。前にお袋が作ってくれたんだ」


    そう言って皮袋の中身を俺に見せてくる。

    覗いてみると、木製の筒が4本。
    ほのかに薬草独特の香りが漂う。


    「薬なんて必要無いと思うけど」

    自慢じゃないが、この村の周辺に現れるような魔獣なら一人でも無傷で倒せるようになった。


    「でもさ、道具屋のおっちゃんが言うには結構大型・・・げ」

    言葉を途中で区切り、コータが呻く。


    「2人とも、武器なんて持ってどこへ行くの?知ってるでしょ、山に魔獣が出たんだよ?」


    腰に手を当て、道の真ん中でふんぞり返る修道服の少女。


    「ヤヨイに出くわすなんて最悪だぜ・・・」

    コータはガックリと肩を落とした。
  • 5 たいら id:ez-./xqbsF.

    2012-06-14(木) 01:49:47 [削除依頼]
    「まーったくあんた達は・・・。ユウ、あんたもこないだお祖父ちゃんに叱られたばかりでしょ?」


    こないだ・・・というのは、こちらの世界では何日前のことだったか。


    記憶を辿りながら

    「ああ、まぁ」

    と曖昧な返事。


    「はぁ」

    ヤヨイは露骨に溜め息を吐くと、首に下げているネックレスを外した。


    「はい、これ」


    差し出されたそれを反射的に受け取る。

    白銀のチェーンには、同じく銀の十字架。
    よく見ると不思議な紋様が掘られている。


    「えっと、ヤヨイ、これは?」

    「見れば分かるでしょ、アクセサリーよ。妖精の加護だから大した効果は無いけど、御守り程度にはなるから」

    「なぁ、オレのは?」


    コータがネックレスとヤヨイの顔を交互に見ながら瞳を輝かせる。


    「あんたはユウより丈夫だから必要無いでしょ」

    「そんな・・・」

    コータの肩が更に落ちた。


    と、ここで一つ疑問が。

    「見逃してくれるのか?」

    「まぁね、何だかんだ言ってあんた達強いしさ。でも無理はしないように!」


    ビシィっと人差し指を突きつけながら、ヤヨイは笑う。

    ヤヨイも、あっちと変わらず明るくて優しい女の子だ。
  • 6 たいら id:ez-./xqbsF.

    2012-06-14(木) 01:52:35 [削除依頼]
    ヤヨイに手を振って見送られた後、衛兵のおじさんに適当な理由を話して許可を得て、ようやく俺達は村から出た。


    辺りを緑に囲まれたこの村では、時々獣が魔獣となって人を襲うという事件が起きる。

    以前、それこそジイちゃんがまだ現役だった頃は若者達が討伐に繰り出したらしいが、今では若者と呼べるのは俺・コータ・ヤヨイの3人くらいで、村に一人しか居ない衛兵も去年魔獣との戦いで腰を痛めてしまった。


    「オレらがどうにかしないとな」

    まるで俺の思考を読んでいたかのようなタイミングで、コータが呟いた。


    「そうだな」


    でも、村の周りに湧く魔獣をいくら狩ったところで、真の解決には至らない。
    コータもそれは理解している。

    だからこそ俺達は、とある目的を胸に秘め鍛錬に励む。


    「・・・ユウ、見ろよ」

    コータが指差した先には、ただの獣の足跡にしてはいくらなんでも大きすぎるそれがあった。

    生い茂る草花を踏み荒らしながら、足跡は山の奥へ続いている。


    背中に下げた剣の柄に、右手を掛ける。

    コータも腰を落として武器に手を掛けていた。


    足跡から察するに、件の魔獣は俺の予想を遥かに超える体躯の持ち主なのは明らかだった。
  • 7 たいら id:ez-./xqbsF.

    2012-06-14(木) 01:56:38 [削除依頼]


    色が、滲む。

    黒から緑へ。
    鮮やかな赤が点々と散りばめられている。


    体が、痛む。

    左半身と背中に鈍い痛みを覚えた。
    でも、暖かい何かが体をふわりと包んで、痛みを和らげてくれている気がした。


    声が、聞こえる。


    「ユウーーー!!」


    名前を呼ばれて、俺は覚醒した。

    上半身のバネで体を起こすと、眼前には迫り来る巨大なイノシシ。


    「おおおおお!!」

    吠えて、己を奮い立たせる。
    そうでもしなければ足が竦んで動けやしない。


    視界の隅で何かが光った。

    俺の剣だ。

    吹っ飛ばされたときに落としてしまったのだろう。


    体を投げ出すように、地面へ飛び込む。

    スレスレをイノシシが通り過ぎ、風圧で草がなびく。


    剣を右手に取ると、すかさず体勢を立て直し後方を見る。

    ちょうどイノシシが方向転換で切り返したところだった。


    「気を付けろ!デカい癖に小回りが利くぞ!」

    コータが叫びながら筒を投げて寄越した。


    「分かってる!」

    筒を受け取り、裂傷の酷い左腕に薬をぶち撒ける。
    いつもはかなり滲みるのだが、そんな余裕も無いらしい。


    鋼鉄製の直剣を、腰の高さで構える。
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