囁きのベランダ5コメント

1 夜叉 id:xU/DRvo1

2012-06-01(金) 20:44:08 [削除依頼]
    第一章


 風呂から上がって、俺は真っ先にキッチンへと向かい、冷蔵庫を開けた。真っ暗なキッチンに、冷蔵庫の淡い光が滲む。冷蔵庫の中身は、空っぽに近い状態だ。
 自炊はあまりしないので、最低限の調味料と、牛乳と、俺の大好きなサイダーしか入っていない。食材は切らしても、サイダーだけは切らせたことがない。毎日バイト帰り買っている。
 俺は迷わずサイダーを手に取り、キャップを捻って、ペットボトルを咥える。ボトルを傾けると、風呂上がりの渇いたのどを、シュワシュワと冷たい刺激が通っていく。
 バイトから帰宅して、すぐさまお風呂へ入り、冷蔵庫にある冷えたサイダーを飲む。これが一日の締め。疲れた心と体を癒してくれる、小さな幸せ。
 だが、一日の締めというのは今は違う。
 真っ暗なキッチンで電気も点けず、サイダーをラッパ飲みし、その場で飲み干す。そして、ついげっぷを出してしまう。咄嗟に手を当てたが、そんな行為に意味はない。
 独り暮らしなのだから、品のない行動でも気分を害する人はいないのだから。
 飲み終えたボトルを水で洗って流し台に置き、首に掛けたタオルを頭に被せ、片手で乱暴に掻く。拭くとは言い難い、ガサツなやり方。男はだいたいそうだ。
 頭を拭きながら、真っ暗なリビングを抜け、真っ暗な廊下を歩き、二階へと続く階段を上る。さすがに、階段の明かりは点けないと危ない。
 上りきるとまた真っ暗な廊下だ。何せ、俺以外いないし、帰ってきてすぐ一階にある風呂へと直行だ。電気は点いていない。おかげで電気代は安く住んでいる。良いことだ。
 四つある扉のうち、廊下の一番奥にある扉が俺の部屋だ。残りの部屋は空き部屋になっている。家具はそのままあるが、使っていた人間がいないので空き部屋である。
 部屋の扉を開けると、当然部屋も暗い。ただ、月明かりが差し込んでいるせいかぼんやりとした暗さだ。闇に光を溶かしたような、そんな感じ。
 部屋に入り、俺はベッドに腰掛けた。電気は点けない。節約だ。一人暮らしは節約が必須だ。まあ、それは実際どうでもい。ただ、部屋で特にすることもないので、電気を点ける必要がないのだ。
 拭き終えたタオルを首に書けなおし、壁に掛かった時計を見やる。
 時刻はあと三分で、夜の十一時になろうとしている頃。
 あと三分。何かをするには少ない時間。どのみちすることもないが。
 なので、壁をぼんやり見つめることにした。
 味も素っ気もない、ただの白い壁。特に何かを考えるわけでもなく、ただ見つめる。
 ここは小高い丘の閑静な住宅街だ。時間も夜遅い。静かすぎて、少し耳が痛い。
 唯一聞こえる音は、時計の針が時を刻む音だけ。その音が180回。つまり、三分を刻むと、ベランダの戸をコンコンと小さくノックする音が響いた。
 ゆっくりとそちらに顔を向けると、ベランダの向こうに、少女が居た。
  • 2 the,腐女子(笑^^ id:irG.lW00

    2012-06-01(金) 20:50:36 [削除依頼]
    応援してませふよ〜^^
  • 3 夜叉 id:xU/DRvo1

    2012-06-01(金) 21:54:37 [削除依頼]
    ベッドから腰を上げ、ベランダの戸を開ける。
     少女は俺の顔を見るなり、背後に控える月のように淡い笑みを浮かべる。
    「こんばんは、春樹さん」
     春樹は、俺の名前だ。だから、俺も同じように返す。
    「こんばんは、紫苑」
     ベランダに立つ少女、紫苑は変わらない笑みのままふわりと後ろへ飛んだ。ばさりと、ひと羽ばたきして、ベランダの柵へと腰掛ける。
     真っ白なワンピースを身に纏った少女は、月夜を背にすると、まるでもう一つ月が浮かんでいるように見える。さらさらの長い黒髪が、夜風にふわりと靡き、少女はそっと手を添えて髪を抑えた。
    「翼をしまったらどうだい?」
    「あら、どうして?」
     さも意味が分からないように、小首を傾げる紫苑。
    「人に見られたら大変だ」
     すると、紫苑は可笑しそうにクスクスと笑いを零した。
    「私の姿は、人に見えないわ」
    「でも、俺には君が見える」
     そう言うと、紫苑は笑みの質を変え、どこか悪戯っぽい笑みを浮かべる。
    「それは、あなたに見て欲しいからよ」
     俺は思わず、視線を逸らした。彼女の後ろにある月に。
     そういうのは反則だ。あのセリフを、彼女の夜空を映しだしたような瞳を見つめながら聞けるものじゃない。
     彼女が視線の端で小さく笑っているのを、恥ずかしく思いながらも、平静を装って月を見つめる。
    「見えないなら翼はそのままにしよう。その方がいい」
    「そうするわ。それに、人目の心配がないことは最初に説明したはずだけれどね」
     それは覚えている。本当のところ、今更の確認は、ただ彼女が綺麗だったから何か気の利いた言葉でも掛けようかと思ったが、いざ本人を前にしたら恥ずかしくて、話を変えただけなのだ。
     それを知ってか知らずか、変わらず笑みを浮かべている。
    「今日はよく晴れていて、月が綺麗ね」
     紫苑は月を見上げた。足をパタパタさせている。彼女と出会って一か月、機嫌がいいとこうして足をぱたぱたさせる癖があることを知った。
     話し方のせいか、大人びた雰囲気を持つ少女は、天使だ。
  • 4 夜叉 id:cM7m88L.

    2012-06-08(金) 23:42:19 [削除依頼]
    一か月前、今日のように月の出ている晴れた夜の日に、彼女は俺のベランダに舞い降りた。
     まあ、舞い降りたところは見ていないが、正確には今と同じようにベランダの柵に腰掛けていた。
     バイトから帰宅し、やはり今日と同じく風呂に入りサイダーを飲んで部屋に戻って、暗い部屋のベッドに腰掛けた。そして、闇夜の静寂を澄んだ光を零したようなどこかあたたかな鼻歌が聞こえてきた。
     見ると、ベランダに真っ白なワンピースを着た少女が居た。背中にワンピース以上に白く、美しい翼を広げて。
     最初は夢でも見ているのかと思った。ずっと休みなくバイトをしていたし、疲れが溜まっていた。だから、俺は、彼女の元へとそっと近づいた。素敵な夢になる気がして。
    「……でも、冬のほうがやっぱり綺麗よねって……聞いてる?」
     彼女の声にハッとし、慌てて振り向くと、紫苑は唇を尖らせてこちらを睨んでいた。
    「もう、私の話を聞いていなかったでしょう?何、ぼうっとしていたの?」
     怒っているのだけれど、イマイチ彼女に迫力がない。少し子供っぽくて可愛いぐらいだ。
    「いや、君と出会った夜の日のことを思い出していて……」
    「ああ……」
     すると紫苑は、含みを持たせて何度も頷き、やがてにやりと笑って見せた。
    「あの時、あなたは自分の夢だからっていきなり私の手を握って俺の彼女になってくれ! なんて、叫んだっけ?」
    「なっ……」
    「ふふっ、顔を真っ赤にして、どうせい俺の妄想からきた夢だってぶつぶつ呟きながら、私に迫ってくるんだもん。さすがに、身の危険を感じたわ」
    「っ――」
     俺が思い出したくない、今抹消したい過去ベスト3に入る記憶を笑いながらばらしてくれる。誰も人がいないからって、これはあんまり過ぎる。
  • 5 みかん id:NVTdh.Z/

    2012-06-09(土) 10:20:00 [削除依頼]
    頑張ってください♪
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