さくら寮に吹く風25コメント

1 なり id:QA6lrv41

2012-05-20(日) 22:55:31 [削除依頼]

勢いよくカーテンを開き、朝の光を全身に浴びて
あたしは大きく息を吸った

今日は待ちに待った「高校生になる日」
入学式だ
夢に見ていた輝かしい日々が始まろうとしている

「さくら寮に吹く風」
   ***なり***
  • 6 なり id:TUAn1IL0

    2012-05-22(火) 22:10:12 [削除依頼]
    あーっマリさん!!
    来てくれたんですか
    ありがとうですっ((泣

    お互いがんばりましょう☆
  • 7 なり id:TUAn1IL0

    2012-05-22(火) 22:15:30 [削除依頼]
    入学式が終わった
    教室に入り、自分の席につく
    窓際の席は風が入って気持ちがいい
    同じ新一年生の声が廊下に響いている
    みんな心が浮き立っているのだろう

    爽やかな風と程よい雑音のBGMに
    すっかりまどろんでいると
    校内放送が流れた
  • 8 なり id:TUAn1IL0

    2012-05-22(火) 22:32:54 [削除依頼]
    「新一年生で寮入居希望者の生徒は
     教務室前廊下に集まってください」

    きた!!
    これを待っていたの、あたしは!!
    意気揚々と席を立ち、教室の出口へと向かう
    振り返ると、クラスメイトのみんなはまだ
    同じ中学出身の友達とおしゃべりをしていた
    このクラスの寮入居希望者はあたしだけらしい

    今から数時間前、
    他クラスになってしまったと
    一緒に悲しんだ友達に声をかけられた
    それも今はちょっともどかしい
    適当に交わして先を急ぐ
    走って行った教務室前廊下に行くと
    そこにはもう3人の男子生徒が来ていた

    女子寮がもしあたしだけだったら
    先輩の女子生徒と同室かも
    それはキツいなぁ

    そこへまた2人の男子生徒が来た
    男子は5人になり、なにやら話し込んでいる
  • 9 なり id:TUAn1IL0

    2012-05-22(火) 22:45:17 [削除依頼]
    すると男子が3人近寄ってきた
    初めに来ていた3人だ

    「なぁお前、寮長やんない?」

    寮長!?
    あたしが?
    っていうか、なんで男子が女子の寮長決めるの?

    「どういうこと?」

    「なんか俺らもよくわからへんねや」
    「でも、なんとか先生に言われたんだよ」
    「寮長決めといてくださいってね」

    普通、女子寮は女子寮で、
    男子寮は男子寮で決めるんじゃないの?

    「でもなんかおかしくない?」
    「ですよね。
     そもそも女子寮など
     ここの高校に存在しましたか?」

    え。
    女子寮ないの!?

    「えー、僕のお兄ちゃんはここの卒業生だけど
     そんな話聞いてないよ」

    うそでしょ‥‥
    どういうこと‥‥?
  • 10 なり id:fRvgmSc1

    2012-05-23(水) 00:08:32 [削除依頼]
    そこへ先生がやってきた
    生徒の寮生活担当の屋中先生だ

    「あれ?
     女子の申し込みはなかったはずだけどな」

    先生は名簿を確認し
    やっぱり君の名前はないよ
    と首を振った

    「困ったな
     女子の申し込みはないと聞いていたからな‥‥」

    困っているのはあたしの方!!
    どうしよう
    寮に入れてもらえなかったら、
    あたしはあの家に帰るの‥‥?
    そんなの嫌!!
    あの家には…もう二度と…

    「君、男子寮でもいいかい?」

    えっ‥‥

    はぁ!?
    男子寮ってそんなの嫌!!
    でも、あの家も嫌‥‥

    「いやね、
     部屋は全室、一人部屋なんだ。
     一緒なのはリビング、ダイニング、キッチン、
     お風呂と玄関くらいかな。
     トイレはなぜか女子のもあるし。
     どう?
     わりと大丈夫だろ?」

    そ、そんな‥‥
    どうしよう

    幼いころ両親を亡くし
    親戚の家で居候の子として育てられてきた
    その家の子供たちは
    しゃべり方の違うあたしを貶し、いじめた
    その子たちの両親にとっても
    あたしはお荷物であり、煙たい存在だったのだろう
    虐待こそされなかったものの
    無視は当たり前だった

    あの家には帰りたくない
    でも‥‥
    その時、男子の一人がおもむろに口を開いた
    5人の中で一番かっこいいと
    思っていた一人だった

    「俺は別にいいけど」

    えっ?
    おそらく素直に赤くなってしまったあたしは
    気がつくと男子寮の住人になってしまっていた
  • 11 なり id:fRvgmSc1

    2012-05-23(水) 23:18:07 [削除依頼]

    「おおぉ!!」
    「意外にいいところだな」
    「見てっ全部の部屋、畳だぁ!!」

    放課後、あたしたちは寮に来ていた
    これから、おそらく高校生活3年間をここで過ごす
    いよいよ盛り上がってきた一同は
    寮内を幼稚園児のように走り回っている

    そんな中、あたしは誰にも声をかけられずに
    困っていた
    これじゃぁみんなの輪に入れない‥‥!

    「どうかした?」

    「えっ!?」

    振り返ると一人の男子が
    あたしの顔を心配そうに覗き込んでいた

    「大丈夫?
     ずいぶん長い間ボーッとしてたけど」

    うそっ恥ずかしい!!
    え? ということは、
    ずいぶん長い間あたしのこと見てたってこと?

    心配してくれてたのかな‥‥

    「あ、ありがと。
     でも、もう大丈夫!!
    ちょっとボーッとしちゃっただけだから」

    「そう?
     ならいいけど。
     それよりキミ、名前は?
     僕は高崎 茜。よろしくね。」

    「あ、あたしは仲原 美頼。
     よろしく〜」

    「美頼ちゃんね。
     よろしく〜☆

    人懐こい笑顔
    笑うとできるえくぼ
    なにより声をかけてくれた‥‥

    どうしよう
    今、顔赤いかも!!


     
  • 12 なり id:rG2XGsL/

    2012-05-26(土) 17:03:14 [削除依頼]
    あの、マミさん。
    今気づいたのですが、名前間違えてすみませんっ
    遅くてごめんなさい!!
  • 13 なり id:rG2XGsL/

    2012-05-26(土) 17:51:22 [削除依頼]
    「おーい、オタクと女の子ちゃん。
     なにしてんのー?」

    驚いて我に返った
    声がした上の方を見上げると
    階段の上に男子が一人立っていた
    どうやら「オタク」の知り合いらしい

    えっオタク!?

    「オタクって呼ぶなって言っただろう、翔也。」
    「オタクなんだからしょうがないやろ。
     おーい、女の子ちゃん。
     そいつに変なことされてへんか?」

    へ、変なこと!?
    オタク!?
    なんだか訳が分からないよぉ

    困ってしまったあたしを見て
    なぜか関西弁をしゃべる男子が降りてきた
    一緒に他の男子3人も降りてくる
    あたしと高崎くん以外は
    みんな2階に行っていたようだ

    「美頼ちゃん、大丈夫?
     ほら、翔也がオタクとか言うからぁ」
    「オタクはお前だっ」
    「大丈夫?
     名前なんていうの?」
    「わたくしがなぐさめてあげましょう」

    ‥‥どうしよう。
    ちょっとこの人たち怖いかも!!

    と、思ったその時、

    「女子にたかんな。
     まず、自己紹介だろ」

    あ、さっきのあの人だ
    「俺は別にいいけど」
    そう言って助けてくれたあの人
    また、助けてもらっちゃったなぁ
    なんだか心の奥がほっこりと温まった気がした

    「あ、そうそう自己紹介!!
     俺から言ってもえぇか?
     俺は桐谷 翔也。
     バリバリ大阪出身やけど、気にせんといて」

    大阪出身
    だから関西弁なんだ
    なんだか楽しそうな人だな

    「では次はこの僕が。
     僕の名前は佐倉 斗真。
     趣味は読書、ミステリーが好きです」
    「斗真は元財閥で現佐倉グループの
     会長の息子なんだって
     ゆくゆくは会長になんの?」
    「いいえ。
     そのような予定と興味はまったく」

    すごい人なんだ!!
    でもらしいな
    普通の人とは違ってる(敬語だし)
  • 14 なり id:rG2XGsL/

    2012-05-26(土) 18:31:18 [削除依頼]
    「ほれ、オタクの番やで」
    「オタクって呼ぶなってば!
     えーっと、僕の名前は高崎 茜。
     趣味はアニメを見ること、
     マンガを読むこと、
     絵を描くことです」

    ホントにオタクだ‥‥
    でも、高崎くんも「らしい」よ、すごく‥‥。

    「じゃぁ俺。
     俺は岡 伸太郎。
     趣味は絵を描くこと。
     将来、美大に行って絵描きになる予定。
     よろしく」
    「お前は同中出身いないんだな」
    「よろしく〜」
    「よろしくどうぞ」

    気がつくと残り自己紹介を終えていないのは
    あたしと例の彼だけになっていた
    あたし‥‥言ってもいいのかな
    ちらと彼を見ると彼もこっちを見ていた
    そしてうなずく
    「お先にどうぞ」
    というように

    「な、仲原 美頼です。
     いろいろと事情があって
     無理に入れてもらいましたが
     よ、よろしくお願いしますっ」
    「うん、よろしく〜」
    「よろしくな」
    「よろしくどうぞ、お嬢さん」

    あぁよかった
    ちゃんと認めてくれている
    初めて居場所を与えられた気がした

    「俺は宮島 陵。
     趣味ってーと‥‥
     サッカーかな。
     4歳から続けてるし」
    「よろしく〜」
    「陵も同中いないんや」
    「4歳からってすごいね」

    宮島 陵くん‥‥か
    サッカーやってるんだ、すごい
    同中いないんだ、仲良くなれるかな

    気がつくと宮島くんの自己紹介を
    繰り返しては余韻に浸っているあたし
    あたし、どうしたの?
    無理して我に返ろうとしても
    また引き戻されてしまう
    宮島くんが‥‥頭から離れないよ‥‥!!
  • 15 なり id:H7am6G60

    2012-05-27(日) 09:41:09 [削除依頼]
    「これで全員やな。
     ところで、今、何時や?」

    そういえば
    学校を出てからずっと時計を見ていなかった
    佐倉くんがテレビの上の時計を見る

    「6時45分です。
     そろそろお腹がへりましたね」
    「今日夕飯どないする?」

    確かにあたしもお腹がへってきた
    男子5人に女子1人
    こういう場合は女子が家事全般を担当するのが普通?
    ということは、今はあたしがご飯作るべき?
    でも、あたしは‥‥

    「せっかく女の子がいることだし、
     作ってもらおうよ、手作りご飯!!」

    やっぱり。
    でもどうしよう
    実はあたしはこの年まで料理をしたことがなかった
    あの家では、
    決められた場所以外立ち入り禁止という
    あたしだけに対する暗黙のルールがあった
    だから、キッチンなんて入ったことさえなかったのだ

    ここで断ったらみんなに嫌われるかもしれない
    もしかしたら、追い出されるかも
    その思いがあたしの中で勝った
    追い出されあの家に帰ることは、
    あたしにとって死活問題なのだ

    みんながあたしを見ている
    やってみなけりゃわからないじゃない
    自分を勇気づけて言い切った

    「いいよ。まかせてっ!!」
  • 16 なり id:peh6H.s/

    2012-05-28(月) 22:46:04 [削除依頼]
    あたしは一人でキッチンにいた
    強がって「まかせて」なんて言っちゃった
    絵描き修行中の岡くんに
    美術用のエプロンまで貸してもらったけど、
    やっぱりダメかも
    次に何をすればいいのかがわからない
    みんなには申し訳ないし、恥ずかしいけど、
    事情を話して謝って、
    コンビ二に行こうか

    みんなは今リビングにいる
    お笑い番組を見ているらしく、
    さっきから盛大な笑い声が響いている
    あたしに夕飯作りを押し付けておいてずいぶん楽しそうだ

    よし、もうこうするしかない!!
    みんなに謝ることを決意したあたしはキッチンを出ようとした
    その時、

    「大丈夫ですか、仲原さん?」

    丁寧で遠慮がちな口調なのに
    ずかずかとキッチンに現れたのは
    佐倉くんだった

    「あ、あのね。
     今、みんなに話をしようと決意したところなんだけど‥‥」
    「あぁメニューですか。
     それなら僕が今、みなさんに聞いてきました。
     やはり記念すべき最初のディナーということで
     がっつりいきたい方が多いようです。
     カレーなんかいかがでしょう?」

    うわ、どうしよう
    もしかしてみんな期待してる!?
    カレーなんて食べたことしかないよー!!

    「どうかしましたか?
     6人分の食事作りはさぞ大変でしょう。
     僕もお手伝いさせて頂こうと思いまして
     岡くんに、エプロン借りてきたんですよ」

    じゎ、と目の奥が熱くなった
    佐倉くんの優しくて温かな言葉に、
    あたしの心はほどけていく
    涙がひとすじ静かにこぼれた

    「あのね、あたし‥‥」

    佐倉くんにすべてを話した
    緊張して、リビングの笑い声なんて聞こえなかった
    でも佐倉くんは、
    真剣な瞳でまっすぐにあたしを見つめ、
    話を聞いてくれた

    話し終えると、佐倉くんはあたしに深々と頭を下げた

    「事情をよく知りもせず押し付けてしまい
     申し訳ありませんでした」

    そしてすぐに白い歯を見せて笑った

    「どうやら本当に僕の力が必要のようですね。
     お力になりましょう。
     僕もカレーくらいは作れますから」

    カレーくらいは、なんて言ってた佐倉くんは
    料理の基礎は完璧だった
    あたしは、自分は助手ですからと言い張る佐倉くんに
    何から何まで世話を焼かれ、
    手厚いご指導を受けた

    「さぁ完成ですよ。
     最後にあなたがやるべきことはただ一つ。
     みなさんの前で自分が作ったように振舞うことです。
     頑張ってくださいね」

    佐倉くんのこれでもかというほどの
    優しさをめいっぱい感じて、
    あたしは頭を下げた

    「ホントに助かった!
     佐倉くんのおかげだよ。
     いろいろありがとう!」

    6人も座れる大きなテーブルには
    もう残りの4人がそろっていた
    全員にカレーを配り終え、あたしと佐倉くんも席に着く
    時刻はもうすぐ8時
    もうスプーンを手に持っている桐谷くんが
    初のディナーを祝い、乾杯の音頭をとる
    さくら寮のダイニングに6人の声が響きわたった

    「いただきまーーーすっ」


     
     


     
  • 17 なり id:eaRMf9v/

    2012-05-29(火) 19:12:31 [削除依頼]
    ぱくっ
    っというより噛み付くような勢いで
    カレーを口に運んだ桐谷くん
    すぐに
    「おいしーっ」
    という言葉が出る、と思いきや、
    満面の笑みを浮かべていた顔をしかめたのだ

    「どうしたの、翔也?」
    「つっかえたんだろ、がっつくからだぞ」
    「お水、いりますか?」

    翔也はゆっくりと飲み込んでから言った

    「このカレー、甘酸っぱいよ?」

    うそ、甘酸っぱい!?
    そんなはずはない、だって今日のカレーは
    あたしじゃなくて、
    ほとんど佐倉くんが作ってくれたんだもの
    桐谷くんはあたしが作ったと思ってバカにしてるんだ
    そう思ってあたしも一口食べてみる

    「うッ!!!」

    本当に甘酸っぱい
    甘すぎるカレー、辛すぎるカレー
    どっちもあたし的には困るけど、
    甘酸っぱいカレーなんて聞いたことがないよ

    佐倉くんをちらと見ると苦笑いを返された
    そしてもう一度カレーをよく見てみると、
    野菜の切り方はガタガタだし、
    お肉は溶けちゃってるしで
    ルーの味以外にも失敗点はたくさんあった

    なるほど、
    佐倉くんはほとんどを自分が作っていると見せかけて
    実際はほとんどあたしが手がけたものを使ったんだ
    してやられた
    こうなったら仕方がない
    口々に感想をいうみんなに、
    あたしは真実を話すことにした
    そして謝った
  • 18 純 id:C6l.n/c1

    2012-05-29(火) 20:56:22 [削除依頼]
    いじめをうけていたなんて悲しい過去があるんですね…。
    高校生活での寮生活楽しそうですね。

    僕は、
    僕達の居る世界
    という小説を投稿しているので、よかったら見てください
  • 19 なり id:eaRMf9v/

    2012-05-29(火) 21:49:34 [削除依頼]
    来てくれてありがとうです!!

    寮生活、今は楽しそうですが、
    何事もずっとそのままというのは難しいものです。
    これからは、さらに様々なイベントやトラブルを予定しています。
    新しいキャラクターも登場する予定ですので
    乞うご期待!!
    未熟者ですが、よろしくです。

    「僕達の居る世界」
    ご紹介ありがとうです。
    行きますね!!
    お互い、頑張りましょうっ
  • 20 なり id:eaRMf9v/

    2012-05-29(火) 22:38:02 [削除依頼]
    あたしの告白を、みんなは真剣に聞いてくれた
    話し終えると、
    いきなり高崎くんが立ち上がった
    そして目に涙を溜めながら言った

    「長いお話、お疲れ様!
     辛かったんだね。
     もうその記憶は封印しちゃっていいんだよ。
     その分、ここで僕と素晴らしい思い出を作ろう!!」

    ありきたりだけど、
    心の奥底にスッと溶け込むような優しい言葉
    あったかいよ‥‥
    高崎くんの言葉に、みんなの瞳に
    あたしは、長い間忘れていた
    人の温もりを感じた
    この気持ちを一生忘れたくないと思った

    不意に桐谷くんが沈黙を破った

    「ん?
     茜、お前今、なんて言った?
     “僕と素晴らしい思い出を作ろう”
     って言わへんかったか!?」
    「うん。
     高崎くんは今、さりげなーく
     美頼ちゃんにプロポーズしたよね」
    「‥‥てんめ〜!!
     抜け駆けしやがってぇ!!
     許さんっ」

    みんな笑っていた
    あたしも笑っていた
    ここに来る前の辛かったことなんて
    無かったみたい
    やっぱり高崎くんの言うとおり、
    あの記憶は封印しちゃおうかな

    「大変だったんだな。
     お疲れ様」

    宮島くんだった
    いつのまに隣にいたんだろう
    こんなに近づいたのは、出会ってから初めてだ
    ドキドキして心臓が痛いよ

    「あ、うん。」

    居心地に悪い沈黙
    あたしは宮島くんに言ってみることにした
    何か大切なことを発見したような気がしたから

    「でもね、封印することにしたから、
     その記憶。
     あたしは今まで可哀想な子だって思ってた。
     ちっちゃい頃にパパとママ死んじゃって、
     意地悪な親戚の家においてかれて」

    宮島くんは向こう側を向いていて、
    どんな表情で何を思っているのか分からない
    でも聞いてくれているらしかった
    少しほっとして、また話し始める
    あたしの独り言のようになているのが
    逆に心地良かった

    「でも、今日楽しかった。
     いっぱい涙流したけど、楽しかったんだ。
     今日ここに来て、みんなに会って、
     あたし思ったの。
     もしかしたら今まであたしは、
     こんな幸せを見逃していたんじゃないか?
     弱音ばっかり吐いて、
     下ばっかり見つめて歩いてきたのかも、って。
     違うかな‥‥。」

    宮島くんはしばらく経ってから
    静かなよく通る声で答えてくれた

    「違くねぇよ。
     お前が見つけた答えなんだからな」

    また沈黙がおとずれた
    でも今度はすごく居心地のいい沈黙

    お笑い番組が再びつき、
    みんなの笑い声と笑顔があふれる
    そう、あたしは今、幸せなんだ
    ささやかだけど、これこそが本物の幸せ
    そんな気がした

    「なぁ仲原、だっけ?」

    はいぃっ!!!
    名前を呼んでもらったのは初めてで
    声が裏返ってしまった

    「やっぱこのカレー、まずいよ」

    ‥‥。
    練習しなくちゃ

    さくら寮の夜がふけてゆく
    明日もいい日になるといいな
  • 21 なり id:.7qjPr30

    2012-05-30(水) 22:13:35 [削除依頼]
    ドンドンッ!

    翌朝、ドアを叩く大きな音に
    あたしは文字どおり飛び起きた
    部屋の外で誰かが声を張り上げている

    「美頼ーっ
     朝飯はぁ?
     起きてはりますーっ?」

    この声、この口調
    ‥‥桐谷くんだ
    そうだ、あたしはもうあの家の居候ではないんだ
    本当に気持ちのいい日曜日の朝
    窓から顔を出し、おひさまに向かって
    トランペットでも吹きたくなる

    まだ桐谷くんはドアの向こうにいるらしい

    「なー美頼、
     起きてるんか?」
    「起きてるんやったら早よ支度して
     朝飯にしようやぁ」
    「今日は俺も手伝うで〜」

    起きたらすぐ誰かの声が聞こえる
    ふふっ
    なんて素晴らしい朝なんだろう

    「ちょっと待ってー。
     今、行くからぁ」

    返事をして着替え始める
    桐谷くんは「来るってー」と叫びながら
    一階に降りていった
    もうみんな起きてるんだ
    急がなくちゃ

    支度を終え、
    空気の入れ替えをしようと部屋の窓を開け放った
    そよそよと爽やかな風が頬にあたる
    あたしは軽快なリズムで階段を降りていった

    「おはよー、美頼ちゃん」
    「おはようございます。
     よい天気ですね」
    「朝飯っ朝飯っ」

    リビングでは桐谷くん、佐倉くん、
    岡くん、宮島くんの4人が
    朝のニュース番組「おはようニュース」を見ていた


     
  • 22 RICO id:2NE76H00

    2012-06-06(水) 18:42:26 [削除依頼]
    頑張ってください!!
  • 23 なり id:ySLT1yW.

    2012-06-10(日) 20:26:24 [削除依頼]
    RIKOさん、応援ありがとうございます。
    最近、ごぶさたでした。
    更新しますね
  • 24 なり id:ySLT1yW.

    2012-06-10(日) 20:38:00 [削除依頼]
    岡くんに借りたエプロンをつけ、
    キッチンに入る
    昨夜の大失敗が脳裏に蘇る
    宮島くんにも「マズイ」って言われてしまった
    初の美頼特製カレーライス
    早く上達して、みんなに美味しいって言ってもらいたい

    でも、みんなの「朝ごはん」は何だろう
    ご飯?パン?それとも‥‥

    再び頭を抱えていたら佐倉くんが入ってきた
  • 25 なり id:Fb5QAyr0

    2012-06-20(水) 01:32:58 [削除依頼]
    「朝ごはんですが、ご飯の方が多かったです。
     パン希望もお一人いたのですが、
     僕は毎朝ご飯を食べたいのでやめてもらいました」


    やっぱりお金持ちの息子さんなんだ...
    初めて佐倉くんに会ったとき、
    物静かで優しそう
    この人となら、あたしでも仲良くなれるかも
    そう思った
    でもそんな第一印象の佐倉くんに
    あたしは早くもついていけていない

    「なにをボーっと突っ立っているのですか。
     はやく始めないと
     桐谷くんが怒鳴り込みに来るかもしれません」

    丁寧な言葉遣いでズバズバものを言う佐倉くん
    ほら、ついていけない

    佐倉くんは炊飯ジャーの蓋を開けた
    ほわっと温かい湯気があふれる

    「ご飯...炊けてるの?」
    「お米は昨晩、僕がといでおきました。
     そして炊飯ジャーにセットしておいたのです。
     さぁ朝食作りを始めましょうか」

    そういって手を洗い始めた佐倉くんは
    昨日と同じ、岡くんに借りたエプロンをしていた
    手伝ってくれるんだ

    「あ、りがと」
    「いいえ」

    よし
    今日こそみんなに
    「おいしいっ」
    って言ってもらうんだ
    蛇口を思いっきりひねり、全開の水で手を洗った
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