隔絶の論理7コメント

1 黒の組織 id:iIJ6uGE/

2012-05-18(金) 15:51:41 [削除依頼]
踏み出した先には消えていた自分――

隔絶が生んだ悲哀の論理――

憎悪の叫びと衝動的に犯した大罪――

真相は一体誰が握っているのか――
  • 2 黒の組織 id:iIJ6uGE/

    2012-05-18(金) 21:57:31 [削除依頼]
    ▼./創始の挨拶

    久方ぶりの小説板に緊張気味の黒の組織です。
    この作品は完全なるミステリー小説となっております。
    準備板で言っている新作とはまた別ですので。
    これは以前に書いたプロットをこの度文章化した作品です。
    終始ミステリーの作品です←
  • 3 黒の組織 id:iIJ6uGE/

    2012-05-18(金) 22:09:42 [削除依頼]
    -Prologue-

     翠色が視界を埋め尽くす。
     辺鄙の地に顕在する、小さな拘置所の門外。松崎悠太は仁王立ちし、公然とした姿勢で眼前に広がる景色を眺望していた。
     藹々たる雑草や自由に伸びる雑木、荒れ果てた田畑が視界に飛び込んでくる。そこには当然の如く、人など存在しない。
     ここには彼が背にしている、拘置所の人間だけが存在する。無人同等の地なのだ。

    「自宅へお送りします」
     紳士的に述べるスーツの男。悠太を手で招く。
    「あっ……宜しくお願いします……」
     小さな声で返答する。公然とした姿勢は瞬く間に崩れ、か細い腕で車のドアを引っ張った。
     悠太は座席に腰を下ろすなり、徐に男に問いかけた。
    「どれくらいかかるかな?」
    「時間にしますと一時間程度でしょうかね……」
     悠太は小さく相槌を打ち、深く腰を掛ける。すると、親切にも男は悠太の荷物をトランクに収めてくれた。「出所ですね」
    「うん……」
     男の問いかけに、あどけなさの残った、幼い返事をした。
     車は砂利に揺らされ、悠太の家へと走った――。
  • 4 黒の組織 id:Fitgf5Y1

    2012-05-19(土) 23:16:46 [削除依頼]
    -Despair-

     淡い陽光が柔らかく顔を照らした。悠太は微かに眩しさを覚え、重い目蓋を無雑作に擦る。視界は濁っていて、今の自分の状況を把握するのに時間を要した。
     すると語りかけるような、朗らかな口調が悠太の耳を捉えた。
    「到着しましたよ」
    「あぁ……」
     無愛想な返事。放心したような表情で悠太は言う。
     ふと車の窓から外観を眺めた。目の前に河川敷があり、住宅街へと繋がる一本の橋がある。悠太は自然と懐かしさを感じると同時に、感動を覚えた。
    「本当にここで宜しいのですか?」
     神妙な口調で男は訊いてきた。気遣いのある人間だ、そう思った悠太は鼻で笑い、雄弁な口調で話した。
    「俺さ……愚かな真似したけどさ、親の前ではどうしても恥かきたくないんだよね……。馬鹿らしい話でしょ」
     赤面の悠太。男の驚嘆したような眼、それと一緒に微笑を浮かべ、首を左右に振った。
     
     カチャ――。

     トランクが開いた。運転席から男が開けたのだ。悠太は音に敏感に反応し、男を見た。
    「ご自分で、ご自分で行かれた方がいいのではないですか? 親御さんの為にも」
    「…………あぁ!!」
     躊躇ったのか、最初彼の言葉は詰まった。だが誇らしそうな、嬉しそうな笑みを浮かべて、トランクから重い鞄を取出し、背負った。
     男は車の時計で時刻を確認する。七時まで残り数分。
    「まだ寝ているかもしれませんよ……」
     そう言いかけた時には彼は、もう橋を渡り始めていた。無邪気な、謙虚な姿勢。
     男は降車しトランクを閉めると、彼の跡を最後まで見届けた。
    「おめでとうございます……」
     小さな声でそう呟き、彼は車で河川敷を跡にした。
  • 5 黒の組織 id:6Kd7uhl.

    2012-05-20(日) 18:16:47 [削除依頼]
     興奮は鼓動を速める、悠太はそう感じていた。出所の喜びと、新世界への旅立ち。二つが興奮を引き立て、自然と毀れる満面の笑み。
     朝の人気のない一本橋を、彼は全力で走った。

     早朝の住宅街はやはり賑わいがなく、車通りもない。昔から変わらぬことだ。だが、強いて言えば以前と比べこの街は一層整備されていた。
     悠太は変貌を遂げた街に、驚愕と寂しを覚え屹立していた。

     しかし彼の足は自然と動き出していた。家路へと。記憶は浅はかだったが、身体が反射的に動いていた。

     橋から歩いて数分。次第に重くなる足取り。複雑な感情が廻る中、気づけば家へと着いていた。そこには母がいる。たった一人の家族の母が。
     先程までの興奮は消え失せ、緊張へと化していた。手からは汗が流れ、鞄の取っ手を滲ます。
     ――どんな表情するかな――
     ――びっくりするかな――
     いろいろな疑問が、悠太の心の中で張り巡らされた。
     
     悠太は震える手でチャイムを押す。チャイムは手汗で少し濡れた。袖で手を覆い、汗を拭き取る。
     息苦しくなり鼓動が速くなる中、ドアが開いた。小さい隙間を保ったまま、母親がそっと顔を出してきた。妙な湿潤さ。徐々に増す手足の震え。それらを無理矢理押さえ付け、悠太は口を開く。
    「ただいま……」
     声までもが震えている。冷や汗が床に落ちた。その雫を足で拭うように塗擦。
     息を呑んだ。言い切った、そう確信していた。あとは母親の反応だけ、彼は神に縋るかのように願った。

     母親は恍惚とした表情で悠太を見る。驚いているのか……、感動しているのか……、悠太は母親を見詰めいろいろなことを連想した。刹那、母がやっと口を開いた。
    「……私に息子なんていません」
  • 6 黒の組織 id:2atjZP3/

    2012-05-21(月) 20:20:27 [削除依頼]
     悠太は朝の冷たい風が、頬に張り付く触感を覚えた。まるで一瞬時が止まったかのように――。
    「ど……、どういうことだよ……」
     悠太は吐き捨てるように、心の声を洩らした。拳を強く握りしめながら。
    「俺が松崎悠太だぞ! 息子がいないだ? いるじゃねぇか!」
     思わず悠太は抒情的に叫んでしまった。憤慨と焦りが、彼の呼吸を乱している。目つきは猛獣の如く鋭かった。しかし、母親は至って平然としている。装っている風にも見受けられない。少しも曲がらない口角は、能面のように冷酷だった。
     沈黙の中、二人の対峙は続く。すると母親がドアを全開し、嘆息混じりに言った。
    「悠太は四年前に逝去しました」
     鋭い眼光でぼそっと言う。母親はドアを少し閉めて、悠太を見詰めた。
     悠太は愕然とした。完全に混乱に陥っている。異様な程に呼吸が荒くなり、目を大きく見開く。彼は首を左右に振った。
     ――嘘だ、嘘だ――。
     ―絶対何かの間違いだ――。
     心の中でそう唱えた。どうにかして、自分を安堵させようとしているのだ。
    「ち、違う。俺は昨日まで拘置所に……」
     そう言いかけた時、母親は彼の言葉を遮るように、口を挟んだ。
    「これ以上私事に口出すのはプライバシーの侵害になりますよ?」
    「その私事には俺も関係している……」
     バンッ。
     母親は悠太の話を歯牙にもかけず、ドアを乱雑に閉めた。悠太は負けじとばかりに、ドアノブを引っ張る。だが、既に鍵はかけられていた。何度も引くが、少しも開かない。
    「開けてくれ!! 頼む!! まだ、まだ話していないことが山ほどある!!」
     近所の迷惑なんて一切無視し、叫び続けた。自分の訴えが届くまで。
     ドアを叩いた。チャイムも押した。庭にまで押し入った。

     ――だが、何度呼んでも、何度訴えても思いが届くことはなかった――。

     淡い陽光が次第に強くなり、彼の俯く背中を照らした。
  • 7 黒の組織 id:LT7DnA2.

    2012-05-24(木) 00:24:28 [削除依頼]
     空一面に棚引く春霞。間から、木漏れ日の如く射す陽光。それを遮蔽する、黒く澄んだ悠太の心。澱んだ彼の眼。口から魂が漏れ出しているかのように見える。
     彼は完全に感情を失い、涙も落ちる前に枯れていた。ただ、彼は狼狽える。行く先も決めぬまま……。

     太陽は地平線から離れ、時は通勤や通学と重なった。
     悠太は恍惚と放浪し続け、繁華街を彷徨っている。この時間帯の空気は淡い。繁華街という名の雑踏は、人で溢れ、悠太の存在は極小だった。特に、彼ほど澱んだ人は皆無に等しく、皆暢達としていて、彼の存在感は一層薄れている。彼はこの雑踏で、自分が自然に消滅してほしい、そう願っていた。

     新しく踏み出した場所に消えた自分――。
     親からも見放され、固執し、執拗に問い詰める気力も自分と共に消えていた――。
     この状況下で彼はどう生きていけばいいのか、完全に闇の部屋へと迷い込んでいた――。

     あてはない。彼は雑踏の息苦しさを嫌い、路地裏に入り込んだ。その時体が一気に脱力し、自然と蹲っていた。大きな歎息。そして彼は自棄になって、持っていた鞄を適当な場所に放り投げた。
     この路地裏は日光が遮断されていて、悠太が腰をすえるには最適な場所かもしれない。

     彼は冷静さを取り戻そうと試みた。親に見放された今、自分に出来るたった一つのこと、それが状況を冷静に整理することだから。
     すると何故か、自然に親との楽しかった想い出だけが追憶してきた。幼かった頃の自分の姿が。掻き消そうと、違う話題を脳内に連想させようとした。だが試せば試すほど、益々想い出がより一層鮮明に描かれる。
     浅薄で、脳内の奥底で霞んでいた記憶が、スライドショーのように映し出された。
     今自分がすべきことは状況を整理すること――彼は自分に何度も言い聞かせる。だが、何をしても懐かしい想い出だけが脳裏に浮かんでくるのだ。

     親とキャッチボールをした――。
     親と鬼ごっこをした――。

     そんな他愛のない想い出だけが蘇った。すると、自然と彼の頬に涙が伝っていた。
    「な、何で……。何で俺を見離したのぉ?」
     彼は嗚咽しながら言った。慟哭した。獣の彷徨のように発狂し、自分の魂を吐き捨てるかのように泣いた。枯れたはずの涙が、自然と流れ出てくる。
    「何で……、何で……、何で……」
     彼はそう復唱した。
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