スペア 王国8コメント

1 冬八 ミコル id:i-EUo.6mg1

2012-05-05(土) 19:36:17 [削除依頼]

楕円の大地を唸らす遠距離射撃用大砲『カノン』
突発的な先進国であるスペア王国は、領域近地の国々から全面戦争らしからぬ挑発的な一方射撃を受けていた。
他国から打ち上げられた猛射たるその矛は、王国をぐるりと囲う黒鋼の鎧に阻まれ意図も簡単に遮断されてしまう。
面積二千キロ以上にも及ぶ高岩な大地は内乱を防ぐべく三つの境界線で均等に区切られており、
対して害の無い他国の悪足掻きよりも摘む必要性の高い事柄は王国内での大乱闘の方であった。
その宝塔と呼ぶに相応しい神々しく聳え建つ『浮上の城』は、人々の欲望心を駆り立て誘惑し続ける。
  • 2 冬八 ミコル id:i-J5yEcuz/

    2012-05-09(水) 00:32:50 [削除依頼]
    第一章 少年とスペア

    朝日に透き通る四つ切りの窓ガラスに朝露が頬を寄せ綺麗に水溜まりを作ってみせる。室内に置かれたステレオのスピーカーからは淡白な音楽が永遠と流れ続け、部屋全体をレトロな雰囲気に染め上げる。
    今朝、僕の父親は息を吸うことに疲れてしまった。医薬品に頼りきり体にメスを入れることを断固拒否した末路の死。
    締まる思いを胸に、最後まで頑なな親父の我が儘に付き合ってしまったことを今は負い目に感じている。
    この時期スペア王国三都市のひとつ《ポートレート》は周期巡りの猛暑季を迎えており、
    親父の遺体は臭気の残すところなく獣皮で繕われた大きな包みに詰められ、囚虜の様に家を出ていってしまった。死体相手だからと流れ作業で父を扱かっていた《パーサー》の手下共が憎くて憎くて堪らない。
    残された家内の窓辺には仕事を無くしたベットがぐてりと横たわり、一足脚の机上では死んだ母からの最後の贈り物だと父が大切に使っていた焼き物の珈琲カップが淋しげに影り、カップに半分以上残された無糖の珈琲は朝日に輝いている。
    「…片付けようか」
    後頭を引かれる思いを一掃する自身の声にひとつの踏ん切りをつけ、父を見送った玄関に丁寧に脱ぎ揃えられた二足の黒い革靴を利き手で掴み上げた。
  • 3 冬八 ミコル id:i-J5yEcuz/

    2012-05-09(水) 22:36:37 [削除依頼]

    黒をベースに仕立てられたハイセンスな革靴。対して履きもせずに処分してしまうにはかなり勿体無い代物だが、親の私物を勝手に拝借することには抵抗がある。
    それも僕の父は非常に堅い人間性の持ち主で、《家族の間にも最大限の配慮と権限を》と毎日口煩く僕に言い聞かせ、プライバシーの重要性を熱く語っていた。幼かった僕が嫌な顔ひとつせず父の長い談話に付き合っていたことは今頃ながら尊敬に値する。
    黒石を敷き詰めた殺風景なここには、僕が五歳の誕生日を迎えた翌日に母と父との三人で足を踏み入れた場所だ。丘の上に建築された我が家に、未知の感動を覚え大人さながらに惚気たことを今でもはっきりと記憶している。
    スペア王国では、五歳になる若人を対象に《パーサー》から住民仮定登録《スペルズC》の絶対加入を命じられる。この時点で土地や多額の教育費が配布され、僕の両親もその一部でこの豪勢な住宅を購入したらしい。
    《パーサー》とは、シャランシティ、ポートレートシティ、リアカラーズシティの三都市に各々配置される管理者のことを指し、互いの都市の友好関係を崩さぬ様に政治を動かす言わば支配者的地位に立つお偉いさんだ。蜂の巣の様に断層の構造になっているスペア王国には地下にもう一都市存在すると風の噂で小耳に挟むが、一般人の僕らにはまっさら関係のない話だろう。
    明日、十七歳を迎える僕は新規住民登録《スペルズF》に加入し直し、大人、成人として国に認められる。加入さえ済ませば、以前よりずっと自由に各地を飛び回り、人生を楽しむことが出来る筈だ。
  • 4 冬八 ミコル id:i-ZINRy.R.

    2012-05-11(金) 22:25:54 [削除依頼]

    その限りない無窮の生活に昨夜まで胸の高鳴りを抑えきれない僕であったが、唯一の肉親を失った今は惨苦ばかりで盛衰しきっていた。
    これから一生続く孤独の虚しさは、僕の乾ききった身体から皮肉な汗を湿ませる。自身の汗に滑る革靴の手触りを感じ始めた頃、やっと苦虫を噛む思いで狭い視野を霞め拡げた。
    父のシックな梟の掛け時計。母の仙人掌の古木。映像や写真でしか見たことの無い"雪"を連想させる純白の絨毯は僕が両親に無理を言って買って貰った品だ。
    鳳凰と百合の花が黒く艶のある石ただみ一面に彫り込まれ、だだっ広い正面玄関の小さな銀の開き扉が不釣り合いで滑稽に見えてくる。
    ここポートレートシティでかれこれ一七年間生活してきた訳だが、PR市内に寒気が触れることは僕の知り得る限り、有り得ない。小雨が降ることさえも稀で、外部から年中暖気の立ち込める《南鳥の街》との異名をつけられた程。ちなみに南鳥とは鳳凰(火の鳥)の別名である。
  • 5 冬八 ミコル id:i-ZINRy.R.

    2012-05-11(金) 23:03:03 [削除依頼]

    玄関の側壁に配置された二体の人魚像。朱色に尾びれを染め立て、単線を描く様にしなやかな細い括れをぐっと反らした美しい銅像。青い鱗に自身の指先を這わせてみると、煤けた埃が付着し今すべき事柄を物堅く思い出す。
  • 6 冬八 ミコル id:i-ZINRy.R.

    2012-05-11(金) 23:04:44 [削除依頼]

    「書斎に行きなさい」
  • 7 冬八 ミコル id:i-ZINRy.R.

    2012-05-11(金) 23:33:33 [削除依頼]

    脳裏に焼き付いた父の言葉は、僕の心を悪戯に擽ってくれた。
    《父の書斎》一切飾り気の無い木彫り扉。指一本触れることさえ許されず、遠くから指をくわえて眺めるだけの毎日。最後の最後に念願の許しを得たのだから喜ぶべきだったろうか、僕は死亡フラグを立て付けられたようで…。
    白いシーツに皺を刻み、銀の鎖に繋がれた異質な鍵を細身な首から静かに外す父の腕。温い鉄の感触が手渡されたあの瞬間。
    嗚呼、父さん死ぬんだ
    忘れられない直感だった。
    …消えた両親の残像を綻ばせながら、僕は父の書斎に向かう。
  • 8 優太(^_-)-☆ id:wVATLSY/

    2012-05-12(土) 14:07:23 [削除依頼]
    あっ、これかな?スペア王国!
    やぁっと見つけたーーー!!
    最近始めたのかな?更新頑張ってね^^
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