Der Vollmond -誓いと忠誠-21コメント

1 祈祷 彗月 id:1915iV0/

2012-05-04(金) 14:04:44 [削除依頼]

 風が息を殺したように静かに通り過ぎる。
 不自然なほどの静けさの中、一番最初に音を出したのは生まれたばかりの赤子だった。
 産声を上げ、その産声を聞いた周りが安堵の息を漏らして口を開く。
 エメラルドグリーンのような美しい宝玉の瞳。それが証だった。次世代を担う時期王としての器を持つとさせる証。
 今、こうして生まれた瞬間から赤子の運命は決まっていた。
 自分で切り開くのではなく、切り開かれた先祖代々決められた一つの道。
 
 狼帝となるために生まれた者の名は綺堂 空幻。
 混じりけのない純の銀を、宝玉の碧を与えられし狼。
 
 黒い空では同じ銀を持つ銀無垢月が静かに見守っていた。
  • 2 祈祷 彗月 id:1915iV0/

    2012-05-04(金) 14:09:19 [削除依頼]

     ここでピンときたら110番!!←
     いや、冗談です。警察呼ばないで下さい(●´_ _)
     でも冒頭だけで気づけた人ナイスですッb

     何だか高校生になってから毎日が忙しく更新する気力さえなく……。
     無断欠勤も嫌なんで気分転換にとちょっと予定変更で作らせていただきましたノ
     あ、鬨も書きますよ!⌒あれは120%完結させますからね。
     まぁ、気長にこちらもお付き合いくださると嬉しいです。
  • 3 祈祷 彗月 id:1915iV0/

    2012-05-04(金) 14:48:32 [削除依頼]

     淡く薄い赤色をした桜が五万と咲き誇る中、狼と梟は揃って祝福した。
     誰もが羨むほどの美しい顔立ちに優れた知性と勇気ある行動力。誰もが求めるもの全てを集めたような少年は人狼だった。
     狼男がいなくなったとされてから生まれた新しい種族。
     彼の名は綺堂 空幻(キドウ クウゲン)。古の血脈を守り続ける綺堂家(キドウケ)の跡取りであり群れをまとめる王。
     太陽に、月に反射しては美しく光る艶のある銀髪に誰もが魅入ってしまうほどのエメラルドグリーンの瞳。
     四六時中注目を受ける空幻の人気はいつも高いながら今日は一段と高かった。


    「空幻様! このたびは誠におめでとうございます」
    「おぉ! これはこれは狼帝様。俺等はいつまでお傍でお使え致します」
    「新狼帝! 空幻に乾杯!!」
     
     皆群れの者達は祝福の言葉を述べた。
     偽りなどではなく、全てが本心だろう。
     全ての狼、梟に愛され続ける綺堂家の長は断たれることのない血だ。
     それは狼帝が替わっても変わらない。それほど信頼が厚いから。

    「22歳の誕生日、おめでとう」
     
     沢山の贈り物を抱える空幻に親しげな声をかけたのは背の高い人狼だった。
     
    「梭競(サグラ)!! うん、ありがとう。僕はまだまだ小さくて弱いけど、いつか立派な狼帝になるからね」
    「もちろんです。空幻様ならば立派な狼帝になれます」
  • 4 黒の組織 id:wfh945e0

    2012-05-05(土) 00:22:02 [削除依頼]
    祈祷さん>どうも、黒の組織です。この小説の一番最初でいいのか、躊躇しました。冒頭部分どころか題名で解りました。これは?いっそ僕を殺してくれないか?ですよね? 違ってたらスンマソン(´・ω・`) メガホン片手に応援してます←
  • 5 祈祷 彗月 id:ax/NA9V/

    2012-05-09(水) 18:14:06 [削除依頼]
    >4  黒さんだ!!  躊躇うことなんて何もありませんよb  そして正解頂きました(´ω`)  題だけで当てていただけるとは……!!  メガホン有難うございます*´`*
  • 6 祈祷 彗月 id:ax/NA9V/

    2012-05-09(水) 18:29:19 [削除依頼]
    >3  周りがどんなに五月蝿いだろうと空幻の声は梭競へ。また同様に梭競の声は空幻へ確実に届いていた。  目を見れば自然と相手の言いたいことが分ってしまう。  そんな不思議な絆が二人の間には存在していた。   .* 「空幻、祝宴の席ではお疲れ様。本当、お前は人前に出るのが苦手だよな」 「ははっ……。やっぱりオドオドしてた? ……ってそれよりも梭競、お前僅かに素が出ただろ?」 「やっぱり分った? “おめでとう”だなんて自分でも驚いたよ」  空幻が22歳……成人の年齢を迎え、本当の意味での狼帝となった今日。  盛大に祝う祝宴が終わり、空幻は伸びきっていた。 「だろうね。僕は良いと思うけど周りが五月蝿いんだよねー」  今、空幻の部屋には梭競のみがいる。  星屑が散りばめられたような黒く鮮やかな絨毯の上をコロコロ転げまわる空幻にガラスの長テーブルへと座る梭競。  普通なら敬礼でもしてしまうほどの勢いで端に立っているのが一般的なのだろうがこの二人の主従関係は違っていた。  まるで親しい友のように気軽に空幻へと話しかける梭競。そしてそれが普通であるかのように受け止める空幻。  長年共に過ごした二人からしてみればこれが普通なのである。   「あーあ。これで正式に“狼帝様”になっちゃったね、僕」  空幻は転がるのを止めると絨毯の中心で胡坐をかいた。
  • 7 黒の組織 id:Wl6ed/D.

    2012-05-10(木) 00:22:10 [削除依頼]
    祈祷さん>よかったです。不正解だったらめっちゃ恥ずかしいですし。どこかで前作のderのdを大文字にしとけば良かったといっていた気がするので一発で解りました。
  • 8 祈祷 彗月 id:nm.asWo0

    2012-05-10(木) 16:45:47 [削除依頼]
    黒さん
     そんな細かなところで…(´:ω;`)
     有難うございます!
     
     そしてごめんなさい←
     と、とk((
  • 9 祈祷 彗月 id:nm.asWo0

    2012-05-10(木) 16:54:26 [削除依頼]
    >6  顔を上へと向ければ龍の首元へと喰らい付く一匹の狼の絵が。周りは色とりどりの緑、龍は黒。そして肝心の狼は銀だ。じっと見つめていれば今にも龍の悲鳴が聞こえてきそう。  どこか引き込まれそうなこの絵を空幻は不気味だと感じた。  板で出来た天井には黒い染みがあり、皆はそれを嫌だというが空幻からしてみればこの絵が一番嫌である。   「……空幻は狼帝になるのが嫌なのか?」  静かに問うてくる梭競。  “分らない”とでも言いたげな言葉に空幻の口元が緩んだ。  絵から視線を外せば銀の狼がこちらを見つめているような気がする。  寒気がするような狼の視線を振り払うように立ち上がった空幻は今もなおテーブルへと座っている梭競を見下ろした。 「別に。そんなことは言ってない。……でも……」 「でも、何だ?」  消え入りそうな“でも”だった。  だが梭競は聞き逃すことなく問い返す。 「僕には群れの皆の命を預かるほどの知恵も体力も、精神力もない」
  • 10 祈祷 彗月 id:nm.asWo0

    2012-05-10(木) 17:08:38 [削除依頼]
     俯いた空幻は下唇を噛み締めた。
     拳に力を入れ、足元を見つめていると余計に虚しくなる。

    「……空幻はこの部屋をどう思う?」
    「――え?」

     一つゆっくりと呼吸した梭競はテーブルからテーブルに座るのを止めた。
     立ち上がり、空幻の柔らかく艶のある銀髪をくしゃりと撫でる。
     
    「…………どう思うって。――僕からしてみればこの絵がなければ最高な部屋だと思うよ」

     嫌味を込めて言った。
     この部屋は狼帝に許された者達しか入れない貴重な六畳の部屋だ。
     床板は少しでも軋めばすぐさま取替え、障子が破ければ一時間で直す。
     それでも天井の絵は外さない。昔からだといって天井の板を変える意外、この絵はずっと天井に張り付いているのだ。
     日当たりの良いこの部屋はいわば空幻の楽園である。
     何かに嫌気がさしたときは唯一許している梭競を連れてここで時間を潰すほどに。
     
    「空幻は分っていない。この絵があるからこそいいのだ」

     黒色で固く芯のある髪を上へとかき上げた梭競は首を横に振った。腰に手をあて、不満げな顔をする空幻を一瞥すると天井を見上げる。
     
    「梭競、この際言うけど僕はこの絵を外したい。正式に狼帝になったんだ。それくらいの権限はあって当然だよね?」
    「……はぁー。空幻、お前はどうしてそんなにこの絵を嫌うんだ?」
  • 11 祈祷 彗月 id:c83UhhT/

    2012-05-27(日) 18:21:17 [削除依頼]
     疲れきったような顔で問いかける梭競の瞳には少なからず戸惑いの色が浮かんでいる。
     梭競の言葉から逃げるように中庭へと続く障子を開いた空幻は振り返らなかった。
     だが、その背は語っていた。
     梭競だからこそ分るような言葉以外でも通じる方法。

    「……狼帝の血筋だからこそ分る怖さ、か」

     やはり、空幻は答えなかった。
     それでも音もたてずに振り返り、梭競へと頷いた。
     
    「ちょっと出かけてくる。梭競は此処に残ってくれ」
     
     梭競の返答を待たず軽い足取りで部屋を後にした空幻。
     彼が向かったのは庇護室だろう。全てを引き継ぐ狼帝を守ることを義務付けられた護梟と呼ばれる梟がいる部屋だ。
     死ぬまで傍を離れない、人生を共にする梟へ会いに行く。空幻は今、どんな気持ちなのだろうか。
     障子を挟んでその影が見えなくなるまでずっと目で追っていった梭競は小さく、それでも長く細い息を吐き出したのだった。

    .*

    「空幻様、お初にお目にかかります。名をラフィニアと申します」

     色とりどりの梟の羽で飾られた豪勢な一室。
     絨毯のない冷たい床を裸足で歩く空幻の視線は部屋の中心にあった。
     凛とした声で挨拶をし、跪いたかと思えば頭を垂れる人間の姿をした梟。
  • 12 祈祷 彗月 id:c83UhhT/

    2012-05-27(日) 18:40:57 [削除依頼]
     空幻は美しいと思った。
     そして美しいと思う反面罪悪感も感じた。
     曖昧でないしっかりとした茶と黒の揃えられた肩までの短い髪。真剣な顔で鈴のような可愛らしさを持つ小柄な体格。
     まだ子供ではないか。
     少なくとも自分よりは小さく感じた空幻。

    「面を上げよ……ラフィニア」
    「――はい」

     僅かに震えているラフィニアの声。
     機嫌の悪そうな苦虫を噛み潰したような空幻の声音に恐怖を感じたのかもしれない。
     
    「お前、歳は幾つだ?」
    「……と、歳で御座いますか? きょ、今日で18になります」

     歳を聞かれるとは思っていなかったのか。慌てたように言葉を詰まらすラフィニは空幻から視線を外した。両手を前で合わせ、小さく肩をちぢ込ませる。 
     外の陽気な明るい声とは裏腹にこの部屋、空間だけはどんよりとした重い空気が漂い始めた。

    「俺よりも年下か。なぜ護梟などというものになった」

     明らかに怒っていた。
     そのエメラルドグリーンに怒りをため、射殺さんばかりの勢いでラフィニアを睨む。
     もちろん、その怒りの矛先がラフィニアだからといってラフィニアに怒っているわけではない。
     空幻が怒りを感じているのは護梟という言葉全てにだろう。

    「……も、申し訳御座いません」
  • 13 彗月. id:Grvj7B4/

    2012-08-05(日) 17:27:00 [削除依頼]
     だが、そんなことなどたった今であったラフィニアになど分るはずもない。
     自分が何か気に障るようなことを言ってしまったと考えたラフィニアは咄嗟に謝った。
     
    「何故お前が謝るのだ。答えろ、どうして護梟になったのだ」
    「そ、それは……「空幻様、こちらにいらっしゃいましたのですね」
     
     ラフィニアの声に重なるようにして聞こえた声。
     襖を開けて入ってきたのは梭競だ。
     心底空幻を捜していたかのように瞳を輝かせ、せっせと小走りで近づいてきた。
     
    「梭競、何のようだ? 待ってろと言ったはずだ」
    「いえいえ。たまたまここを通りましたときに苛立つ空幻様のお声が聞こえたもので」
    「は? 俺は怒っていない」
    「怒っていない? ですが護梟様は恐怖で固まっておりますぞ?」

     なにやら言い合いをしていた二人だったが、ここで視線がラフィニアへと向いた。
     梭競によりいきなり話を振られ、さらに固まるラフィニア。

    「空幻様、護梟とは自分の意思では選べません。狼帝が生まれたときから決まっているように、護梟だって個々の意思で決められるものではありませんよ」

     さも堂々と言う梭競。狼帝にここまで言えるのはきっと梭競だけだろう。
     周囲の者達は梭競が空幻に口を出すのは日常的なため、よく分っているがラフィニアは初めて見る光景だ。
     なので、自分のために口を挟んだ梭競が何か罰を受けないか顔が青ざめていった。

    「あ、あの! 申し訳御座いません!! 私がふがいないばかりに……」

     平伏しきったラフィニアは空幻へと謝った。
     きっとここで何か言われる。
     そう思い、瞳も口も堅く閉ざしたのだが、いくら待っても返答はなく、むしろ静まり返ったことに疑問を感じた。
  • 14 彗月. id:f1igvmH/

    2012-12-16(日) 20:02:41 [削除依頼]
    「……お前、阿呆だな」
    「――え?」

     思わず顔を上げてしまった。
     あんぐりと口をあけていた空幻がいきなり笑い出す。 
     
    「何でお前が謝るんだよ。面白いな、お前!」
    「空幻様、“お前”ではなく“ラファニア様”で御座います」
    「あ、いえ。そんなことはどうでもっ……」

     何にツボッたのだろうか、この狼帝様は。
     楽しそうに笑う空幻と、訂正を入れる梭競。
     空気は和んだものの、よく分からないラフィニアは小さく首をかしげた。

    「あー、うん。その、怖がらせたんなら謝るよ、ラフィニア」
     
     その後も笑っていた空幻は一つ咳払いをする。
     未だに立ち上がらないラフィニアへと手を差し出し、立たせるとその頭を優しく撫でた。

    「お前は今日から俺の護梟だ。だがな、ラフィニア。何か危ない目にあったら自分の命を最優先にしろ。いいな?」
    「はっ、はい!」

     先程の笑っていた者とは思えないほどの眼光。
     有無を言わさない圧力に返事をしてしまったラフィニアだが、そこには矛盾を感じた。
     
    「よし! いい子だな。んじゃあ俺は戻るよ。何だか甘い物が食いたい」

     大きくあくびをした空幻は着物を翻すと一人でその場を去った。
     初めて会話をした狼帝に怒られ、笑われ、最後には脅されたような気分。
     一回にいろんなことが起こったような気がする。

    「すまない、ラフィニア。狼帝様はいつもあんな調子で……」
    「っ! あっ……いえ。私なら大丈夫ですっ」

     梭競の声で我に帰る。
     眉尻を下げて“許してやってくれ”という梭競。
     だが、もとからラフィニアには許す以前に何も怒っていない。
  • 15 彗月. id:f1igvmH/

    2012-12-16(日) 20:16:33 [削除依頼]
    「あの、……一つ、お尋ねしても?」
    「ん? 嗚呼、アイツのことならなーんにも気にしなくていいよ。他人の前だと大人ぶるけどほんとは何にも考えてないガキだから」

     にっこりと言い切った。
     梭競にしか与えられていない特権。狼帝である空幻へのこのような言葉。
     しかしラフィニアが聞きたいことはこれではない。

    「さ、先程狼帝様は“自分の命を最優先にしろ”と言いました。……ですが、護梟は狼帝のためならば自分の命さえも差し出すものだと……」
    「なるほど、ね」

     これが先程感じた矛盾だ。
     護梟は狼帝のために生き、狼帝のために死ぬ定め。
     困惑するラフィニアへ苦笑いを浮かべた梭競は言葉を選ぶようにして口を動かした。

    「うー……ん。本当はラフィニアの言うとおりなんだけど、空幻はまだ子供だし、全ての命を同じ重さとして見てるからね」
    「そう、なんですか」
    「うん。まぁ、そんな深く考えないでよ」

     戸惑うラフィニアへ困ったように言った。
     梭競はどれほど知り、理解しているのだろうか。狼帝のことを、空幻のことを。
     
    「さ、そろそろ行かなきゃ。アイツを一人にしておくのは一番怖いからね」

     大きく伸びをした梭競はあくびをする。
     そして自分の使命を忘れかけていたラフィニアは小さく声をあげた。
     自分は護梟だ。こんな場所でのんびりしている時間はない。
     先を歩く梭競を追いかけるようにして部屋を飛び出すラフィニアは小さな狼帝のもとへと急いで向かった。
  • 16 蜜柑 id:syIZoyc1

    2012-12-16(日) 20:19:39 [削除依頼]
    >3 初めてなんで上手くかけへんと 思うけど 読んでくれたらうれしいw 頑張るわww
  • 17 ななみん id:syIZoyc1

    2012-12-16(日) 20:20:01 [削除依頼]
    >16 スレ違w すまんww
  • 18 蜜柑 id:syIZoyc1

    2012-12-16(日) 20:20:46 [削除依頼]
    >17 なんかいろいろごめんw
  • 19 彗月. id:f1igvmH/

    2012-12-16(日) 20:23:50 [削除依頼]
    >16-18  お気になさらず(´`*)
  • 20 彗月. id:FtXgC.u1

    2016-06-05(日) 21:05:49 [削除依頼]


    ***

    「ラフィニア。あの馬鹿、どこ行ったか知らないか?」
    「えっ…と、空幻様でしたら梭競様と狩りに行くから、と先程出かけていきましたが…」
     護梟としての生活になって1ヶ月が経過し慣れてきた今日この頃。普段は狼帝の行動を把握しすぐに駆けつけられる距離に居るのだが本日は久々の梭競と狩りに行くというので留守番を言い渡されたラフィニア。
     だいぶ探し回っているのか肩で荒い呼吸を繰り返す梭競にラフィニアは首を傾げた。
     何故此処に梭競様が居るのだろうか。
    「あんのやろう…。ここ暫く大人しかったから油断してた…くそっ」
     忌々しげに腹の奥から出すような低い声で唸るよう悪態をつく梭競にラフィニアに背筋が凍りそうになった。
     長身に筋肉質、そして三日月のように細い瞳と褐色の肌から強面と言われる梭競。その容姿から怒っていると誤解されやすいがこれは本当に怒っている。
     それも普段の数倍。
    「さ、梭競様……?」
    「最近、このあたりに見慣れない狼が頻繁に目撃されていると聞きあいつには用心するように言ったんだがな……」
    「外部の、狼……」
     太古の昔には沢山の狼の群れがあった。その群れ1つ1つを手中へと掌握していったと代々言い伝えられる綺堂家。そして最後に戦ったのは死神に呪われた紫色の狼。綺堂家の祖先はこの狼を喰らったことから狼帝として栄えるようになったとも云われている。何処までが本当なのか、何処からが作り話なのかは不明だが、綺堂家に属しない狼が珍しいのは事実だった。
     そのため群れでない狼が近くにいる以上空幻を1人にしたくなかった。
    「梭競様。私空幻様を探してきます」
    「ああ、頼む。だが、この屋敷の中だけでいい。本当に何かあったとき対処できるようにな」
     梟へと姿を変え空から探そうとするラフィニアを止めた梭競は狼へとなった。
     体格の良い迫力のある赤黒い毛をもつ狼へとなった梭競はラフィニアの返答を待たず急ぐように外へと飛び出す。
  • 21 彗月. id:W1p3wYdm

    2017-05-28(日) 23:31:32 [削除依頼]
    「梭競様も…っ! どうか、お気を付けて」
     狼へと姿を変えた梭競を初めて見たラフィニアは一般的な狼よりも大きいその姿に思わず生唾を飲み込んだ。
     ちらりとラフィニアを見た梭競は小さく頷いては主を探すため森へと駆け足で向かい、その後ろ姿を心配そうに見つめてはラフィニア自身も屋敷の中へと姿を消した。


    ***


    「お、おいっ……。お前……、大丈夫か?」

     時を同じくして梭競が探し回っているとは夢にも思わない当の本人、空幻は困っていた。
     前進しては後退し、後退しては前進する。しゃがんでは立ち上がり、身を乗り出しては身を引き……。周囲をきょろきょろと見渡しては傍で倒れている狼に視線を戻し。
     このままここに居てもきっとこの狼は、この少女は息絶えてしまう。だからといって今ここで傍を離れるのも危険だろう。空幻は眉を潜めた。
     眉間にしわを寄せ、小さく唸りをあげる狼ーー少女の毛は所々血で赤黒く染まっていた。傷からみて狼、もしくは他の獣に襲われたのだろう。倒したのならまだしも、命からがら逃げてきたのであればここを離れるべきではない。
    「ーーどうすればいい……」
     自分がこの少女を担いで運べたなら、と己の非力さに奥歯を噛み締めた空幻はその瞬間、別の者の気配を感じた。
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