HOPE8コメント

1 夏風 id:9xKTEBy1

2012-04-30(月) 18:57:47 [削除依頼]



                SORROW*
  • 2 夏風 id:9xKTEBy1

    2012-04-30(月) 19:08:18 [削除依頼]



     桜の花びらが散るように、僕も潔く散ろう。
     そう決意して、学校の屋上に上ったはずだった。
     上から見る人間は、あまりにもちっぽけで。でも、米粒ほどではなくて。僕もこいつらと同じぐらいちっぽけなんだろうな、とか思っても、別に心の傷が癒えるわけはなくて。
     屋上に、3時間くらいいた。チャイムは6回聞こえた。結局僕が過ごした時間は無駄で。ついでにいうと決意したものさえ無駄で。バカバカしくて笑えた。笑いと同時に涙もでてきて、どうしようもなく泣けてきた。
     この学校に転校してきた僕は、一週間でいじめられっ子になった。最初の日、下駄箱には死ねと書かれた紙が何枚も入っていた。僕はそれをすべて捨てた。
     次の日、上靴が切り刻まれていた。僕はそれを捨て、上靴をなくしたと言ってスリッパを貸してもらった。上靴は、先生達がバカみたいに必死で探し、僕が捨てたものが見つかってしまった。そして、学校中に誰がやったのだと聞いて回った。心底、やめてほしかった。
     その次の日、クラスのリーダー格の奴らから、暴力を受けた。一番手っ取り早いいじめ方だった。その日から、僕は学校というものに恐怖を感じるようになった。
  • 3 夏風 id:DTPHV6z1

    2012-05-03(木) 21:23:32 [削除依頼]



     そのまた次の日、僕は学校をさぼった。誰にも何も告げずに、黙って学校をさぼった。することもないので、河原に行って川に向かってずっと石を投げていた。
     もちろん補導された。
     僕はそのまま交番に連れられ、自分の名前と学校名と住所と電話.番号を聞かれた。自分の名前と学校名だけは言ったが、住所と電話.番号は言わなかった。言えなかった。
     僕は母と2人暮らしだ。父と弟とは、離れて暮らしている。離婚とかではない。単身赴任の弟もいますバージョンだ。けれど、父が不倫をしているのを僕は知っている。母も知っている。そのことで、母が毎晩泣いていることも知っている。だから、母に迷惑はかけられない。学校のことは、絶対にバレてはいけないのだ。
     僕の目の前で、警察官はあからさまに溜息を吐いた。無精ひげを生やしていて、髪にはひどい寝癖がついている。なのに、なぜか制服だけ妙にきっちりとしていた。バランスが悪い。
    「ちゃんと言ってくれないと困るよ。学校に電話するよ?」
     僕はそれでも黙っていた。電話したきゃすればいい。そんなの僕には関係ない。
     でも、と僕は考えた。
     僕には関係なくても、連絡を受けた学校側は、僕の家に電話をするんじゃないか。母は仕事でいないから、誰も出ないとなったら仕事場に連絡するんじゃないか。いや待て。だとしたら、僕が無断で学校を休んでることについても、もうすでに母に連絡しているんじゃないか。だとしたら、上靴のことももう連絡しているんじゃないか。
     被害妄想は止まらなかった。いずれにせよ、母にこのことが知れたら僕は困る。これ以上母に迷惑をかける親不幸なことは僕はしたくない。
    「電話だけはやめてくれませんか?」
     名前と学校名を行った時よりも、大きくはっきりとした声で僕は警察官に頼んだ。僕の声がさっきとは違うので、警察官は驚いたようだった。目をまん丸くしている。
    「何で?」
     眉間にしわを刻み、警察官は僕に聞いてきた。そんなことまで僕が答えなければいけないのか。否。別に答えなくてもいいだろう。
    「答える必要はないと思いますが」 
     冷静に僕は警察官に応対した。すると、警察官は大袈裟に首を振り、
    「チッチッチ」
     と言った。一体何なんだ。
    「困るよ、君。えーっと、名前は……」
    「切原来人(キリハラクルト)です」
    「そうそう、切原君」
     警察官は僕の名前を聞くとモヤモヤがとれたように笑顔になった。反対に、僕の顔は曇った。何で僕は2回も同じ人に名前を教えなければいけないんだ。ていうか一回で覚えろよ。
    「住所と電話.番号を何で教えてくれないんだ?」
    「だから答える必要はないと思いますが」
     僕の言葉に警察官はまたもやあからさまに溜息を吐いた。
  • 4 夏風 id:YiCbj070

    2012-05-06(日) 19:15:41 [削除依頼]



    「答えないなら、ちゃんと教えてくれなきゃね」
     話して数十分たった今、僕はこの警察官に嫌悪感を抱いていた。何でこの警察官は僕に対してこんなに馴れ馴れしいんだ?
    「僕、もう帰ります」
     同じ空間にいるのが嫌で、僕はかばんを持ち席を立った。警察官はそんな僕を見て焦った後、ふいに下に視線をそらした。そして、また僕の方を向き、
    「学校に電話しちゃうよ?」
     と言った。警察官の顔は、気持ち悪いほどにニヤニヤしている。机を指先で叩き、とても偉そうだ。困ったな。どうしようか。
    「あれ? 警察が一般人脅していいんですか?」
     僕でも警察官でもない第三者――女の声が僕の後ろからした。誰だか知らないけど助けてくれるのはありがたい。そう思って後ろを振り向いた僕は、またすぐに顔を前に戻した。
    「あれ? 誰かと思えばクルトじゃーん!」
     後ろから嬉しそうな声が降ってくる。だが、僕は全く嬉しくない。
    「って訳で刑事さん、まだ脅すようなら私が違う刑事さんに通報しますから。行こ、クルト!」
     僕は手を引っ張られるがままに、交番を後にした。ところで、さっきの警察官は決して刑事ではない。君は刑事というものの定義を知っているのか? と、訂正しようと思ったが、そんな気力も僕には失せていた。
    「……学校は?」
     ようやく絞り出した一言は、相手の怒りを煽る文句だったらしい。
    「学校は? ……って、それはこっちのセリフよ!!」
     そいつ――神埼渚(カンザキナギサ)は僕の方を向き、思いっきりしかめっ面をした。可愛くないからやめとけ、なんていう軽口なんか叩けない雰囲気だった。
    「学校に行ってみればクルトいないからさ、ちょっとみんなに聞いて回ったら、クルトいじめにあってるらしいじゃん! 何で言ってくれなかったの? 言ってくれれば、私が何とかしてあげたのに」
     僕が今なぎさに会いたくなかった訳。それは、なぎさは正義感が人一倍強いからだ。ウザいくらいに強い。昔からそれは変わらず、それはなぎさの長所でもあり、短所だ。僕にとっては、短所でしかない。
     けど、「ほっといてくれ」なんて今の僕には言えなかった。
  • 5 夏風 id:YrLcaDI0

    2012-05-17(木) 23:18:32 [削除依頼]



    「母さんには、このこと言わないでくれ」
     やっとの思いで放った言葉に、なぎさはハッと息を飲んだ。僕が何を恐れているかがわかったのだろう。
     なぎさと僕は俗にいう幼なじみだ。オムツの頃から一緒にいるし、下手したらオムツを履いていない状態から一緒にいるかもしれない。つまり、付き合いは長い。
     だから、なぎさは僕の家庭事情を知っている。僕と同等、いやそれ以上に。それだけに、なぎさは言葉を失った。僕の前で、なぎさは動揺してしまった。なぎさは僕の前で、どうしていいか分からなくなってしまった。
    「来てくれて、ありがとう」
     精一杯穏やかな笑みと声でそう言い、僕はなぎさの手を引いた。
     なぎさはパニックの類に陥ると自分では何もできなくなってしまう。スルーすればいいものを、僕はいつもそれができない。いつもいつも、僕はなぎさの手を引いて歩いてしまう。僕がなぎさを守ってしまう。別にそれでいいのだろう。それが僕達なんだから。
  • 6 影華 id:DhGj3Ww1

    2012-05-17(木) 23:32:56 [削除依頼]
    始めまして!影華(えいか)と申します。
    すごく面白いです!とても引き込まれる文章だと思います。
    これからもがんばってください^^
  • 7 夏風 id:KVUzOam/

    2012-06-16(土) 20:50:04 [削除依頼]
    >6影華さん うわぁ!! 一か月来てない間にコメントが!! ありがとうございます。 そう言ってもらえると嬉しいです^^ 頑張ります!
  • 8 夏風 id:KVUzOam/

    2012-06-16(土) 21:15:38 [削除依頼]



     なぎさを家まで送っていった後、僕は頃合いを見計らって家に帰った。母さんが何も知らないことを祈りながら。どうか、何も知りませんようにと、神様に願いながら。
    「ただいま」
    「おかえり」
     いつもどおりの帰った後の会話。それだけで僕はホッとした。ホッとしながらリビングに行くと、母さんが頭を抱えて座っていた。母さんの前にある木で作られた茶色い机には、一部だけ白が浮かんでいた。
     ただならぬ雰囲気を感じ取り、足早に母さんに駆け寄った。母さんは、声を殺して泣いていた。僕は母さんの目の前に置かれた白い紙を見た。離婚届だった。言葉を失った。机が急に灰色にみえた。世界が色褪せて見えるとは、こういうことを言うんだろうなと思った。
    「かあさ……」
     言葉を探し、僕は口をつぐんだ。何も言えない。僕自身、離婚なんて予想もしてなかった。母さんと父さんは、このまま曖昧な関係を続けていくんだと思っていた。離婚届には、父さんの名前と判子が押してあった。母さんの欄には、何も書かれていない。
     一体、いつ父さんは家に来て、母さんにこれを渡したのだろう? 決して口にはできない疑問。僕はそれを飲み込んだ。
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