1人の国9コメント

1 ももくり id:NnuBxs/1

2012-04-05(木) 15:25:52 [削除依頼]
六歳になった女の子は、森の奥に隠されました。
十六歳の誕生日を迎える時、この国の立派なお姫様となるために。
  • 2 りま id:pH.a1r9/

    2012-04-05(木) 15:31:47 [削除依頼]

    新スレおめでとう
  • 3 ももくり id:NnuBxs/1

    2012-04-05(木) 15:44:42 [削除依頼]
    「葉月ー!葉月、どこにいるの?」

    ――深い深い森の奥。一人の少女が、ぱたぱたと足音を立てて駆け抜けた。
    柔らかい茶色の髪に、淡い水色のワンピース。彼女は深緑の草を揺らし、小さな歩幅を繰り返す。

    「あ、葉月?」

    人の気配を感じると、彼女はぴたりと足を止めた。そして嬉しそうに、目の前の木を見上げた。

    「って……なーんだ。祭かー」

    しかし、どうやら木の上にいたのは、葉月ではなかったらしい。彼女はがっかりしたように目を細め、口を尖らせた。

    「なーんだ、とは何だよ。失礼な奴め」

    枝の上に座っていた男――祭は、軽々と彼女の前に飛び降りてみせた。彼女よりも遥かに高い身長が、見下ろす形で聳える。木漏れ日に触れた、赤み掛かった髪が、彼女のものより短く風に吹かれる。

    「どうしたんだ?何か困ったことがあるのなら、俺が助けてやる」
    「あのね、葉月を探してるの。お昼に一緒に会う約束してるんだけど」
    「何……葉月と?」

    言うと、祭の顔がみるみるうちに赤く染まった。
  • 4 ももくり id:NnuBxs/1

    2012-04-05(木) 15:45:36 [削除依頼]
    りまさん>

    ありがとうございます(*^^*)
    楽しく書けるようにがんばります♪
  • 5 ももくり id:eVm3Flr/

    2012-04-09(月) 16:55:48 [削除依頼]
    「お前、最近葉月と密会しすぎだぞ?」

    祭は、あからさまに不機嫌な態度を取った。両腕を組んで、両足でどっしりと構えてみせる。怒りか焦りかで歪んだ口が、彼女の次の言葉を待ち伏せした。

    「密会って……別にそういうことじゃなくて……」
    「俺はお前達を二人で会わせるわけにはいかねえんだ」
    「え?何で?」
    「俺も、一緒に会う」

    別に、祭を含めた三人で会うのが嫌なわけではない。しかし、彼女は葉月との約束をもう一度思い出した。そして、少しだけ何かを躊躇う。上目遣いで、祭の顔をちらちらと見た。

    「私、二人で会おうって言われてるから!」

    ――次の瞬間、まるで小さな子犬のように走り出す。
    「おい!」と声を荒げた祭の隣をすり抜け、木の根っこを飛び越えた。肩の長さの髪が、ふわりと甘い香りを振り撒く。
    当然のように叫びながら追って来る祭を背中に、彼女は全速力で腕を振る。葉月に、確かに言われた。二人で会おう、と確かに言われた。これは約束であり、簡単に破れるものではない。
    跳ねる息に、優しい太陽の光。

    深い深い森の奥で、鬼ごっこが始まった。
  • 6 ももくり id:eVm3Flr/

    2012-04-09(月) 17:11:11 [削除依頼]
    予想以上に素早い彼女は、簡単には捕まらない。祭は、何度も手を伸ばした。しかし、ちょこまかと動く子犬は、鬼を翻弄させる。

    「こら!止まれ!」
    「やだ!約束したんだもん!」

    腹の底から搾り出した声は、清々しく響いた。
    両者とも一歩も譲らない。

    「止まれって!そんなに速く走ると危ないから!」
    「やだ!もう追って来ないで!これは命令よ!」

    腹の底から搾り出した声は、清々しく響いた。
    両者とも一歩も譲らない。

    ――と、そんな時だった。
    二人の気配とは異なる別の人影が、どこからともなく現れる。それは、祭を阻止するように、二人の間に素早く割り込んだ。そして、迫力のある大きな声を発した。

    「まつりいいい!ちゃんと命令は守りなさい!」

    ――尋常ではないその爆音は、きーん、と鼓膜に張り付く。一瞬で森を完璧な無へと還す、途轍もない破壊力だった。
    鬼ごっこをしていた二人は、急停止を余儀なくされた。
  • 7 ももくり id:eVm3Flr/

    2012-04-09(月) 17:33:17 [削除依頼]
    二人の間に立っていたのは、腰まで伸びた長い髪の女だった。
    彼女が着ているのは、大量のフリルで飾られたメイド服。おまけにブーツまでリボンで塗れていた。
    白い肌に強気な瞳が、じっと祭を見つめ続ける。それには、流石の彼もすすすと後ずさりをした。

    「……ありさ」

    祭が、弱弱しい声で彼女の名前を呟いた。
    すると、メイド服の彼女――ありさは、大人のような口調で説教を始める。

    「命令には従わなければいけない。それは祭も知っているでしょう?まして、この子を怖い目に遭わせてどうするのよ。私達は守らなければいけない側なのに。それに別に二人で葉月に会わせるくらい何の問題もないじゃない。私達は大人なんだから、もうこれくらい分かってよ」

    ありさの筋の通った言葉は、祭が何よりも苦手としているものだった。
    しかし、何とか反論しようと言葉を浮かべてみる。おずおずと、少しだけ前に出て。

    「は、葉月と密会させるなんて問題大ありだよ。葉月はこいつを惑わそうとしているのかもしれないし。そ……それに、俺達はこいつより三つ上なだけで、別にまだ大人じゃなく……」

    「黙って」

    ありさのその一言が、彼にトドメを刺す。
    びく、と一瞬だけ祭は震えて、その後に不服そうに俯いた。
  • 8 ももくり id:eVm3Flr/

    2012-04-09(月) 17:44:33 [削除依頼]
    すると、ありさはすぐに少女に目を向けた。
    彼女はちょっとした苦笑いを浮かべていた。きつく叱ったありさに怯えるように、兎のように肩を竦めて。

    「やーんっ可愛いっ!ぷるぷるしちゃって本当に可愛いっ!」

    がば、ぎゅっ。

    効果音と共に、ありさは少女に抱きついた。
    頬をピンク色に染めて、どこまでも乙女な口調で甘える。
    その喋り方から先程の説教は連想できない。

    「可愛い可愛い小さくて可愛いっ!」
    「ありさ……苦しい……」

    ぬいぐるみを抱きしめるように、ありさは少女を触りまくる。まさに、過保護。別人格。
  • 9 ももくり id:6QmCtdb0

    2012-04-29(日) 13:17:14 [削除依頼]
    ありさの抱擁は、長い時は何十分にも及ぶ。少女は、彼女の甘い匂いの中で、葉月との約束に焦りを感じた。ちろちろとありさを見つめるが、ありさは夢中で「可愛い」を繰り返すだけだった。

    「……ありさ。葉月はどこ?」

    ついに少女は口を開いた。控えめな小さな声だった。
    すると、ありさはぱっと顔を上げて「あ!」と我に戻る。

    「ごめんなさい。あんまり可愛いから、つい必死になっちゃったわ」

    にこにこと愛想の良すぎる笑みを浮かべ、ありさは言う。

    「葉月は花畑に居たわよ」
    「そっか!ありがとう!」

    少女は、顔いっぱいに笑みを浮かべると、すぐに向きを変えて走り始めた。
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