Radical9コメント

1 玄冬 id:oLlrcBe1

2012-03-29(木) 03:24:07 [削除依頼]
 
 
 
「僕のために、死んでくれますか?」
 
 
 
 
  • 2 玄冬 id:oLlrcBe1

    2012-03-29(木) 03:48:46 [削除依頼]
    零.

     雨は止まない。止めないのかもしれない。雨の仕事は降ることだ。仕事なんか進んでやりたいという奴はいないだろう。雨だって休みたいはずなのに、太陽が有給を取ってしまったから、雨期でもないのに働かなければならない。そう考えると雨を厭ってやるのは理不尽極まりないことなのかもしれないが、しかしながらやはりというか何というか苛々するものはするし、小さい頃から苦手とするものを克服するのには難しいものがある。耳を澄ませば聞こえてくる、割りかし大粒の水滴が窓硝子を叩く音。それは酷く煩く、鳴き喚く鵯の声のように、若しくは熱気味で目覚めた朝の銅鑼のように頭に響いた。
     率直に言ってしまえば、雨は嫌いなのだ。俺は雨っ気のない曇りの日が好きだ。
     つまり、ただいま俺の機嫌は下り坂一直線という訳でして。
    「あー……面白いことないかなあ…………」
     落ちきった釣瓶を引き上げるために必要な何かを、無意識に探してしまう。
     ぐるぐる回る事務椅子に反対向きに腰掛けたまま、室内を見渡した。変わり映えもしない。いつもと同じように、俺と、もう一人だけがこの密室の中にいた。
     
  • 3 玄冬 id:oLlrcBe1

    2012-03-29(木) 04:04:21 [削除依頼]
    「だれるな、黒崎。こちらまで陰鬱になってくるだろう。ああそうか、死.にたいかそうかならば死.ね。いい加減目.障りなんだよ狐野郎。鏡を見て自分の容貌に絶望して首.吊って死.ね」
    「桐谷が何か面白いことしてくれたら復活するかもね。あそこの窓から全.裸にネクタイの格好で理由もなく爆笑しながら飛び降りてくれたらとても気分が晴れ晴れすると思うよ。桐谷も変態として本望じゃない、そんな死.に様は」
     沈黙。しかし、これもいつものこと。
     奴、桐谷駿河は悔しいことにイケメンだ。そして俺、黒崎常盤は残念なことにイケメンが嫌いだ。僻みだとでも何とでも言えばいい。イケメンなんて近づくだけで反.吐が出る。イケメン死.ね。
     勿論桐谷は飛び降りてなどくれはしない。つまらない。
     俺は窓の外を見やった。壁一面をくり貫いてはめ込んだような大きな窓だ。大きさの意味がわからなくなるくらい大きなそれは、その向こうの景色を透過して見せてくれる。安心を、外側からは内部が覗けない加工がしてあるためプライベートは守られている。
  • 4 鬼灯 id:MUv5U13.

    2012-03-29(木) 19:13:48 [削除依頼]
    「馬.鹿か貴様、あの窓が開閉不可な型ということなど知っているだろう……嗚呼すまない本当のことを言ってしまったな、狐。口が滑った。許せ。喰うことと化かすことしか考えられない脳味噌だというのに過度な期待を掛けすぎたか」
    「はっ、鳥頭が何を言ってんだか。鶏冠剃って出直してこい」
     ふっと小さな風が起こる。俺は首をほんの少し傾けた。次いで何かが壁に突き刺さる音がする。見れば、桐谷の腕は刃物を投擲したままの形で止まっていた。俺を睨み付ける眼差しは憎々しげだ。ざまあ、と舌を出して嘲ってやれば、ちっ、と舌打ちをひとつ捨て、奴は大剣の整備に戻った。即座に避けたものの、避けきれずに切られた髪が数本、ふわりと床に落ちた。
    「ちょ、壁の修理費お前出せよ」
    「知るか。経費で落としておけ」
     はぁ、とため息が漏れるのもしかたない。
     鳥頭に任せていられないので、経費やら何やらの管理は俺が一任しているのだ。桐谷が付けた傷の修理の手配をするのだって、俺。解せぬ。
    「お得意の秘術で直せばいいじゃないか」
     鼻で笑う奴に、札を一枚放ってやる。予想通り避けられたが、それでもいい。威嚇用の何の術も込められていない札だ。勿体無いということはない。
  • 5 鬼灯 id:MUv5U13.

    2012-03-29(木) 22:37:20 [削除依頼]
    「生憎、俺は能力を安売りしない主義でしてね」
    「出来ないだけだろう、役.立たずが。言い訳など、見苦しいことを」
    「……ほぅ、てめぇの怪我を毎回毎回毎回毎回治療してやっている心優しい俺様の回帰術を忘れたかそうかそうか。じゃあこれからは直さなくていいよなそうだよな、うん。だって俺役.立たずらしいし? 腕から骨が飛び出てようが肋骨が肺に突き刺さって吐血していようが、可哀そうに、俺はただ指をくわえて衰弱していくてめぇを見ているしかないんだな」
    「貴様が真に使い道のない塵芥であるなら代わりを探すまで」
     鬼か、こいつは。長年の相棒に対する情というものはないのか。無いだろうよ。鳥だし。
    「…………はぁ」
    「ため息を吐くな、耳障りだ」
     気分は下がったまま、浮上してくる気配がない。こんな奴と話しているだけで上機嫌になるなんて、特殊な場合を除いてありえないことだから、当たり前と言えば当たり前なのだが。
  • 6 玄冬 id:MUv5U13.

    2012-03-29(木) 22:56:16 [削除依頼]
     大嫌いな雨も止む気配を見せない。むしろ先ほどより勢いづいてはいないだろうか。背もたれにどっしりと体重を預け、俺は曇り空を見上げた。その上に在るであろう月に想いを馳せ、鼻を鳴らす。眠りを知らないこの街の明かりを受けてほんのりと赤味を帯びた雨雲は、俺をあざ笑うかのように雨を降らせ続ける。
    「明日も、雨か」
     一人言は拾われぬままフローリングに転がり落ち、霧散する。
     錆びた秒針は止まらない。夜は、刻々と更けていく。
     
     
     俗に『神落ち』と称される、俺こと黒崎常盤並びに桐谷駿河。
     いつもと変わらぬ、色の浅せた雑誌のように、黴臭い日常のワンシーン。
     使い古された台詞で回る恋愛映画よりも下らない人生に、俺は皮肉を嘗め回す。
     劇的な人生など、紙切れまたは電子媒体の中にしか存在しないことは知っている。
     ハッピーエンドも、また然り。

     明日もまた、変わらない日々の中のひとつに過ぎないのだろうと。
     愚かで哀れなこの俺は、そう信じて疑うことをしなかったのだ。
     
     
  • 7 鬼灯 id:I7HtqCQ0

    2012-03-30(金) 14:59:58 [削除依頼]
    >>2-6
  • 8 玄冬 id:I7HtqCQ0

    2012-03-30(金) 15:18:21 [削除依頼]
    一.

     神落ちとは文字通り、神から落ちたもののことを指す。落ちたより墜ちたのほうが分かりやすいかもしれない。ただし、堕ちてはいない。堕ちるというと堕天したみたいだが、それは違う。神界に戻る力を奪われ、また、獄界に行くことも出来ずに間界を彷徨う哀れな存在が、神落ち。
     つまりは俺も、そして桐谷も、昔は神の端くれだったのだ。端くれ、というのは一般的に連想される神ではなく、その使い神使として存在していたということだ。俺は狐、そして桐谷は鷹の姿の神使だった。桐谷の仕えていた神は知らないが、俺の仕えていたのは稲荷の神だった。名前は、失われてしまった。主はもう、居ない。死んでしまった神の名は大抵の場合忘れ去られてしまうのだ。
     どれほど、覚えていたくとも。
     神落ちした俺たちは、神使であった頃からの腐れ縁だ。間界で生きていくために、ふたりで依頼屋を営んでいる。何でも屋のようなものだ。迷子の猫探しから、化け物の討伐まで。強いていえばフィールドワーク専門の万屋だ。

    「……お」
     ぴろん、という音と共に、画面左上にメールアイコンが浮かび上がる。俺はそれを選択、開いた。送信元は吉良々警察署。俺達のお得意様のクライアントだ。
  • 9 鬼灯 id:I7HtqCQ0

    2012-03-30(金) 18:01:13 [削除依頼]
     俺は顔を上げ、室内を見渡した。桐谷がいない。なんてタイミングの悪いやつだ。俺は靴を引っかけて、部屋を出た。向かうのはビルの屋上。どこへ出かけるとも言っていなかったから、そこに居るはずだ。奴は鷹だ。高いところが好きらしい。バカと煙はなんとやらというが、全くその通り。
     立ち入り禁止の札がかかっている扉の鍵は無惨にも破壊されている。俺はそれを蹴り開けた。強風。思わず細めてしまう目を動かして、人影を探した。居た。なんということだ、奴はフェンスの向こう側にいた。端から見れば自.殺志願者にしか見えない。
    「桐谷、仕事だ」
     振り返る、焦茶の頭。飾り羽のように揺れるアホ毛が間抜けだ。
    「何だ」
    「街壁外の化け物退治。因みに明日から」
    「ファティグスか」
    「そう、あいつの依頼はいつだって急だ」
     肯定すれば、桐谷が愉しそうに口元を歪ませた。
     顔なじみの彼(か)の公僕。奴からの依頼はいつだって高額で、それ故に厄介なものが多い。
     戦闘狂には堪らないものがあるのだろう。
     俺には、わからない感覚だが。プリントアウトした資料の束を投げつけ、風の強い屋上を後にした。
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