君なんかいっそ好き42コメント

1 あお id:h6bw9Xc/

2012-03-29(木) 00:48:30 [削除依頼]



別に強がってるわけじゃないもん

でも、君こそいい加減気付いてよ

どこまでもバカだから

あたしが君のこと好きって言ったら

どうすんの?
  • 23 あお id:e1Ig0KH1

    2012-04-02(月) 02:21:39 [削除依頼]
    シャーペンが遠くに見える。

    いや、実際にはそんなに遠くないけどさ。

    なんで落ちたんだろう?

    ちゃんと机の上に置いたはずなんだけどな。

    身をかがませて、シャーペンへと手を伸ばす。

    もう少し…

    だけど若干、じゃっっっっかん足りない。

    でもこれ以上踏ん張ってしまうと多分大きい音が鳴る。

    それだけは避けたい。なんでかって?

    それはクラスのみんなに、

    ”シャーペン取るためだけになんでそんなに必死になんの?”

    とか思われたくないから。

    どうしよう。シャーペンをこのまま放置するわけにもいかんし

    …かといって、頑張って取るのも恥ずかしい。

    でも、この体勢で静止しとくのもキモいよな…

    そんな考えを巡らせているうちに、

    シャーペンが誰かにさらわれていった。

    いや、それは大袈裟だけど。

    「はい、どうぞ」

    小さい声でそう言ってきたのは、前の席の女の子。

    名前は木内 詩都(きうちしと)ちゃん。…声可愛い!!!!

    「あ、サンキュー」

    興奮を抑えながら礼を言って愛しのシャーペンを受け取った。

    「どういたしまして」

    にこっと天使のようにあたしに微笑むと

    そのまま前に向き直ってしまった。

    …女の子だ!!あれが真の女の子って奴だ。

    スゲー、あんな笑顔できないよあたしには。

    尊敬するわ詩都ちゃん。好きだわ詩都ちゃん。

    茫然とあたしは詩都ちゃんの後姿を見つめていた。

    あんま話したことなかったけど、優しそうだし。

    第一可愛い!!あたし好みだよああいうタイプ!!!

    そのあとは、どうしたら詩都ちゃんともっと話せるだろう

    とか、

    あたしのことどう思ってるか考えてた。

    やっぱ、人って集中すると時間がたつのを忘れちゃうもんだね。

    きずけば今、4時間目のチャイムが鳴っていた。

    …もう昼食かよ!!!

    いやあ、考えすぎて腹減ったわ〜

    まあ、もちろん勉強じゃないけどね。

    軽く伸びをして席から立ち上がった、その時だった。

    あたしの耳に天使の囁きが聞こえたわけよ。

    「あの〜央莉ちゃん。急なんだけど
    私、央莉ちゃんとアドレス交換したいな…
    とか思ってたんだけど…いや!できたらで良いんだけどね。」

    と振り返った詩都ちゃんが控え気味にそう言って俯いた。

    「もちろんだよ!!!!」

    即座に答えるあたし。ちょっと引かれたかも。

    だってあんなガールガールした子から

    メアドの交換求められるなんて…!!

    感激で央莉は胸がいっぱいです。

    「私ね、ずっと央莉ちゃんと仲良くなりたいな〜とか
    おもってて。今日、央莉ちゃんが落としたシャーペン
    拾った時、私この子の友達になりたいなって思って。
    ずうずうしくてごめんね」

    アド登録をしている最中、照れくさそうに詩都ちゃんが呟く。

    あたしもうれしくてつい笑ってしまった。

    詩都ちゃんの携帯はあの有名なスマートフォン。

    まあ、あたしもだけど。

    でもやっぱり詩都ちゃんのスマホはピンク色で

    キーホルダーも付いていて乙女って感じ。

    それに引き換えあたしのスマホは黒に深緑のストラップのみ。

    なんじゃこの差は!?

    世の中の高校生はこんなに乙女なのかい!?

    「ありがとう!今日帰ってメールするね!」

    「おう!じゃあ待っとく!」
  • 24 あお id:e1Ig0KH1

    2012-04-02(月) 21:35:32 [削除依頼]
    ここで人物紹介しちゃおう!!

    新しく追加された二人を紹介しときます!!


    竹折 草太 たけおり そうた

    演劇部部長。高校三年。
    顔は可愛い顔をしているが
    それに似合うくらい身長が低い。
    自分でもコンプレックスを感じている。
    ひっそりとモテているが当の本人はそれに気づいていない。
    うるさくて明るいのが唯一の取柄で、
    央莉にはなぜかとても厳しい。
    身長 153センチ 体重 43キロ


    木内 詩都 きうち しと

    央莉の前の席の女の子。
    胸のところまである綺麗な栗色のカール髪が特徴。
    目がくりくりしていて、とても可愛らしい顔をしている。
    おとなしく、まさしく央莉の理想の子。
    身長 155センチ 体重 35キロ


    です。まだ、増える…かなあ
  • 25 あお id:e1Ig0KH1

    2012-04-02(月) 22:07:22 [削除依頼]
    あたしは今、とても熱弁している。

    それはもう火を噴きそうなくらいにね。

    「でね、詩都ちゃんクソ可愛いのよ!!!
    わかる!?携帯ピンクだよ!?どこまで乙女!!」

    「はいはい、確かに可愛いねえ、詩都ちゃん。」

    優はあたしの話を呆れたように聞き流しながら

    唐揚げをおいしそうに頬張った。

    「なんだよ!!もうちょっと興味持ってくれてもいいだろうが」

    優が反応してくれないので淋しくなったあたしも

    購買で買った焼きそばパンを口に詰め込む。

    ところでこの焼きそばパン、ちょー人気らしいよ。

    …男子に。

    「で、なんでその詩都ちゃんと
    あんたはそんなに仲良くなってんの?」

    あたしがそんなことを思っていた時、

    フォークでウィンナーを突き刺しながら、

    優が唐突に聞いてきた。

    すごくどうでもよさそうだ。

    「あんね〜授業中にあたしが落としたシャーペン
    拾ってくれてさ、そこからメアドを交換…」

    「はああ!?そんだけ!?そんだけのことで仲良くなったとか
    ほざいてんのあんた!」

    優が急に大声でどなった。

    ちょ…何何!?あたしなんも悪いことしてないけど!

    ああ…耳がキーンってなった…痛いなあもう。

    「なんだよ仲良くなったじゃん!
    だってメアド交換したんだよ!」

    一応反発してみる。…でも優に口論で勝てたことは

    …まだ無い。

    「それ仲良くなったって言わないから。
    多分仲良くなったって思ってるの央莉だけだよ。」

    この言葉にさすがのあたしも動揺した。

    じゃあ詩都ちゃんはあたしと

    仲良くなったって思ってくれてないってこと!?

    …てか優、あんなメンドそうだったのに

    あたしの話ちゃんと聞いてるし。

    まあそんなことは置いといて。

    「え、マジ?あたしはてっきりお友達になれたんだと…」

    声のボリュームを落として優にひそりと伝える。

    すぐに人を信じるって母さんから良く言われるからな、あたし。

    「バカねあんた!!いい?
    そうやって大して話してもないのにメアド交換
    求めてくるってことは…」

    優がいったんここで口をつぐんだ。

    そして食べかけのおにぎりをおいてあたしの耳元に

    顔を近づけてこう言った。

    「あんたを利用しようとたくらんでる」

    これを聞いて、あたしはフッと魂が抜けかける。

    あたしを利用しようとしている…?

    その前にあたしを利用して何になるって言うのかい?

    ふと詩都ちゃんのほうに目を向ける。

    にっこりと笑って、楽しそうに友達と弁当食ってる。

    悪い子には見えないんだけどなあ。

    「ってことだから、ああいう奴には気をつけたほうが」

    身のためよ…

    優はそう言い残して、空になった弁当箱をもって

    自分の席へと帰って行った。

    あたしはその後姿を見送ると、

    カレーパンにがっつく。

    身のため、か…

    だからそんなに悪い子には見えないんだっての。

    …まあ、一応優を信じよう。うん。

    あたしはむりやり詩都ちゃんから視線をそらした。

    「カレーパン、うま…」
  • 26 あお id:e1Ig0KH1

    2012-04-02(月) 22:43:09 [削除依頼]
    「よぅし!」

    かばんに必要最低限のものを詰め込んで、席を立った。

    「やっと終わった…今日は疲れた〜」

    かばんを背負う前に、椅子を引きながら

    軽く伸びをする。

    これからは楽しい楽しい部活の時間〜♪

    そう思うだけで、ちょっと元気になれる。

    「行くか!」

    一人で意気込んでガバッとかばんを背負う。

    「あ、央莉ちゃん!!ばいば〜い!」

    その時、詩都ちゃんがあたしに気づいたように

    手を振ってくれた。

    …可愛いんだけどなあ

    「おうよ!じゃあね。」

    軽くそれにこたえると

    軽い足取りで教室から飛び出た。

    今日こそ、部室一番乗りを目指すぜい!

    廊下を突っ切りながら不気味にニヤアと微笑む。

    ところで、優はあれから詩都ちゃんの話題に

    触れてこなかったなあ…

    本当に優の言うとおり何だろうか?

    そういう裏表がある子とメールするの

    はっきり言って怖いんだが。

    …まあいいか。

    あたしは深く考え込まないようにして

    旧校舎の階段へと足を掛けた。

    だって、今日詩都ちゃんがメールしてくれるっていったし…

    そんなに怖がる必要もねえよな、うん。きっと。

    リズムに乗って階段を駆け上がると、もう部室は目の前。

    しかし、あたしはもう脱力してしまった。

    もう部室のドアが開いている。

    ああ…今日も一番乗りじゃなかった…

    「こんにちは。」

    足を引きずりながら部室に入っていくと

    爽やかに

    「あ、こんにちは」

    と返ってきた。

    こ!この声は…

    ブンっと風を切る速さで正面に顔をあげた。

    そこには悠々と脚本を書いている柏がいた。

    風に吹かれて爽やかさがいつもより増している。

    あたし…こんな奴に一番乗りを取られたのか!?

    「なんで柏がもう来てんのよ。」

    そう言うと柏がふと顔をあげた。

    その瞬間柏の視線があたしをとらえる。

    逃げたくてもここで逃げたら負けだ。

    「ああ、なんだ。央莉か。こんにちは」

    ケロッと涼しい顔で笑う奴。

    「そうですね央莉です。こんにちは」

    オウム返しのようにあたしが続く。

    「あはは、邪魔だよ央莉、こんにちは。」

    後ろから声が聞こえた気がして振り返った。

    そこには完璧に嘘笑顔を作っている草太先輩の顔があった。

    「あ…草太先輩…そうですね。こんにちは」

    にこっと作り笑顔で返す。
  • 27 あお id:B5ZN0rY/

    2012-04-04(水) 19:37:18 [削除依頼]
    「なぜ央莉は今日俺より早く来てるんだよ?
    ああ!!そっか分かったぞ!昨日遅刻して俺をおこらせたから、
    今日は俺より早く来て謝罪する作戦だな!!はっはっは!!」

    「いや、それはないです。絶対。」

    ああ…先輩に見つかるとめんどくさいんだよな…

    滑舌よすぎっしょ先輩。

    そういやなんであたしってこんなに草太先輩に怒られるんだろう…

    あたし以外の人が遅刻しても怒んないくせに…

    あたしだけだよ!?あんなに厳しいの!

    まあいいや。あたしは先輩に嫌われている、それはそれでいいんだけど。

    それよりも先にあたしは先輩を怒らせないようにする方法を探さなきゃ。

    怒られても許してもらえるような……

    ・・・・そうだ!弱点とか見つけてみよう。

    ガタンッ

    あたしが心の中で何かと作戦を立てていた時、

    突然椅子を引きずるような音が聞こえた。

    それは柏が椅子から立ち上がった音だった。

    あたしとほぼ同時に先輩も柏のほうに向く。

    「…部長。一番にここにきたのは俺なんです。
    だから、央莉を責めるように言うのは可哀そうだなあ。」

    俯いたような不安そうな顔で柏が小さい声で呟いた。

    でもその声はどう考えても草太先輩に向けられている。

    あたしはここで多分顔が崩壊した。

    きっと醜い顔をしていたと思う。

    だって…だって…!

    「そうか…伊夏がそこまで言うなら…央莉。今日は見逃してやる。」

    柏が草太先輩に無性に信頼されているから。

    なんで!?なんで柏のそのたった一言であたしを許してくれるんだよ!

    おかしいだろっ。あたしと柏に対しての態度が違いすぎません先輩?
  • 28 あお id:B5ZN0rY/

    2012-04-04(水) 23:58:40 [削除依頼]
    「なあ伊夏〜今日一緒に帰ろうぜ〜」

    「いいですよ〜部長は一人がだめな可愛い人だからなあ。」

    「…!うっさいぞ伊夏!」

    そう言いながら、草太先輩は柏の口をふさごうとじゃれあっている。

    …すげー和むわ。もう癒されるわ。だけど…

    あたしちょー居づらい!!

    なんなの?あの二人!?何者!?

    あたしの居場所ないじゃん!!

    柏も柏であたしのことまるでスルーだし!!

    「あっはは!部長甘いものもすきだったよね?はい、あーん。」

    そうこうしているうちに次に柏は先輩の口に飴を押し入れた。

    「!!!…うまいなこれ。も一個!」

    「しょーがないなあ〜はいどうぞー。」

    そうやって仲良くするのは良いんだよ。良いんだけど…

    あたしがここにいること忘れてない?二人とも…

    央莉ちゃん淋しいんだけど!

    取り残されちゃってるんだけど!!

    「草太先輩〜あたしも構ってくださいよ〜淋しいですー」

    わざとらしくあたしは二人の会話に入ろうとする。

    だが…

    「は?央莉に構ってやる時間なんて俺にはねえんだよ。俺は今忙しいんだ。」

    柏にべったりな人に言われても、説得力無いです…

    そしてあたしが話かけるとやっぱり不機嫌になるんだなあ…

    そんなにあたし先輩に嫌われてるのか…

    結構ショックなんだが…

    「じゃああたしは邪魔ですか?」

    こうなったらやけくそだ。誰でもいいからあたしに構って〜

    「ああ。すげー邪魔だわ。」

    あたしの儚い思いを草太先輩は無惨にも砕き散った。

    いつもの声で。ああ、…許すまじ竹折草太。

    訂正する。あたしはこんな奴に嫌われてても、どうってことない。

    むしろ嬉しいんだ。

    「ああ、そうですね。邪魔しました〜草太先輩のほうがあたしより
    後に来たくせに、よくそんなこと言えますね〜わあ自己チュー」

    精一杯の皮肉をこめて言ってやった。言ってやったぞ!!

    あたしすごい!!

    「では、失礼しました。二人でごゆっくりイチャこきなっバーカ!」

    捨て台詞を吐くなり、先ほどのドアに駆け寄る。

    ははん。お前らに反論される前に…

    逃げる!!!

    あたしはそのままぴしゃりと部室のドアをきっちり閉めてそこから出て行った。

    知ってるよ〜草太先輩がさっきあたしに言い返そうとしたの見えてたし。

    だから逃げたもん勝ちって奴だな!!

    いい気になりながら、あたしは廊下を足早に駆け抜けていく。

    廊下で何人かの演劇部員にすれ違ったけど…

    これから部室に行くのかな1?

    だったらやめといたほうがいいと思うぞ…

    まあ、止めはせんが。

    爽やかな気分であたしは…どこに向かっているんだろう?

    てか、逃げ出して来たけど、多分そろそろ部活が始まっちゃうよな…

    どうする加村央莉!

    ? 保健室に行く。仮病ってゆう手がある。

    ? しょぼしょぼ戻って二人に謝る。

    ってその二択かよ!?

    だったら…

    あたしは不意に駆けだした。
  • 29 あお id:5.yRVrx.

    2012-04-05(木) 22:57:18 [削除依頼]
    駆けだしたのは…もと来た道。

    別に、こんなに急いでいるのはあの二人に謝りたいとか

    そう理由じゃなくて、ただ単に部活が始まってしまうから。

    なんで保健室に行かなかったのかって言うと、

    保健室の先生が苦手だから。

    だから…まあ、消去法って奴だな、うん。

    あたしは先ほど演劇部員を見かけた廊下の突き当りまで戻ってきた。

    やっぱりもう部室に行ったらしい。

    もう姿はなかった。

    ああ…部室までの道のりが結構長いんだよな…

    あたしはため息をついてから、三階へと続く階段を駆けあがっていく。

    二人に謝ったほうがいい…よな。

    いや、でもちょっと待てよ。落ちつけあたし。

    良く考えると、あたし別に悪い事してねえじゃん!!!

    そうだよそうだよ!悪いのはあたしじゃねえ!!

    そう思って逃げ道を作ることで、駆ける足取りが心なしか軽くなった。

    テンションが回復に近づいた時、あたしは踊り場に足を踏み入れていた。

    上から急いで駆け降りてくる人物に気づかずに。

    ここであたしが少しでも正面を向いていたら、防げたいたかもしれない。

    その人物との衝突を。

    でも、あいにくあたしは急いでいて、正面を見る余裕など微塵もなかった訳で。

    バフンッとあたしは何かにぶつかった。

    何かに……正式に言うと人に。


    今、あたしの視界にはハラハラと紙が待っている。

    そしてとても尻が痛い、痛すぎてつらい。

    「ったぁ〜なにぶつかっていてくれてんの!あたしは急いでんの!
    ちゃんと前見て…」

    あたしは尻もちをついて悲鳴を上げている自分の尻をさすりながら、

    ぶつかってきた人物に怒号を上げた。

    …が、すぐに口をつぐんだ。

    「…草太先輩?なぜに?」

    そう、目の前にはあたしと全く同じ状態で尻もちをついている草太先輩が、

    同じようにこちらを睨みつけていたから。

    びっくりと焦りで声が裏返る。

    「央莉…お前か俺にぶつかってきたのは。おい」

    「ひい!はい、あたしです!ごめんなさい!!大口叩いてごめんなさいぃぃぃ!」

    予想通り、彼はキレていらっしゃった。…相当。
  • 30 あお id:5.yRVrx.

    2012-04-05(木) 23:24:35 [削除依頼]
    どうしよう…あたしがなんか不可抗力で謝ってしまった…

    でも、尻痛い。

    あ、でもそれは先輩も同じか。

    「そうだな。お前がぶつかってきたんだから
    お前が先に謝るのは当然のことだよな!」

    さも、勝ち誇ったかのようにテンションがあがる先輩。

    それと比例してあたしのテンションはまたも下り坂。

    「はい、そうですね。ぶつかってごめんなさい」

    なんでこの人はこんなに元気なんだろう…

    見ていて、こっちがなんか落ち込む…

    あたしは逃げようにも逃げられないの状況に、

    すごく気まずさを感じる。

    「あ…あの…草太先輩はどこに行こうとしてたんですか?」

    沈黙をやぶったのはほかでもないこのあたし。

    「ああ。それはだな〜顧問の先生に脚本を書くアイディアを
    もらおうと思ってよ!!!」

    それに運よく、草太先輩も食いついてくれた。

    「ああ、だからこんな大量の紙…」

    あたしはいいかけて、視線を地べたに移す。

    そこには無惨に散らばった大量の白紙が。

    そこで、あたしはハッとする。

    …そう、草太先輩の視線に。

    「おい。お前には優しさというものがないんだなあ」

    嫌味たっぷりに先輩がこっちを見て微笑していた。

    …こいつ…悪魔だな。

    あたしはキレるのをなんとか理性で我慢して、

    先輩が持っていた散乱してしまった紙を

    集めて拾い上げる。

    なんだよ…なんか負けた気分…

    いやいや!!??負けてなんかないよ!?

    だって勝負なんてしてないもん。うん。

    なんだよ…あたしは空気読んで拾ってあげてるだけだっつの。

    まったく…

    あたしはそう思いながら、

    面白いものを見るかのようにこっちを観察してくる先輩を

    しかめっ面で3秒ほど見つめた。

    100%あたしが悪いわけじゃないんだから

    先輩だってちょっとくらい拾ってもいいでしょうが!

    大体先輩のだしコレ。

    ぶつくさ心の中で文句をたらしながら、

    最後の一枚を拾い上げる。

    一応、トントンと束ねた紙を綺麗にに整えてから、

    「はい、これで全部です。」

    と、先輩に差し出した。

    ここで、”汚い!整えろ”

    とか言われたらめんどくさいからね。

    「けっ。お前はそうやって素直に良い子にしてりゃあ
    良いんだよ。このおとこおんなが!」

    そう言って、あたしの手から、

    感じ悪く紙の束をむしり取った。

    ……おとこおんな…

    それ、あたしが一番許せない言葉。

    もう、この世に存在しなければいいって思うくらい。

    「どういたしまして。」

    そう言ってあたしは草太先輩ににこっと笑って見せた。

    その瞬間、草太先輩のネクタイをつかむ。

    きつく、ちぎれるほどに。

    草太先輩はちょっとびっくりしたみたい。

    目が大きく見開いている。

    おとこおんな…そう言った草太先輩。

    もう嫌い。

    「草太先輩…」

    あたしはこの言葉を草太先輩の耳元で囁いた。

    「…なっ何だよ。」
  • 31 くまさん! Happy☆ id:7kSilJW.

    2012-04-06(金) 17:39:29 [削除依頼]
    ガンバ!
  • 32 あお id:s0fQ83J0

    2012-04-07(土) 11:10:53 [削除依頼]
    >31

    ありがとう!!

    頑張ります!!
  • 33 あお id:s0fQ83J0

    2012-04-07(土) 11:43:49 [削除依頼]
    「おとこおんなってなんですか?あたしのこと?」

    急に緊張する空気の中で、あたしが先に口を開いた。

    「…そうだけど?なんだよ。」

    不審そうに先輩が掴まれているネクタイに目をやる。

    「…そうっすか。」

    ポツッとあたしは呟くと、

    そのまま、周りに誰もいないのを確認して、

    右手のこぶしを振り上げた。

    先輩の右頬めがけて。

    「先輩のばぁーか…」

    そう言った瞬間あたしの拳が勢いよく先輩の右頬にヒットする。

    鈍い音が響いた。

    「っ…なに…すんだよ。」

    あたしに殴られた右頬を抑えて、先輩がこちらを睨みつける。

    さすが先輩。怒ってる。

    でも今はそれどころじゃない。

    「わかんないの?おとこおんなとか言われたあたしの気持ち!?
    ちょっとくらい反省しろよ…ホント先輩ってあいつに似てる。」

    あたしの声は徐々に小さくなってく。

    一方先輩は意味不明というような目でこちらを見ている。

    でも、睨んではいなかった。

    そうやってこっち見てくる仕草も、あいつにホントに似てる。

    今も先輩とあいつがときどき重なって、

    殴りかかってしまいたくなる。

    なんで…なんで先輩はあいつに似てんのよ…

    意味わかんない。なんでそんなに心配そうにこっち見んの?

    …大っ嫌い。…じゃない。

    「おい、大丈夫か。泣くなんてお前らしくないな。」

    泣く…?

    「誰が?」

    「お前が。泣いてるじゃねーか。
    ほんとお前が泣くと調子狂うし。」

    嘘。嘘だよ。あたし中学一年の時以来泣いてねえもん。

    なのに今さら泣くなんて…

    でも、ほっぺたに手をおくと、確かに濡れていた。

    「なん…であたし泣いてんの?」

    「そりゃあ、こっちのセリフだろ、おい。」

    おかしそうに先輩は笑いながら、あたしの頬にハンカチを当てる。

    「これでちゃんと吹けよ。今のままじゃ、顔が醜いぞ。」

    嫌味たっぷりのいつもの先輩の口調。

    でも、今はその言葉がなんだかあったかかった。

    先輩のことは大っ嫌いじゃない。

    だって、

    「先輩は、あいつと違って優しいからね。」

    あたしはそう言って先輩に笑ってから

    渡されたハンカチで鼻水を拭く。

    「俺を誰かと比べるなんてお前には5光年早いな。」

    ふんっと鼻を高くして先輩は笑っていた。

    あいつは…こんなに笑わないか…

    なんであたし、先輩をあいつと重ねたんだろう?

    ああ、そっか。

    「先輩。今後一切あたしのことおとこおんなて呼ぶなよ。」
  • 34 あお id:s0fQ83J0

    2012-04-07(土) 12:02:50 [削除依頼]
    「っは。お前が俺に命令?ふざけんな。
    次からも読んでやろうか?おとこおんな!!」

    楽しそうに先輩は笑う。

    …このドSが。

    でも、あたしは気づいてしまった。

    …先輩の右頬は真っ赤だ。

    痛い…よな…

    あたし、握力42だもん。って握力関係ないか。

    「先輩、はい。痛いんだろー。ちょうどこれあたしの
    涙で冷たいし。冷やしといたほうがいいんじゃね。」

    渡されたハンカチを先輩の右頬にぴたりと当てた。

    もちろん、ハンカチが濡れたのは涙のせいではない。

    …鼻水だ。

    まあ、気付かんだろう。

    「!!??何しやがるこのおとこおんな!
    それお前が鼻かんだヤツだろ!?」

    あ…ばれた。

    先輩が汚いものを扱うようにハンカチを振り払う。

    …ってこれもともと先輩のハンカチじゃないっすか。

    まあ、確かに鼻水の量ハンパないけど。

    「大体、右のほっぺたが赤くなったのは、お前のせいだよな。
    なのに、謝りもせずにほんとにふざけた野郎だな。」

    「はい…すいません…」

    始ってしまった。先輩の説教。

    なぜかあたし今、地べたに正座してるし。

    「…あと、ハンカチ洗って返せよ。
    カリパクしたらどうなるか分かってんだろうな。」

    「…はい。」

    先輩は怒りながら、そのまま階段を下りて行ってしまった。

    先輩の姿が見えなくなってしまった。

    一気にあたしの心に静寂が戻ってくる。

    「はあ…あたしも部室に戻るか。」

    勢いつけて立ち上がり、スカートをはたいた。

    にしても、さっきの先輩の説教短かったなあ…

    まあ、いっか。ラッキーだし。

    そう思いながら先輩の9割鼻水ハンカチを制服の

    ポケットにしまいこんで、

    何事もなかったかのように部室へと階段を上った。
  • 35 あお id:Wm9Zr001

    2012-04-11(水) 17:36:50 [削除依頼]
    ここからは平常心…

    先輩ともぎくしゃくならなかったし、きっと柏とも大丈夫…

    ただいまあたしは部室の扉の前で立ちすくんでいます。

    だって、暴言はいて一回部室出て行った奴が、

    今さらノコノコ顔出すなって思われるの嫌じゃん!!

    …まあ、行くしかない。

    いざ、出陣!

    「遅れました〜」

    部室に入ると、みんながいっせいにこちらに振り返った。

    うう…恥ずかしいなあもう。

    「…というわけで、今脚本が全く完成しないのです。」

    あたしを見てそう言ったのは、同じ学年の神埼 雅也(かんざきまさや)

    実は小学校からの幼馴染だったりする。

    でも、もう兄弟みたいなもんだけど。

    あ、あたしがお姉ちゃんね、もちろん。

    「…そうか。」

    雅也の言葉をスルーしてしまったが、

    あたしはこれで緊張が一気になくなった。

    1分前まで部室の前で立ちすくんでいたあたしが恥ずかしくなるくらいに。

    席に着くと、雅也がこちらを向いて、Vサインを送ってくれた。

    …良いやつだ。

    あたしもそれにVサインで返す。

    「で、今部長が代表して顧問の先生に脚本指導してもらいに行ってるんだよ。」

    「そっか。さっきその部長と衝突してきた〜!!」

    あたしが大袈裟に言うと、雅也はやっぱり笑ってくれた。

    …ああ、我が弟よ。

    「こらこら。そこだけで情報交換するの禁止だよ。」

    前の席のほうから、柏の注意が飛んできた。

    ああ、笑顔だ。

    良かった。怒ってないぞ。

    「はいはい。」

    で、この嫌悪感満載の状況をみると、本当に脚本の進行状況がやばいんだと思う。

    だってみんなもう疲れ切ってるもん…

    あたしが部活に戻ってこなかった15分の間に何があったんだ。

    そう思い、周りをきょろきょろと見渡す。

    てゆうか、みんな脚本に力入れ過ぎだよ…

    「てゆーか脚本完成予定日まであと2週間くらいあるのに、なんでみんな
    そんなに頑張ってんの?もっとアウェイに行こうぜ!」

    あたしはふと思っていたことを口にした。

    だってまだまだ余裕があるし…

    「何言ってんの!?脚本完成まであと三日だよ!?」

    驚いたように立ちあがったのは柏だった。

    え…嘘。マジで?

    あ、でも柏が間違えたことなんて一一回もないから

    それで合ってるのか…

    …ああ、あたしは大変な勘違いをしていたのかもしれません…
  • 36 あお id:Wm9Zr001

    2012-04-11(水) 17:43:20 [削除依頼]
    新たに加わった人物紹介!!


    神埼 雅也 かんざき まさや
    央莉の小学生からの友達であり幼馴染。
    背は意外と高いが、央莉と同じくらい。
    その代わりに、とても童顔で笑うとえくぼができるのが特徴。
    可愛いと女子からちやほやされている。


    身長 168センチ 体重 59キロ
  • 37 あお id:Wm9Zr001

    2012-04-11(水) 17:57:02 [削除依頼]
    ああ…あたしも今、演劇部メンバーの

    うなだれた雰囲気にすっかり溶け込んでしまった。

    知らなかった。脚本提出日が三日後だったなんて。

    あたしはてっきり二週間後だと…

    てゆうかなんであたしそんな勘違いしてたんだろ?

    …草太先輩のせいかな…

    まあ、いいか。分かったんだから良かった。

    …って良いわけないじゃん!!!

    あと三日後って…すぐすぐだよ。

    でも、確かにそんなにピンチだとやる気出ないよね〜

    あたしは演劇部のメンバーに同情した。

    柏の話によると、今日から本格的に脚本を急ピッチで

    完成させる予定だったらしいんだけど

    どうやらアイディアが一つも浮かばないうちに今日を迎えてしまったらしい。

    そんな話聞いてないんだけどなあ…

    いやがらせなの!?

    アイディアが尽きたみんなは気力を無くしてしまって

    おしゃべりをはじめてしまっている。

    そんな状況を見て柏はおろおろするばかり。

    これが今現在の演劇部。

    ああ…ダルイな

    こんなときにかぎって草太先輩いないし…

    することがないため、机に顔を伏せようとした瞬間

    ガラッと良い感じの音がした。

    そして、そこから現れたのは、涼しい顔をした草太先輩。

    …余裕だ。余裕の顔をしている!!

    まさかいい案を先生からもらったとか!?

    みんながどきどきしながら、爽やかに登場してきた先輩に目を向ける。

    いまや先輩は注目の的だ。

    草太先輩の右手には、先ほどあたしが拾ってあげた紙の束。

    それを得意げに草太先輩は抱えている。

    良い知らせでありますように!!!

    誰もがそう願っただろう。

    ゴクリ…つばを飲み込んだ直後、彼が口を開いた。

    「…自分たちのことなんだから、自分たちで考えなさい。
    集中力と演劇への情熱が足りない。…だそうだ」

    こともなげに草太先輩がそう告げた。

    その瞬間、場の空気がさらに3℃ほど下がった気がした。
  • 38 あお id:Wm9Zr001

    2012-04-11(水) 18:27:51 [削除依頼]
    「え〜じゃあ、みんなほかにいいアイディアはない?」

    草太先輩が席についてから、柏が重い口を開いた。

    なんだったんだ。あの草太先輩の誇らしげな顔は。

    見せかけじゃねえか。

    あたしはさっと周りに目を見張る。

    ほらね。みんながさっきよりやる気なくしてるよ…

    もう生気を吸い取られてくみたいだ。

    「伊夏。アイディアなんてものはさっき出しつくしたぞ。
    もうその中からましなのを選ぼうぜ…」

    草太先輩が退屈そうにあくびをした。

    演劇部は極端に三年生が少ない。

    だからといって一年生が極端に多いわけでもない。

    …廃部かも。

    …なあ〜んてそれはないか!!

    のんきに行こう。マイペースで行こう。

    そうだよ。マイペースで…

    モチベーションをなんとか上げようと踏ん張るが、

    周りの空気に、かすかな希望を掻き消されてしまう。

    ああ…もう駄目だ。

    あたしがウトウトしてきた時、

    考えるポーズをしていた柏が、ふと口を開いた。

    「でも…央莉ってさあ、部活初めにここにいなかったよ?
    そう考えると央莉ってアイディアをほかのメンバーよりも
    出してなくない?」

    柏の口からでた言葉に、あたしは眠気を吹き飛ばされた。

    目をガン開く。

    え…何?ちょっと待って。

    なんで憤りの矛先をあたしに向けるのさ?

    これじゃあまさか…

    まさか…

    「おお!確かに。
    俺らにブチ切れてお前一回部室から出てったもんな。
    お前が出ていった直後に部活が始まってよ。
    みんな一人30個はアイディアを絞りだしたってのに、
    央莉はさっき現れて、アイディアをまだ出し切ってないよなあ?」

    草太先輩が柏の意見に乗る。

    ああ、そうですよ。確かにあたしがいなかった15分で

    みなさん随分アイディアを頑張ったんですってね。

    …でもね…

    だからってあたしに脚本を押しつけるとかやめてよ?

    「だから、お前があと三日で一人で完成させてくるってのは
    どうだ?だってさぼったお前が悪いんだもんなあ?
    みんな。聞いてくれ!」

    そう大声で叫んだともに、

    先輩はあたしからみんなへと視線をずらす。

    顔をあげたみんなの目は明らかに輝いている。

    人気漫画のちゃ○よりも。

    「この加村 央莉はお前らが懸命に脚本を考えていた時、
    なんとサボってたんだぞ。だからその責任として、
    脚本を加村に全て任せるってのはどうだ?」

    何かを企んでいた先輩の顔がついに笑顔になった。

    「この意見に賛成の人は拍手!!」

    その言葉に一秒も立たないうちに拍手喝采が教室を包んだ。

    みんな命を取り戻したように、しきりに手を叩いている。

    それどころか、口笛やクラッカー音をまねする音が聞こえてくる。

    今日一番の盛り上がり。

    みんなの顔は…安堵でいっぱいのようで。

    先輩が意地悪そうにほほ笑んだ。

    ゾクゾクっと背筋が伸びる。

    「はい、決定したぞ。嬉しいなあ央莉。
    一人で脚本書いていいってさ。みんなも認めてくれてるしよお。」

    顔だけこちらにむけた先輩がそう言ってきた。

    鳴りやまない拍手。

    いいや…みんな認めるって押しつけるの間違いでしょ!?

    ひきつった笑顔を無理やり作ってあたしはそれを

    受け入れてしまった。

    だって、みんなにそんな頼りにされたらYESとしか言えない!
  • 39 あお id:Wm9Zr001

    2012-04-11(水) 18:54:00 [削除依頼]
    「はい、じゃあ解散〜!」

    ルンルンと機嫌が良い草太先輩は

    そう言って勝手に部活を打ち切ってしまった。

    みんながうれしそうにはしゃぎながら

    部室から出て行くのをうらやましそうに眺めているのは

    …加村 央莉です。

    先ほど完全に脚本を押しつけられ、

    怒り、後悔、恨み、悲しみ、不安、プレッシャー…

    たくさんの感情が心の中で渦巻いていて

    どうしてもいま席を立つことができないのです。

    …なんなのさみんな。全くヒトゴトなんだから。

    まあ、結局みんなの期待を裏切れず、

    受け入れたあたしが悪いんだけどさ!!

    だからってあと三日で!?

    「ああー…」

    部室の机に頬杖をついて空に目を向ける。

    良く考えたらできるわけねえよあたしに。脚本作りなんて。

    みんなの役に立てたことは嬉しいんだけど、

    それよりもはるかに後悔が大きすぎる!!

    「どーしよっかな…脚本…う〜ん。」

    人はほとんど出て行ってしまい、閑散としている。

    でも、やっぱりこいつは教室を出て行かないんだよな…

    「何だよ柏。お前も帰れば?
    てゆーか人が物思いにふけってるんだから空気読んで出てけよ」

    振り返った先に居るのはまたこいつ。柏 伊夏。

    何なんだ。同情ならよしてくれよ。

    あたしはそんなのほしくないんだし!

    「いやあ、本当はやりたくないんじゃないかなーと思って。」

    首の後ろを掻きながら、柏がこちらに歩み寄ってきた。

    「うん。やりたくないってゆうか、どっちかっつーとできない」

    そっけなく返事を返すと、

    「うん。央莉には無理だと思う。」と軽くあしらわれた。

    何だよ…さてはこいつからかいにきやがったな。クソ。

    あたしはフイッと視線を窓の外に戻す。

    「じゃあ、元気づけてあげちゃおっかなあ。」

    後ろでそんな柏のふわふわした声が聞こえた。

    「できるわけねえじゃん、あんたなんかに。」

    振り向かずそのまま言う。

    元気づける?そんなの無理だっつの。

    だってもともと落ち込んでたわけじゃねえもん。

    どっちかって言うと、ムカムカする。

    「えーできると思うよ?だって央莉、見たいんでしょ?」

    「何を?」

    柏の意味深な言葉にあたしは反射的に反応してしまう。

    見たい?…さては下ネタか。

    …あ、でも柏ってそっち系じゃないもんね。じゃあ、何?

    「俺の、演技。」

    わざとらしくゆっくり言う柏。

    演技…

    見たい見たい。見たい見たいみたい!!!

    でもその好奇心は明日にとっておきたかった。

    だってあたしには作戦があったから。

    明日も早く学校に行く。もちろん柏にばれないように。

    で、教室で演技の練習するっていう柏を

    のぞき見するって言う作戦。

    趣味悪いとは言わせないぞ。

    だから、今ここでそんなに素直に言われても

    はっきり言って面白くない。

    あたしに見せるのをあんなに嫌がってたのを、

    こっそり盗み見るから面白いのに。

    「じゃあ、いいよ。見せて。」

    でも…やっぱり自分の欲望には勝てないみたい。

    今すぐ見たくなってしまった。
  • 40 あお id:Wm9Zr001

    2012-04-11(水) 19:18:37 [削除依頼]
    「そう言うと思ってたよ。」

    あたしの返事に柏はにこっと微笑んだ。

    …またその笑顔か。

    もう見あきたなあ〜

    「じゃあ、央莉も手伝ってね。」

    さらっと言われたのでスルーしてしまいそうになったが、

    あたしは負けない。

    「手伝うって、何を?」

    「え、演技。」

    「…は?」

    意味不明。柏一人でやれよ。

    あたしを元気づけてくれるんでしょ。

    だったら…

    「だって、元気づけるってさあ、俺の演技見るだけじゃあ
    央莉は絶対元気にならないでしょ。」

    「うん。」

    その通り。よく見抜いた。

    だから何よ。

    「だからね、そういうときは一緒になって
    その役を演じきることで元気になれるんだ。」

    「………うん?」

    よくわかんない。そんなのあり得ないから。

    でも、あり得ないって言いきれなかった。

    柏の自信満々の笑顔を見ていたら言いきれなくなった。

    「ま、いいからとりあえずやってみようよ。ね。」

    さらっとあたしの言葉を流して、

    柏が爽やかに渡して来たのは、

    「これ、恋宴の台本…?」

    「ザッツライト!」

    あ…柏が英語使った。意外!!

    てゆうか、台本常備してるんだね、尊敬。

    「央莉は殿と恋に落ちる娘の役やってね。
    台本見ながらでいいから。」

    台本をパラパラとめくっていた時、柏が言った。

    まって…そんなの無理だって!

    台詞覚えないと演技なんて出来るわけ…

    「できるはずだよね。だって央莉だもん。」

    この柏の言葉にあたしの心に火がついた。

    何よ。その上から口調は。

    いいよ。やってやる。

    柏をぎゃふんと言わせてやる。

    あたしの演技力は天下一品だっつの。

    だって、あたしは誰よりも誰よりも

    演劇が好きだから。

    「できるにきまってんじゃん。ナメんなよ。
    で、どこから演技するわけ?」

    「えっと、この恋に落ちる2幕と、娘が殺されてしまう
    クライマックスの最終章。」

    あたしは言われたところに目を通す。

    絶対一番難しいシーンを演じるつもりだ。

    やってやろうじゃん。

    柏は台本を見ずにやるつもりだ。

    まあ、あたしは台本見るけど。

    どうせ、柏は演技が下手くそだからそんなに

    必死こいて練習してるんでしょ。

    演技できないクセに演劇部入っちゃったから

    焦ったんだ絶対。

    だから、あたしにも演技を見せることができないんだ。

    そうだよ、絶対そうだ!!

    あたしは勝手に自分の都合がいいように理由をこじつけた。

    「ふう…」

    「よし、じゃあ行くよ。」

    「おう。いいよ」
  • 41 あお id:Wm9Zr001

    2012-04-11(水) 19:38:05 [削除依頼]
    あたしが演劇を好きな理由。

    それは加村 央莉という自分を忘れられるから。

    あたしが演劇に出会ったのは中1の時だった。

    その時あたしは初恋というものをした。

    クラスのちょっと不良のような男子に。

    ちょっとやんちゃな、元気なその人に。

    胸が苦しくて、病気になったのかと思って焦ったんだよね。

    でも、それが恋だと友達に言われて、

    あたしはあの人が好きなんだってことに気付いた。

    しかも向こうもスポーティな子が好きだって言ってた。

    だからかもしれない。いまだに男みたいな性格なのは。

    だから、告白した。

    夏のまっただ中に。

    夏休みの部活の休憩中に。

    でも、キモイって言われた。

    これが初めての失恋。

    で、しかもその男子がみんなに言いふらしちゃって

    あたしは恥さらし。

    廊下ですれ違った時、

    「お前なんかにコクられてまじ死にたくなる。
    みんなにからかわれて良い気味だし」

    っていわれた。

    好きだったその人に。

    恋なんかしなきゃよかった。

    良くあるドラマのセリフを呟いてしまった。

    初恋は叶わないものだと漫画に書いてあるけれど、

    こんなにつらいのかと思ってしまった。

    学校に行ってもからかわれて、

    あたしの居場所がなくなった時、

    見つけたんだ。あたしの心の居場所を。

    公園で一人で練習してた20代のお兄さんの姿をみた。

    こんなに演技が身にしみたのは初めてだった。

    だって見かけたその人が演じていた役は

    あたしの置かれた状況と良く似ている高校生の役だったから。

    ずっと見惚れてその人の練習を見ていた。

    何度も何度も同じところを練習して、

    直球にすごいと思った。

    それが演劇との出会い。

    それから独学で役を練習しているうちに

    役を演じているときだけ、自分を忘れられて

    現実が見えなくなった。

    だから、振られたこともきっぱり忘れることができたんだ。

    だから、だからあたしは演劇が好き。
  • 42 あお id:fem38S2.

    2012-04-15(日) 14:06:39 [削除依頼]
    よし。2幕の最初のセリフはあたしから。

    あたしの演じる役は…

    いや、あたしは街娘の将園 ヨリ。

    やってやる。あたしはできる。

    誰よりも、演劇の楽しさを知ってるはずだから。

    だから、さあ、深呼吸。

    ヨリは、父親が死んで泣いてるんだ。

    そこに、城から抜け出してきた殿様と出会う。

    まるで、あたしと一緒の状況。

    悲しいよな。つらいもんな。

    そう思うと、勝手に涙が出てきて止まらなかった。

    「っ…ぅっ…」

    しゃくりあげてしゃがみこむ。

    これが今の将園 ヨリだから。

    「…こんなところで、何やっておる?危ないではないか。」

    不意に柏が言った。

    …え、何?その顔の表情。

    心配して、今にも泣き出しそうな顔…

    誰なの?…あ、そっか。殿様だ。

    なに忘れてんだろ。

    柏は殿様の役じゃん。

    あたしは台本に素早く目を移した。

    …あ、柏の言ったセリフ、台本と同じだ…

    って当たり前か。

    当たり前のはずなのに、何これ。

    胸が締め付けられて、キューッてなる。

    苦しくて、息が上手く出来なくなる。

    涙が、自然と止まって行くのが分かった。

    あたしの心に将園 ヨリが生き移ったみたい。

    素直に、素直に泣きやむんだ。

    「危ないなら、あなたも同じでしょ。あたしと同じ場所に居るのだから。」

    あたしはそっと口を開いた。

    心に闇を抱えた、明るい女の子。

    静かに、静かに。

    心が、ヨリに支配されてく。

    「っはっは。それもそうだなあ。お見事だ。」

    くしゃっと眼の端にしわを寄せて柏が……

    いいや、殿様が、あたしの隣に座り込む。

    次は、あたしのセリフのはず…

    そう思って台本に目を通した。

    その時だった。

    「はい、カット」

    優しい穏やかな声が、隣から聞こえた。

    その言葉の意味がよくわからなくて、あたしは柏のほうに顔を向ける。

    「…?なんでだよ。まだ続きが…」

    「もういいよ。だって央莉の演技見てると、うまく演技ができないんだ。」
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