漆黒の幻影術師38コメント

1 轟雷 id:hz8CcGl1

2012-03-17(土) 13:52:57 [削除依頼]
 永遠続く時の咎、それを解放する汝は――
  • 19 轟雷 id:hz8CcGl1

    2012-03-17(土) 20:29:52 [削除依頼]
     しかし、渡してもすぐに投げ捨ててしまう。これは、どうにかしないと思い少し考え込むと瞬間的に良いことが思い付いた。
     お嬢様の目的は、俺に着替えさせることでほぼ間違いないはずだった。ならば、強制的に明るめの服を着せればいいと思った。
     名案だと思ったので近くに散乱している服の種類を見てみることにした。
     背中が開いている大胆なドレス。これだけでは、可愛そうなので上に何かを羽織ればいいと思った。ほかには、裾が極端に短いものや逆に長い物までいろいろあった。
    「良いのが分からないなら、俺が選んだ服を着せてあげます。それでいいですよね」
    「仕方ない……分かったジェンが選んだ服を着させてもらうわ! 変なの、選んだら許さないだから」
     捨て台詞みたいなことを言っているが顔だけは、正直でとても嬉しそうな顔をしていつつ赤く染めていて恥ずかしそうにしている。
     どれも高い服だと思うが極端すぎるので出来るだけ普通の服を選びたいけど無い。
     仕方なく、俺の足元に落ちている服を拾ってみると淡い蒼色の背中が開いていて涼しそうな服だった。さすがに少し肌を見せすぎている気がするけど俺が着させてあげるので出来るだけ着やすそうな方がよかったのでこれに決定してしまった。
     これどうですかと見せてみると林檎以上に顔を染めてしまった。これは、まずかったのかなと思ったのでゆっくりと下に置こうとするとお嬢様が慌てて止めに入ってきた。
    「これでいいから……」
     もじもじと恥ずかしそうな仕草をしながら俺に近づいてきた。
     正面からの着替えが始まろうとしている。これは、青春男にとって精神的に危険な状態に陥るので、危なくなる前に対処することにした。
     近づいて来るお嬢様の肩に軽く手を置いた。そして、俺から正面が見えない状況を作り出した。
     早くしろと催促するかのように両手を上げた。
     これが最後だと願いながら腰辺りに手を当てて服を掴んだ。俺の理性が保てるうちにいと思いに服を脱がした。
    「きゃあっ」
     可愛らしい声が聞こえた。
     こんな声を聞くと男の本能が呼び出されてしましそうな気がする。
     上の下着を身に着けていないらしく女として危ない姿になってしまったような気がするがお嬢様には、恥じらいが無いらしく隠す様子もなかった。
     もし、前を向いて着替えをしていたらと考えると顔から火が出そうなくらい熱くなった。
    「そんな声出さないで下さい。今、精神的に大変な状況なのに……」
    「刺激に弱いのね!」
  • 20 轟雷 id:hz8CcGl1

    2012-03-17(土) 20:30:51 [削除依頼]
     何故か嬉しそうだった。お嬢さまの考えることは、分からないし今は、考えたくなかった。
     次は、どうするか迷う。下かそれとも上を着せるか迷った。
    「早くしなさいよ……私これでも恥ずかしいからさぁ、出来るだけ早くしてよ」
     怒っているか、恥ずかしいのか、それとも嬉しいのかどの様に受け止めてよく分からない。普通は、嬉しくないと思うので適当に受け止めた。
     恥じらいがあると言っていたのに何故か、後ろを振り向こうとするお嬢様を振り向かないようにしないといけない。
     着ていた服を下に置き俺が選んだ服を着せると難易度が高いものに挑戦することにした。今思えば、昔はよく着せてあげていたけど歳を取るにつれてあまりなくなっていた。これは、一般的にごく普通なことだと俺は、考えているがお嬢様だけはそう考えていなかった。着せてもらうのが普通なことだと勘違いしているのだ。
     この服いやドレスに近い物は、上から着ると大変なことになると今更気が付いた。
    「すみませんが片方の足を上げてくれませんか」
     お願いすると素直に片方の足を上げてくれた。そこからは、簡単に着せることが出来たので安心していた。
     これで終わったと思ったのでお嬢様から離れよとすると
    「待ちなさいよ! 下の服まだじゃないの」
     怒っているつもりかもしれないけど可愛い、すぎて全然怖くなかった。
     仕方ないと思ったがスカートの下から手を突っ込むのは、いけないのではと疑問を持った頃にはすでに遅かった。
    「――ッ」
     唾を一気に飲み込んだせいで咽てしまった。
     お嬢様は、俺の手を強く握り……
    「何するんですか! さすがにこれは……」
    「何か問題あるの?」
     もうダメだと思った。完全にこの事に対しての罪の意思が感じられなかった。
     少女と思えないほど力が強かった。そのため俺はお嬢様の手から腕を振り払うことが出来なかった。
     今の状況を想像してみて下さい。青春を桜花している男がこんな体験を……
     頭に血が上って何も考えることが出来なくなってきた。本当に頭が真っ白になることなんだと認識させられた。
     動くことが叶わなくなった俺は抵抗も出来ずに、ただされるままにやられていた。
    「抵抗しなくていいの?」
     言葉を掛けられたとき理性が舞い戻って来た。
  • 21 轟雷 id:hz8CcGl1

    2012-03-17(土) 20:31:50 [削除依頼]
    「――ッ」
     今一度この危険な状況を再認識させられた。
     俺のハッとした顔を見たお嬢様は、手の力を抜いてくれた。そのお蔭で距離を取ることが可能になった。あんなことがあったので緊張して、いつまでも近くにいることが出来なかった。
     瞬間的な出来事なので少し息が上がってしまった。息を整えていると怒った顔をしたお嬢様が何やら喋っているようだった。
    「アリア様、何おしゃっているんですか? 上手く聞き取れませんのでもう少しはっきりと喋ってください」
    「………、………………。……………?」
     突然眩暈が襲ってきた。
     どうしてか、言葉が聞き取れなくなっている。
     体を支えることさえ真面にできなくなっていた。
     変な感じがしている額を触ってみるとドロッとした何かが手にへばり付いた。
    「何で今、副作用が出て来るんだよ」
     副作用、突如体から血液が汗の様に出てくる謎の症状で最近までは、無かったのに異変も無く訪れるなんて記憶がある中では、初めてのことだった。
     手に着いた物は、真っ赤な鮮血だった。俺自身が謎の多い人なので他の人に触らしてはいけないと思う。危険か危険じゃないかともなく触ってはいけない気がした。もし、お嬢様が触ったらと思うと気が気ではなくなる。一刻も早くここから立ち去ろうとしたがこの部屋の唯一の戸が閉鎖されているため出ることが出来ない。
    「お嬢様……離れて下さい。俺に何があっても近づかないで下さいよ」
     釘をさすように念入りお願いした。
     言葉は、通じているようで理解してくれたようだったので少しだけ安心ができる。
     何が起こるか俺でも分からないので、お嬢様から足を引きずりながら離れていくことにした。
     突然な出来事で自分自身でも何が何だか分かっていなかった。
     今、ここで意識を失う訳にはいかなかった。
     堪えろ。
     念じる事しか出来ない自分自身が惨めで悔しかった。
    「ジェ…………が……………ど、…ミ………ね……」
     微かに聞き取ることが出来た言葉だけでは、意味不明だけで何も伝わらない。どうして、そのことに気が付いていなのか不思議でたまらない。
     聞き取れた言葉を足が掛かりにして何を言っているか予想することが可能だが、それだけでは、心もとない。
     外から声が聞こえて来るが何を言っているのか分からなかった。
  • 22 轟雷 id:hz8CcGl1

    2012-03-17(土) 20:32:29 [削除依頼]
     話が付いたのか扉の鍵を開ける音らしい音が聞こえた。外から人が数人入って来るのが気配だけでも分かる。
     あれほど来るなと釘を刺して置いたのに、頼みを無視して駆け寄ってくるお嬢様の姿が霞む視界の中に入ってきた。
     息を切らしている。恐らく過呼吸のせいで息を切らしていると思う。
    「…………し………」
     そして、何も恐れずに心まで包み込むようにしっかりと抱いてくれた。
     言葉にならなかった。
     普通の人は、血を見ると叫んだり逃げたりして大げさに事を扱うがこの屋敷の人たちは、俺の事を本気で心配してくれている。ここまでお嬢様達は、優しかったかと疑問にもなるが今は、しっかりと気持ちを受け取っておこうと思う。
     この症状は、謎多くてよく分からない。自分自身の事なのに知らないとかお嬢様に知られたら恥ずかしくて穴に潜りたくなってしまう。
     突然発作的な副作用に晒されていた過去と違い、この数年は、何事もなく普通に生活していたせいで忘れていたのだ。
     普通の人間を辞めたことの意味と自覚が無くなっていた。
     今悔いても仕方ない、これを止める何かを探さないといけなかった。
     動くことの出来ないほど痛む体に鞭を打って強制的に動かそうとしてみるが力が、いつものように入らず動けなかった。
     もう一つ動けない理由があった。それは、お嬢様が動かさまいと言わんばかりにしがみついているからだった。今の俺は、何も出来ないただの愚かな人外にすぎなかった。
     不甲斐ない俺が嫌いになる。

     ――大丈夫だから、何も考えなくていいよ。私が守ってあげるから――

     昔にもこんなことがあった気がする。しかし、そう言ってくれた子の特徴が記憶に靄がかかって明白には、分からないけど今の状況と似ていたような気がしていた。
    「フィン……会いたいよ」
     懐かしい響きだった。覚えていないはずの名前を口走ってしまった。
     体軋むことが聞こえるかと思うほど強く抱きしめられる。これがどの様な意味をあらわしているか分かっていった。
     目の前に泣きそうな子に何も言葉を掛けられない。
     お嬢様は、涙を必死に抑えて堪えている。
     こんなに可憐な少女を泣かした最低な一人なりたくない。だが弁解しようとも思わなかった。
  • 23 轟雷 id:hz8CcGl1

    2012-03-17(土) 20:32:59 [削除依頼]
     昔の事は、覚えている範囲で全て伝えてある。
    「――ジェン、私の事好きになってよ! 何でもするから、だから、だからお願い」
    「どうして泣きそうな顔で訴えてくるんだよ。俺は、俺は、お前に相応しくないのにどうして心残りを作らせる様な事を口走る。ここに居てはいけない存在だと分からないのか?」
     過去を知ってもなお俺に執着する意味が分からない。過去を殆ど教えず得体の知れない存在の俺をここまで好いてくれるのか理解できない。
    「そんなの違うよ」 
     自信なさげに不安な気持ちを混ぜながら小さな声で囁くように呟いた。
     続けて――
    「私は、ジェンが必要なの。たとえ普通の人でなくても必要としている人がいるならそこに留まるべきだよ」
     心に響く声だった。
     いつの間にか普通に言葉を聞き取れるし眩暈を無くなっていた。あの時の痛みが嘘なのか様に消えていた。まるで夢の様に忘れ去っていた。
    「分かったよ。特別なことが無い限りアリア様から離れませよ」
     何もしていないのにボロボロな体を動かして立ち上がり部屋を出ようとする。すると、ミュラ姉が安心しているかのような顔をしてため息を付いていた。部屋から出ていこうとする俺を引き留めずにいてくれた。
     とにかく朝からいろんなことがあって大変だった。
     疲れ果てた俺は、自分の部屋に戻って行く姿は、少し男前に見えていて欲しいと願って歩いて行った。
     誰も来てくれない事を刹那なる思いを込めて神に願うように目をつぶった。すこし気がかりがある。騒動があった後に、お嬢様が朝食をしっかりと取っている心配になるが他の人を信じて闇に沈んでいった。
     屋敷の中で最も人気が無い廊下には、人が倒れた音が虚しく響いた。

     第二章 修羅場
  • 24 轟雷 id:z3i2Euf1

    2012-03-20(火) 11:33:55 [削除依頼]
     第三章 髑髏に狩られる少女

     箱舟が最初に落とした都市『ローゼル・ヴァイル』に一人の少女がいた。
     都市の上空は、禍々しく分厚い雲に覆われていた。そのため地上は、生物が生活することが叶わないほど汚染された土地に成り下がってしまった。
     瓦礫や焦げた木片がこの一辺覆い尽くしている。探せば人骨が見つかるかもしれないが探そうとする者は、むろん誰もいない。
     空気は、箱舟に放たれた毒素により耐性が無い限り数分で死に至るほど強力な毒だった。この毒は、甘い薔薇の匂いがする。この匂いにつられてこの土地に来たものは、死亡している。都市の近くで行方不明になった者の殆どは、死臭を放ちながらこの土地で朽ち果てていくのを待つしかないと言われているがこれが、真実か誰も知らない。
     知らない者が増えていくと、この土地の事を世界が忘れようとしていくのだ。
     十四年も経つと人々は、忘れ果てて惨劇を無かったことにしている。これが人間の本能。自分自身を守ることに執着した人々は、汚染地域から逃げるように離れていく。近くに残ろうと思う人間の殆どは、未練を垂れ流しにしている者しかいない。
     そう、少女は、未練がある者の一人だった。
     金色に光り輝く髪を毒に汚染された風に靡かせながら、真紅の瞳で遥か彼方を見通していた。
     一歩廃都に足を踏み入れると甘い薔薇の匂いが鼻をくすぐる。
     毒が体に入り込み汚染しようとするがが特に問題が無いく呼吸が出来る。昔は、もっと酷く過酷で危険な毒に苦しめられていたからこの程度毒は、無に等しかった。
     歩くたびに何かが砕ける音が心に沁みた。
     あの日の記憶と気持ちを踏みにじっているようで嫌な気持ちが溢れてくる。
    「あの人に出会うまでは、死ねない」
     厚い雲が渦を巻き大気が普段の様子と違ってピリピリとしていた。嫌な予感がした直後、轟ぉぉおおおおおおと空気を震わせながら、轟音と共に稲妻が大地に降りそそいだ。大地は、稲妻の影響で大地が揺れ崩れて、瓦礫や死体が奈落に堕ち飲み込まれていった。
     その影響で、物が動いたので大地に停滞していた悪臭や死臭が舞い上がり毒素と混ざった。合わさった匂いは、鼻の粘膜が溶けるかと思うほど強烈な刺激臭と変化し少女をおそった。
     慌てて鼻を抑えるが、既に遅く抑えても殆ど意味が無く抑えることを止めた。
     こんなに苦しいとあの時の事を思い出してしまい、今すぐにでも彼に会いたくなってしまう気持ちを抑えきれなくなりそうだった。
    「誰に会うためだって? この俺から逃げられると思ったか」
     突如、黒いボロ布を纏い髑髏の仮面を付けた女性が現れた。
     何処からともなく鎌を出した彼女は、甲高い声で蔑むように笑ってきた。
  • 25 轟雷 id:z3i2Euf1

    2012-03-20(火) 11:34:29 [削除依頼]
     腹を立てた少女は、仮面の男同様に二丁拳銃を取り出しすぐさま殺気を放ちながら構え警戒しながら距離を取った。
     風が二人を監視するかのように収まった。風が無くなると刺激臭がその場に停滞するので時間が経つにつれて濃くなっていく。
     髑髏の仮面を付けた人の名前は『デュクロス』そう初めに名乗っていた。
     デュクロスは、彼と別れた直後に出会った。その時は、生きることで精一杯だったので、とある契約をしてともに過ごすことになった。
     初めは、優しく我が子の様に接してくれていた。だが、ある日を境に態度が一転した。
     私が研究者の遺物と知った時から物としか見ず扱いも酷くなっていった。
     それが嫌になったので逃げだした。逃げ出し捕まり何回も繰り返しているうちにデュクロスは、遊びにと変えていった。
     ある時、勝負を持ちかけてきた。ルールはすごく単純で分かりやすかった。
     ――私をこの手で仕留め、栄光の自由を勝ち取れ――
     それだけだった。
     初めは、簡単だと思っていたけど年月が経ち知恵が少しずつ付いていくと愚かな勝負だと思い知らされた。
     デュクロスは、最強の魔術師と謳われていた人だと知った。
     その時から、負けまいと魔術を学んだ。
     真影術と魔術の掛け合わせて新たな分野増やすために何度も戦いに挑みそして敗北していく日々を過ごしていた。
     ローゼル・ヴァイルに鍵があると思い何度か通ったが特にめぼしい情報は無かった。
     だが進展がなかった訳では無く小さな希望を見つけることが出来たのだ。
     それは、新たな分野『真魔影術』として今までに考えられていなかった方法だった。
     武器を動力に改造して魔術と影を組み合わせた結石を組み込むことで完成する分野だった。
     もともと導力は、魔法の才能が無い物に合わせて効力よりも発動を優先して作られた物だった。しかし、新しく作った物は、才能がある者がより力を発揮するために作られたもので扱うのが難しかった。
     他にも問題がある。
     結石の純度を今まで以上に高めないといけなかった。ただでさえ結石は、高く品質が良い物を買うとなると一つ買うだけで一ヶ月分の生活日が飛ぶほど高かったのだ。
     そうなると己で作るしかなかった。普通の作り方は、知らなかったため今まで買いためた結石を一度魔法の力で溶かし影の力と合わせて異物を弾き出しながらゆっくりと密度を高めながら固めていった。一つ作るだけで三日の月日が掛かる。これが正しいのか分からないが信じて作るしかなかった。
  • 26 轟雷 id:z3i2Euf1

    2012-03-20(火) 11:35:16 [削除依頼]
     完成したばかりの結石をはめ込んである銃を構えた。
    「私は、彼に会わないといけないの! だから、ここで死ぬわけにはいかない」
     この銃で使える魔法は、影と氷結を掛け合わせた強化弾だけで今は、他の魔法を使うことが出来なかった。
    「――零影弾波」
     はめ込んである結石が、淡い光を放ち銃口に光が集まり陣を形成している。発動条件が難しい高等魔法をこうも簡単に扱うことが出来るなんて夢を見ているようだった。陣が完成すると銃の側面に煉獄の文字が刻まれていった。
     人が解読することが許されていない特別な文字、それを扱うことは、煉獄の魔術を扱うこと等しいことだった。
     数秒で完成した新系魔法これの魔法を扱うことが出来るのは、彼女しかいない子も知れない。たとえ、全ての魔法を知り尽くした人にでも限界があることを示したかったのかもしれないのだ。
    「この程度の法撃で倒せると思ったのか?」
    「そんなの関係ない」
     心を無にして引き金を引くと文字が輝き結石が神々しい光を放った。銃声の振動で空気を切り裂きながら標的を目指して進んでいった。
     普通の人間には、止めることが出来ないが止めてしまうのがデュクロスだった。
    「――断撃空破」
     銃弾が届きそうなとき指を鳴らした時、目視出来ない障壁が現れて攻撃が弾かれてしまった。
    「――ッ」
     デュクロスとの間合いを考えて法撃で応戦しつつ隙を探していた。全ての攻撃は、断撃空破によって防がれてしまった。
     どれだけ撃っても弾丸が尽きることが無い。しかし、撃つたびに疲れて威力と命中率が下がっていく。
     数発撃っただけでも額に汗が滲み出ている。試作段階の魔法を使うしかなかった。
    「これで終わりなのか? フィン」
    「その名前で呼ぶなぁあああ」
     頭に血が上り考えなしで魔法を使ってしまった。
     散らばった殻薬莢が淡い光を放った。まるで仕組まれた様に陣を描いていた。薬莢から溢れ出るように輝く光は、仲間を求めているようだった。
     少女は、獣の様な鋭い瞳でデュクロスを睨みつけ、囁くように外文詠唱を唱え始めた。
    「我、血を捨てた者なり。その代償と呪いに敬意を払いて、呪われし閻魔からの力をこの場に示せ――」
  • 27 轟雷 id:z3i2Euf1

    2012-03-20(火) 11:35:52 [削除依頼]
     これは、禁忌の言葉。唱えた者は、生きた時間と記憶を削ると知られている。これからの時間を、永遠に呪われるという代償が最低条件と言われている。そんなことを気にしないで、使っている彼女は誰からの見られても無謀としか見えないと思う。
     薬莢が陣の代用となり魔法がついに完成した。
     陣の中心から淡黄色の炎に、晒されている棺が水に浮かんでいるかのように浮き沈みしながら現れた。棺には、人の読めないほど細かな字が書かれていた。
     棺は、獣もが唸るような音を立てて何かを、解放するかのように開いていった。
     血吐を吐きながら叫ぶそうに詠唱を続ける。
    「――光、炎、雷の霊を拒絶しつつ力を与え、深影なる力を掲げ地獄の果ての扉を導いて開け」
     棺の中は、淡黄炎の光で凝視することが出来ない。
    「中級の煉術を使ったのか? 何をやっている。その魔法は、効力と代償が最も釣り合わないと言われていると知っているだろ? 俺の所有物のくせに何をしてくれたぁあアアアアッ、フィン!」
     時間は、待ってくれない。棺から光が失われると中ら二つの漆黒の結塊だけが、棺の中に取り残されていた。
     結塊を棺から持ち出すために、陣の中に足を踏み入れると殻薬莢が天に刺す勢いで、強い光が視界に飛び込んできた。
     さらにもう一歩進むと、結塊が拒絶しているかのように淡黄色の火花が飛び交う。
     必要としたものを作り出す特別な魔法。これの魔法を使いたくないとデュクロスが、言っていたような気がする。
     火花は、炎と変わり身を喰らい付く様に淡黄炎が襲いかかって来る。
     理性を失いつつあるデュクロスは、普通に鎌を構えることが出来ていないようだった。自分自身もこの異常事態に気が付いているようだった。鎌を手からすり抜けるかのように手放し、新たに違う物を取り出したようだった。
     取り出した物は、魔導支援装置通称導力と言う物だった。
    「これで、お前を捕まえてあの頃に戻してやる」
     完全に狂っていうようだ。
     導力にはめ込まれた結石は、眩い光を放ち、導力全体を包み込んだ。
    「――雷鳴逆鱗」
     魔法を唱えると空に浮かぶ黒々とした雲が龍の様に蠢き、稲妻を溜め込んでいるように見えた。
     手をスーッと静かに上げると唱えた時よりも空が騒がしくなっている。
     一瞬目が眩むほど強い光が目を刺した。あまりにも強い光で雲に覆われているはずのこの場所が、箱舟襲来のときの様に零れ日が額に差し込んだ。
  • 28 轟雷 id:z3i2Euf1

    2012-03-20(火) 11:36:19 [削除依頼]
     箱舟が毒と共に放出した聖粒子の事を思い出した。
     聖粒子とは、現代の錬金術に必要不可欠な物質であると同時に、人体を粒子化させる副作用があること発覚した。聖粒子が人に与える物が大きい反面、過ぎた力を使い続ける人間に罰を与えるように体を分解していく。
     昔の錬金術師は、この粒子を使わずに源血と同等の罪と考えられている賢者の石の力を使って行って軌跡を起こしていた。賢者の石を作成にあたって、必要な材料があった。その材料とは、人外の魂魄だった。
     それを手に入れることは、今の錬金術の理から大きく外れているため、誰も知る者はいない。
     そのため、聖粒子に頼るしかなかった。
     その考え方が生まれたのは、箱舟との聖戦が原因と考えられていた。当然昔の人々は、粒子化の事を知らずに使い続けていた。しかし、ある事件が起こった後に全てが一転した。
     真影術師を作るのに、必要とされていた源血の作成に関係していた。
     源血は、神話に近い物質だった。それを作るために必然と考え付くことだった。
     最古の錬金術師と最強の魔術師が、作り出した本に書かれている殆どは、現代の魔法と錬金術で、作り出したり使用することが不可能な事ばかり記されていた。本に記されている、源血を作り出すには賢者の石に匹敵する強大な力が必要だった。今の時代、人外の魂魄を手に入れることは不可能だった。そんな絶望している人々に、天が嘲笑うかのように毒と聖粒子をばら撒く。
     初めは、毒に汚染されて死んでいく者ばかりだったが、ある時を境に毒で死ぬ者が居なくなり生きる事を願い始めた。
     その願いに応えるかのように、聖粒子が天使の姿になって人々の前に現れた。
     天使は聖粒子の塊だったので、凡人が近づいた瞬間粒子となって消えていく現実を見た人は、毒に次ぐ新たな兵器だと思い込んだ。
     殆どの人々はそう考えたが、現錬金術の長『レイディー・ワルス』は、そうと考えなかった。
     考え方違う者は、レイディーだけだったかもしれない。
     レイディーは、天使から聖痕を貰ったと誇らしげに言っていた。そのころから聖粒子が錬金術に必要だと考え初めて考えられ始めていた。
     記されている錬金術を行うためには、等価交換と厄介な手順を踏まなければいけなかった。源血を作り出すためには、人の魂魄が幾つも必要だった。しかし、レイディーは、等価交換と言う絶対的な存在を無視して軌跡を起こそうとした。
     その結果は目に見えているようなものだと思っていたが、想像を凌駕するものだった。
     体の粒子化だった。昔の人から見たら聖痕を受け入れたレイディーは、粒子化しないと思い込んでいたが、その考えは浅はかだった。
     今となれば原因を発見できるが、聖戦中だった頃には恐らく考え付かない事だったと思う。
  • 29 轟雷 id:AzxqOUb/

    2012-03-21(水) 23:58:41 [削除依頼]
     等価交換を無視して軌跡を起こすことは出来た。しかし、それを続けると、人体に影響が出るとは誰も知らない。
     過ぎた力を使い続けたレイディーは、左を粒子に汚染されて消えてなくなってしまった。
     その代償としては、多くの源血を作り出すことが出来た。
     聖戦を終わらした黒々とした雲は、源血を空にばら撒き魔術で構築し、源血の力で箱舟を封印したと世間に発表した。
     今、封印に使用されている雲を使いデュクロスはとある魔法を発動させようとしている。まるで力に共鳴しているかのように、雲の隙間から神々しい光が放たれている。
     刺すような強い光で辺りの影と闇が存在ごと掻き消されてしまった。
    「我、雷を操作する者なり。その姿と力を世界に知らしめろ――電光飢餓」
     雲から漏れる光は、雲に飲まれるように跡形もなく消えてしまった。
     不発? そう思えてきた。だって、せっかく発動したかに見えた術が、もともと何も無かったかのように力を失っていくからである。
    「ふ、不発だよね……」
     そう思いたかった。
     でも違った。危険の知らせているのか、大気が怯えているように震えているような感じがしてきた。あくまで感じ、これは大気ではなくて体がそう思っているかもしれない。
     あらゆる事を考え、本能を必死に抑え否定する物事さがした。
    「大丈夫、しっかり発動しているから。体が教えてくれているでしょう?」
     この言葉が心に冬をもたらした。
     空に飲み込まれたはずの光が、強さと神々しさを増して、雲の薄い部分から溢れ出てくるように輝きを増していった。
     光を見ていると、ふと我に返らせられてしまった。他ごとに気を取られていい時ではなかった。一刻も早く迅速に、結塊の元に行き確保する必要があった。
     ただでさえ不安定な陣で作り出した棺は、いつ煉獄に帰ってしまうか分からない。今まで煉獄の力を使おうとして、命を落としたものは数えきれないほど居るとされている。命を落とす殆どの人は、煉獄の掟又は契約を破った者だと噂されていた。だが、実際に知る者はいない。現実問題として、何も分からに事こそ最も怖い事かもしれない。
     煉獄の陣の中に居る。
     ここで陣が崩壊したら間違いなくあちらに堕ちる。
     早く進みたくても淡黄炎が行く手を阻み容易に進むことが叶わない。
     襲いかかてくる炎は、零影弾波で屈服させるかのように影氷で閉じ込め、害を与えることが出来ないように時間制限つきで封印した。
     いくら凍り付けに封印しても、火種自体を完全に凍り付けにするのは不可能だった。
  • 30 轟雷 id:AzxqOUb/

    2012-03-21(水) 23:59:08 [削除依頼]
     何故かそれほど時間が経っていないのに、大気に見たことが無い白い物質が混ざり始めていた。これを見た瞬間確信した。
     術の完成が近いことを。
     急ぐ必要がある。術が完成した事は良い事だが、煉術は完成した瞬間から術者を落とすために術周辺が崩壊するからである。
     陣事態が小さいため、思っていたより簡単に中心に出現した棺にたどり着くことができた。
     近くで結塊を見ると、中に何かが隠されているようにも伺うことが出来た。それを取り出すことは、現在の残る力では出来ない事は明白だった。なので、仕方なく大きな結塊を無理ありに抱え込み抱き棺から離れた。
     力の源を失った棺は、空にも負けない大きな光を輝かせ大地に波紋を立てて沈んでいこうとしていた。
     それに、飲み込まれないように走るが当然間に合うことは無い。
     覚悟を決めるときが来たのかもしれない。
     天空に目を向けると、龍の雄叫びの様な轟音を響かせながら、膨大な量の雷を貯め落す頃合い定めていた。
     結局どちらを選んでも、危険で死ぬ確率が殆ど変らない事を知った。
    「っくそ、ここまで来て……どうして」
     嘆いている暇などなかった。でも、ここまで希望を打ち砕かれてしまったら誰もが絶望したくなると思う。
    「諦めなよ。穢れた力を使うくらいなら、戻ってきて楽になればいいのにさぁ」
    「嫌だよ……それだけは、嫌だよ」
     可能性がどちらとも無くても死にたくない。まだ、あの時別れた彼に会うまでは、生きていないといけない。
     そう心に暗示をかけるように唱えた。
     煉獄に飲まれないように、息を止め風の抵抗を最小限にして命がけで走った。それはまるで、風を切り裂く鼬の様に高速に走った。
     その頑張りのお蔭か、足場が悪くなっていた陣から何とか脱出することが出来ていた。
     波紋は、陣の外まで侵食していた。
    「考えが甘かったみたいだね」
    「――ッ」
     デュクロスの言う通りだった。図星の中の図星と言ってもあながち間違えでないと思えてきた。まぁ、心の問題だから今はどうだっていいのだけど。
     そんな事よりも目の前の事の方が重大だと思う。いや、絶対誰が見ても重大だと思えると思っている。
  • 31 轟雷 id:AzxqOUb/

    2012-03-21(水) 23:59:39 [削除依頼]
     何故かって? 下手をしたら、恐らく命を落とす可能性があるからだ。
     このまま走っていても、助からない事が目に見えていた。だから、使いたくない力を使うことにした。
     でも……いいのか? あの力を。
    「何考えている? 足の動きが鈍くなっていないか?」
     心の中では、分かっている。でも、でもあれだけは、あの時彼と二度と使わないと約束したのに……どうすればいいの。
    「レン。ごめんね……約束破って」

     ――昇華・神鏡風魔――

     心の中で罪を叫び祈るように唱えた。
     すると、重く硬い結塊に異変が生じ始めた。結塊に罅が入ったのだ。
     自分の持ち物に気を取られるわけにもいかなかった。だから、気になっていても心に嘘をついてでも無視をし続ける事を決めた時でもあった。
     早くも術の発動を感じられてきた。
     付近の影という影が紙みたいに物から離れていく。向かう先は、当然少女の元だった。
     紙切れみたいになった影は、少女の太股から下全部を覆いつくように張り付いていった。
    「まさか、昇華を使えるようになっているとは……少し驚いた。禁忌の煉術、新たな魔術そして昇華までも使えるとは、完全の存在に成りつつあるようだフィン。だが、あいつは、どうだかな」
    「あんたに、関係ない! 私がどんな力を使おうと関係ないでしょう!」
     高みの見物をしている、デュクロスに向かって罵声を上げた。
     体に影が馴染むと初めて力を使うことが出来る。
     全身の力を抜き心に沈黙を与えると、金色の髪が脱色して銀色に変わっていく。変化は、まだあった。影が淡い萌葱色の光を放っている。
     宙に浮く体に再び力を入れ直すと淡い光が眩い光に変貌した。
     地に片足を付けると、力の反動なのか波紋を立てている地面減り込み岩盤を砕いた。
     再び宙に浮くと足の裏辺りに萌葱色の陣が浮かびあがる。それを軽く触れると、想像絶する速さで空間を切り裂くように過った。
     瞬間的に波紋に侵食されている地面から脱出することが出来た。
     何が何だが分かっていないデュクロスは、唖然としていた。
    「煉獄から逃げても天空の惨劇が残っているぞ!」
     その通りだった。煉獄から逃げても強化された雷撃が残っている。
  • 32 轟雷 id:kMSTTTJ1

    2012-03-23(金) 10:30:21 [削除依頼]
     静かにしていた天空は、煉獄から逃げ出したことを知ったのか雲から青藍の光が漏れている。光が漏れても轟くような音はしなかった。
     デュクロスが唱えた強化詠唱は、いまだその存在価値を見いだせていなかった。
     岩盤を破壊しながら距離を詰めていくが、今まで以上に冷静で慌てる様子が全く見られなかった。そんな様子を見ているだけで、心の中に何か嫌なものが湧き出てくる。
     それでも負けずに超過速繰り返していくうちに、全身に今まで体感したことが無いような圧力が掛かり始めていた。
     そして、耳障りな何かが砕ける音が耳元に囁いた。
     空に異変は特にない。進んでも、進んでも距離が縮まらないと感じ始めた時にはすでに遅かった。
     当然違和感を感じている。
     空から青藍に染まった何かが、ぽつぽつと降り注ぐ。
    「あ、あめ? でも、何か違うような」
    「フィンも良い感じだよね。だけど、少し甘かったみたいだね」
     言葉の意味は何となく分かった。けど、実感するまでは少し時間が必要だった。
    「ッあ、ああああ」
     雨が体に当たると、蓄積されている雷が放電し体中のあらゆる筋肉を刺激する。刺激された部位は、普段から使われないものからよく使うものまで全ての筋肉が強張り収縮した。
     そのせいで、体のあちこちが青藍色の雷雨に刺激されて体が曲がらない方に曲がりそうになってしまう。体は、脳から発信される電気信号で動いている。そのため、自然と外からの電気信号でも過敏にも反応してしまう。
     これを防ぐ方法は、今の力では皆無だと思う。
     体の自由が奪われてしまい最悪な状況で、片足を地面に触れたとき体が力に負けて転がってしまった。普通の転がるとは次元が違う。
     着地の瞬間足首に嫌な音がして違和感を覚える。そのあとは、抱えていた結塊をどこかで手放し、五回ほど転がり最後には岩壁に全身をぶつけて止まる。
     これによって、体に傷という傷が露わになっている。擦り傷からは、血がにじみ出ているが痛みは殆どない。
    「――ッ」
     体の自由が無いのなら取り戻せばいいだけだった。
     方法は、ひとつだけある。
     雨に触れないように、全身に影を纏えばいいだけのことだ。でも、それも現在の限りなく少ない魔力では無理な事だった。
     それでも、何もしない訳にはいかない事は重々と承知していた。
  • 33 轟雷 id:kMSTTTJ1

    2012-03-23(金) 10:48:01 [削除依頼]
     足だけは影を憑依させていたので、さほど不自由が無いが憑依していない所は雷雨の性質で痺れて上手く動かせない。
     今は地に這いつくばる事しか出来ない自分が、やはり惨めでどうしようもなく悔しかった。
     拳に力を入れる事すら出来ない最悪な状況下、そんな状況に置かれても諦めることが出来ない歯切りが悪い自分がいた。
     そして終わってもいない戦いの後悔を始めてしまった。
     もし、デュクロスが強化詠唱をしていなかったら勝機があったかもしれないと考えてしまう。けど、起きたことを気にしていたら先に進めないと分かっていても気にしてしまう。
     影を纏うことに集中したくても、普通じゃない異物な雨のお蔭で全く集中が出来ない。
     高みの見物をして楽しんでいるデュクロスは、落とした鎌を拾うために大きな隙を見せつつ攻撃して来いと言わんばかりに堂々と屈んだ。土で汚れた鎌を手に取り、定置に置くように刃を地面に突き刺した。
     そして、詠唱を始めた。
    「魔境果てに存在する力に怪我されし世界と過ぎた行いした者に、聖天からの怒りを、身に感じ罪を懺悔し罪深さを知れ――呪縛源波――」
     囁くように唱え終えると雨が止み源血で作られた雲は、霧散して無くなり空が晴れていく。
     体の主導権を奪っていた雨は、止み楽に体の主導権を容易に取り戻すことが出来た。
     しかし、ただで返してもらったわけでは無さそうだった。
     先ほどは、雲の隙間から神々しい光が漏れていたが、今の空の殆ど雲がなくなり快晴で清々しかった。
    空を見ていると違和感があった。よく見ると薄く淡い空色で記された陣が張り巡っていた。
    「やっと半分の封印が解けた。あとは、彼だけだね」
     かつての面影は全くなくなって、違う存在感と威圧感を放っている空に気を取られてしまい凝視してしまう。
     陣に記されている文字は見たこと無く読むことが出来ない。読もうと、一生懸命空を見上げていても何も変わらない。そんなに時間が経っていないのに首が痛くなってしまった。
     デュクロスが言った言葉の意味が分からない。どうして後悔するのか理解できないが、知りすぎる良いことが無いことは熟知している。
     暢気に空を見ているだけではいけないようだった。
     空に展開されている陣は、目視が難しいが微かに輝いているのを確認することができる。
    「さぁ捕まって、彼の元に連れて行きなさいよ」
     不吉な事を口走る。
     悪寒が背中をよぎったせいか身震いした。
    「ダメ……。あなたに彼を会わせるわけにはいかない」
  • 34 轟雷 id:kMSTTTJ1

    2012-03-23(金) 10:48:37 [削除依頼]
     戦闘を繰り返すと、お互いの手の内が手に取るように容易に分かってしまう。だから新たな術を考えてしまう。
     いつしか術のお披露目会みたいな感じになってしまっている。今日は、いつもの雰囲気と違って殺気が混じっている気がする。
     気が付けば、纏っていた影が体から離れてしまっていた。
    「頑固だね……ほんと。なんで合わしたくないの? 別にこの天空の封印を解くだけなのに」
    「だから……もう、それが駄目なんだよ! 彼は、私と違ってレンさんから解けないように呪縛に近い呪いを受ける契約をしているんだよ。内容は知らないけど」
    「フィン、残念だね。私は、知っているんだよ」
    「はぁ? 何で私より長く一緒に居ないあんたが彼の秘密を知っているんだよ! 私にも教えてくれなかった秘密を……ねぇ!」
    「別にいいじゃないか。せっかくだから、最後までつまらないこの茶番に付き合っていあげているよ」
     頭に血が上る。冷静でいなければ、助かる可能性がある戦いでも助からなくなることが分かっていても心を沈めることが出来ない。
     再び下半身に力を込めると影が、紙切れの様に薄い膜が集まって来る。ほんの数秒で影を纏い萌葱色の輝きを取り戻した。
     人間離れした力で地を蹴ると、陶器を地に叩きつけるようにいとも簡単に砕け散ってしまった。砕け散った地は、元からあった素質の『氷結』で凍り付いていた。
     空気に含まれる微かな水分を氷結させ、目に見えない足場を作り天に記された陣の元へと向かった。
     強大な力を使うほど、氷結が干渉して不完全で力が合わさった術が出来てしまう。この現象を基にして考えた術が零影弾波だった。
     人外の速さでデュクロス目標に進むので、元からある素質『氷結』の影響で凍り付いた水分が、人体に当たってまるで硝子に攻撃をされているように感じた。幸いとても脆い氷の欠片だったので体に傷が付くことは無かった。
     痛みを堪えながらデュクロス目指しているけど一向に到達する気配が無かった。
    「どんだけ、離れている」
     これが言いたくなるほど彼方遠くに離れている。
     肉眼で見る限りは、そこまでと言わずに殆ど離れていないはずなのに、どうしても近づくことが叶わなかった。
     本当に遠くに感じる。気のせいでは無いかもしれないが、気のせいじゃないかもしれないとあやふやな感じになりそうだった。
    「早く来ないと術が発動しちゃうぞ!」
  • 35 轟雷 id:kMSTTTJ1

    2012-03-23(金) 10:50:31 [削除依頼]
     髑髏の仮面をしている彼女から想像が出来ない可愛らしい言葉が聞こえてきた。
     自分がどれだけ足を動かしたのか、分からなくなるほど氷床を蹴り続けている事に気付き始めたと言うよりも分かってきた。感覚的には、近づいたのかと思うと努力が無に帰る様に遠くに感じる。
     こんな感覚は、初めてで不安になる。目の鼻と先まで近づいたと思うと、突風に吹きさらされて瞳を閉じてしまう。これは、人間の反射として当然の反応でいけないわけではない。だが、この些細な行動が裏目に出てしまったと言いたかったのだ。
     『拒絶』今までの人生は、孤独で自らその道を選んでいた。他を拒絶していたので自分が、他から拒絶にされるのは初めてかもしれない。
     不思議な感覚の中必死に足を動かした。
    「フィン、それ以上あれに近づくと嫌なものを見るよ。その覚悟は、当然できているよね? もし、出来ていないなら、止めた方がいいと思う……後悔する前に――」
     心配と言うよりも呆れた雰囲気を放ちながら忠告するかのように言った。
     それでも諦められなかった。
     あの時の様に後悔して生きてかないためにと心に言い聞かせながら陣を目指した。
     氷床を作り足場を固定してから蹴る。勢いがなくなってきたら次の足場を作り蹴ると地味な作業に近い行動を繰り返していた。
     時間はそんなに経っていないが、同じ景色を見続けると飽きてくるので心の奥底でどうでも良くなってきてしまう。上を見ても特に変化が無い。空と同じ色で、目視が難しいほど薄い陣を見ながら駆け上がっていると、距離感が分からなくなってしまう。当然の事か分からないがついつい「遠い……」と呟いてしまう。
     ふと、右足に力を入れると、足に纏っている影が淡い萌葱色の光を放つ。光が放たれた直後に氷結の力で氷床を作り出し、強く蹴ると硝子細工の様に脆かったので簡単に砕け散った。
     先ほどの蹴りで速さが増したのか風が刃の様に恐怖を感じてしまった。肌を圧迫して切り裂いてきた、それはまるで未だ会ったことが無い鎌鼬に襲われている自分の姿を連想させた。恐怖で一瞬だけ本能的に瞳を閉じてしまった。全身に悪寒が走り去った後、恐る恐る瞳を開くと地上に立っていた。
     唯単に状況が分からず、きょろきょろ辺りを見渡すがやはり今一状況を把握できなかった。
     足元には、知らぬ間に手放していた結塊が転がり落ちているのに気が付いた。拾うたまに屈むと何故か、纏っていた影が霧散してしまい力が抜けてしまった。
     体制を崩してしまい完全に転んでしまう感じだった。
     思ったよりも転んだ時の音が小さかったけど、転んだ時の衝撃で砂埃が舞い上がってしまった。
     当然砂埃は視界を遮って現状を悪化させた。
  • 36 轟雷 id:kMSTTTJ1

    2012-03-23(金) 10:51:11 [削除依頼]
     舞い上がった砂埃は、当然の事だけど粒子みたいに細かくて、微かな光までも反射して光っていた。細かな粒子は瞳を閉じた一瞬のうちに、拡散して全身を簡単に覆いつくして外から姿を見ることが難しくなっていた。煙玉が拡散したかのように広がっていく砂埃は、天からの光を遮り深い霧の中に居るようで距離感と方向感覚が鈍って何処に居るか分からなくなってしまった。それだけでは無く粒子みたいに細かな砂埃は、体のあちこちに入り込み体が何故か痛くなった。
    「もう、十分にやったよね? 諦めて彼の元に行きましょう。そうすれば……」
     話を割り込む形でフィンは話し出した。
    「――嫌だ。絶対に嫌だ! お前と一緒に居たら……二度と普通に会えなくなるかもしれない――そんなの嫌だ」
     親の言うことを聞かない子供みたいな雰囲気だった。てか、それそのものだった。
    「どうしてマイナス思考なんだ? 旅に出ようと言っているだけで二度と普通に会えないと誰が言った」
    「でも……でも、彼に会えてもお前と一緒に居たら駄目じゃないかっ!」
    「彼も旅に誘えばいい。そうすれば一石二鳥だと思うけど……そうだ、良い事教えてあげる」
     仮面を付けているから表情を読むことが出来ないが、声だけ判断できることが一つだけあった。それは、何が何でも一緒に居たという感情だった。
     どうしてかデュクロスの気持ちが手に取るように理解することが出来た。でも、考えている事だけは何故か一向に分かり合うことが出来なかった。
    「何?」
     聞いてはいけない気がするが、知りたいという好奇心の方が強くてつい聞いてしまった。
    「この一帯の天空に展開されている陣は、箱舟が残した唯一の軌跡の証で、心から最も知りたいと願う知識を得ることが出来るロレンズ」
     ――軌跡遺物・ロレンズ――これは、神の遣いである箱舟が現世に残していった軌跡の存在で文字通り遺物である。神だけが使えるはずの遺物を、現世に残していった箱舟の考えはいまだ解明できていない。
     その言葉を信じられないのか、淡い桃色で艶々した柔らかそうな唇をピクピクと震わせ、綺麗な紅色の瞳を大きく見開いて点にしていた。
    「嘘、そんなおとぎ話みたいな物があるはずが……」
     言葉を信じられなかったそのとき、何故か花の甘い香りと共に微風が吹いた。まるでこの地や天いや神までもが本当だと言っているようだった。
     空に手を掲げると、何処かに行方を晦ましていた結塊がそれとなく光を放ちながら天に吸い寄せられように宙にゆっくりと浮かんで行った。手を伸ばせば掴めそうで掴めないもどかしい距離だった。
  • 37 轟雷 id:kMSTTTJ1

    2012-03-23(金) 10:51:46 [削除依頼]
     今まで陣は、無色透明で文字が記された場所のみが惚けていたが、結塊が宙に浮いた時から無色の陣に異変が起こり始めていた。陣は、フィンが纏っていた影と同じ淡い萌葱色の光を微かに放っていが、遠くから見ると違いが分からないかもしれない。
     空が闇に沈んでいく、何事もなくこれが当然だと言わんばかりに沈んでいき光を飲み込んでいった。
    「見ている?」
    「うん……見ている」
     陣が群青に輝き光の欠片が落ちてくる。星の様に綺麗な光の玉は、粉雪の様に儚く名残惜しい暖かさが感じることが出来た。
     光に触れると何かが見えた気がした。
    「な、何これ」
     契約者の心から望む知識と情報を与えることが出来るロレンズの光に当てられたフィンは、完全に地に座り込んでしまった。何か信じられないものを見たようで、全身が震えて強張らせている。
    「何で、彼が女と一緒に生活しているの……私じゃなくて何で知らない女と一緒に居るの? こんなの嘘、そうだ嘘だよ――絶対に嘘こんな事あり得ない。彼は、私の子を忘れて違う女と居るわけない」
     執事服を着た銀髪の少年の姿を見て泣きそうになっていた。紅の瞳に無色の雫が溜り、溢れるまで我慢したのか雨の様に頬伝って地に落ちる。
    「これで信じることが出来るかな」
    「――う、出来ない。この目で確かめるまでは……絶対に」
     小さな声で囁くように答えて何故か空に手を掲げた。
     遠くに佇む廃墟の一角に座っていたデュクロスは、一瞬で距離を詰めてきた。そして、座り込んでいるフィンに優しく手を差し伸べた。
     一瞬だけ戸惑った顔をしたけど、決心したのか差し伸べられた手を取り立ち上がった。
    「約束してくれる? 旅に付き合う代わりに彼を連れ出す手伝いをして……」
     答えは返ってこなかったが、ほんの一緒だけお互いの気持ちが本当の意味で通じ合った気がした。
     フィンの問いに答えるように髑髏の仮面に手を掛ける。仮面に手を掛けたデュクロスの瞳は、何処か寂しそうだった。

     第三章 髑髏に狩られる少女 終
  • 38 轟雷 id:6Fj/Jbx.

    2012-04-03(火) 22:31:30 [削除依頼]

     お知らせ

     何だかんだで、三章までは終わっていましたね。
     改変したところ分かりましたか? 結構大胆に変えた所と、そうでない所で別れていますよ。

     以前に比べては読みやすくなっていると思います。話も目的も自分的に結構明確に出来ていると思います。
     これも評価に出したら痛い目あいますよね? 

     所詮執筆を開始してちょうど一年ですかこの程度ですよ。


     そんな嘆きは、そこら辺に置いといて。


     実は、ここでの執筆活動を一時休止にしたいと思っています。
     討伐の方を見ている方は、知っているかもしれませんけどもう一度書いて置きます。


     修行のため一定期間此処を離れていたいと思います。
     
     それだけです。


     今評価屋もやっていますが切が付いたら止めようと思っています。


     以上。
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