僕は、揺りかご、風鈴は、嘯く、寂しい。9コメント

1 社員 id:OAVugzv/

2012-03-12(月) 21:26:28 [削除依頼]


「いってきます」

夕日が笑った。


「さようなら」

こんなくそったれな世界。
  • 2 社員 id:OAVugzv/

    2012-03-12(月) 21:27:53 [削除依頼]


    「見て」

    言った。誰かが。


    僕は見た。

    蜂蜜みたいな夕焼け空。


    君が笑う。

    瞳に星を閉じ込めて御覧。


    そうすれば、その瞳は輝きを失わないよ。


    お偉いさんが言った。

    銃を持って言った。


    彼女を撃とうか、と言った。


    僕は嫌だと言った。

    そうか、お偉いさんが笑う。


    じゃあ、さようならだね。お偉いさんが銃を投げる。


    カランカラン

    落ちる。


    僕が拾う。

    僕が、僕が。


    「駄目!やめて!」


    僕が、拾えば。

    君を助けられるんだ。


    僕が君の心臓になってあげる。


    にっこり。

    僕が嬉しそうに微笑んだ。
  • 3 社員 id:OAVugzv/

    2012-03-12(月) 21:34:07 [削除依頼]


    りぃん。風鈴が鳴った。
    涼しげで、それでいて優しい夏の便り。


    徐々に覚醒する意識。


    「………………っ!」


    夢を見た。いや、見た気がする。
    鮮明に覚えていないのは何故か、もやもやと心が曇るのは何故か。
    その理由さえ、思い出すことはできない。ああ、イライラする。

    何か、大切なもののような……そう、それはまるで
    忘れてはいけない約束なような物。

    やるせない感じで胸がいっぱいになる。


    ―――やるせない?何を?誰が?

    自分の思いに疑問が溢れる。


    硬い敷布団から上半身を起こして、ガシガシと寝癖だらけの頭を掻いた。
    癖のある柔らかい黒髪が、指に絡まるようで鬱陶しい。


    ――――輝きを……

    ふと、そんな言葉が頭の中に走った。僕はこれを知っている。
    根拠はない。なんとなくだ。なんだ、なんだ、なんなんだ。これは一体……。

    思い出せそうで思い出せない。むず痒い感じ。気持ち悪い。


    思い出せ、思い出せ、思い出せ!

    身に覚えのない焦燥感。


    今すぐにだ!早く!早く!

    何を僕は慌てているんだ。


    早く!じゃないと彼女が!彼女が!

    彼女?誰のことだよ?


    彼女は、君にとっての……


    ―――ブツン


    目を開けると、懐かしい何処か。


    「おかえり」


    君の声がした。


    笑ってた。ありがとう。そう言って。


    思い出してくれて、ありがとう。そう言って。


    彼女は、彼女は―――……


    お偉いさんと一緒に、消えてしまった。


    また僕は、ここでひとりぼっちになる。


    ……また?


    僕は2回目のひとりぼっちなのか?

    僕はひとりぼっちだったの?


    あぁ、なんて蜂蜜は苦いの。

    ポロリと涙が零れた。
  • 4 社員 id:OAVugzv/

    2012-03-12(月) 22:20:42 [削除依頼]


    かごめかごめ 籠の中の鳥は

    いついつ出やる 夜明けの晩に

    鶴と亀が滑った


    後ろの正面だあれ?


    僕は思った。

    何故鳥は籠に閉じ込められたのか。

    何故鳥を囲むのか。


    どうして鶴と亀は滑ったのか。


    彼女は歌った。

    籠目籠目 加護の中の鳥居は 

    いついつ出会う 夜明けの番人 

    つるっと壁が滑った 


    後ろの少年だあれ?


    僕は言った。そんな歌じゃないよ。


    彼女は笑った。

    同じだけど、違うの。そう言ってまた歌った。


    かごめかごめ 籠の中の鳥は

    いつもかつもお鳴きゃぁる(お鳴きやる) 八日の晩に 

    鶴と亀が滑ったとさ、

    ひと山 ふた山 み山 越えて


    ヤイトを すえて やれ 熱つ や(お灸を据えて、やれ熱や)


    同じだけど、違った。

    同じなのに、違った。


    僕は言った。
    どれが本当の「かごめかごめ」なの?

    彼女は言った。
    全部嘘で、全部本当だよ。


    「変なの」

    僕は呟いた。


    「そうだね」

    彼女は笑った。


    僕も可笑しくて笑った。


    「でもさ、」


    彼女がひそひそ話するみたいに囁いた。


    「本当は嘘吐きさんかもね」


    そう言ってクスクス笑った。


    僕は分からなかった。


    「嘘吐きさん?」


    うん。
    彼女は満足そうに笑った。


    だから僕はそっか、と呟いた。
  • 5 二番機 id:KqkJge31

    2012-03-14(水) 21:29:29 [削除依頼]
    おぉ……、これは本当に凄い。
    更新がんばって下さい!
  • 6 社員 id:cf3Nh7q1

    2012-03-16(金) 18:15:36 [削除依頼]

    二番機様>

    そんなお言葉を頂いて
    宜しいのでしょうか…!//
    ありがとうございます、頑張ります!
  • 7 社員 id:cf3Nh7q1

    2012-03-16(金) 18:34:43 [削除依頼]


    彼女はいつもそうだった。

    何かを教えてくれているようで、何も教えてはくれなかった。
    何かを知っているようで、何も知っているとは言わなかった。

    そう、決定的な何かが僕には掴めなかった。


    ――君の名前は?

    一度だけそう聞いたことがある。


    「海の中に捨てちゃった」

    彼女はどこか遠くを見つめて呟いた。


    「どうして?」

    僕が聞く。


    「名前を呼ばれると心臓が痛いよ、って泣いちゃうから」

    そういって彼女は左側……心臓のあたりの服をグッと掴んだ。
    顔は辛そうに歪んでいる。今にも泣きだしそうだ。

    「なんで?病気?」

    「病気じゃないけど……病気かもね」

    ふ、と彼女が笑う。
    悲しそうに、懐かしそうに。


    こんな彼女の表情は初めてだった。
    僕はもう、こんな話は二度としないほうがいいと思った。


    何故だか理由は分からない。

    でも、なんだか僕まで辛いような……そんな気がしたから。


    ―――ブツン


    何かが切れる音。

    意識が薄れていく感覚。


    あぁ、そうだ……また僕は……。

    真っ暗になる瞬間、僕は何かを思い出した気がした。


    ―――瞳に星を閉じ込めて御覧。

    ――――そうすれば、その瞳は輝きを失わないよ。


    ねぇ、どうやって星を閉じ込めろと言うんだい?
  • 8 社員 id:Az8lYzL0

    2012-03-20(火) 14:14:26 [削除依頼]

    遠い遠い昔の話。


    揺りかごは揺れる。

    僕を乗せて。


    軍人さんが笑う。

    元気な男の子じゃないか。

    そう言って笑う。


    手には銃を持って。


    誰かが言った。

    女の人が言った。


    嫌だ、と。

    やめてくれ、と。


    軍人さんは言った。

    「こいつは優秀な兵になるだろうよ」

    そう言ってまた笑った。


    残酷な笑顔だった。

    女の人は泣く。


    必死な声でこう叫んだ。


    「その子を戦地へ行かせたりなんかしないわ!
     私が命を落としてでも行かせはしない!」

    それを聞いて軍人さんは俯いた。

    その姿は確かに笑ってた。

    何も面白いことは無いというのに。


    言いたいことはそれだけか?

    軍人さんが尋ねた。


    もう笑顔はなかった。

    冷たい表情だった。


    女の人は頷いた。

    目が絶望を彩っていた。


    「それは残念。アイツと仲良くおね.んねしな」


    パァン


    弾が飛んだ。

    弾けるように。


    …………。


    女の人は死んだ。
  • 9 社員 id:0gsrC/q.

    2012-04-29(日) 00:43:38 [削除依頼]

    久々にあげます
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