ある日彼女はお空から7コメント

1 保健体育 id:DFEbRJx.

2012-02-26(日) 21:50:58 [削除依頼]
プロローグ 堕ちてきて

七夕といえば願い事だ。

頭が良くなりますように。
サッカーが上手くなりますように。
大きくなったら宇宙飛行士になれますように。

昔はそんな無邪気な願い事を短冊に書いて
笹につるす、純粋な自分がいた。
だけど、やはり大きくなると、人は変わる。
高校生になった今じゃ俺もすっかり変わってしまった。
宇宙飛行士になりたかった気持ちは薄らいでどこかへ消えてしまったし、
大好きだったサッカーも、自分の才能のなさに気付いた頃から、
つまらなくなってきて、終いにはやめてしまった。
変わらない事といえば、成績の悪さくらいなものだろう。

そんな俺が、今、七夕に願うことといったら……。
『今年こそ彼女ができますように』

行動派の妹がホームセンターで買ってきた七夕用の笹に、
くだらない願いが書かれた紙切れをぶら下げて、
俺は、窓から見える星空を見上げる。
彼女が欲しい、なんて願うのは今年で4回目か。
そして結局今年も彼女ができることはないのだろう。
自他共に認める草食系男子の自分が、
恋愛に積極的になれるはずなどないのだ。
恋に飢えた高校一年生の俺は、
流れ星の翔ける夜の空を眺めて、溜息を吐く。
「あー、彼女欲しー」
やりきれない想いが募って、独り言がつい飛び出る。
それが、俺の人生を変える要因になるとは思いもせずに。

「それこそ、空から彼女が落ちてきたりしてくれれば、楽なのに……」

奇跡が起きたのはその発言の数秒後だった。
  • 2 はるこ id:fKXGZA6.

    2012-02-26(日) 22:22:13 [削除依頼]
    かわいい題名に釣られて>1で爆笑しました。 やばいです、ハイセンス!! それともしかして…………。 いや、何でもないです。 めっちゃ面白くなりそうですね! 応援してます^^
  • 3 保健体育 id:DFEbRJx.

    2012-02-26(日) 22:27:39 [削除依頼]
    星空から視線を逸らそうとした瞬間、瞳の端に黒い影が映った。
    なんだ、今の……?
    慌てて窓の外に目線を戻し、俺は正体を見極めようとした。
    結構なスピードを伴って落下運動を続けているそれは、生き物だった。
    回転しながら、能動的に暴れている様子を見ると
    物体でないことは確かだ。
    カラスか何か、大型の鳥が急降下でもしてるのだろうか。
    最初はそう思った。
    だけど、窓の外に見えた落下物の形状が明らかに、
    鳥の類ではないことに気付く。
    というか、むしろ、
    「えーっと、人間?」

    ここにきてようやく悲鳴が聞こえる。
    風に流されながらも途切れ途切れに聞こえる、
    甲高い、女の子の声。
    「お、おいおい……嘘だろ? マジかよ……」
    血の気が引く。
    心臓の鼓動が早くなる。
    何故、女の子が落下しているのか、その経緯は存じないが、
    一つだけ分かることはある。
    あんな高さから、あんな速さで落ちたら、
    まず助からないということ。
    それだけだ。
    その時、窓から見える範囲内から少女の姿が消えた。
    窓を開けて、身を乗り出すも、
    地上の闇に吸い込まれた彼女の行方は分からない。
    もうアスファルトに叩きつけられ、
    単なる肉塊と成り果てているかもしれない。
    俺は呆然と窓際に突っ立っていた。
    こういう時どう行動すればいいのか、全く分からないのだ。
    家族に相談しようにも、両親は妹と最近できた近くのデパートに
    ショッピングをしに出かけてしまっている。
    夕飯を食べて帰ると言っていたから、もうしばらくは帰宅できないだろう。
    なら、どうしよう。
    110番? それとも救急車?
    救急車ってどう呼ぶんだっけ。119番?

    興奮しているのか、混乱しているのか、
    とにかく思考がまとまらない。
    とりあえず、突っ立っている現状からは脱しようとした結果、
    俺は何も考えずに、携帯だけ持って家を飛び出していた。
  • 4 保健体育 id:DFEbRJx.

    2012-02-26(日) 22:32:21 [削除依頼]
    はるこs
    こんばんわです
    爆笑ですか、マジですか、ありがとうございますw
    期待に応えられるように頑張りまっせ
  • 5 保健体育 id:.V4RlSp1

    2012-02-27(月) 16:28:10 [削除依頼]
    マンションの九階から一階まで、一気に階段を使って駆け下りた。
    昔サッカーをやっていた頃ならこの程度の運動、
    呼吸が多少乱れるくらいの疲労で済んだのだろうが、
    悲しいかな、現在帰宅部の俺はこれだけでも大幅カロリー消費で体温上昇、乳酸蓄積、
    汗はダラダラ、息はぜえぜえ、一旦マンション下で息を整えてから再ダッシュする羽目となる。
    何でエレベーター使わなかったんだろう、と自分の行動を悔いながらも、
    窓から見えた時の位置から女の子の落下地点を予測して、俺はマンション裏の土手へ向かった。
    その先に待っているのは、汚泥渦巻く幅100mくらいの川だ。
    上流の山地から海まで直結している割と大きな川だが、
    下流にあたるこの辺りはかなり水質が悪いことで有名だと聞く。
    衛生関係上、川遊びなどはした事ないが、河川敷で友達とサッカーをしたことはあって、
    俺にとっても馴染み深い場所だ。
    そこに、多分、女の子は落ちた。
    最低でも上空100m以上の高さから。
    河川敷ではなく川に落ちていたにしても、高度が高度だ。
    川面に叩きつけられた瞬間、即死しているだろうが……。
  • 6 保健体育 id:.V4RlSp1

    2012-02-27(月) 17:30:44 [削除依頼]
    俺は、土手を下っていって、河川敷に降り立った。
    葦の群生を掻き分け、不法投棄のテレビを踏みつけ、
    どうにかこうにか川べりに辿り着く。
    溺れている者はいないか、水面に何か漂っていないか、目をこらす。
    けれどおかしな点は一つもなかった。
    ただ、都会の夜空を映した漆黒色の川が穏やかにしめやかに流れていくだけだ。
    もうとっくに下流に流されてしまったか、それとも川の底に沈んでしまったか。
    はたまた、全て俺の幻覚か。
    空から彼女が落ちてきてくれたら良いのに、などと変な妄想をしたばかりに、
    ただの鳥を女の子と勘違いしたとか、そんなオチじゃないだろうな……。
    でも結果的にはそっちの方が平和的でいいか?
    色々と思案するうちに時間は過ぎていく。
    何も見つからないという事態に興奮していた脳味噌は、
    徐々に落ち着きを取り戻し、気付けば俺はいつもの冷静な自分に戻っていた。
    途方に暮れて、握り締めた携帯のディスプレイを見ると、
    時刻は、19時30分を示していた。
    川原に来てから10分近くたった。

    ……もう諦めようか。
    心の声がそう囁く。

    きっと、少女が落ちてきたように見えたのは、自分が疲れていたからだ。
    考えてみれば、100m以上上空から女の子が落ちてくるなんて、
    異常事態が発生するはずがない。
    家の近辺に高さ100m級の建物など存在しないのだから、そう考えるのが妥当だ。
    悲鳴が聞こえたのだって、他の誰かが叫んでいただけで、
    それが鳥か何かの墜落とタイミング良く重なった可能性だってある。
    いや、きっとそうだ、と。
  • 7 保健体育 id:.V4RlSp1

    2012-02-27(月) 17:46:44 [削除依頼]
    半ば、自分に言い聞かせるようにして、熱を失った俺は、踵を返した。
    冷静になったらお腹が減ってきた。
    もう夕飯時だし、帰りにスーパーにでも寄って惣菜を買おう。
    両親は白飯だけ炊いてデパートに行ったから、主食はたくさんあるはずだ。
    先ほどは、携帯だけ持って外出したと記述したが、
    財布は元々、ポケットに入っていたから買い物をするのに支障はない。

    窓から見えた落下物の件など、まるでなかったかのように振舞って、俺は歩き出す。
    しかし、五歩も行かないうちに、背後から声がかかった。

    「あのー、お兄さん。ちょっと手ぇ貸してもらってもいい?
    ここまで何とか泳いできたんだけど、もう身体に力入んなくて」
    疲労を孕んでこそいるが、音質自体は澄んでおり、
    あどけなさを感じさせる女の子の声だ。
    突然の呼びかけに、驚き、振り返った俺の目線の先には。
    果たして川岸に両腕だけ引っ掛けて、肩で息をする
    泥水にまみれた疲労困憊少女がいた。
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