strawberry lapins20コメント

1 預 id:RS5AFsU.

2012-02-25(土) 22:21:47 [削除依頼]
小説板では初めましてです。
いつもはお絵かき練習の方でわちゃわちゃやっている者です。
意味不明&大して面白くないと思いますが、
自分の中にあるものを書き出していきたいと思い、
スレを立てさせていただきました。
更新はめちゃ遅いかめちゃ書き込むかのどちらかです。
感想など教えて頂ければ幸いですv

辛口コメなどは有難いですが、荒らしは無しで、
キャスのルールを守っていきましょう。

それでは**
  • 2 預 id:RS5AFsU.

    2012-02-25(土) 22:35:45 [削除依頼]
    ***

    春。
    四月九日。
    今日から始業式である。
    私は高校二年生になった。

    私は隣の市にある、ごく普通の、地元ではそれなりの進学校に通っている。
    隣の市とはいえども、大きな川をひとつ挟んでいるため、電車通学を選択せざるを得ない。
    昨日までは、春休みだったということもあり、部活のために学校へ行くときも電車の中は比較的空いていたが、
    今日からは通勤・通学ラッシュの時間帯にかぶる電車に乗らなくてはならないため、
    私は憂鬱な気分だった。
    私の家から近い駅は、いわゆるローカル線なので、そこから市で一番大きな駅に上ってから、
    電車を乗り継いで隣の市まで行かなければならない。
    「引きこもりたい…」
    私は心の中で呟いて、携帯音楽プレイヤーの電源を入れた。
    イヤホンを適当に耳に突っ込むと、流れ出す電子音と、合成音声。
    よし。これである程度気が紛れる。
    私は箱のなかに詰め込まれた人の波の中に入っていった。
  • 3 預 id:RS5AFsU.

    2012-02-25(土) 22:59:17 [削除依頼]
    ***


    それから、電車を乗り継いで、隣まちの駅まで行った。
    そこからは、駅の近くにある駐輪場に止めさせてもらっている自転車で、
    学校まで行かなければならない。
    夏の猛暑日や、冬の日は駅から学校までの約15分間が地獄のように思われるが、
    春や秋などの気候のよい日はなかなかに心地よい通学路である。
    駅前の商店街の脇道を通り抜けて、そこから国道1号線が横切る道をまっすぐに走っていけば、
    我らがK高校が見えてくる。
    今年で創立91年であるこの学校は、とにかく、ボロい。
    1年生の頃の教室は、床の一部から光が差し込んできていたし、教室のドアは固くて開かないし、
    廊下のタイルは所々剥がれているしで、なにか災害でも起こったら、ひとたまりも無さそうな校舎である。

    私は自転車を置くと、クラス分けが記されている紙を貰いに、昇降口へ向かった。
    案の定、何人もの人が、紙を配布している先生の周りで騒いでいる。
    そのうちの一人、同じ部活のなっちゃんが私に気づき、紙を渡してくれた。
    「おはよー、なっちゃん。プリントありがと」
    私が紙を受け取りながら言った。
    「ん。おはよ。サカキ、何組だったっけ? ウチは5組なんだけど」
    「私は文系だから、4組。 でも、どうせコースで別れるんだから、クラスはあまり関係ないけどね」
    サカキというのは、私のあだ名の一つである。
    榊原だから、サカキ。安易である。
    私の学校は、2年生の段階で理系か文系かに別れ、更にそのクラスの中で別々のコースを取ることになる。
    だから、たとえ友達とクラスが離れてしまったとしても、選択するコースによっては
    同じ授業に出られるのだ。
    「そっかあ。隣のクラスだね。サカキ、人見知りだから、友達ちゃんと作れるか心配だよー」
    「だいじょぶ、だいじょぶ。去年同じクラスだった子がいるから。しかも私、結構社交的ですのよ」
    「誰だよーお前ー。あ、そろそろ体育館移動だって。行こっ」
    なっちゃんが私を促し、私たちは始業式の始まる体育館へと向かった。
  • 4 預 id:RS5AFsU.

    2012-02-25(土) 23:25:26 [削除依頼]
    始業式が終わると、ホームルームのため、私たちは各々の新しいクラスへと向かった。
    向かう途中、同じクラスだった友達を見つけた。
    「あっ、おはよう。サカキ。今年も同じクラスだねー。よかったね」
    「ねー。よかったよぉ、タナカと同じクラスになれて。あと、同じクラスだった人って、しーちゃんと、森崎と、渡辺と、あと男子多数だよね?」
    「男子多数って……。あんたホントに男子に興味ないね」
    「しょうがないじゃん。現実の男って、8割方むさ苦しいか臭いか汚いかのどれかじゃん。それに比べて、二次元はいいよね。汗もかかないし、何よりかっこいいし」
    「はいはい、そういうの、もうちょっと自重しな」
    タナカは、隠れオタである私の趣味を知っていても、ちゃんと仲良くしてくれる。
    オタ友は他にもいるけれど、タナカは一般ぴーぽーの友達の中で、一番心が許せる人間だ。

    ホームルームが始まり、担任の先生が軽く紹介を終えると、お約束どおり、それぞれの自己紹介をする羽目になった。
    「じゃあ、出席番号1番からな。相沢、トップバッター頼むな」
    「はい。相沢弘樹です。出身中学は…」
    出席番号1番って、大変だよなあ。私は生まれてこの方、15番前後だから縁がない話だよなあ。
    と、私はぼんやりとクラスメートの自己紹介を聞いていた。
    しばらくして、私の番になり、仕方なく席から立ち上がった。
    「榊原椋です。出身中学は、C市立T中学校です。元クラスは、1組です。趣味は読書で、部活動は吹奏楽部です。これから2年間、よろしくお願いします」
    特に面白みもない自己紹介をして席に着くと、私はまた頬杖をついた。
    2年間かあ。
    この学校は、2年生から3年生へかけてのクラス替えがない。
    だから、仲がいい者同士が集まると、とても団結力のあるクラスになるし、逆に仲が悪い者同士が集まると、余計に険悪な雰囲気が充満するようになってしまう。

    あー、今日から春アニメで地元が舞台のやつ始まるなー とか、その他いろいろと妄想を膨らませていると、
    「じゃあ、今年から転入してきた、新しい仲間を紹介する。入って来なさい」
    いつの間にか、自己紹介が終わっていた。
    というか、転入生とかきたんだ。どんな子なんだろう。
    と、ぽやぽや思っていられたのも束の間。
    その転入生が教室に入ってきたとき、思わず私は頬杖からほっぺをずり落としてしまった。

    「東京からやって来ました。趣味は読書です。よろしくお願いします」

    長い耳。 白い毛。 赤い瞳。
    その転入生は、
    紛れも無く、

    「ウサギと呼んでください」

    ウサギ、   だった。
  • 5 預 id:RS5AFsU.

    2012-02-25(土) 23:50:46 [削除依頼]
    ウサギ。
    ウサギ目の哺乳類の総称。耳の長いウサギ科と、耳が小さく、小型のナキウサギ科とに大別。
    ウサギ科はオーストラリア・ニュージーランドなどを除く全世界に分布するが、以前いなかった地域にも移入されて野生化している。
    日本には、
    「日本には、北海道にユキウサギ、それ以外の地域にノウサギが…」

    転入生がやって来て、私は数秒絶句した後、鞄の中の電子辞書でウサギについて調べた。
    なぜ、ウサギが高校に通っているのだろう。
    なぜ、直立二足歩行しているのだろう。
    なぜ、なぜ、なぜ、

    「榊原さん。隣の席ですね。しばらく、お世話になります」

    私の隣の席なのだろう。

    曖昧に微笑んだ私に、彼はなおも礼儀正しく、かつ爽やかに笑顔を送ってくれた。
    ていうか、みんななぜウサギがここにいることに疑問を感じないのだろう。
    私はそれが不思議でならない。

    ホームルームが終わり、しかも今日は、明日の入学式のために部活が無いので、私はタナカと共に帰ることにした。
    学校を出ると、私はすぐさま、
    「ねえねえねえ、タナカタナカタナカ」
    「なになになに?サカキサカキサカキ」
    こういう時、タナカは私に合わせてくれる。
    「さすがタナカさん。分かってるね……じゃない。あの、転校生のことだよ」
    「何?ウサギくんのこと?惚れた?」
    「違うにきまってんだろ! ななななんでウサギが高校通ってるわけ? おかしくない?」
    「……。あのさ、サカキさあ。」
    タナカが、呆れたように、私に言った。
    「私たちだって、高校通ってるんだから、当たり前じゃん。別に、ウサギが学校通っててもおかしくないでしょう」
    「当たり前、って……」
    私はそんなものなのか、と首をひねった。
    そうか。タナカの考え方はそういうことなのか。
    きっと、他のクラスメートもそういう考えなのだろう。
    ならば、仕方が無い。
    けれど、しかし、やはり、私はしばらくウサギくんを受け入れられそうにもなかった。
  • 6 預 id:RS5AFsU.

    2012-02-25(土) 23:59:08 [削除依頼]
    うわああ
    しょっぱなから間違えとるワタシノバカー

    私 基本めんどくさがりなので、ページ番号とか付けないので、
    *** とかの記号があったら 物語レスなんだなあと思ってやって下さい。

    上の2レスは間違って記号入れ忘れちゃいました…
    では失礼しましたー
  • 7 預 id:Kq7j2gd1

    2012-02-26(日) 13:06:33 [削除依頼]
    ***

    次の日。
    私は昨日と同じように、7時39分発の電車に乗り込んだ。
    約5分間という短い時間だが、人込みが大嫌いな私にとってはとてつもなく長く思われる。
    C駅に着いてからは、東海道線に乗り換える。
    47分に着く電車を待っている間に、友達と会うこともしばしばある。
    「今日は……誰もいないか。」
    少しだけ辺りを見回し、私は小さく、そう呟いた。
    友達と会えるのは、それはそれで嬉しいが、それまで聴いていた曲を中断しなくてはならないので、少々面倒臭いとも思っていた。
    母曰く、「だからあんたは彼氏ができないのよ」だそうだ。
    全く、意味が分からない。自己中心的だということなのだろうか。
    そんな事をぽやぽや考えていると、後ろからつん、とつつかれて、私は思わず振り返った。
    「おはようございます。榊原さんも、H市外民だったのですね」
    H市というのは、学校のある、隣の市のことである。
    「……ウサギ、くん。……おはよ」
    いつものくせで、つい無愛想に答えてしまった。
    朝は低血圧と、満員電車からのストレスで、不機嫌な態度を取ってしまう。
    「爽やかな、いい天気ですね」
    と、彼はにこにこと話しかけてくる。
    あんたの方が爽やかだよ、と思ったが、口にはしなかった。
    「そうだね。天気予報だと、しばらく晴れの日が続くって」
    ちょうどやって来た電車に乗り込みながら、私は彼の言葉に返答した。
    きっと、隣まちの駅に着くまで、喋り続けるだろうと判断した私は、ついでに鞄のポケットニにウォークマンを仕舞った。
    「やはり、こちらは海があるから、暖かいですね。僕が前に居た所は、東京とは言えども、八王子の方だったので、割と寒かったのです」
    「ふぅん……。私は、生まれてからずっと、ここに住んでるから、わからないな。向こうは、どんな所だったの?」
    「そうですね……」
    おぉ。会話が成り立っている。すごいぞ私。
    赤ん坊の頃からそうだったという、極度の人見知りな私にとって、初めて出会った人間と、1日で会話ができるようになるというのは、なかなかに珍しいことであった。
    というか、ウサギくんは人間ではないのだが。
    ほとんど、彼が話題提供をしてくれたこともあってか、電車の中での会話は途切れることは無かった。
  • 8 預 id:Kq7j2gd1

    2012-02-26(日) 16:58:09 [削除依頼]
    ***

    H市の駅に着いてから、私たちは駐輪場に向かうために構内の西側にある階段を下りた。
    「では、僕はこれで」
    そう言って、ウサギくんが少しだけ頭を傾けた。
    「えっ、ああ、そう。ウサギくん、バス通学派だったんだ」
    てっきりウサギくんも自転車通学なのだとばかり思っていた私は、少し拍子抜けしていた。
    私の学校の生徒のほとんどが、自転車通学をしているからだ。
    「ええ。では、また、学校で」
    再度会釈をすると、彼はバスロータリーへと向かった。
    そうか。おしゃべりはもう、終わったのか。
    私は数秒間、彼の後ろ姿を見つめてから、駐輪場へと歩き出した。

    学校へ着くと、8時15分くらいになる。
    この時刻は、まだあまり人がいない。
    私は席に着くと、暇をつぶすために、昨日買った文庫本を取り出した。
    私はオタクであるということを認めてはいるが、あまりライトノベルなるものがすきではない。
    なので、読むものといえば、新潮文庫だのなんだのが大半を占めていた。
    栞をはさんでいたページを開いて、読み始める。
    5分ほど経ったころだった。
    横で、カタンという音がして、ちらと見ると、ウサギくんが席に着いたところだった。
    「おはようございます。榊原さん、早いですね。僕も自転車通学にしておけばよかったかな。今朝も、一緒に行けたかもしれないし」
    「……」
    私は適当に2、3回頷くと、また本の世界に引きこもろうとした。
    「それ、何読んでいるんですか? 面白いですか?」
    ウサギくんが興味津々である、といった具合に私の本を覗き込んだ。
    私は、本を読んでいるときに手元を覗かれるのが嫌いである。周りからは、少々神経質すぎやしないか、とまで言われるが、仕方が無い。嫌いなのだから。
    なので、思わず本を引っ込めてしまった。
    「っ、……。あ、……ごめん。……」
    ウサギくんは、大丈夫ですよ、というように、また微笑んだ。
    「………」
    私は、決まりが悪くなり、若干ウサギくんと反対の方に体を曲げて、本に没頭するふりをした。
  • 9 預 id:dwS.HKN0

    2012-02-29(水) 18:45:56 [削除依頼]
    ***

    その日は、入学式があったため、朝のホームルームで出席を取っただけで帰宅することになっていた。
    私は、同じクラスだった子達とカラオケに行く約束をしていた。タナカも一緒だ。
    待ち合わせ場所の、裏門の横で他のクラスになってしまった友達を二人で待っていると、ウサギくんがおそらく同じクラスの男子数名と話しながらこちらにやって来た。
    おそらく同じの、というのは、私が他人の名前と顔を覚えるのが苦手だからである。
    ウサギくんは、先ほどあんな態度をとってしまった私に対して、無垢な笑顔を向けながら軽く手を振った。
    しかし私は、ウサギくんと目があったにも関わらず、無視するように視線をそらしてしまった。
    「あれ、サカキ。ウサギくん、こっち向いてるよ?」
    「ふぅん」
    「ふーんって、…手ぇ振ってるんだから、返してあげればいいのに」
    「やだよ。席が隣になっちゃった、ってだけでそんな好ないし」
    「うわあ、ドライ。超ドライ、あんたって」
    いつの間にか、彼はバス乗り場へ向かって、この場にはいなくなっていた。
    そのとき、ホームルームが終わったらしく、友達がやってきたので、私たちは駅前商店街にあるカラオケ店へと向かった。
    私の胸の奥か、どこかその辺りが、チクリと痛んだ。
  • 10 預 id:rhpoU7w0

    2012-03-03(土) 22:18:01 [削除依頼]
    ***

    次の日。今日から、2、3年生は通常授業日程となっていた。
    今日も私はいつもと同じくらいの時刻に学校に着き、自分のクラスに行った。
    なんとなく、クラスに誰もいないのを確認してから、席に着く。
    よし。ウサギくんはいない。
    そのことに対して安堵感を覚えている自分に、少し呆れてしまった。
    最低だな、自分。
    彼が何をしたというのだ。むしろ、私が彼に失礼な態度をとってしまったのだろう。
    こういうとき、意地っ張りで頑固な自分の性格が嫌になる。じゃあ直せって話だけれど。
    それから、5分ほどの時が過ぎた。昨日の彼の到着時間は確か今くらいだったので、そろそろか。
    しかし、彼はやってこない。バスが遅れでもしているのだろうか。

    予鈴が鳴る8時30分、クラスメイトたちの数はどっと増える。
    そして、その集団の中に、ウサギくんは混じっていた。
    自分の席に着くと、彼は「おはようございます」と私に向かって挨拶した。
    なぜだろう。なぜ、彼は私の失礼に対して怒らないのだろう。
    私が黙っているにも関わらず、彼は、
    「今日もいい天気ですね。あ、昨日、榊原さんが晴れが続くって言っていたのでしたっけ」
    「………」
    「今日は、委員会決めがありますけど、榊原さんは何委員会に入る予定なんですか?」
    「………」
    だんまりを決め込む私に対して、ウサギくんはよほど人がいいのか、それともただ単に鈍感なのか、のべつ幕無しに話しかけ続けた。
  • 11 預 id:rhpoU7w0

    2012-03-03(土) 23:54:50 [削除依頼]
    ***

    我らがK高校は通常、65分授業が5時限という体制をとっている。45分授業が6時限ある所や、90分授業が4時限続く所に比べて、丁度いい長さの授業時間であると私は感じている。
    さて、その日は朝にウサギくんが言っていた通り、5時限目のロングホームルームに、委員会やら係やら何やら、クラスの決め事をする事になっていた。
    学級委員…は、パス。立候補制だけれど、私はそんな柄ではないし。
    保健委員も、石鹸の補充とかが面倒臭いし……行事の特別委員会は、1年生の頃に入ってみたので、どれだけ大変かはよく知っている。パス。
    「図書委員……」
    これなら、当番の日に、図書室でのんびりまったりしながら、時々本を借りに来た生徒たちに応対するだけでよい。
    よし、決めた。これにしよう。男女各1人ずつだから、友達がどうのこうのも関係ないし。
    「じゃあ、次は図書委員をやりたい者は…」
    委員会別に生徒の名前を黒板に記しながら、先生が言った。
    私は、すかさず手を挙げた。
    「お。榊原、やってくれるのか。じゃあ、女子は決まり、と……。男子で、図書委員になりたい奴は…」
    すると、私の横で す、となにか柔らかいものが擦れる音がした。衣擦れのような音だ。そして、視界の端に、白いものが入り込んだ。
    「僕、図書委員、やります」
    「……!」
    ウサギくんが、見ていて実に晴れ晴れしい表情で、手を挙げていた。

    「榊原さん、同じ委員会、よろしくお願いしますね」
    「……」
    帰りのホームルームも終わり、部室へ向かおうとした私は、ウサギくんに声をかけられた。
    そちらを向いただけなのに、思わず睨んでしまった様な目つきになってしまう。
    「明日、委員会ごとの顔合わせが放課後あるみたいですね」
    「……ウサギくんさ」
    はあ、とため息にも似た大きな吐息をつき、わたしは彼に向かった。
    「なんで図書委員会に入ったの?」
    「…なんで、でしょうね」
    こてん、と小首を傾げながら、彼が言った。
    「なんとなく、ここに入ろう、と思ったのです。別にどこに入っても同じなのに」
    「他の所は面倒臭いから、とかそういう理由じゃないの?」
    「ええ」
    ではまた明日、部活頑張ってくださいね、などとにこにこしながら、彼は帰っていった。
  • 12 預 id:PlmgR1i1

    2012-03-04(日) 22:35:07 [削除依頼]
    なんなのだ、と、私の心の中は若干もやもやしていた。
    ウサギくんに対してではない。自分に対してだった。
    別に、彼がどの委員会に入ろうが、私には関係がないではないか。
    他人から干渉もされたくないし、自分もしたくない。
    ザ・無干渉人生。
    これが私のモットーだったのに。
    「お。サカキ、まだ残ってたの? はやく部活に行こうよ」
    後ろから声をかけられ振り向くと、同じ部活でクラリネットパートの、軒下が立っていた。
    隣の5組に属する、艶やかな長い黒髪が印象的な彼女は、なんと学年1位の成績保持者である。
    理数系なのに、その暗記力を持ってしてか、社会科や国語総合も得意である。驚きだ。
    「軒下かぁ…。今から行こうと思っていたところだよ。一緒に行こ」
    「なんだよー、かぁ、って。あたしじゃ不満かよー」
    「そうじゃないけどさ。ちょっと、ね。なんでもないよ」
    「そ? サカキ、部室行くの早いから、まだ残っていて不思議だったからさ。なんでもないなら、安心安心」
    軒下は、成績優秀なのにそれを鼻にかけず、さばさばとしていて、一緒にいて嫌にならない。
    部室は校舎の第2棟の3階にあり、音楽室の隣にある。
    中に入ると、打楽器やら指揮台やらが所狭しと詰め込まれており、中々に、狭い。
    まあ、部室が与えられているだけ、ましなのかもしれないが。
    部室に入ると、部長であるバリトンサックス担当の、比奈ちゃんが私を見、何やら紙を渡してきた。
    「サカキちゃん、これ、来週までに記入して、提出しておいてね」
    何、とそれを見てみると、入部希望用紙だった。
    1年生がそれを提出することは、入部を意味するが、大抵の2年生の場合は、部活を継続するという意味で使われる。
    「それ提出しないと、サカキちゃん、退部になっちゃうからね」
    わかってるよ、と私は答えた。
    まあ、出さなかった所で、退部になるはずも無いのだが。彼女は、冗談のつもりで言ったのだろう。
    とは言え、決まりではあるので、さっさと記入し、印鑑を押し、顧問の先生に提出しなければならない。
    私は、それを鞄の中のファイルに仕舞った。
  • 13  はるか id:hWhDAHq1

    2012-03-04(日) 22:47:00 [削除依頼]
    なんだコレ、超面白い!
    頑張ってください、応援してます!
  • 14 預 id:qYpdS6Y.

    2012-03-05(月) 00:07:20 [削除依頼]
    >13はるか様、コメントありがとうございました^^ 私の妄想の表れでしかないのに、面白いと言って頂けて感謝です! きゃぴるんるんした文章は苦手なので、あんまり受けないかなーと思っていたのでほっとしました。 更新遅めですが、ぬるぬる頑張ります。
  • 15 預 id:qYpdS6Y.

    2012-03-05(月) 23:04:13 [削除依頼]
    私はフルート担当なので、手持ち楽器が置いてある棚の、フルートパート専用のスペースから楽器を取った。
    チューナーメトロノームとマイク等が入っているポーチ、楽譜が挟まっている黒いファイルも取り出す。
    入り口付近の木箱には、譜面台が2ヶ所に分かれて入れられており、私はそのうちの1ヶ所、学校附属の譜面台を手に取った。
    木管パートは基本的に第2棟の2階を使用させてもらっている。私は2階の端っこの、1年8組の教室に向かった。
    その途中、何故かウサギくんに行き逢った。帰ったのではなかったのか。
    「ああ、僕、少し先生と話をしていたのです。何部に入るのか、まだ決めていませんでしたから」
    「そう。何部に入るの?」
    「前は、吹奏楽部でパーカッションだったのですけれど」
    「じゃあ、吹奏楽部に入るの?」
    「いや。今から上下関係が成立してしまっている部活に入部するのは、少し気後れするというか……。ですから、文芸部と美術部に入ろうかと」
    「そうなんだ。別に、上手ければ入ってもいいのに。それに、まだ仮入部も始まってないし」
    仮入部期間が始まるのは、来週の1年生オリエンテーションが終わり、部活動の説明を受けてからである。
    なので、まだ1年生は入部しておらず、従って私たち2年生と新入生たちとの上下関係は成立しているわけではない。
    「いえ。いい、ん、です」
    妙な区切り方をして、ウサギくんが言った。何か言いたいのを我慢しているような口ぶりだ。
    「そう。まあ、自分が選ぶことだしね。お互い頑張ろ。じゃあね」
    私は素っ気無く彼にぱたぱたと手を振ると、8組の方へ、また歩き出した。
  • 16 預 id:/KgAeDj0

    2012-03-07(水) 22:33:12 [削除依頼]
    ***

    その次の日。
    私は委員会の集まりがあったことを登校してから思い出し、少し憂鬱な気分になっていた。
    「委員会の集まりとか、だるい。まじだるい」
    はぁ、と溜息をつく。委員会の集まりがあると、部活に出るのが遅くなるし、何よりウサギくんと一緒に集合場所の教室まで行かなければいけない。
    「どうした、サカキ。元気無いじゃん」
    どさ、と私の席の隣に誰かが勢いよく座った音がした。タナカだった。
    「タナカかあ。どうしよう、今日、委員会の集まりがあるよ」
    「まあ、元々決まっていた事だしねぇ。仕方ないよ」
    「だってさぁ、だってぇ……」
    「なによ。ウサギくんのこと? 意識しすぎなんじゃない?」
    タナカが、ふっ と笑った。何か見透かしたような、そんな笑い方だった。
    「……そんな事、ないよ。ばっかじゃないの」
    反論しようとしたが、何か小さなものが私の喉に引っかかって、上手く言えなかった。
    なので私は、せめて冷静さを保っているように、静かに言った。
    「そっかなあ。私は、違うように見えるけどなあ」
    タナカは、まだぶつぶつと言っている。
    まあ、女子高生など、人の恋愛感情を多人数で転がして面白いと思う生き物なのだから、仕方ない。
    タナカにだって、そういう話を好む傾向が無いとは言い切れないのだ。
    私はいつものように、仕方が無い、と思って話を流すことにした。
  • 17 預 id:/KgAeDj0

    2012-03-07(水) 22:50:58 [削除依頼]
    ***

    放課後に近づくにつれ、私の中の憂鬱は、むくむくと大きくなっていった。
    何か、嫌な――いや、嫌だというのは少し違うかもしれないが――、とにかく、面倒ごとが起きるような気がした。
    女の勘、というやつだろうか。

    「榊原さん、集合場所、図書室ですよね。僕、場所が分からないので、一緒に行ってもよろしいでしょうか」
    放課後。ホームルームが終わった途端、ウサギくんが話しかけてきた。
    私は、内心、一人の方が気楽なのにな、とか思いながら、頷いた。
    じゃあ行こうか、と言うでもなく、私はさっさと歩き出してしまった。
    それなのに、ウサギくんは特に怒った様子もなく、私の横に並ぼうとしたのか、早足で追いかけてきた。

    委員会が終わった。
    特に決めることもないだろう、きっと早く終わる、と思っていたが、甘かった。
    まず、開始予定時間になっても担当の先生が現れず、それで20分ほど待たされた。
    そして、やっと図書室に出てきた先生が早速委員長を決めようとしたが、皆私のようにやる気が無い生徒ばかりが集まってしまったらしく、なかなか決まらなかったのだった。
    他の役職についても、同じようなことが繰り返された。
    なので、終了時刻は、とっぷり日が暮れた、6時間際だった。
    これじゃあ部活はもう出られないな、と思って帰ろうとした時だった。

    「榊原さん」

    声をかけられた。ウサギくんだった。
    「ちょっと、いいですか」
  • 18 預 id:40kleBk/

    2012-03-09(金) 18:41:49 [削除依頼]
    ***

    「何?」
    私は無愛想に返事をして、そちらを向いた。
    「こんな所で言うことでもないとは思うのですが、今しか機会が無さそうなので」
    ウサギくんは私の目をしっかりと見つめてきた。思わず、私もウサギくんから目をそらさずにいられなくなった。

    「好きです」

    「…………は?」
    今、この目の前にいるウサギは何と言ったのだろう。
    何を、何を、何…………なに?
    「昨日、榊原さん、僕に尋ねてきましたよね。何故、図書委員会に入ったのか」
    「う、うん……」
    「あの時は、よく分からなかったのです。しかし、よく考えてみると、榊原さんが入ったから、僕も同じようにしたのだと思います。多分、始業式のあった、あの日から、もう気になりだしていたのかもしれません」
    「いや、あのね、言っている意味が、よく分からないんだけど……」
    「では、もう一度言います。好きです」

    私はこの時、どんな顔をしていたのだろう。
    生まれてこの方、告白なんて甘酸っぱい、ストロベリィなイベントには縁がなかったもので、対処方法がよくわからなかった。
    しかも、人間ではなく、ウサギに告白、されてしまった。
    とにかく、私の、あの予感は的中していた。
    どうやら、とても面倒臭い、避けるべき相手に、好かれてしまったようだった。
  • 19 預 id:N7tTy7E/

    2012-03-10(土) 00:03:09 [削除依頼]
    ***

    家に帰ると、母親がいた。何故だ。
    というのも、私の家は両親が共働きで母方の祖父母と同居しており、平日のうち4日間は母は夜10時まで帰ってこないからだ。今日は、母は仕事があるはずだった。
    「おかえり〜、椋」
    私は先ほどのウサギくんとの一件で、とても混乱していたのに、母親のそんなお気軽な声を聞き、なんだか腹立たしいような、安心するような複雑な気持ちになった。
    「ただいま。……なんで、家にいるの?」
    「なんで、って、今日は仕事お休みだからよ。言ってなかったっけ?」
    「うん」
    私は、努めて平常を保っていようと、言葉少なに頷いた。
    しかし、そこは母親だ。私の異変をすぐに察知したのか、
    「あれ? 椋、今日、なんかあった? なんだか、変」
    「……そんなこと、ないよ。なんにもない」
    「そ? なら、いいんだけど」
    そして母は、買い物に行って来るね〜、とまたもや語尾を伸ばしてスーパーへ出かけてしまった。
    私は二階の、自分の部屋に行った。半年ほど前までは、姉との共同スペースだったが、大学通学が大変だと言って一人暮らしを始めてしまった。故に、今は私の一人部屋である。
    鞄を置くと、私はどさっとベッドに寝転んだ。
    「ウサギくん、なんで、あんな事言ってきたんだろう…」
    しばらくもやもや悩んでいるうち、私は一つの結論を下した。
    あれは、きっと、ウサギくんなりの、ジョークだったのだ。うわ。笑えねぇ。
    「冗談、だといいけどなぁ…」
    私の考え事は、しばらく続いた。
  • 20 あz id:LjEGnPD/

    2012-03-16(金) 19:42:21 [削除依頼]
    ***

    翌日。私は昨日の出来事を寝起きに思い出してしまい、一気に目が覚めたと同時に、学校へ行きたくなくなった。
    「ずる休みしてぇ…」
    しかし、そうすると一年生のときに極めた、無遅刻無欠席無早退というパーフェクト皆勤賞が水の泡になってしまうし、何より母にばれた時が面倒臭い。母は、私の嘘をほとんど見抜けるのだ。
    仕方無しにパジャマ代わりであるトレーナーと中学時代のジャージから、チャコールグレイにピンストライプが入ったブレザーの制服に着替える。
    この制服は、私のひとつ上の代から女子だけデザインが変わった。その前までは、ボレロとも言えないような、あだ名が軍服という訳の分からない形をしていたので、こんな地味な色合いでも随分可愛くなったと言えるだろう。
    それに、黒のタイツを合わせて準備はある程度できた。
    私はメイクらしいメイクをしないので、仕度はかなり早い。
    「椋ー、起きたのー? そろそろ7時よ、早くしなさい」
    母の声が、階段下から聞こえた。
    私は顔を洗うために、一階へ降りた。
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