私がひろのだった頃17コメント

1 ありさ id:06SUFt70

2012-02-25(土) 22:19:29 [削除依頼]


『いい子をやめたいんです』

 直前までいじっていたという彼女の携帯のメモには、そうとだけ残されていたらしい。あとのメールや電話帳などのありとあらゆるデータは消されていたと。


 三日前のことだ。

 僕の彼女は自ら電車に飛び込んで死んだ。
  • 2 ありさ id:fKXGZA6.

    2012-02-26(日) 00:33:29 [削除依頼]
    【一】

     僕は冴えない男だった。
     スポーツも勉強も、並。何にしても並、並、並。
     だからその中で、ひろのと付き合えたことは、幼なじみという特権を利用してなお、奇跡に近いことだと思う。 
    「……ゆうくん」
     そう僕は甘い声で囁かれる度に、深く酔っていったし、白くて細く、なおかつ柔らかそうなふくらはぎに触れてみたいと思っていた。ああ、それは性的な意味合いじゃなくて、まるで芸術作品に対して抱くような気持ちだ。
  • 3 ありさ id:fKXGZA6.

    2012-02-26(日) 01:47:57 [削除依頼]

    ありさといいます。
    頑張ります。
    密やかに。
  • 4 ありさ id:fKXGZA6.

    2012-02-26(日) 02:13:12 [削除依頼]
     そして何よりひろのは優しかった。容姿に勝る位に、心が綺麗だった。

     だから。今でも信じられない。そう、本当にあのひろのが死んだのか、それこそ分からなくなるくらいに。
    「優くーん」
     それでも窓の外から声がして、僕は現実に引き戻される。ひろのじゃない女が僕を呼んでいる。そのことに僕はもう、疑問を感じられない。
     僕はたったの三日で、ひろののいない生活を、手に入れてしまった。順応していく身体、いつまでも否定しつづけたい心。ふと横を見れば、ガラスの奥で、制服姿の少年が、無表情で立っていた。
     そう。僕は、感情を表せなくなった。まだぐちゃぐちゃのままの心には、痛いほどにたくさん、詰まっているのに。
     ひろのは、僕の中で死.んでいく
  • 5 ありさ id:fKXGZA6.

    2012-02-26(日) 02:34:29 [削除依頼]
     誰もが、過去にしていく。頭では、分かっているはずだ。だけど。追いつけない心はひろのにしがみつこうと躍起になっている。
     置いてかないで、置いてかないで。心の中で無様に泣きついて。……いや、違う。進んでいるのは僕の方だ。自問自答を繰り返す。
     馬.鹿だ。理解しているのに。

    .

     清潔な香りが漂う。階段を降りると母さんが優しく微笑んだ。その顔はたった三日で少し痩せて老けたように見える。
    「おはよう、優」
    「おはよう」
     口だけを動かして、機械みたいに平淡な声で返す僕に、母さんは少し、顔を曇らせた。その顔に僕はおびえた。ごめんなさい。そんな顔させたいわけじゃ無いのに顔の筋肉が固まったみたいに動かない。
  • 6 ありさ id:fKXGZA6.

    2012-02-26(日) 02:49:47 [削除依頼]
     僕が必死になっているうちに、母さんの顔はもとに戻っていた。
    「遼ちゃんが待ってるわ」
     遼ちゃん、その言葉を頭の中だけで反唱する。遼ちゃん、遼、はるか。ひろのの生き写しの少女だ。一卵生双生児なのだ。彼女とひろのの違いはしゃべり方の違い、ひろのは語尾が伸びて、はるかはどちらかというと途中途中にスタッカートを入れたがる。ただ、今は、ひろののしゃべり方を真似ているせいで二人はそっくりだ。
  • 7 ありさ id:fKXGZA6.

    2012-02-26(日) 14:32:35 [削除依頼]
     はるかの意図は分からない。でも、やめて欲しかった。
     ひろのは一人だ。

    .

    「おはよーう」
     ぱらぱらと嬉しそうに笑う、はるか。別に僕はこいつが嫌いな訳じゃなかった。むしろ大切な幼なじみの一人、そしてその容姿はひろのにそっくり。でも、僕は。何もかも誰より秀でている彼女に劣等感を抱いていた。
     それはひろのも同じで。並な僕、欠陥品のひろの。僕たちにとって何でも卆なくこなす彼女はたまに、敵だった。
  • 8 蒼 id:ukZAW081

    2012-02-26(日) 15:52:09 [削除依頼]

    題名に惹かれてふらふらとやってまいりましたw←
    まだ序盤のほうだと思うのですが、
    ありささんの独特かつ綺麗な文章にもう既に魅せられちまった感じですw
    続きを楽しみにしながら、密かに応援させていただきたく!

    乱文失礼しました←
  • 9 ありさ id:fKXGZA6.

    2012-02-26(日) 16:55:31 [削除依頼]
    >蒼さん
    ありがとうございます!!
    綺麗とかとか///嬉しすぎます。
    全然乱文じゃないですっ
    頑張ります!寧ろ頑張れます!おかげで
  • 10 ありさ id:fKXGZA6.

    2012-02-26(日) 21:04:13 [削除依頼]
     そしてそれは一方的な。はるかからすれば、僕らは"敵"じゃない。"庇護すべきもの"なんだ。
     それがどんなに屈辱的なことかも知らず。
    「優くんさー、明日さー暇ぁ?」
     はるかは唐突にいった。その言い方がいつも以上にひろのみたいで、僕は心の中を冷たい手で撫でられた気がした。それでも一方で明日は土曜日だから、と予定を確認してる自分がいた。頷く。
    「あしたさあ、ひろのに会いに行きたいの」
    ぽつりとこぼした声は不気味なほど冷たくて、僕は思わずはるかに顔を向ける。
    「はるか?」


    「優くん、壊れちゃうよ」
     泣きそうな顔したはるかが何かを乞うような瞳を投げかけている。僕の顔はかたまったままだ。
  • 11 ありさ id:fKXGZA6.

    2012-02-26(日) 22:42:53 [削除依頼]
    【一】 >2+4-7+10 一終了です。 おかしいな、久々にプロットたてたらずれるずれる。 はるかなんていなかったのに←え それでは引き続きひっそり生息。 あー、後。 一応忠告しますが。 私について何か思うことがある知り合いの方はこちらでなく、前の方にお願いしますね。
  • 12 ありさ id:fKXGZA6.

    2012-02-26(日) 23:56:06 [削除依頼]
    訂正 >10 「あしたさあ、ひろのに会いに行きたいの」       ↓ 「あしたさあ、尋乃に会いに行きたいの」
  • 13 ありさ id:JqCebf9.

    2012-02-27(月) 18:18:34 [削除依頼]
    【二】

    .

     あの日から朝起きると一瞬、自分が誰か忘れてしまうようになった。ぼんやりとした頭は僕やひろのを思い出すまで、暫くの時間を喰って。それからやっと僕はひろのにおはようというのだ。
     ぐるぐるぐると廻る思考の奥で、ひろのの笑顔が浮かぶ。それはすぐに思考の渦に巻き込まれて消えてしまうのだけれども、僕はそれでも嬉しい。彼女の笑顔が鮮やかに浮かぶ限り、ひろのは過去では無いのだ。そして、きっと僕がそれに喜んでいる間はおそらくずっと。
    「優!! 今日は遼ちゃんと出かけるんでしょー?」
  • 14 ありさ id:cJLek5U0

    2012-02-28(火) 01:20:19 [削除依頼]
     おきなさーい、と。扉の向こうから母さんの声がした。まだだるい体を引きずって、リビングへ向かう。今日はあの土曜日な訳で。一日が早い。体が拒否しているのだ。はるか曰く『尋乃に会いに行く』ことを。
     
     リビングの扉を開けると、めいっぱいの朝の光にあてられて、少し鬱.陶しい。ねえ、ひろの。君が死んでから、四日連続晴れだ。
    「おはよう」
    昨日と同じやりとりと繰り返して、僕は食卓に座る。無駄だ。目の前にならぶ食パンもお茶もジャムも。日々に消化される僕。僕に消化される食パンたち。ひろのがいない時間なんて、意味を持たせられない。僕はそんなに器用な質ではないから。
  • 15 ありさ id:Wh2eHTL.

    2012-03-02(金) 22:31:38 [削除依頼]
    「ごちそう、様」
     ロボットみたいな平淡な声で言うと、母さんは優しげにほほえんだ。
     ……用意しなくちゃいけない。……やだな。
     だいたい墓に入っているのはひろのの骨で、ひろのはそこにいない。残念ながら僕はひろのの骨を愛していたわけじゃないのだ。ひろのという個人全体が好きだった。
  • 16 ありさ id:eaIaGzW1

    2012-03-07(水) 15:04:05 [削除依頼]

    もうキャスでは書かないっていったけど、これだけは。
    というわけで、未練がましく。
    あげ
  • 17 ありさ id:mQZeCR90

    2012-03-08(木) 18:03:05 [削除依頼]
     だから、墓に行くなんて行為は無意味でしかないとおもったんだけど。でもそれがはるかにとって、意味のあることなら、僕はそれに付き合う。
     それは仕方のない"絶対"なのだ。



     簡単に身支度を済ませると、僕は家をでた。乾いた風が冷たい。
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