槁木死灰6コメント

1 鬼灯 id:Timvc2U1

2012-02-25(土) 10:38:32 [削除依頼]

春には麗らかな陽射しに包み込まれて、鳥が歓びを歌うのだろう。

 夏には燦々とした太陽の許、瑞々しい草花が力強く天へと伸びていくのだろう。

 秋には少しセンチメンタルな気分で、夕暮れを詠む人がいて。

 冬にはいのちが息を潜めて、何れ訪れる季節を待つのだろう。

 世界は繰り返す。
 世界は変わっていく。

 きっと、世界は暖かい。
 暖かくて、それでいて冷たい。
 易しくて、厳しい。

 ――醜くて、されど美しい。

僕は――――――死にたかった。
  • 2 鬼灯 id:Timvc2U1

    2012-02-25(土) 11:28:47 [削除依頼]

    【一:曳尾塗中】
     
     ――亀は死んで甲羅を愛でられるより、生きて沼に尾を引きたいと願う。
     
    ***
     
     口の中で痰と血が混ざり、気道を塞いだ。少年は酸素を絶たれる苦しさに耐え切れず、噎せ返った。べちゃ、と厭な音をたてて床に吐き出されたそれらはひどく汚らしい。放置された豚の臓のような色合いで、饐えた匂いがした。
     胃酸も一緒にせりあがって来、喉を容赦なく焼いた。痛みを堪え、荒れた唇を強く噛む。脂汗が玉のように浮かぶ。少年は手を握りしめた。爪が内側の柔い皮膚を裂き、血が滲む。胸を掻いてのた打ち回り、叫んで吐いて苦しみに身を委ねてしまいたかった。
     しかし――少年のちっぽけな矜持がそれを良しとしなかった。
     確かな怒りが滲んだ視線が、その“部屋”唯一の窓に突き刺さる。
    「――っ、悪趣味な、薬……です、ね」
     少年は息を詰まらせながら悪態をついた。窓辺に立つ人物が、薄らと笑う。窓の向こう側は、外ではない。その場所は“部屋”の中を観察するための空間だった。床や壁が強化コンクリートで覆われており、まるで猛獣の檻を彷彿とさせる“部屋”とは打って変わって、そこは白を基調とした小奇麗な雰囲気を醸していた。多種多様な機材に溢れており、つまり、少年の行動はそれらに解析され――研究の資料のひとつになるのだ。
    向こう側の声は“部屋”に届かないが、“部屋”の中の物音は向こう側に届く。少年はこれまでの経験から、そのことを知っていた。だからこその悪口であり、嫌味だった。
     窓辺の人物――白衣の男が唇を動かした。
     少年はその言葉を読み取った。読唇術など、朝飯前である。
    「――――糞が」
     そしてまた、文字通り、血を吐いた。
  • 3 鬼灯 id:Timvc2U1

    2012-02-25(土) 17:17:09 [削除依頼]
    ■挨拶
    初めまして鬼灯です。KitoでもHozukiとでも読んで下さい。
    さて、この作品は"被験体52-21の逃亡"の練り直しver.になります。
    更新かなり遅いです。でも、がんばります。
     
    塵埃に帰す -紫祁皇国記-
    三千世界の君を殺して、
    ヴィントミューレの廻る世界

    等も同様に。受験生なのであしからず。
    よろしくおねがいします。

    ※注意
    雑談がしたい方は準備板に行って下さい。
    自分の小説の宣伝をしないでください。
    荒 らしはスルーの方向で。
  • 4 鬼灯 id:z6jLsKG0

    2012-02-25(土) 22:25:32 [削除依頼]
    ***
     
     自分が何者であるか。
     それは、人類共通の普遍的な疑問と言えるだろう。おそらくは、自分が何者であるかという問いにすらすらと淀みなく答えられる人間など居ないに違いない。そんな人物が居たとしたら、よほど己を達観した————ある種超人的な存在なのだろう。
     自己の根底、即ち自分を自分たらしめるアイデンティティを感じこそすれ、それを明確に把握して自分の支配下に置くことなど、夢物語も甚だしい。普通の人間にとって、自己同一性に関する問いかけの答えは永久に解かれてはいけないものだ。ひとりひとりの人間が「己が何者で何をすべき存在なのか」を知り得たとしたら、世界はとてもつまらないものになる。目指される未来の形は幅広いものではなくなるのだ。
     皆が皆、世界を包括する大いなるもの&dmash;&dmash;——ときに真理と呼ばれる"それ"に与えられた指針に従って行動していけば、その動きは大きな、けれどたったひとつの流れを生み出していく。真理が導く未来はただひとつで、人間がそれを理解して進んでいく世界に成り下がるのだ。
  • 5 鬼灯 id:iM7ZcoV.

    2012-03-01(木) 22:18:09 [削除依頼]
     未来が結果的にたったひとつのものであるにしろ、それにたどり着くまでの過程が分からないのであれば、人々が望み思い描く未来は不特定多数のものとなる。確定した未来があるにせよ、人々がそれを識ることはない。だからこそ、人はより理想に近い未来を作るために行動していく。迷い、戸惑いながら、先の不透明な道を必死で歩んでいくのだ。
     ————要は、自覚の問題ということになる。
     人間は先の見えない道を進む不安に揺れるからこそ美しく、尊く、愛しいものなのだ。
     己の進む道を知り、それを皆がただ辿って行くだけの世界など、意味がない。
     自分が何者であるか。
     自分は何者であるか。
     ありふれた————それでいて、深刻な問い。
     少年もまた、多数の人間と同様の葛藤を胸に抱き、生きていた。
     

    ***
     
     ————空を奪われた鳥は、どんな声で鳴くのだろうか。
     
     第一話 鳥籠
     
    ----------
  • 6 鬼灯 id:iM7ZcoV.

    2012-03-01(木) 22:25:16 [削除依頼]
    あ、ちなみに【一】は第一部、という意味で、その中に第〜話があるという感じです。
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