紅き真実の果てに。19コメント

1 祀璃 id:.UF65wr.

2012-02-09(木) 10:32:26 [削除依頼]

30年に一度、月が紅く染まる日。

異世界へと続く一本の道が現れる――…。


人々は皆、早々と布団に潜り込み、
物音ひとつ立てず、息を殺して、
ただ静かに朝を待つ。


決して外には出るな。

悪魔や魔物、
この世のものではない何かが
お前を狙ってやってくる――…。


古い古い昔からの言い伝え。
  • 2 祀璃 id:.UF65wr.

    2012-02-09(木) 10:54:02 [削除依頼]


    「…もぅ、いい。」


    バンっと大きな音を立てて
    家を飛び出す。


    「――っ!!!
    待ちなさいっ…今日は――……」


    背中に慌てた母親の声が聞こえたが、
    あたしは振り返らずに走り出した。


    (…――ハァ…ハァ…)


    ドカっと家から少し離れた近所の
    公園のベンチに腰を下ろし空を眺めた。


    灰色の空に
    紅く染まった月が不気味に浮かんでいた。


    『レッドムーンデイ‐紅き月の日‐』


    古い古い昔からの言い伝え。


    「…だからか――。」


    ぽつりと小さく呟いた。
  • 3 祀璃 id:.UF65wr.

    2012-02-09(木) 15:16:44 [削除依頼]


    辺りはしんと静まり返って
    人っ子ひとりいない。


    家々の戸や窓はぴたりと閉ざされ、
    一筋の光さえ漏れてはこない。


    家を飛び出すのはこれで何回目だろうか。
    決して親子仲が悪いわけではない。


    現に、数年前までは
    家を飛び出したことなんて
    ただの一度もなかった。


    母親と二人、
    仲良く幸せに暮らしてた。


    でも、3年前…。

    母親が再婚して弟ができた。


    年の離れた弟はもちろん可愛くて、
    家族が増えたことも純粋に嬉しかった。


    義理の父親も優しくて
    嫌なことなんて何もなかった。


    でも、少し…
    ほんの少しだけ寂しかった。


    それから、どうでもいい小さなことで
    母親とも父親とも喧嘩をするようになった。


    今日だってそう。


    ただ話を聞いて欲しかっただけなのに…。

    『ごめんね、今忙しいからあとにして。』


    これだけのことで
    あたしは家を飛び出したんだ。


    (…高校生になってまで嫉妬とか――…)


    「…あほくさ…。」


    ため息とともに吐き出された
    あたしの小さな声は、
    白い息に変わって灰色の空へと消えていった。
  • 4 祀璃 id:.UF65wr.

    2012-02-09(木) 16:03:20 [削除依頼]



    ―――…。


    どのくらいここにいたのだろう。

    灰色だった空は黒に変わりつつあった。


    「――さてと…、帰るか…。」


    秋の夜風に吹かれ、体が少し冷え始めてきた頃。

    徐々に下がってきていた紺のハイソックスを
    ぎゅっと引っ張り上げてから、
    あたしは腰を上げた。


    パンパンとお尻をはらいながら
    しわがついてしまったスカートを整える。


    そして、すっかり黒へと
    変わってしまった空を仰ぎ見た。
  • 5 祀璃 id:.UF65wr.

    2012-02-09(木) 17:57:30 [削除依頼]


    漆黒の空を
    紅く染まった月がぼんやりと照らす。


    「…ぁ……一番星…。」


    キラッと小さな星が
    静かに輝いていた。


    (綺麗だな――…)


    そう思いながら星を見つめていた。


    「―――っ!!!」


    急に星が目がくらむほどに輝きだす。


    星から放たれた光は辺り一面を包み込み、
    やがて一筋の光となってあたしのもとへと伸びてきた。


    「…な……に…――?」


    この状況がのみこめないまま、
    あたしは、ただただ、立ち尽くしていた――…。
  • 6 祀璃 id:WwKnUoa.

    2012-02-10(金) 15:12:21 [削除依頼]


    伸びてきた光は一本の道のように
    どこまでも続いていた。


    ――ガサッ


    何かが動いたような音がした。


    慌てて音のした方を振り向くと、
    草木が生い茂っているだけだった。


    (気のせいかな……?)


    ゆっくりとまた、
    光でできた一本の道へと視線をもどす。


    ――ガサガサッ


    今度は確かに聞こえた。
    音とともに何かがいるという気配も……。


    ゆっくりと振り向くと
    草木の陰に怪しく光る眼があった。


    「――――っ!!!」


    (…怖い。…逃げなきゃっ――!!!)


    直感的にそう思った。


    その間にも怪しく光る眼は
    だんだんと増え始め、近寄ってくる。


    『決して外には出るな。


    悪魔や魔物、
    この世のものではない何かが
    お前を狙ってやってくる――…。 』


    ふと、レッドムーンデイの言い伝えが頭をよぎった。


    (…もしかして…、この眼は悪魔や…魔物……!?

    あたしを…狙ってる――…!?)


    そう感じた瞬間、
    怪しい眼をした何かが不敵に笑った。
  • 7 ichi id:Mss4XKI/

    2012-02-10(金) 16:49:58 [削除依頼]
    読んでいて引き込まれました!
    更新楽しみにしています^^
  • 8 祀璃 id:RYxBps..

    2012-02-14(火) 10:27:17 [削除依頼]


    * ichi 様

    コメントありがとうございます。

    もっと楽しんでいただけるように、
    更新頑張りまーす(*`^´)☆!
  • 9 祀璃 id:RYxBps..

    2012-02-14(火) 15:47:30 [削除依頼]


    その不敵な笑みは、昔からの言い伝えを
    肯定しているようにも感じた。


    怪しい眼を見つめながら、
    あたしは徐々に後ろへと下がる。


    足音を立てないように、
    怪しい眼をした何かを刺激しないように、
    最新の注意を払って――…。


    ――パキッ


    無音の空気の中に乾いた音が響いた。


    (…やばい――…)


    握りしめていた手の平にじわりと汗が滲み、
    背中にはひやりとした汗が流れた。


    (…今すぐ……今すぐ…家に帰ろう――!!)


    怪しい眼を見つめたまま、
    拳をぎゅっと強く握りしめた。


    するとまた、
    怪しい眼をした何かが不敵に笑った。
  • 10 祀璃 id:ooQE8cz/

    2012-02-17(金) 14:54:06 [削除依頼]


    「もう、遅い…」


    ボソッと掠れた低い声が耳元に届いた途端、
    怪しい眼をした何かは不敵な笑みをいっそう深め、
    あたしに向かって飛びかかってきた。


    (―――――っ!!!)


    くるっと向きを変え、
    全速力で逃げた。


    捕まったらあたしは二度と
    家に帰れないだろう。

    大好きな家族にも
    きっと会えなくなってしまう…。


    怪しい眼をした何かから無我夢中で
    逃げているのにも関わらず、
    何故か…どこか冷静な自分がいた――。
  • 11 祀璃 id:ooQE8cz/

    2012-02-17(金) 15:32:31 [削除依頼]



    「…っ……ハァ…ハァ…」


    息が上がり呼吸もうまくできない。


    あたしは光でできた一本の道の前で
    ついに足を止めてしまった。


    「…覚悟を決めたか――。」


    あたしと同じだけ走ったのにもかかわらず、
    怪しい眼をした何かは、息ひとつ乱さずに
    低く呟いた…。


    『30年に一度、月が紅く染まる日。


    異世界へと続く一本の道が現れる――…。 』


    また、レッドムーンデイの言い伝えが
    頭をよぎる。


    この光でできた道は、
    きっと異世界へと続く道――…。


    この道の先に逃げたとしても、
    家には帰れないかもしれない…。


    でも、ここで――、
    怪しい眼をした何かに捕まってしまうのなら…。


    (…イチかバチか…行ってみよう――。)


    そう心に決めて…。


    あたしは光でできた道の先――、
    異世界を目指して走り始めたのだった…。
  • 12 イチゴ id:rOJoBk9/

    2012-02-17(金) 15:35:39 [削除依頼]
    すごい(・∀・艸
  • 13 祀璃 id:65cAICU.

    2012-02-23(木) 14:02:37 [削除依頼]


    * イチゴ 様

    コメントありがとうございます。

    すごいだなんて…
    もったいない褒め言葉です(*-ω-)ノ

    これからも読んでやって下さい。
  • 14 祀璃 id:65cAICU.

    2012-02-23(木) 14:41:45 [削除依頼]


    光でできた道に足を踏み入れた途端、
    怪しい眼をした何かは悔しそうな顔をして
    あたしを捕えるのを諦めたのか、追ってこなかった。


    「――はぁ…。」


    怪しい眼から逃れられたことで安堵の息が漏れ、
    あたしは走ってきた方向に体を向けた。


    光でできた道は空に向かって伸びているようで、
    あたしが立っている場所からは、
    町全体が一望できた。


    「…おかあさん――。」


    家を見つけ、小さく今にも消えそうな声で
    あたしは静かに呟いた。


    「…心配かけて……ごめ、んなさい…。
    ほんと、に…ごめんね…ごめ、ん――…。」


    目頭が熱くなって、言葉に詰まる。

    全ての言葉が外へと吐き出されたとき、
    あたしの目からは涙が零れていた。
  • 15 祀璃 id:i80bRL//

    2012-02-28(火) 14:03:11 [削除依頼]


    泣いたってこの状況が変わるわけじゃないのに、
    目からはポロポロと涙が溢れて止めることができない。


    「…おかあさん――。」


    もう一度小さく小さく呟いて、
    あたしは手の甲で涙を拭った。


    「絶対に、家に帰るからね――。」


    ぎゅっと拳を握りしめて、
    自分に言い聞かせるように決意を口にする。


    ゆっくりとまぶたを閉じて深呼吸を何度かしたあと、
    あたしはよし、と軽く頷いて気持ちを切り替えた。


    体を、光でできた道の先へと向きなおし、
    あたしはまた一歩、異世界へ足を進めた。
  • 16 祀璃 id:FUl.DIG.

    2012-03-01(木) 10:52:53 [削除依頼]


    こつん、こつんと足音を響かせて
    光でできた道を歩く。


    もう、どのくらい歩いたんだろう…。


    光でできた道はどこまでも伸びていて
    終わりが見えない。


    履きなれてるとはいえ、
    固いローファーで歩いたせいか、
    足がだんだん重くなって、痛んでくる。


    (あぁ――…もう無理だ……。
    ちょっと休憩しよう――。)


    そう考えてあたしは道の端にしゃがみ込んだ。


    「はぁー……」


    口から勝手にため息がこぼれる。


    この道は本当に異世界に続いてるのだろうか…。
    続いてたとしても、あたしはたどり着けるのだろうか…。


    考えないようにしていても
    どんどんと不安が押し寄せてくる。


    「…………っ」


    涙が零れないようにぎゅっと目をつぶって、
    あたしは自分の膝に顔をうずめた。
  • 17 祀璃 id:eqFxwzO0

    2012-03-02(金) 10:50:05 [削除依頼]


    周りの静けさがゆっくりと
    あたしの心を落ち着かせる。

    秋の夜風が歩いて火照った体には心地よくて
    だんだんと体が重く沈んでゆく。


    「…………」


    気づけばいつの間にか眠ってしまったみたいで、
    あたしは慌てて立ち上がった。


    時計もないし、どのくらい眠っていたのかもわからない。


    (…とりあえず、歩こう…。)


    そう思った瞬間。

    光でできた道がカタカタカタと音を立てて小さく揺れた。
  • 18 祀璃 id:OQEaxn50

    2012-03-08(木) 11:59:58 [削除依頼]


    (…な、なに――?)


    慌てて辺りをきょろきょろと見渡すと、
    あたしが進もうとしていた方から何かが
    近づいてきているようだった。


    「――――っ」


    びくっと肩が揺れる。


    (もしかして…また――?)


    さっきの怪しい眼をした何かが脳裏に浮かんで、
    一気に緊張が走った。


    近づいてくる何かの影がだんだんと大きくなる。


    「――――ぇ」


    びっくりして、こんなとこにそんなものがあるとは
    これっぽっちも思わなくて、ぽろっと声が漏れた。


    プシューという音とともにバスがあたしの目の前に停車して、
    ドアがゆっくりと開いた。
  • 19 祀璃 id:Rpc097t/

    2012-03-13(火) 10:22:24 [削除依頼]


    「…………」


    ぽかんと口を開けたまま固まってしまう。


    光でできた道を走るバスにも驚いたけど、
    まさか人が乗ってるなんて…。


    「…おや、口が開いたままだよ…?」


    にこりと優しそうなお兄さんが微笑む。


    やわらかい茶色の髪に、銀色の瞳――。


    (…ハーフとかなのかな――?)


    なんとなくそう思ったのだけれど、
    あっさりとその考えは否定されてしまった。


    「…ふふ、ハーフなんかじゃないよ。」

    「…ぇ……?」


    (…なんで、あたしの思ったことがわかったんだろう?
    もしかして、声にでてたのかな――?)


    そんなことをまた考えながら
    正体不明のお兄さんを見上げると、
    ふふ、と優しい笑みが返ってきた。
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