僕らはあの時、この空の下に。20コメント

1 青空模様 id:Uuw8Oue.

2012-02-07(火) 11:44:41 [削除依頼]
『私達、これからも4人一緒にいられるかなぁ...?』

不安げな私の問いに、いつも笑顔で答えてくれた。

『当たり前だろ?だって俺たち...』

        ”仲間なんだからさ!”

その言葉...今も信じているのは私だけではないと、そう思ってもいいですか?
今日も私は、君達と繋がっている空を見上げる。

空を見上げる。
  • 2 青空模様 id:Uuw8Oue.

    2012-02-07(火) 11:48:24 [削除依頼]
    こんにちは&初めまして。
    青空模様と申します。

    何作か書いていたのですが、全て蹴ってしまいました。
    読んでいてくれた方、本当にすみません。
    この小説から、またスタートしたいと思います。

    この小説は、だいぶ前に書いていた「この空のマーチ」の
    リメイク版です。
    決してパクリとかではありません。

    よろしくお願いします。
  • 3 青空模様 id:Uuw8Oue.

    2012-02-07(火) 12:03:18 [削除依頼]
    【登場人物】

    *上川 柚 Yuzu Kamikawa
    高1。
    明るく活発で、いつも皆の中心の女の子。
    弱みを決して人に見せない。

    *櫻沢 圭 kei Sakurazawa
    高1。
    サッカー部所属の元気っ子男子。
    ちょっとヘタレだが、根はとても優しい。

    *南 由美 Yumi Minami
    高1。
    柚の良き相談相手。
    ほんわかしているようで、意外と強気。

    *佐々木 空也 Hironari Sasaki
    高1。
    しっかり者。野球部所属。
    天然だけど、毒舌。

    *4人は幼馴染*
  • 4 青空模様 id:Uuw8Oue.

    2012-02-07(火) 13:07:20 [削除依頼]
    *1
    「よしっ♪」

    部屋にある姿見の前で、くるりと一回転してみせる。

    「なかなか似合ってるかなー?」
    上川柚。今日から高校生。
    憧れだった制服。短くなったスカート丈。
    少し大人っぽく見える自分。
    柚は浮き足立つ思いだった。

    「柚っ!!お前そろそろ出ないとバスの時間間に合わんぞ!!」
    「えっ?...わっ!!本当だ!!」

    父の声に時計を見ると、もう7時半。
    ド田舎に住む柚の家からでは、この時間に出ないと間に合わないのだ。
    慌ただしく鞄を肩に引っ掛けリビングに向かう。
    小さな仏壇に飾られている写真に向かって手を合わせた。

    「いってきます、お母さん。」
    そして急いで玄関に向かうと、ドアを乱暴に開けて外へと飛び出した。

    「全く…」
    柚の父は、大きな音を立てて閉められたドアを見ながら呟く。
    「そそっかしい所までそっくりだなぁ…」
    その瞳は、どこか遠くを見つめていた。
  • 5 青空模様 id:Uuw8Oue.

    2012-02-07(火) 13:26:17 [削除依頼]
    舗装もされていない田んぼ道を、息を切らしながら駆けていく。
    そして柚は目の前を歩いていた3人組へ飛びついた。

    「おっはよー☆」
    「うわああぁあ!?」
    朝っぱらからリアルな叫び声を上げたのは、櫻沢圭。
    「柚!おはよう!」
    柚へと愛らしい笑顔を向ける南由美。
    「ああ、はよ」
    特に動揺もせずに挨拶を返した、佐々木空也。
    柚を含めるこの4人は、幼馴染だ。
    子供もあまりいない、一番近い店は10キロ先のコンビニ。
    そんな田舎で奇跡的に同い年の子供が、しかも4人も揃ったのだから、
    幼馴染になるのも当たり前なのかもしれない。
  • 6 青空模様 id:Uuw8Oue.

    2012-02-07(火) 13:38:40 [削除依頼]
    「な…何だ柚か…」
    圭は今だに柚に抱きつかれた驚きが治まらないようで、
    超ビビった顔をしている。

    「柚が意味不明な行動をするのはいつもの事だろ…。何今そんなに驚いてんだよ」
    「あ!意味不明って何よ!」
    空也の言葉にすばやく反応した柚が、キッと空也を睨む。
    「あー…怖っ」
    空也がぼそりと呟くと、その隣を歩いていた由美が噴き出した。
    「あはははは!!怖がってるように見えんよ、空也!!」
    4人以外見当たらない土っぽい田舎道に、由美の華やかな笑い声が響く。
    いつもと変わらないこの時が、何だか今日は心地よかった。
    笑い過ぎ、と空也が由美を小突く。
    遠くにバス停の標識が見えた。
  • 7 青空模様 id:Uuw8Oue.

    2012-02-07(火) 14:08:21 [削除依頼]

    目の前を、ひらひらと薄桃の花びらが舞っていく。
    「あ、ここだ。森谷第一高等学校。」
    柚が校門を指差す。

    「おおー…一回受験しに来ただけなのにね。何だか懐かしいわぁ」
    由美は中学よりかなり大きくなった校舎を見上げ、目を細めた。

    ここの高校は、校門と体育館へ続くところに見事に咲き誇っている。
    まるで、自分たちの入学を祝ってくれているかのように。
    春の柔らかい日差しに照らされているその姿は、何だか眩しかった。

    「おーい、柚ー!由美ー!」
    先に玄関前に貼り出されていたクラス表を見に行っていた圭と空也が戻ってくる。
    柚と由美は桜へと釘付けだったその視線を、2人に移した。
    「喜べよ。柚と、空也と、由美が2組で…」
    「マジでっ!?」
    「「キャーーー!!」」
    同じクラスだった事に、由美と柚は抱き合って歓喜する。

    「…で、なんと!俺も2組だ!!」
    女2人の喜びの悲鳴に割って入るように、圭は堂々と言い放った。
    途端に由美は、冷たい目線を圭に向ける。

    「…はあ?アンタも居るの?圭はいらんから、一人寂しくしとけ」
    「…え…」
    マジで傷ついた表情をする圭。
    そんな様子に、普段はポーカーフェイスな空也もたまらず爆笑した。

    「由美…俺…今ちょっとマジでガラスのハートにキズがついたぞ…」
    「あ、柚っ!!あの人イケメンじゃない!?」
    「えっ!?どこどこ!?」
    「…おおおおい!!!」

    あっさりスルーした由美と柚に、たまらず圭の激しい突っ込みが入る。
    4人は桜の木の下で、顔を見合わせて笑った。
    笑いながら空を見上げた柚の瞳に、綺麗な蒼が映る。
    皆が笑顔だったこの日、この空の下。

    もうこの時から、運命の歯車が…少しずつ、少しずつずれ始めていた事に
    4人は気付かなかった…。
  • 8 青空模様 id:Zx68AQI/

    2012-02-09(木) 12:34:23 [削除依頼]
    *2
     入学式は、思っていたより気軽なもので、睡魔との闘いに必死だった。
     柚が欠伸を噛み殺していると、由美が隣からトントン、と肩を叩いてくる。

    「ゆずゆずっ、私達、教室行ったら大変かもっ」

    大変かも、という言葉の割には楽しそうな笑みを零す由美。

    「何で?そんなに目立つ方でもないでしょ?私達」
    「私達はねっ!でも…アイツらが…」
    「…?」

     由美の言う【アイツら】がピンとこなかった柚は、とりあえず小首を傾げてみる。
    そんな柚を見て、「まあ、後になったら嫌でも分かるよ」と由美は言った。
    そしてその【大変】の意味を、柚はこの式の後に、由美の言葉通り知る事になる…。


     まだ見慣れない教室の隅に、幼馴染4人は固まって談笑していた。

    「…圭、空也」
    「ん?」
    「何だよ」

    遠慮がちに発せられた柚の声に、2人が振り向く。

    「…あのさ、もう少ーし距離と取ってくれない?」
    「…はあ?」

    意味不明な柚の言葉に、圭が眉を寄せた。

    「意味分かんねー。っつか、何か教室入った時から変だぞ?お前」
    「熱でもあるのか?」

    と、空也が柚の額に手を乗せる。
    柚は慌てて空也から離れた。

    「だっ…だから!!もう少し距離を…」
    「だから何でだよ!!」
    「何でって…」

     柚は思わず、チラリと隣に立っている由美を見た。
    「ほら見ろ」とでも言いたげなニヤニヤ笑いをしている。
     次に柚は、周囲へと視界を這わせた。
    そこには…恐ろしい形相で、柚たちを睨む女子達…。
    聞こえてくる話し声の中に、
    「何あの人たち…、あんなイケメン二人を独占してさ…」
    という言葉が混じっていた。

    「二人は…気付いてないの?」
    「「何に?」」

     見事にハモった二人を一瞥すると、柚はため息をつき、由美はいっそうニヤニヤした。
     なるほど…中学ではこんな田舎だから同じ小学校出身の子がほとんどだったし、皆仲が良かったから気付かなかったけど…。
    コイツら…『イケメン』だったのか…。
     
     柚は圭と空也をじぃっと見つめた。
     確かに、圭は色素の薄い綺麗で大きな二重。
    瞳と同じ色の、淡い茶のストレートヘアー。
    高い鼻に、色白の美しい肌。
    まるでハーフと間違えられそうな容姿だ。

    一方の空也も、優しそうな光を湛えた漆黒の瞳。
    穏やかな笑みに、柔らかな黒髪。
    スラッと伸びた足は、モデル顔負けだ。

    「はあぁー…」
    「な…何だよ…人の事ジロジロ見て、そのため息は…」

    圭が不満そうに口を尖らせる。
    空也はクスッ、と笑っただけだった。

    (【大変】って…こういう事だったのか…)

    柚の視界の片隅に入った由美は、パチンとウインクしてみせた。
  • 9 青空模様 id:YiW9pny1

    2012-02-11(土) 15:18:12 [削除依頼]
    ―Hironari Side

    タンタンタンタン…。

    「…圭、少し黙れ。式の最中だ」
     空也は眉をひそめて、隣にいる圭を注意した。

    「ああ?喋ってなんかねえだろ?」
    「…足」
    「ぬ?」

    圭は足元へと視線を向けると、自分が無意識のうちに足を揺らし、貧乏ゆすりをしていた事に気付いた。
    罰の悪そうな圭に対し、空也がふうっとため息を吐く。

    「…まあ、イラつくのは分かるけどさ。」
    そう言うと、空也は前方へと視線を向けた。
    そこにはいかにも軽そうな男子達と、さらに向こうに柚と由美の後ろ姿も見える。
    眠そうな柚に由美が話しかけているようだった。
    そして圭と空也の耳には、目の前の男子たちの会話が届く。

    「おい、あそこの女子二人可愛くね?」
    「いや、黒髪ボブの子は可愛いってより美人だな」
    「俺は明るめのふわふわ二つ結びの子がツボだなー♪」

    黒髪ボブといえば柚、
    ふわふわの二つ結びといえばキャラメル色の緩くカールした髪を持つ由美だろう。

    空也は圭の固く握られた拳と青筋の入ったこめかみを見て見ぬフリをした。
    圭はいくらイラついても、よっぽどの事がない限り暴力はしないハズ。
    しかし空也は確かに安心したが、それと同時に切ない瞳を浮かべた。

    (…圭がこんなにイラつくのは、ただ幼馴染をいやらしい目で見られたからじゃないよな…)

    きっと、一番の理由は―…。

    「なあ、圭…」
    空也がポツリと圭に呼びかける。
    だがその声は式の終わりを告げる教頭のスピーチで掻き消され、圭の針のような視線が前方から離れる事はなかった。
  • 10 青空模様 id:YiW9pny1

    2012-02-11(土) 15:38:45 [削除依頼]
    ―Yumi Side

    「由美のハートを射抜いてくれる人に出会えなかった!!ショックだあ〜↓」

    入学式の帰り道。
    私達はバスから降り、また朝通った田んぼ道を歩いていた。
    4人が歩く度にピチャピチャと音を立てながら泥が飛んでくる。
    初日は半日までしかないので、まだ太陽は高いところにあった。

    「そんな…今日はまだ入学式なのに…?」

    あまり恋愛というものに興味を持たない柚は、由美のあまりに早い発言に苦笑いを浮かべる。

    「あっまーい!!甘いよ柚!!圭ん家の新鮮なニンジンより甘い!!」
    「…例えが田舎っぽい…」
    「男は黙らっしゃい!!いい?柚。出会いとは初日が肝心なのっ!!」

    柚はせっかく綺麗な顔立ちをしているのに、鈍い上に恋愛する気ナシなんてもったいない。
    由美は空也の呟きを大声で制し、柚に力説した。
  • 11 青空模様 id:YiW9pny1

    2012-02-11(土) 16:13:46 [削除依頼]
    >10 それでも柚は困ったような笑みを浮かべるだけ。 恋愛体質である由美には、どうしても理解しがたかった。 「まあ由美、その辺にしとけ。 お前みたいに変な男に柚が引っかからないよりはいいだろ?」 圭が柚の前に歩み出る。 「変な男って!!でも経験を積むのは大事だからね、柚!」 「何の経験だよ…」 幼馴染の軽くショッキングな発言にうなだれる空也。 ただし由美の目には入っていない。 「そうだ、柚。次の日曜中心街に行かない?」 「わあ、久しぶりだね!」 「うん!それに街に出れば、きっといい出会いが…」 「待てぇえええぇ!!」 由美の誘いは、圭の絶叫で断ち切られた。 「だっ…だめだ!柚に出会いなん…じゃなくて、女二人で中心街なんて!」 「はあ?もう何回も由美と行った事あるよ?」 さすがの柚も、圭の意味不明な行動に眉を寄せる。 「うぐっ…と、とにかく!!行くなら俺と空也もついてくからな!」 「え?俺も?」 「何で二人してついてくるのよー!」 「俺も?」 必死の形相の圭と、不思議でたまらない様子の柚と、巻き添えの空也。 そんな3人の様子を、由美はケラケラと笑いながら見ていた。 その時、圭が柚の頭にそっと手のひらを乗せる。 由美はそれを見てフッと笑うと、3人に混じってじゃれ付き始めた。
  • 12 青空模様 id:6NQbeU//

    2012-02-18(土) 12:39:33 [削除依頼]
    ―Kei Side
    「バイバーイっ!」
    「また明日な」

    途中で柚と空也と別れ、家の方向な同じな由美と田舎道を歩く。
    ふと圭はとある事を思い出したように言った。
    「ああ、由美!ホントに、合コンみたいな目的で柚を中心街に連れてくなよ!」
    これだけは切実に、だ。圭は吠えるように豪語し、由美を睨む。
    「もう!し・つ・こ・い!!分かってますって!!だから柚は恋出来ないんだよ!!」
    由美も応戦するように、大きな声で圭に言った。
    「あ、アイツが恋しないのはアイツが鈍感だからだろ!?」
    いつものように言い返したつもりで圭は言ったのだが、目の前の由美を見て、固まった。
    何だか由美は、とても痛そうな顔をしていた。
    「…由美…?」
    圭はいつもと異なる由美に不安を感じ、彼女の名を囁く。
    すると由美は、フ…と儚い笑みを漏らした。
    「鈍感だから…なかなか圭の想いが届かないのかな…」
    「…え…」
    由美の言葉に、間抜けな声が出る。
    「俺の…想いって」
    「さあって!圭、今日もニンジン頂戴ね!夕飯に使うから!」
    圭の問いにわざと重なったように、由美が踵を返した。
    「おいっ、由美!」

    ―俺の想いって…どうしてお前が気付いてんだよ?

    そう問おうと圭は口を開いたが、由美の背中を見て、閉じた。
    聞かないで、と訴えられているように感じた。

    「…めちゃくちゃ旨いニンジン、あるからなっ!!」
    圭はそう言う事しか出来ずに、由美の後を追った。
  • 13 青空模様 id:6NQbeU//

    2012-02-18(土) 12:49:10 [削除依頼]
    〜変更点。
    今までそれぞれのSideを三人称(「圭」、「柚」など)で書いていましたが、実力不足により無理だと判断しました。
    これからは一人称で書くのでよろしくお願いします。
  • 14 青空模様 id:6NQbeU//

    2012-02-18(土) 13:16:49 [削除依頼]
    ―Yuzu Side

    チーン……

    どこまでも伸びゆくような、心地いい音がリビングに響く。
    その音に合わせてリビングの隅で私はそっと手を合わせ、目を閉じた。
    (お母さん……柚は高校生になりました。圭たちも一緒だから楽しい3年間になりそう。今日の入学式も楽しかったよ。
    だから…これからも見守っていて下さい)
    心の中でそう言うと、私は閉じていた目を開き、小さな仏壇を見つめた。
    薄くちろちろと立つ線香の煙と、その後ろで微笑むお母さんの写真。
    もう10年以上前のものだから、随分若く見える。
    大きなお腹に優しく手を置き、幸せが溢れんばかりに表情に表れていた。
    「お母さん……」
    ぽつんと呟く。
    お母さんは…私を生んでくれたその3年後、病気で亡くなった。
    私が1歳半になったあたりに癌が見つかり、病魔はあっという間にお母さんの体を蝕んでいったそうで。
    でもお母さんは……余命半年と言われていたのに、宣告より1年も長く生きてくれた。

    『柚の成長を、少しでも長く見守りたかったんだろうな……』

    中学生の頃お父さんが話してくれたとき、私は涙を止めることが出来なかった。
    「……ありがとう」
    自然と口から出た言葉は、優しい響きを纏っていた。
  • 15 青空模様 id:6NQbeU//

    2012-02-18(土) 14:31:46 [削除依頼]
    ―Hironari Side

    俺はどうしたいのだろう…。

    心の中で自問してみた。もちろん答えは出ない。
    こうやって柚の家の前で立ち往生して、もう5分は経つだろう。
    「…はあ」
    あまりに思い切りの悪い自分自身に呆れ、ため息を吐く。
    そもそもこうなったのは、先程入学式から帰ってきた10分が事の始まりである。
  • 16 青空模様 id:6NQbeU//

    2012-02-18(土) 16:01:31 [削除依頼]
    >16 入学式から帰ってきて、自室で長袖のTシャツとジーンズに着替えリビングへとやってきた俺に突き出されたのは、紙袋だった。 「……何これ」 思い切り眉を寄せて、尚もそれを突き出してくる母親に尋ねた。 「ん? 煮物よ。作りすぎちゃったから、柚ちゃん家にお裾分けしてきて」 「……何で俺が」 「アンタが一番暇そうだからよ」 姉貴は、と言おうとして、リビングからちらりと見た玄関にいつものド派手なパンプスが無い事に気付いた。 「……」 「いってらっしゃい」 諦めたように黙り込んだ俺に、母親はにっこりと笑い、小花柄が描かれた袋を持たせた。 ――――… という10分間を過ごし、今に至る訳だ。 小さい頃はよくお互いの家を行き来していたし、今だって圭や由美とならすんなり入れるのに、いざ一人だとどうもインターホンを押しにくい。 無意味にその辺の植木の葉を毟っていると、突然ガチャッという音が聞こえた。 驚いた俺の肩は、情けないくらい飛び上がる。 跳ね上がった心臓を落ち着かせながらその音の方向に視線を巡らせると、玄関からひょっこり顔を出した柚がいた。 「あれ、空也?」 「柚……」 多分、紙袋の中の煮物はもう冷え切っているだろう。
  • 17 青空模様 id:6NQbeU//

    2012-02-18(土) 16:27:10 [削除依頼]
    ―Yuzu Side
    「あれ、空也?」

    コンビにで立ち読みしにでも行こうかと玄関のドアを開けると、小花柄の紙袋を持った空也がいた。
    黒髪で古風な整った顔立ちに、何だかその柄がマッチしている。
    「こんな所で何してるの? それと、それ何?」
    空也の持つ紙袋へと興味が惹かれた私は、透視出来る訳でもないのにじ〜っとそれを見つめてみた。
    空也は苦笑いしながら紙袋を突き出す。
    「煮物。お袋が作りすぎたんだって」
    受け取ってみれば、ふわっと美味しそうなダシの匂いが鼻孔をくすぐる。
    「わあ〜ありがとう! 空也のおばちゃんの煮物、おいしいよね!!」
    「そりゃどうも」
    満面の笑みで言う私に対し、空也は僅かな微笑みだけ。
    うーん、相変わらずポーカーフェイスだなあ。
    「柚は何してたんだ?」
    空也の問いに、私はさっきまでの行動を思い出しながら答えた。
    「えーと、帰ってきて、着替えて、キットカット食べて、お母さんにお線香あげて…」
    「プッ…」
    で、コンビニに立ち読みしに行こうとしてた、と言おうとして、空也が吹き出した。
    「…何さ。人が真面目に答えてんのに」
    じろりと睨むと、空也はクスクスと笑いながら言った。
    「わざわざ順を追ってまで言わなくていいって」
    それから、真面目な、でも優しい微笑みを浮かべて
    「久しぶりに俺も線香……いい?」
    と私に告げた。
  • 18 青空模様 id:6NQbeU//

    2012-02-18(土) 16:38:35 [削除依頼]
    >17 ――チン。 私がさっき鳴らしたのよりも短い、淡白な音がリビングに響いた。 空也は手を合わせて、お母さんにお久しぶりです、なんて言っている。 そっか。空也がうちにくるのは1ヶ月ぶりくらいか。 毎日のように遊んでいた頃に比べると、かなり久々だ。 その仏壇へと合わせる手も、何だか大きくなったように見えた。 空也の長い睫毛がそっと動き、空也が私へと向き直る。 「久々におばさんに会えて良かったよ。高校生になったって言えたしな」 「うん……私こそ、ありがとう」 私と同じ事をお母さんに言っていた空也に笑いつつ、仏壇に供えられた花を整えた。
  • 19 青空模様 id:6NQbeU//

    2012-02-18(土) 17:03:18 [削除依頼]
    ―Hironari Side

    仏壇に供えられた可憐な花達を整える柚を見て、思った。
    ――なんて、切ない表情だろう。
    その思いは、口を伝い、疑問となって彼女に届いた。
    「柚……お前、寂しくないのか?」
    電気こそ点けていなくても、明るかった部屋の中が不意に暗くなる。太陽が雲に隠れたのだろうか。
    薄暗い景色の中に、沈黙が加わり、何やら空気が凍えるように感じた。
    「……柚?」
    応答が無いので、呼びかけてみる。
    ……返事はない。
    「……おい。柚」
    「……」
    また返事をしないのかと、俺が口を開いた、その時だった。
    「――よ……」
    小さな、まるで雪が舞い落ちるようなか細い声が聞こえた。
    「え……?」
    「大丈夫、寂しくないよ……」
    「嘘つけ」
    柚には悪いけど、下手過ぎる。見え透いたウソ。
    「嘘じゃない」
    「嘘だ」
    「嘘じゃないってば! ほらっ、こんなに元気じゃん!!」
    にんっ、と柚が笑う。だけどそれは、彼女をただ切なく見せる……だけだった。
    「いい加減にしろっ!!」
    気付けば俺は怒鳴っていた。大声を出すなんて、久しぶりだ。
    俺自身でさえ驚きなのに、怒鳴られた柚はその大きな瞳を零れんばかりに見開いている。
    そしてその目は……今にも落ちそうな雫で、キラキラと輝いていた。
    俺は手を伸ばす。ほとんど無意識に。
    柚が肩をビクつかせたのが分かったが、気付かないフリをした。
    そして俺は……そっと優しく、柚を抱きしめた……。
    窓からは、また太陽が顔を覗かせていた。
  • 20 青空模様 id:ZoHtOLd.

    2012-02-28(火) 18:35:08 [削除依頼]
    ―Yumi Side
    こんな田舎に似合わないピンクのミュールを見つめながら、私は歩いていた。
    一旦家へと帰った私は、私服に着替え柚の家に向かっている。
    キラキラとスパンコールに飾られたミュールのリボンが、今の私の心と相反してきらめいていた。
    「はあ…」
    思わずため息をつく。
    どうして…あんな事、今更口走っちゃうの…?
    これじゃあ、いくらあの圭でも不思議に思うだろう。
    どうして私が、圭の想いを悟る事が出来たのか。
    その問いに、どうして答えなかったのか…。
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