理不尽な月6コメント

1 智叉 id:ez-pIk1J4P1

2012-01-21(土) 22:12:18 [削除依頼]

「俺の女、音楽、人生その他諸々、俺に纏わる全ての価値を決めるのは、俺だ」
「約束されたものなんてな、残念ながらこの世界にはどこにも存在していない。未来永劫にない」
「お前は人間か。人間なら、要するにお前はどうしたいんだ」


.

要するに私は、自分の世界から抜け出したかったのである。
  • 2 智叉 id:ez-pIk1J4P1

    2012-01-21(土) 22:36:31 [削除依頼]

     私は何者だろうか。ふと考え孤独な街の真ん中で立ち尽くす。なんのために此処に在って、なんのために息をして、なんのために食物連鎖の上に立って動物の命を奪い、なんのために規則に則られた日々を繰り返して、なんのために生きていくのだろうか。「私」に意味はあるのだろうか。あるとしたらそれは何か。 私を正当化するためにあらゆる物々を犠牲にし、そうしてまでこの世界にいることが果たして正しいのだろうか。良いか悪いかであったら、きっと悪い。
     何故私は「私」なのだろうか。
    「私」は誰なんだ。なんなんだ。


     思考は無限ループして、立ち尽くしていたはずの私はいつのまにか雑踏に呑まれ、気持ち悪い波の動きに為されるがままである。
  • 3 智叉 id:ez-ioMcEvs.

    2012-01-29(日) 10:08:14 [削除依頼]

     幸せの定義は人それぞれだというけれど、そうはいっても人間はやたら他の者と比較したがる生き物である。私とてされる身として例外ではない。

    「黄って本当うらやましいわー」
    「勉強出来て彼氏もいて。いいね、華の高校生活って感じ」

     クラスで行動を共にしている女子二人によると、私は周りからしてみれば十分なほどの幸せ者で、この上なく青春を謳歌しているらしい。このような現状をリアル充実、略して「リア充」と呼ぶらしいが阿呆らしすぎて反吐が出る。
     そのナントカという単語に私が収まっているのも腹立たしいが、まずその内容が私のそれとは合致していない。謳歌どころか降下だ。なんの代わり映えもない、自分の存在価値すらも見いだせないような日々が「充実」しているように見えるなんてめでたい頭だこと、と身の回りの連中を嘲笑ってやりたいくらいだが生憎そのような面倒事をする気にもならない。他人の目には私じゃない私が映っているけれど、それすらどうでも良く感じるようになってきている始末だ。


     私が彼に出会ったのはそんなある日のこと。私が無意味な十七年目を迎えた雨の午後だった。
  • 4 智叉 id:ez-ioMcEvs.

    2012-01-29(日) 16:17:18 [削除依頼]

    「黄、誕生日おめでとう」
    「ありがとう」
    「美味しいものでも食べ行こうよ。今日俺部活ないし」
    「あ、ごめん、夜親と約束あるから早く帰んなきゃ」
    「あー……そっか。ま、また別の日に二人で祝おう」
    「うん」

     海斗は初めて私に告白をしてきた男だったから付き合った。ただそれだけだ。私は彼を嫌いでなければ、恐らく好きでもない。一緒にいてつまらないわけでもない。つまらないのはこの私である。それでもその笑顔一つ崩さず優しく私に愛情を注いでくれる、奇特な人物であった。彼はイイ人だと思う。けれど彼に対してときめき云々の感情を抱くことは一切なかった。そもそも私があらゆるモノに特別感情を動かされることなど滅多になかった。


     人通りの少ない路地裏を歩いていた。雨だった。傘を忘れてしまったのでなるべく雨に濡れないよう、普段は選ばないような狭い通路をかい潜っていた。

     小さなライブハウスの裏口の前に、彼はいた。
  • 5 智叉 id:ez-N96dkbg/

    2012-02-06(月) 17:40:34 [削除依頼]

     天候の悪さもあり既に辺りは薄暗くなっていたため、錆びたドアの前に腰を下ろし長い脚を道に投げ出すその人の顔はよく見えなかった。黒い革のジャケットに黒い細身のパンツ、緩くパーマのかかった長めの黒い髪が顔を覆っている。外見からして男のようだが、雰囲気だけでいえばあまり好ましくない。俯き加減で足早にその場を通ろうとしたときだった。

    「お前知ってる?」

     芯の通った低い声が私を呼び止めた。反射的に足を止め、黒い塊を見下ろす。

    「いま世界には七十億人の人間がいるんだぜ」

     ゆっくりとその頭が起き上がった。前髪の隙間から覗く瞳もまた漆黒で、頬のこけた顔だけが異常に白い。死神のようだと思った。鎖を巻き付けた鎌が似合いそうだ。
     私が黙って見下ろしたままでいたからか、男は喋り続けた。

    「一つの人生において七十億人全員に会うのはまず無理だ。だから俺は本当に七十億人この世界にいるのかどうかなんてわかりっこねえ。俺が七十億人分の一人っていわれても実感なんてこれっぽっちもわかねえな。世界って広いよなあって漠然なことしか思えない」
    「つまり何が言いたいんです?」

     そこで私は初めて口を開いたのだが、男が少々面食らった表情で「お前喋れんのか」とわざとらしく鼻で笑った。

    「全然喋んねえからその口はお飾りかと思ったぜ。いいか、使えるものは生きてるうちに使っとけよ」
    「だから、何」

     先程より倍はでかいであろう、私の怒気を含んだ声を聞いて男は愉快そうに片頬を吊り上げた。

    「俺は俺と目の前にしたものしか信じられねえ。いまお前を目の前にしているという事実くらいしか信用できないってことだ」

     結局何が言いたかったかは不明だ。
  • 6 智叉 id:ez-L//XfKw1

    2012-02-10(金) 00:01:24 [削除依頼]

     男は自分はバンドマンなのだと言った。確かに彼の背中にはライブハウスがあるし、格好もそれらしく見える。男がのそりと体を起こして立ち上がった。顔の位置は私よりも頭一個分高く、ひょろひょろとした薄っぺらい体だった。

    「お前ここ通るの初めてだろ? 俺初めて見たもん」
    「いつもここにいるんですか?」
    「ここが俺の職場であり、活動場所だからな」

     このライブハウスで働きながらバンドとしてライブ活動も行っているということだろうか。この小さなライブハウスで生計が立てられるのかが気になる。
     さっさと立ち去るつもりがつい足を止めてしまい、気がつけば親と約束してる時間も迫っている。屋根から滴れる雨粒が肩に落ちて染み渡る感触が急に気になるようになった。

    「……じゃあ、行かなきゃなので」
    「言っとくけど俺別に怪しい輩じゃないからな。新手のナンパと勘違いすんなよ」

     では一体何なのだ、と疑問を口にする前に男がそれを遮った。

    「いち聴衆者へのいち表現者としての意見だ」

     男は長い前髪を掻き上げ不適な笑みを浮かべた。端正な顔立ちが、海斗に少し似ていると思った。
コメントを投稿する
名前必須

投稿内容必須

残り文字

投稿前の確認事項
  • 掲示板ガイドを守っていますか?
  • 個人特定できるような内容ではありませんか?
  • 他人を不快にさせる内容ではありませんか?

このスレッドの更新通知を受け取ろう!

ログインしてお気に入りに登録すると、
このスレッドの更新通知が受け取れます。

最近作られた掲示板

お気に入り更新履歴設定

お気に入りはありません

閲覧履歴

  • 最近見たスレッドはありません

キャスフィへのご意見・ご感想

貴重なご意見
ありがとうございました!

今後ともキャスフィを
よろしくお願い申し上げます。

※こちらから削除依頼は受け付けておりません。ご了承ください。もし依頼された場合、こちらからの削除対応はいたしかねます。
※また大変恐縮ではございますが、個々のご意見にお返事できないことを予めご了承ください。

ログイン

会員登録するとお気に入りに登録したスレッドの更新通知をメールで受け取ることができます。

お気に入り更新履歴設定

お気に入りはありません
閲覧履歴
  • 最近見たスレッドはありません