貴方の名前と終わりの旋律11コメント

1 憂理 id:XgLXxnQ.

2012-01-10(火) 16:52:33 [削除依頼]

むせ返るような薔薇の匂いが立ち込める。
ああ窒息する。この小さな庭は薔薇に侵食された、とんでもなく長い迷路なのかもしれない――
頭がくらくらする。なんて甘い匂い。
溺れる、と思った。
薔薇に溺れてしまう。この真っ赤な海に、沈んでしまう。ああでも、でも――


溺れることができたら、どんなに楽だろう。


/貴方の名前と終わりの旋律
  • 2 憂理 id:XgLXxnQ.

    2012-01-10(火) 16:56:53 [削除依頼]

    初めまして、かそうじゃないかもしれないですけど憂理です。

    もう一作書いていますが全く進みません。動きません物語が。
    というわけで、一度書いてみたかった小説を書いてみようと思いました(´`*)
    頭の中のイメージをそのまま書けたらいいなと思っています。

    どうぞ気軽にお立ち寄りください(*´o`)ノ
  • 3 憂理 id:XgLXxnQ.

    2012-01-10(火) 17:07:55 [削除依頼]

    携帯電話のディスプレイがやかましく光を瞬かせた。バイブ音がフローリングの床の上で耳障りな音をたてる。
    東城麻耶はのっそりとベットから体を起こして床に置いてある携帯電話を覗き込む。「美沙」の文字が映し出されていた。
    メールを開きながらふとベッドの横にある窓の外をのぞいた。溶け出しそうな光が燦々と降り注いでいる。
    冬だってのに、暖かそうな光だ。
    鍵を開けて、窓を横に引く。冷たい風がするりと部屋の中に入ってきた。
    確かに気温はあるのだろうが、やはり冬の空気は冷たい。どこかしんと冷えていて、優しそうな太陽の光も冷たく見えるときがたまにある。
    昼までぐうたらと寝ていたせいか、彼女の頭はぼんやりと冴えないままで靄がかかったかのようだった。冷たい風を肌に感じるうちに、なんだか頭が冷えてきた。のろのろと起き上がる。長期休みは生活リズムが崩れる。朝遅くまで寝ているとその後の予定もだらだらになってよろしくない。悪循環である。
  • 4 憂理 id:xUGHZAQ1

    2012-01-11(水) 20:17:48 [削除依頼]

    メールの文面に目を通す。「このまえ言ってたCD貸すよ、ついでにうちにこない?」短い文は絵文字でごちゃごちゃに彩られている。いくつもちがう絵文字が連続して並んでいるせいか何を言いたいのか分からなくなる。麻耶は「うんもうすぐ出るね」とだけ答えた。絵文字をつけようか少しの間考えてからやめる。送信ボタンを押して、ベットの上に投げ捨てた。
    ジーンズにレースニット、それにダッフルコートを羽織った簡単な格好にする。
    朝ごはん――いやもう昼に近い――どうしようか。麻耶はふと昨日の夜はやけに味の濃いまずいカップラーメン一つしか食べていないことを思い出した。カップラーメンは作るのはとてつもなく簡単だが、何度食べてもあの味には慣れない。同級生たちが迷わずコンビニで購入するところを見るとぎょっとする。私の舌は、おかしいのかしら――添加物の味しかしないじゃないの!
    冷蔵庫からヨーグルトを出して、立ったままかきこんだ。味など関係ない。とりあえず食料補給である。
    これでいいや、と彼女は靴を履いて玄関を出た。鍵が閉まっていることを確認して歩き出す。
    どうしておなかは空くのかしらとからっぽになったヨーグルトの容器のことを思う。どうしてもだるくたって、めんどくさくたって、悲しくたって、たとえ愛する人が死んでも、腹だけは空くのだ。いつだって人間は食事を作るために立ち上がらなければならない。立ち上がらないことはすなわち人生の終わりを指し示す。
    どうしておなかがへるのかなー。
    へんてこりんな歌を彼女は思い出した。なんでこんなにおかしな歌があるのだろうと思ったものだけど、案外共感を得られることにたったいま麻耶は思い知った。
  • 5 憂理 id:xUGHZAQ1

    2012-01-11(水) 20:19:23 [削除依頼]

    *
    思うように文が書けなくてもどかしい……
  • 6 憂理 id:xUGHZAQ1

    2012-01-11(水) 20:32:39 [削除依頼]

    ひゅう、と冷たい風が踊る。
    空は抜けるように青く、どこか拍子抜けするような空だった。雲がちぎれた水団みたいにうすべったく広がっている。
    麻耶はコンクリートに伸びる、自分の長い影をぼんやり見つめて歩き出した。
    影はいつでもどこでもついてくる。私の化身。たったひとりの私と私。
    彼女はぼんやりと何も考えないで歩いていた。自分の足音だけが耳に入ってくるような気がした。
    「あれ、麻耶?」
    突然名前を呼ばれてびくりと立ち止まる。何も悪いことをしたわけでないのに、なんだかぎくしゃくとしてしまう。
    どこか聞いたことのある声だと、彼女は少し動きを止めて体を捻らせた。
    「修」
    彼は栗色のくるくるした髪の毛を風になびかせて、人懐こそうな笑みを麻耶に向けた。
    「ああ、やっぱり。久しぶり」
    「そうだね、最近全然会ってない」
    神谷修は麻耶の幼馴染だった。高校に入ってからあまり顔を合わせなくなったものの、たまに会った時に公園でくだらない話をしたりした。修の彼女の愚痴とか、学校であった馬鹿らしい話とか、どうでもいいことばっかりえんえんと。
    「麻耶が会ってくれないんでしょー」
    何を、と麻耶は苦笑する。
  • 7 憂理 id:xUGHZAQ1

    2012-01-11(水) 20:40:58 [削除依頼]

    「修には可愛い可愛い彼女さんがいるじゃないの。私この前駅で見かけちゃった」
    肩をすくめて冗談交じりにそういうと、彼は少し顔をゆがめた。「最近冷たくてさあ。愛想つかされちゃった」
    「ばっかねえ。大丈夫よ、どうにかなるもんだから。そうじゃなきゃ分かれればいい話でしょう」
    適当に彼女は返事を済ませる。ありきたりな、儀礼的なお返しの言葉。修は少しの間麻耶の顔を見つめてからふっと視線を外した。その時だった。麻耶の頭の片隅に、あのメロディが流れる。流れるのを恐れていた、ひどく悲しくせつないメロディが。
    はっと彼女は背筋を伸ばす。――うそ。うそでしょう。そんな……そんなことって――
    ピアノの奏でる冷たい旋律が、彼女の頭でぽろんぽろんと流れる。
    麻耶は自分の顔から血の気がひいていくのが分かった。愕然とする。

    そんな。じゃあ、じゃあ。修は、今日――


    死ぬのか。
  • 8 憂理 id:xUGHZAQ1

    2012-01-11(水) 20:47:05 [削除依頼]

    うそよ、とショックで呆然と彼女は立ち尽くす。
    麻耶にはひとつ、おかしな能力があった。

    人の死を知らせる旋律が、頭の片隅にかかること。

    1日以内に死ぬ人が彼女に会い、なんらかの関係があると彼女の頭にはひどく絶望的な音楽が流れる。彼女は思う。ああ、この人は今日死ぬのかと。
    いつから始まったかは分からない。この冷酷な能力はいつだって彼女の心を占めていた。幼少期、父と最後に喋った時のことを思い出す。
    ――おとおさん、この音楽、なあに?――音楽? どこにも音楽なんか流れていないじゃないか――え、でも、今、ほら――遊園地に行くから、わくわくしてるんだろう。車、今出してくるからな――

    立ち尽くす麻耶を訝しげに修は覗き込む。
    「なに、どうしたの」
    「――なんでも、ない」

    父は死んだ。車庫に向かうための道路で、トラックにはねられて。

    「大丈夫? 顔色悪いけど」
    「――」
  • 9 憂理 id:mDF4nAF1

    2012-01-13(金) 19:51:21 [削除依頼]

    「ねえ修――」
    ぽつりと麻耶は呟く。「なに」修は戸惑ったようにそう尋ね返す。

    もしも今日が貴方の人生の終わりだとしたら、貴方は最後に何を望む?

    「――なんでもない」
    彼女は言葉を飲み込んで、笑顔を作った。――こんなのっておかしい。慣れているじゃないか、人はいつだって大量に死んでいるのだから。私が最後のSOSを聞き届けたって、なんの役にも立たないし運命は変えられないことくらい。傷つかないようにずっと言い聞かせてたじゃない――自分を守るために。大切な1人を作らないようにずっとずっと誰にも思入れしないように。
    だから、心がずきずきと痛んで、今にも血があふれ出しそうだ、なんてことがあるはずがないのだ。

    「そう? ならいいけど。だいぶ顔色悪かったけど――今からどっか行くの?やめれば?」
    修が心配そうな顔でそう言うのを笑顔のままで彼女は聞く。大丈夫。そう心の中で呟いた。

    私は、傷ついたりなんてしない。たとえ彼が息をすることがなくなっても。
  • 10 憂理 id:mDF4nAF1

    2012-01-13(金) 20:11:03 [削除依頼]

    「友達の家にね。CD借りに行くの。大丈夫、昨日カップラーメンしか食べてないからふらっとしちゃって」
    「CDねえ。不健康な生活だなお前」
    「まあねー。1人で言えにいるとなんにもやんなくていい気がしてきちゃうのよ。ごはん作るのも誰がいるわけでもないから、私一人ならいっかって」
    まずかったけど、と彼女は付け加える。
    修は薄く笑った。「お母さんはどうしたの? 仕事?」麻耶は首を軽く横にふる。「出張」
    「麻耶も、麻耶のお母さんもさ。今日はクリスマスだっていうのに」
    肩をすくめる修を見てひっそり麻耶は思う――クリスマスだってのに、貴方の命日になるのね――
    「残念ながら1人で寂しく過ごすわよ……修は?」
    思いついたように麻耶は顔をあげてそう尋ねた。
  • 11 憂理 id:B50q1o0.

    2012-01-14(土) 10:46:48 [削除依頼]

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