世界がいちばんきれいなとき12コメント

1 夏蜜柑 id:qdAw68Y0

2012-01-01(日) 20:34:40 [削除依頼]



とぷん、と水に落とした林檎は深くつめたい水底に沈んでいった。蜜が多くて甘いほど、林檎は重く水に沈むのだと何処かで聞いたことがあった。ゆっくりゆっくり、誰にも食べられることなく腐っていく林檎を想う。ああ、お可哀想に。

もうすこしだけ、愛されてる自覚を持ったっていいと思うんだ。
見えない傷を隠して、彼女はいつだってキレイに笑ってみせる。


.


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  • 2 夏蜜柑@あまったさーん id:qdAw68Y0

    2012-01-01(日) 20:39:35 [削除依頼]


    ◆ご挨拶

    あけましておめでとうございます、夏蜜柑です。
    正月だからスレッド立てたとかそんなんじゃないです(多分)
    この小説は、SSの方で書いた「林檎」というSSから広げて書いていきます。基本的に、ヒッソリコッソリ。
    女の子比率がとても高いです(ウキウキ)
  • 3 夏蜜柑@あまったさーん id:qdAw68Y0

    2012-01-01(日) 20:41:56 [削除依頼]


    Ep.00  プロローグ


     花のように蝶のように、亜麻色の髪をなびかせて、塔子はいつだって背筋を伸ばして歩いた。猫を思わせる大きくて気の強そうな目、優雅に弧を描く唇の、彼女のうつくしさすべてが、不特定多数の誰かを狂わせ、愛され、憎まれた。そうしていつだったか彼女は柔らかな棘をまとうようになった。誰にも傷付けられないようにと。もう信じられるものなんて殆ど持ってないくせに、いつか棘を取り去ってくれるひとが現れるのを待ってる。それが存在するのかも知らずに。

     晶は長かった髪をばっさりと切り落とした。似合う? と願いが叶ったように笑った彼女に、私は頷くしかなかった。アイラインもマスカラも、ほんのり桜色のつやつやグロスも拒絶する理由も、もうずっと前に制服のスカートすら履かなくなってしまった理由も、気付いたのはごく最近のこと。強くなった。私や塔子の前で泣くことが無くなった。そんな丹精な横顔が背負う痛みを、きっと塔子は知らない。

     塔子と晶。かわいいかわいい私の幼馴染で、ともだち。大好きなともだち。
  • 4 夏蜜柑@あまったさーん id:0qYKwmm0

    2012-01-02(月) 09:57:44 [削除依頼]


    Ep.01 


    「多摩ちゃん、一緒に帰ろ」
     
     いつものように声をかけられて、ぴたりと帰り支度の手が止まった。そうだ、今日は晶の陸上部は休みなんだった。そんな曖昧な私の表情から何かを察したのか、晶が気遣うように笑う。この子は見た目よりもずっと聡いと常々思っている。空気を読まないふりして、実のところ誰より空気を読むのだ。そんなことしてたら身が持たないよ、と言えば、多摩ちゃんの言うことはいっつも難しくてよく分かんないと笑われた。

    「生徒会? 遅くなりそう?」
    「そうでもない、かな。長引かなければ」
    「そっか。じゃあ待ってる」

     頷いて、私は人のはけた廊下を足早に歩いた。ニコリと明るい笑顔を浮かべる晶に、私はいつも上手く笑い返すことができない。きっと、怖気づいてしまうのだと思う。いつも言葉を探して、表情を作って、がんじがらめになってしまうような、私とはまるで違う晶の誠実さに。すらりと高い健康的なシルエットをこっそり振り返れば、彼女の視線は既に窓の外の中庭へ移っていた。日焼けしたうつくしい四肢、精悍な横顔に思わず見惚れる。私は、その視線の先にあるものが何か知ってる。誰にも知られてはいけない、晶のひめごと。誰かを真摯に想う親友の姿はあまりに潔く、きれいで、見ているこっちの背を押してくれそうな気がした。
     さっきよりも軽くなった足取りで、廊下を弾むように走る。会議はまだ始まっていないようで、生徒会室からはがやがやと人の声が漏れていた。その扉に手をかけようとしたとき、ふと耳に入ってきた言葉に思わずその手を離してしまった。

    「また新しいオトコできたんだって、アイツ」
    「ああ、塔子でしょー? よくやるよねぇ」

     どくん。心臓が痛いくらいに跳ねる。悪意と棘を孕んだ言葉、クスクスと意地の悪い笑い声に含まれる嫌悪感と、まことしやかに紡がれる、私のもうひとりの親友の噂話。一瞬、脳が壊死したように冷えて、思考が止まる。そして早鐘を打ち出す心臓。ぎゅっとつめたくなった指を握りこんで、蘇ったのは一週間ほど前に、赤黒い痣を白い顔に浮かせた、塔子の泣き出しそうな微笑みだった。
  • 5 RIA id:r138rQl1

    2012-01-02(月) 10:07:47 [削除依頼]

      面白いですねb
      尊敬しますっ
      私のことはRIAって
      呼んでください*
  • 6 夏蜜柑@あまったさーん id:0qYKwmm0

    2012-01-02(月) 11:25:31 [削除依頼]

    RIAさん>

    わおわお、初コメントありがとうございます。
    尊敬されるほどの者でもないです´`
    初対面の方に呼びタメはちょっと、私が失礼かな、と気後れしてしまうのでスミマセン。
    コメントありがとうございました*
  • 7 夏蜜柑@あまったさーん id:5Lq0zZP0

    2012-01-04(水) 14:39:27 [削除依頼]


    制服の長ったらしいカーディガンで隠れているが、きっとその下の素肌にも痣があるのだろう。マズっちゃった、と言って、悪戯っぽく舌を出した彼女の頬に、私は引き裂かれそうに痛む心臓を押し殺.して、淡々とガーゼを当てた。こんなとき、どんな顔をしていいか分からなかったから。晶には言わないで、とか細く呟かれた言葉に、そっけなく頷くことしか、私はできなかったから。
     許せない、と思った。憎い、とも。こんなに白くてきれいな塔子の体に、くだらない独占欲で傷を付けた、前の禄でもない塔子の自称『彼氏』も、今ここで、塔子の知らないところで、彼女の痛みを肴に笑う無邪気を装ったいたいけな少女たちのことも。だいじなところで足がすくんで、結局何にも言えやしない私自身が、何より吐き気がするほど憎かった。

     あの子の涙も、声も、虚無だって、何にも知らないくせに。
     あなたたちよりもずっとキレイなあの子を、下卑た言葉で、指で、汚さないで。

     
     そう言ってやりたかった。もうずっと。
  • 8 *りお* id:pIXyK5J.

    2012-01-04(水) 14:54:05 [削除依頼]
    初めましてです 題名に魅かれ、 >1を読んだら なんだか プロの作家さんの よぅな 言葉がたんたんと 綴られていて すごく 気になって 読んでみました 難しいような 言葉も 多いけれど とても興味深くて 気になります このお話が もっと展開をみせ、 動いていく時を 楽しみにしてぃます 頑張ってください◎*
  • 9 夏蜜柑@あまったさーん id:5Lq0zZP0

    2012-01-04(水) 23:26:22 [削除依頼]

    *りお*さん>

    はじめまして。コメントありがとうございます´∀`
    そそそんなプロだなんて恐れ多いですよд
    読んでくださったんですね、ありがとうございます。プロローグは、このお話のもとになったSSのタイトルと絡めて書いてみました。

    あ、言葉気を付けてるつもりなんですが、難しかったですか??どうも自分くどくなりがちで、アドバイスとかありましたら気軽にお申し付けくださいω

    丁寧なコメント、ありがとうございました。励みになります!
    頑張りますね\(^o^)/
  • 10 夏蜜柑@あまったさーん id:kHUPaYT.

    2012-01-05(木) 10:10:09 [削除依頼]


    「失礼します、遅れてスミマセン」

     バタン、とわざと勢いよく開けたドアに、さっきまで噂話に花を咲かせていた彼女たちが肩をすくめた。彼女たちには目もくれず、さっさと指定された席につく。やがて始まった会議だったけれど、結局私はずっと上の空だったらしい。心を占めていたのは、何よりも塔子のことだった。

    「長谷川、ちょっといい?」

     会議のあと、会長である安藤先輩に手招きされて思わず身構える。一応会議を聞いている体裁はとっていたつもりだったが、見破られていたのだろうか。

    「な、んですか」
    「え? あ、いや……元気無いな、って思ってさ。気になっちゃって。何かあった?」

     人好きのする爽やかな笑顔を浮かべて、安藤先輩がこてんと首を傾げた。言っても――いいのだろうか、とその柔らかい目尻を眺める。否、言わなくていい。その必要は無い。

    「いえ、何も。ボーっとしていてスミマセン」
    「そうなんだ? ならよかった…………なぁ、」
    「あ、じゃあお先に失礼します。友達が待ってる、ので」

     ぺこりと頭を下げると、そそくさとその場を後にする。安藤先輩は何か言いたそうにしていたけれど、今はそんなこと気にかけてられなかった。



     多摩の去った教室に、差し込む夕陽はひどくさびしげだった。ぽつんと取り残されたふたつの人影は、彼女の出て行った扉をぼんやりと眺めている。

    「安藤、何だオマエまたフラれたのかよ」
    「……そんなんじゃないよ」
    「ハイハイ。俺にはあんな無口で根暗な奴のどのへんがいいのか分かんねぇけど……今日ソレ、誘うつもりだったんじゃねぇの」

     呆れたように副会長である汐見が安藤の肩を叩いた。彼の手の中にあったのは、隣町の科学館の、プラネタリウムのチケットが二枚。

    「……しょーがねぇなあ、俺が一緒に行ってやろっか?」
    「野郎二人でわざわざ星空見上げに? 俺、そんなしょっぱい放課後やだ」
    「うるせーな! じゃあ捨てろ」

     はは、と安藤が乾いた笑みを漏らした。それは自嘲とよく似ている。
     くしゃり、と静かな音を立てて、幻想的なオリオン座の描かれたチケットは、彼の手の中で呆気なく意味を成さない紙屑へと変わってしまった。
  • 11 ごん id:Tp2VPYw.

    2012-01-07(土) 22:43:47 [削除依頼]
    みっちゃん
    ss板の宣伝見てからこっそり読んでました^^
    この子たちは大好きだから、本当にうれしい
    コメはたまにしか出来ないかもだけど
    楽しんで読ませてもらいますね.
    更新がんばれ^^
  • 12 夏蜜柑@あまったさーん id:Qrrm4EB/

    2012-01-09(月) 13:09:43 [削除依頼]

    ごん姉さん>

    姉さんいらっしゃい\(^o^)/
    どうしてももっと塔子と晶と多摩ちゃんを書きたくなりまして´`
    ホントに私の自己満足の産物なので読んで下さるだけでとてもシアワセですよー(ホクホク)
    例の如く亀更新になりそうですが、頑張ります♪
    コメントありがとう〜(*^^)
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