異端者の境界線13コメント

1 美雨 id:IWkN7q7/

2011-12-22(木) 15:15:52 [削除依頼]

時間を戻せる事が可能ならば、俺はあの時に戻ってやり直したいと思う。
先輩と出逢う前に――。
  • 2 美雨 id:IWkN7q7/

    2011-12-22(木) 15:25:27 [削除依頼]

    第一章 普通と異常の境界
    僕……嫌、訂正、俺は、生徒会室にいた。
    時刻は四時ジャスト。
    そろそろだろう。
    押していた承認判子を机の上に置いて、俺は座っていた椅子から立ち上がる。
    丁度、この生徒会室の窓から、校門が見えるのだ。

    「あのー、会長さーん、ちょっと良いっすか?」

    「あー……悪いけど、今、休憩中だから」

    俺は食い入る様に窓の外の、校門を見る。

    ……いた。

    「あのー、会長さーん」

    「煩いっ……じゃなくて、ちょっと待ってて貰えるかな?」

    「……分かりましたよ」

    学校を出て行く彼女の姿を俺は見つめる。
    当然、彼女は気付かない。
    だけど、この時の俺は見ているだけで良かったんだ。

    結果、“この時”だけだったが。
  • 3 美雨 id:IWkN7q7/

    2011-12-22(木) 15:34:52 [削除依頼]

    最寄の駅から十分。
    主に自転車通学の生徒が多いこの学校はあまりにもいい加減だった。
    本来なら、三年生が生徒会長を務める様になっているが、今期生徒会は俺、二年が務めている。
    ちなみに現在の生徒会に三年はいない。
    今が三月で、三年は受験だからとか、そう言うわけではなく、ただ、立候補者がいなかっただけだ。

    「もう良いっすか?」

    副会長の声に俺は振り返る。

    「ったく、会長の表裏の激しい性格にはいい加減に慣れましたが、時々、普通に本性出すの、止めてくれません?つーか、不愉快極まりないです」

    現在の副会長は一年の女子だ。
    失礼だろうが、名前は覚えていない。
    初対面の時に自己紹介をしたが、ぶっちゃけ、お互い、会長、副会長と呼び合っているし、自分等の名前で呼ぶ機会は全くなかったからだ。

    「副会長って何時も元気だな」

    「話、変えないで下さいよ。ってか、思ってたんですけど、会長って、私の名前、把握してます?」

    そんな事、思わなくても良いのに。
    俺は溜め息を吐く。

    「分かってるよ?山田さん、だよね」

    「ち、違いますよ。立花ですよっ」

    「あー、そっか。人違いだった」

    「私を誰だと思ってたんですか……」

    残念なモノを見る様な目で見てくる副会長の視線が正直、怖かった。
  • 4 美雨 id:N3TeH/K/

    2011-12-23(金) 10:14:18 [削除依頼]

    六時半が完全下校時間だ。
    だから、下校時間の五分前になると、俺か副会長が放送しに行かなければならない。

    「じゃ、今日は副会長で」

    「えー、三日連続、私何ですよ。会長が行って下さい」

    「此処は公平にくじで決めようか」

    「普通、そこはジャンケンとかじゃありません?」

    残念ながら、俺はジャンケンで勝った事がない。
    負けるか、あいこになって、負けるかの二択。

    「もう良いですよ。私が潔く行きますよ。その代わり、全校放送で行っちゃいますからね。会長は表裏の激しい奴だーって」

    無駄に後輩の癖に脅して来るので、仕方なく、俺は放送室へと向かった。
  • 5 美雨 id:N3TeH/K/

    2011-12-23(金) 10:26:28 [削除依頼]

    ピンポンパンポンッ

    『下校時間となりました。残っている生徒は速やかに下校して下さい』

    放送のスイッチを切って、俺は溜め息を吐いた。
    何で生徒会なんかに入ったんだか。
    嫌、別に推薦とかではなく、ちゃんと自分で立候補をした。
    だが、俺がなりたかったのは書記とか、会計で、決して会長になりたかったわけではない。

    「会長さん」

    呼ばれて振り返ると、放送室の出入り口に見覚えのない女子生徒が立っていた。

    「ちょっとお邪魔するね。あ、嫌、お手数掛けます」

    女子生徒は中に入って、ドアを閉めて、おまけに鍵まで閉める。
    何をし出すんだ、コイツ。

    「会長さん、立てこもりって知ってる?」

    放送のスイッチを押して、女子生徒は微笑みながら言った。
    俺は何も言えず、ただただ、彼女を見ている事しか出来ない。

    ピンポンパンポンッ

    『たったいま、この放送室は私の物となりました。まだ校内に残っている教師は直ぐに放送室前に来る様に』

    つくづく俺は思う。
    ツイてないな、と。
  • 6 美雨 id:N3TeH/K/

    2011-12-23(金) 10:42:12 [削除依頼]

    「あ、自己紹介して置こうか?私は二年三組の藤和日和。主に理数系が得意な優等生です」

    放送のスイッチを切った女子生徒――藤和は、俺の方を向いて、握手を求めて来た。
    まあ、俺は彼女の手を取らなかったが。

    「それで、藤和さんがこんな事をする理由は何?」

    「そうだね。只の青春の悪戯だね」

    意味が分からない。

    「何で僕まで巻き込んだの?」

    「それは本当に申し訳ないとは思ってるよ?けど、会長が被害に遭ってるって言ったら、より一層、盛り上がりそうじゃん。藤和日和の立てこもり事件が」

    ドンドンドンッ

    その時、放送室のドアが物凄い勢いで叩かれた。
    教師が来たんだろう。

    「あ、もう来ました?速いですねー」

    「その声は藤和か?」

    「はい。藤和日和です。その声は蒼井先生ですか?」

    「そうだ。バ.カな事やってないで、早く出て来い。生徒会の子から聞いた所によると、中には生徒会長もいるそうじゃないか」

    「はい。いますよ。まあ、巻き込まれてる割に結構、平然としてますよ。怒ってもいませんし」

    「藤和、これ、何時までするつもりだ?」

    「飽きるまで、ですね」

    マジか。
    俺はコイツが飽きるまで、此処に閉じ込められたままなのか。
  • 7 美雨 id:N3TeH/K/

    2011-12-23(金) 10:55:10 [削除依頼]

    とっくに下校時間が過ぎた。
    窓の外は真っ暗になり、段々と教師も放送室前に集まる様になって行った。

    「藤和さん、何が不満なの?」

    「藤和、早く出て来ないと、家の人に連絡するぞ」

    立てこもり事件の犯人は全く動じず、余裕の笑みを浮かべ続けていた。

    「知ってる?会長さん」

    「何が」

    「私の親は仕事でいないし、私に不満な事も何もないんだよ」

    「そ、そうなんだ」

    藤和はクルリと方向転換して、椅子に座る。

    「会長は何で会長になったの?」

    咄嗟に俺は考えた。
    今、走ってドアの方へ行き、閉めている鍵を開ければ、外に出られるのではないかと。
    行けそうな気がしてならない。

    「あ、脱出しようとするの、なしですからね。会長さん」

    かなり藤和は鋭い奴だったらしい。
    あっと言う間にバレてしまう。

    「僕、早く家に帰りたいんだけど」

    「まあまあ、良いじゃん。夜中の学校って、結構、良い物だよ?」

    夜中まで、立てこもるつもり、か。

    「さてさて、会長さん、お腹空いたよね。こうなる事だと思って、ちゃんと食料は持って来たんだよね」

    持っていたスクバから、パンを取り出し、俺に渡す。
    渡されたのはメロンパンだった。
    よりによって、甘い物かよ。
    俺、甘い物食えないのに。

    「ふむ、会長さん、もしかして、甘いの食べられないとか?それは不幸だね。私が持っているパン、全部、甘いから」

    「……もう無理だ。我慢の限界だ」

    俺はドアまでダッシュして、鍵を開けようとした。

    「会長さんっ」

    大声で叫ばれて、俺は振り返る。

    「開けて出て行くなら、私は此処から飛び降りるんだから」

    放送室は三階。
    確実に無傷では済まないだろう。
    俺のせいで飛び降りられても困る。

    「……分かったよ」

    仕方なく、俺は鍵から手を離した。
    結局、また元通り、閉じ込められたままだ。
  • 8 美雨 id:SGDdH8P/

    2011-12-23(金) 13:21:42 [削除依頼]

    ポケットからケータイを取り出すと、八時四十分。
    そろそろ、外の教師達も諦めモードに達して来ていた。

    「悪いな、会長君……今日は諦める事にする。悪いが、藤和を何とか説得してくれ」

    ドア越しで聞こえた言葉はあまりにも酷かった。
    ドアを打ん殴りたかったが、仕方ない。
    つーか、普通に閉じ込められたと思っていたが、放送室の鍵はないんだろうか。

    「藤和さん」

    「何?」

    「此処の鍵って職員室にあるんじゃ」

    「ないよ。ほら」

    藤和はあっさりとスカートのポケットから鍵を取り出す。
    鍵を持って、鍵を閉めたら、確実に密室状態だ。

    「それにしても、会長さんは穏やかな性格何だね。普通、怒るでしょ?」

    「怒るを越えて、自己嫌悪だ」

    「そう。じゃあ、私、もう寝るね」

    「寝るっ!?」

    「うん。早寝遅起きが目標だから」

    藤和は椅子に凭れ掛かり、目を閉じた。
    その体勢で寝るつもりなのか。
    あまり今まで考えなかったが、今のこの状況、結構ヤバくないか。
    仮にも、年頃の高校生が密室とか。

    「あ、会長さん」

    「な、何?」

    「襲わないでね」

    「誰が襲うかっ」

    「……今、会長さんの本性が見えた気がするけど、スルーしとくよ」

    ま、まあ、そうして貰えると有難いんだが。
    そんなこんなで、俺はそれから何をする事もなく、藤和から離れた所で床に座り込み、壁に凭れて寝た。
  • 9 美雨 id:SGDdH8P/

    2011-12-23(金) 13:47:57 [削除依頼]

    「会長さん、会長さん」

    揺さ振られて、俺は目を覚ます。
    目を開けると、容赦ない陽射しが射し込んで来る。

    「おはよう。会長さん」

    目の前には藤和の顔があった。
    その距離、五センチ程。
    近過ぎる。

    「今、何時?」

    「七時だね。意外に会長さん、熟睡してて焦ったよ」

    「今日って」

    「学校あるよ。金曜日だしね」

    「出してくれないか?」

    「分かった」

    え……
    驚いて、俺は藤和を見る。

    「飽きちゃった。一晩経ったら」

    「そ、そうか」

    「生徒には知られなかったけど、教師達には十分知れ渡ったでしょ?藤和日和立てこもり事件」

    「だろうけど」

    「迷惑掛けて悪かったよ。じゃ」

    ガチャン

    藤和はドアに近寄り、鍵を開けた。

    「あ、会長さん。あなたが大好きなあの先輩、彼氏いないらしいよ」

    あなたが大好きなあの先輩、

    「応援してるから、頑張れっ」

    ギィィィィ

    生徒会室のドアが開く。
    藤和は最後に微笑んで、走って出て行った。
  • 10 美雨 id:VuXuprA/

    2011-12-23(金) 16:25:42 [削除依頼]

    後日談。
    立てこもり事件を知っている生徒は俺と副会長ぐらいで、結局、彼女が期待していた“盛り上がり”はなかった。

    「はあ、大変だったんですね。会長」

    「大変だったよ、ホント」

    「ところで会長、生徒会に入りたいって言ってる二年の先輩がいるのですが」

    副会長は引き出しからプリントを取り出し、俺に渡す。

    「承認してくれませんか?丁度、会計の枠が空いていますし」

    プリントには生徒会入りを希望している生徒の名前が、
    ……、

    「会長?」

    「嫌、承認出来ない」

    「な、何でですか?」

    「その生徒だけは承認出来ないから。無理だって、伝えといて」

    「そ、そうですか?折角、メンバーが増えて楽しくなりそうなのに。ダメ何ですか?藤和日和さん。会長と同じ学年ですのに」

    副会長は立てこもり事件の事を知っていても、誰がしたのかは知らない。
    ま、あの放送を聞いていたから、声ぐらいは知っているかも知れないが。
    一応、教師達に口止めされているから言えないんだが、本当なら言ってしまいたい。

    「じゃあ、断って置きますね」

    「ああ」

    あんな奴、生徒会に入れたら、今度は生徒会室を占拠しかねないしな。

    「あ、会長」

    「何?」

    「もう四時ですけど、見ないんですか?窓」

    すっかり忘れていた。
    俺は慌てて窓に駆け寄る。
    丁度、校門を潜る彼女の姿があった。
    危ない所だった。

    「ナイス、立花さん」

    「えっ、あっ、その、名前」

    「悪かったよ。立花伊織さん」

    「あ、ぅ、い、いえ。やっぱり、覚えててくれたんですね」

    嫌、違うんだが。
    本当は立花を頼りに生徒名簿で調べただけだ。

    「会長、その先輩が好きなんですか?」

    完全に彼女が見えなくなってから、待っていた様に副会長が聞いて来る。

    「そうだけど?」

    「だったら、何で、話し掛けたりしないんですか?」

    「べ、別に。今はこれで良いかなって」

    「そうですか。なら、まだ勝ち目はあるんですね」

    「?如何言う意味だ?」

    「いえいえ。何もないですよ。つーか、仕事、して下さい。残ってるんですから」

    副会長の言っている意味が分からず、俺は渋々仕事に戻った。
  • 11 美雨 id:VuXuprA/

    2011-12-23(金) 16:45:16 [削除依頼]

    第二章 偶然と故意の間
    学生をやっている限り、絶対について来るのはテストだ。
    そこそこな点数を取っている生徒会長の俺は何時も、貼り出された学年の順位を見る時、上の方から見た方が早い。

    「ふむ、会長さんは成績良いんだね。三位だなんて」

    驚いて振り返ると、一週間振りに見る藤和日和の姿があった。

    「私なんか、真ん中何だよ」

    これ以上関わりたくない相手だ。
    俺は無視して、廊下を歩く。

    「待ってよ。教室まで一緒に行こうよ。でもさ」

    藤和は諦めるつもりがないらしい。
    しつこく、俺を追う様に歩いて来る。

    「会長って、名前、何なの?」

    その言葉に俺は立ち止まる。

    「は?」

    「嫌、正式に聞いた事ないし」

    「だったら、何でさっき、三位だって分かったんだ?」

    「名前は分かってるよ。でも、何て読むのかなって」

    「朝比奈翼」

    「あさひなつばさ、だね」

    他に如何読めるんだろう。

    「翼って言う字、読めなかったから。比翼とか言う言葉があるのは知ってるけどね」

    漢字に弱いのか。

    「ん、改めてよろしく。あさひー」

    「ちょっと待って。何、そのあだ名」

    「即席で決めて見たんだ。あさひー、良いでしょ?」

    「良くないって。普通に呼んでくれないかな」

    「朝比奈君って?それじゃあ、面白くないじゃん」

    あさひーも面白くねえよ。

    「ちなみに私の事も藤和じゃなくて、ひよりーって呼んでね」

    伸ばすのが主なのか。
    つーか、そんなのだったら、日和って呼んだ方が早くないか。

    「そうだ。ひよりーって呼んでくれたら、あの先輩をあさひーに紹介しても良いよ」

    俺の思考が一時停止した。

    「私、顔広いんだよね。あの先輩とは知り合いだし」

    「し、知り合い、なんだ」

    「そう。中学の先輩後輩だったり。ちなみに先輩の名前は天野杏子。三年一組だったかな」

    俺は彼女を侮り過ぎていた。
    まさか、こんなに凄い奴とは。

    「さて、呼んでもらおうか、あさひー」

    「ひ、」

    ぎこちなく俺はその名を口に出して呼んだのだった。
  • 12 美雨 id:VuXuprA/

    2011-12-23(金) 16:51:40 [削除依頼]

    主要登場人物

    朝比奈翼
    高校二年生。
    生徒会長。
    一応、猫を被っているが、時々、素が出る。

    天野杏子
    高校三年生。
    遅刻の常習犯。

    藤和日和
    高校二年生。
    生徒会入りを希望している。
    独特なあだ名で人を呼ぶ。

    立花伊織
    高校一年生。
    副会長。
    一応、生真面目。
  • 13 美雨 id:VuXuprA/

    2011-12-23(金) 16:59:00 [削除依頼]

    追加登場人物

    黒宮蝶菜
    高校二年生。
    生徒会書記。
    仕事をよくサボる。
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