討伐者 Wing of the jet black35コメント

1 轟雷 id:DCewCoR0

2011-12-13(火) 17:58:10 [削除依頼]

 神の断罪それは――


I start a story at this.
  • 16 轟雷 id:ROFLxRb0

    2011-12-16(金) 21:19:11 [削除依頼]
     >13  戦うと誓ったが、自分自身の考えがとても甘かったと痛感させられた。 「はぁ、はぁ……。ここまで逃げれば何とかなるだろ」  自分でも浅はかな考えだと分かっている。どこまで逃げても、安全な場所なんて存在しない事を知っていたからだった。  本能的に逃げ場所が無いと悟ってしまう。もし、逃げる事を止めたら確実に神に捕食されてしまう。だから、生きるために止めることは許されなかった。  どのくらい走っただろうか、すでに体力の限界が来ていたので、あそこから離れていない事だけは分かっていた。 「グゥ――」  上から音が聞こえた。  恐る恐る見上げてみると、龍がこちらを鋭い目つきで睨んでいた。 「見つかった」  驚愕のあまり口から言霊が漏れてしまった。  慌てて口を押えたが既に手遅れだった。  見つかってしまった。それなら睨み返してやれと思った。  睨み返すことは恐怖で出来なかったが、龍と視線を合わせることぐらいは何とかできた。  よく見ると、初めに会った龍みたいだった。先ほど遭遇した龍と違い全身無残に武器が抉り突き射されているから判断が出来た。  何回見ても痛々しいと思う。 「お前は、誰だ?」  何故か龍に問うてしまった。答えが返ってこないと知っていて。  全く襲ってくる気配が無いので、無視をして先に進むことにした。  あの龍に関して少し気掛かりがあるが気にしては駄目だ。一度ここから離れ、警戒心を解いてもらってから伺おうと思う。  それまで、あれ以外の龍と出会わない事を願いつつ歩き出した。  龍を見上げた地点から、数歩離れた場所に足を踏み出したとき突然の耳鳴りがした。 「――ッ、なんだ……。あ、頭が割れる」  強烈な痛みと突き刺されるような痛みが頭部を襲った。全身から力が抜けるほど痛かった。ぎりぎりの処で、踏ん張ることが出来て少し心の中で安堵の溜息を吐いていた。  体がふらつく。  近くには龍が眺めている。もし、気が変わって襲ってきたらと思うと不安で可笑しくなりそうだった。  体の自由が制限されている今、仕方ないと悟ること出来ない。そこまで老いていないのもあるが、せっかく外に出ることが出来たのにこんなに早く死にたくないと思ったからである。どっちの気持ちが強いと聞かれたら、迷わないで後者を言っていただろう。  千鳥足でその場から慌てて離れる。
  • 17 Maaarip* id:ZTiNT6/1

    2011-12-16(金) 21:55:28 [削除依頼]
    おもしろいです!
    がんばってくださいb
  • 18 轟雷 id:ROFLxRb0

    2011-12-16(金) 22:21:32 [削除依頼]
    Maaarip*さん

    コメントどうもです。
    面白いとは、嬉しい限りですよ本当に!!
    はい、頑張らさせてもらいます。
  • 19 轟雷 id:GFBUBQE1

    2011-12-17(土) 14:32:01 [削除依頼]
     >16  どの角度から見ても危ない歩き方だった。いつ挫けるのか肝が冷やされてしまう。  後ろを振り向きながら龍に睨み付けた。 「お前がやったのか?」  問いてみたが、やっぱり返答が無かった。  当然だと思った。神が下等生物ごときの言葉を理解するはずがない、そう思っていると。 「――ッ」  変な感じがした。変な感じは、次第に大きく強くなっていった。  今までよりも強烈な痛みが、脳内部に駆け巡り感覚を可笑しくした。 「あ、あぅ……」  奇声を口から漏らしてしまった。  次に痛みより強烈で変な感覚が突如襲ってきた。  それは、全身くまなく触れている様な感じだった。一瞬の事だったので気のせいだと思ったが、あまりにもリアルな感覚だったので、時間が経過した今でも体に感覚が残っていた。 「あれ……痛くない?」  そう、痛みが消えていた。変な感覚が襲ってきた瞬間なのか、過ぎた瞬間だったのか分からないが、確かに頭部を襲っていた痛みは綺麗に消えていた。  あの痛みが嘘の様だった。  何となく龍の方を見たが、変わらず堂々とこちらを眺めていた。  龍を見ていても仕方ないので歩き出した。逃げるために。  何となく気になった。歩き出した途端、急に龍の事が気がかりになりもう一度見てみる事にした。  目と目があった。視線が合ったと言った方が正しいと思う。  長い時間見つめ合ってはならないと思いつつも見つめてしまう。瞳には、何かを魅了する何かを持ち合わしていた。  すると龍の瞳が紅蓮に輝いた。真っ赤に輝いた。血より濃い真紅の瞳からは、とても力強い何かを感じさせる。  心と心が通じ合っている様な異様な感じがした。  人と神が心を通じ合わせることは出来ないとされているが、実際の所現実ではどうなっているだろうかと疑問が出てきた。  しかし、疑問を考えている時間は無かった。  考える時間が無いと分かっているが考えてしまうが実状だった。考えないようにしても考えてしまう無限ループに入ったような感じだった。  気が付けば龍の瞳に本当に魅了されていた。  ただ、見ていたいと言う気持ちが溢れてくる。本能のままに瞳を見つめていると、自分の意識が飲み込まれていきそうだった。
  • 20 轟雷 id:GFBUBQE1

    2011-12-17(土) 14:50:48 [削除依頼]
     この幻想を打ち壊す出来事が起きた。

    ――我が名は、夢幻――

     頭の中に声が響いた。
     それは、男の力強い声であり女の透き通るような優しい声だった。
    「誰だ! 頭の中に語りかけてくる者は」
     頭の中に語りかけてくる者に対して問うてみた。

    ――少年よ。力を求めるか?――

     返ってきた返事は、質問の答えになっていなかった。
    「答えになっていない。問いに答えろ!」
     お互いの会話が成り立っていなかった。一方的に語りかけている状態と殆ど変らなかった。
     少しだけ考えた。
     この場に居るのは、俺と龍だけだった。他に誰もいない。
    「まさか……。そこに居る神だとでもいうのか?」
     返事は無かった。
     違うと信じようと思ったとき――
     頭上から光を感じた。それは、ただの光では無くて龍の咆哮だった。漆黒の炎と紅蓮の稲妻が混ざり合ったものだった。
     理解し気付いた時には目と鼻の先まで迫っていた。
     もう駄目かと思い瞳を全力で閉じた。
     咆哮が何かに当たって炸裂さいた。自分に当たっていないと気付くまで時間は必要としなかった。
     嫌な予感しかしないが、震えながら少しずつ瞳を開いた。
     視界は、漆黒の炎と紅蓮の稲妻が絡み合った爆風が邪魔をして何も見えなかった。
     何かに守られたことは、何となく分かったが誰に守られたのか分からなかった。不安と安心感が混ざり合った変な気分になった。
     炎と稲妻が混じった黒煙は、視界を悪くし身体にまで影響を与えた。呼吸するたびに、黒煙が体に入り込み蝕んでいく。
     初めは、特に問題が無かったが、気にしないで普通に呼吸をしていると肺に焼ける様な痛みを感じた。
     痛み出してから口を慌てて塞いだが、すでに手遅れで痛みは時間と共に比例し増していく。痛みは、肺から全身にじわじわと広がって行く。
  • 21 轟雷 id:GFBUBQE1

    2011-12-17(土) 20:34:02 [削除依頼]
     本能的に胸を抑えるが、痛みを和らげることは出来なかった。
     この痛みは、初めに吸った黒煙と違って、全ての威力が跳ね上がっているような気がした。これが、ただの気のせいで済んでくれていたら嬉しかったけど、そんなに簡単に事は済まなかった。
    「――ッ、ぐぁああああああああ」
     強烈な痛みのせいで奇声を上げた。
    「はぁ、はぁ……。なんだ、この黒煙は……少し変な感じがする」
     焼けるような痛みで意識が朦朧とする。
     擦れ歪む視界の中で、ただ何が起きたのかを確かめようと懸命に瞳を動かす。
     苦しんでいる間に強烈な突風が吹き荒らした。
     あれほど濃度が濃い黒煙が、一時的に吹いた突風で少しずつだが消えていった。
    「嘘、だろ?」
     黒い影が目の前に現れた。
     黒煙は、突風が吹き荒らした後の微かに動く気流によって流されていく。

    ――お前は、我を求めるのか――

     また声が聞こえた。
    「お前は、我を求めるのか……。もし、神が力を与えてくれるのなら、俺はなんでも求めてやるよ」
     ついに黒煙が消え視界が晴れ渡った。
     身を危険に晒してでも守ってくれた存在の姿が露わになった。

    ――お前を使徒に認定する――

     ただ一言を残して、守ってくれていた神が何処と無く消えた。
    「何が認定だ……ふざけるな」
     神は、跡形なく消えたしまった。残っているのは、俺と龍の群れだけだった。もう、守ってくれる存在が居なくなった。戦うための力を手に入れ損ねた。
     不幸が連続して襲ってきた。
    「――ッ」
     龍は叫んだ。叫び声は、轟音よりも大きな音を出し、大地を揺らし頭部に痛みを齎した。
    「はぁはぁ……くそが、ッくそがぁあああああ」
     叫んだ。
     強い絶望に負けて心が折れた。
    「もう……知らない」
  • 22 轟雷 id:dOGZiQr1

    2011-12-18(日) 12:04:18 [削除依頼]
     そして、再び瞳から光を失った。
     真っ白の部屋に居た時みたいに、絶望しか感じられない冷たい眼をしていた。
    「終わりにしよう」
     言葉からも何かを失われていた。言霊に憑依するはずの神が、少年の言霊に乗り移っていなかった。それどころか、悪魔が憑依したように死を連想させ、存在を否定されたかのような感じがした。
     体から痛みが消えた。この言い方は、少し違っているかもしれない。だが、体に痛みとういう概念が消えたのは事実だった。ただ、言葉の真の意味が隠れてしまっているだけだった。
     全身のあらゆる痛み関係する刺激信号を、脳に届かないように何かを使って妨害をしている。それが何なのか自分自身を分かっていないのだが。
    「これが、不死を司る神の力なのか」
     ふと、思い出した。
     俺が適合した神の細胞の名前だった。
     この神は、名前の通り不死だったと言われている。常に肉体を再生し続けることが可能で、なのかつ肉体の特殊強化も簡単に出来ると言う理由で選ばれたらしい。
     その神は、不思議と肉体が死ぬことが無く、魂魄を壊さないと死滅しないと知られている。名前の通り不死だった。
     そんな最強と言っても過言ではない神を取り込んだ少年は、人間の中から見れば本当に神になった存在だった。
     少年の体の周囲を見てみれば、紅蓮の陽炎が衣の様にしつこく纏わりついていた。それは、炎の様で炎ではなかった。
     龍は、少年の異変に気付いたのか少々後退していた。真正面から見れば分からないかもしれないが、真上から見れば全体的後退していることが伺えた。
     だが、今の少年にそんなことは関係なかった。
    「神よ……我に更なる力を与えんことを冀います」
     小さく呟いた。
     力を使用する上で必要な言霊だったようだ。もし、違うのなら何のために言っているのか誰も分からなくなってしまう。
     突如、少年の周辺の大気が震えだした。まるで、強大な力を目の当たりにした、無力な人間の様に不様に震えあがっていた。
     纏う陽炎が強く激しく輝いた。強さはさらに増し、少年の姿が見えなくなるまで輝いた。
     龍は、何かを感じ取ったようだった。
     光は何事もなかったように、火花のように儚く消えて行ってしまった。消えていくことに足して問題は無かった。だが、消えてはならない存在がその場から消えてしまった。
     虚空に緊張感が張りつめた。
  • 23 轟雷 id:K6Px3t7.

    2011-12-19(月) 18:59:39 [削除依頼]
     龍の瞳孔が大きく開いた。その様子からして、龍達にとっても想定外の状況だったようだった。
    「神よ、何処を見ている」
     冷たい言霊が発せられた。
     少年は、龍の目と鼻の先に居た。そう、空を飛んでいた龍の目先まで距離を詰めていた。
     龍の瞳孔はさらに蠢く。
    「ここだ!」
     龍の瞳が少年の姿を目視した瞬間、小さく口を開けながら漆黒の炎と紅蓮の稲妻の咆哮を撃つ準備をしていた。
     それに気付いた少年は、咆哮を撃たせまいと鼻の辺りに踵落としを決めた。
     少年の攻撃が神に通用した瞬間でもあった。
     攻撃をしようと貯めていた炎と稲妻は、龍の口の中で強大な爆発を起こした。口の隙間からは、先ほどと同様の炎と稲妻が混ざり合った黒煙が漏れ出していた。
     奇跡的な事で、爆風は殆どなかったのでお互い踏ん張る執拗が無かったのだ。
    「良い様だな、神。俺に抗うからこんな酷い目にあったんだ」
     少し苦しそうな感じがしていたが、死に至るほどの打撃ではなかったようだった。あの威力で、殆ど肉体に損傷を与えることが出来ないなんてどうなっているんだと聞きたくなってしまう。
     すごい爆発だったのにも関わらず、何故か無傷だった自分にも驚いていた。
     龍は、口をゆっくりと開いた。
     もう一度咆哮を撃つと思ったが、その攻撃を使う様子は無かった。ただ、口を開けただけだったようだった。
     口からは、先ほどの不発に終わった咆哮の黒煙が湧水の様に溢れていた。
     あの黒煙の恐ろしさは、身をもって体験をしていたので冷静に沈着にこの場から離れることにした。
     危険を感じ離れようと行動したとき――予想外の攻撃を仕掛けてきた。
    「待て、それは駄目だろ……」
     龍は、右腕を大きく振りかざした。そして、そのまま虚空自体を叩き落すかのように振り落す。
     当然人外の存在である神の一撃は、万物を測るために存在している物差しを凌駕した。
     ただ、腕を振り落しただけで爆風並みの風が吹き付けた。
     その攻撃が繰り出された時、俺は黒煙を吸わないために移動していた。このため、攻撃をかわすことが出来ても二次的被害までは回避することが出来なかった。
     実際は、主の攻撃すら回避出来なかった。
     回避することが出来なかったと言っても直撃では無い。ただ、体に微かに当たっただけだった。微かに触れただけでも、攻撃の勢いに負けて体が地に叩きつけられてしまった。
  • 24 轟雷 id:K6Px3t7.

    2011-12-19(月) 20:52:26 [削除依頼]
    「ぐふぅ……」
     体は、攻撃に巻き込まれて地に叩きつけられた。それだけで済めばよかったが、人外の力はそこまで甘くは無かった。
     地に叩きつけられた後、体は腕と一緒に地に捻じ込まれた。
     肺からは、完全に空気が抜け一時的だったが呼吸が出来なくなっていた。その時間が永遠に感じられたほど長かった。そのぐらい体内時計の針の進みが肉体的外傷の影響で遅くなっていた。
     龍は、地に埋まった腕を引き抜こうとしていた。しかし、簡単に抜けないようで以外に苦戦をしていた。
     片腕だけでは抜けにと判断したのか、もう一方の腕を埋まっている方の腕の手首辺りを掴み抜こうと頑張っているようだった。
     何で簡単に抜けないんだろうと思った。押しつぶされているこの状態で抵抗できるものは誰一人いなかった。それなのに、どうして抜けないんだろうと思った。
     考えている暇などなかった。
     俺の体は、全て潰れている事は無いようだが、所々骨が砕けているような感じだった。しかし、神化した今の俺には、痛覚が感じられないようになっている……はずだった。
    「――ッ」
     今まで身体に嘘を付、誤魔化され隠されていた痛覚が容赦なく舞戻ってきた。
     肺からは、黒煙を吸った時の痛みが復活し呼吸が出来ないほど苦しい状況に陥った。
     そして全身は、先ほどの攻撃によって出来た怪我の痛みが襲ってきた。
     体には痛みと言うよりも熱いと言う感覚が襲ってきた。ただ、熱いと言うわけでは無く痛みの先の感覚と言っても良いだろう。この痛みを例えるなら、痛みと言う感覚の超越した感覚と言うのが正しいと思った。
     痛みの影響で何も分からなくなった。
     視界が滲み意識が朦朧として的確な状況判断が出来なくなっていた。
     龍は、やっとの思いで腕を大地から抜き取ると、自然と体から圧迫されていた圧力が消え去った。
     安心したその時――全身から異常な量の鮮血が肉体から漏れ出した。
     恐らく、龍の腕に圧迫され止血状態だったが、止血をしていた腕が今さっきどかされたので血が漏れ出したと考えられる。
    「く、くそが……」
     力の抜けた声しか出せなかった。
     体を動かすことが出来なかった。それもそのはずだ。全身から大量の血を垂れ流し、なおかつ全身の骨が粉砕している今動かせないのが当然であり必然だった。
     それでも信念と根気で動かそうと試みるが、動かせる気配は毛頭もなく、ただ無残の血が噴き出すだけだった。
  • 25 轟雷 id:vCO8hlg/

    2011-12-20(火) 19:42:03 [削除依頼]
    「こんな所で、死にたくないのに……どうして、どうしてなんだよ」
     自然と涙が溢れてきた。 
     この涙は、痛みや苦痛の時に流す涙ではなかった。ただ絶望した時でもない。そう、純粋に悔しいときに流す涙だと思う。
     この状況かでは関係が無かった。悔しかろうが嬉しかろうが、どうにかしないと本当に死んでも可笑しくない状況だった。
    「死にたくないの? きみ」
     暗闇しか見ようとしていなかった俺に、希望の光を見せてくれた。
     何処かで聞いたことあるような声が聞こえてきた。男であるように力強い声、女の様に全てを包み込む優しさを感じられる高い声だった。
     声だけでも性別が判断出来た。
     声主が女性だと。
    「だれか、そこに居るのか?」
    「目の前に居るじゃないの。見えていないのかしら」
     瞼を開く力が残っていない今、目の前に居るのかと思うと少しだけ安心が出来た。死ぬ前に一人では無く、誰かに看取ってもらえるなんて想像もしていなかった。
     そのような事しか考えられなくなるほど恐怖に怯えていた。
     だからこそ、心から嬉しいと思えた。
    「なに泣いているのよ。かっこいい顔が台無しになってしまうでしょう? 早く涙をふきなさいよ」
     少し強気な人だなと思った。怪我人にここまで雑な扱いをするとは。
    「そんなこと言われても困る。見ていたか知らないが、先ほどの龍の一撃で体がズタズタにされて動かせなくなっているんだよ」
     女性は、本当に不安そうな声で喋りはじめた。
    「そうなの。私が離れた間にこんなことがあったなんて……少し予想外だわ。でも、大丈夫だからね! 私が助けてあげるから」
     どこからその自信が出て来るのか聞いてみたかった。
     しかし、どうだってよかった。
     俺が真に知りたかった事は、この状況で何をしたら助かるのかという事だった。
    「どうやって、この状況から助けてくれるんだ?」
    「……あ。待っていてよ、きみ」
     何だ? この慌てようは。目を閉じていても声だけで判断出来ているほど焦っている事は何か問題でも起きたのだろうか……。
    「あったよ。よかった、本当によかった」
     まさかのドジっ子なのか?
    「少し痛いかもしれないけど我慢してよね」
  • 26 轟雷 id:.v4ibHg0

    2011-12-21(水) 21:33:07 [削除依頼]
    「待て、何をするつもりだ!」
    「大丈夫だから」
     何をすると思えば……はぁ? と言いたくなるようなことをしてきた。
    「い、痛いから触らないでくれ」
     そう、女性は何気なく俺に抱き付いてきた。それも力を入れてギュッと抱き付いてきた。そのため、全身に激痛が駆け巡った。
    「なんで? いいじゃないの」
     耳元で優しく囁いてきた。
     当然全身痛かった。怪我しているので当然と言えば当然だった。痛みの中で、女性の華奢で柔らかな感覚が伝わってきた。
     後方から再び風が吹いた。
    「あんた黙っていてよ! 今良い所なんだからさぁ」
     一瞬誰に言ったのか分からなかったが、この場に居る人の事を考えてみればすぐに疑問は晴れ渡った。
     風が女性の髪を靡かした。
     目を閉じているので長さや色は分からないがひとつだけ分かることがあった。それは、髪の匂いだった。髪は、程よく甘い花の匂いがした。
     匂いを嗅いだだけで、ほんのり顔に血が上った様な気がした。
    「ごめんね。すぐに怪我直してあげるから」
     そう言って俺の唇に何かをそっと押し当てた。それは、生温かくしっとりとして、何処と無く柔らかくてとても良い気分になるものだった。
     口の中に何かが入り込んできて舌に舐め回すように絡み付いて来る。何ともいえない感覚が忘れなくなりそうだった。
     俺達が何をしていたか知ることは無かった。
    「…………」
    「…………」
     お互いの息が混ざり合い一体になったような感じがした。目が見えなくても相当近くに顔が有る事が分かった。証拠と言っては失礼かもしれないが、頬に女性の髪の毛が垂れ下がっている様な感じがした。
    「何をしたんだ?」
    「内緒だよ。もし、本当に知りたかったら私の問いに答えてよ」
     雰囲気が温かく和やかだが、女性の声だけが冷静沈着で冷たい感じがした。
     ただ、普通に聞かれているだけなのに身構えてしまう。
    「さっき君は、力を与えてくれるなら何でも求めると言ったよね? その発言に嘘偽りはないよね」
    「そうだが……。お前になんの関係が有るんだ?」
  • 27 轟雷 id:DD6p572.

    2011-12-22(木) 20:29:52 [削除依頼]
    「関係大有りだよ! 私が問いた質問の回答に嘘偽りが無いか聞いて何が悪いの? 普通は、重要な質問ほど聞き直すでしょう? これは、常考だと思うだけど」
    「はぁ……?」
     衝撃的な発言だったので、思考回路が一瞬にして停止してしまった。
     待てよ、何でそんなことを聞いた? あの問いをしてきたのは、体に武器が埋め込まれていた神だった。それなのにどうして彼女に関係がある。
     思考をフルに使っているが、何故か大切な部分に靄が掛かっているみたいで中々思い当たる節が出てこなかった。
    「まだ理解できていないの? 私は、神様なんだよ。君と契約を結んだ神様。ここまで言えば分かるよね」
    「嘘だろ……そんな、ふざけた現実があるのかよ」
     信じがたい現実だった。
     俺は、知らないうちに神と契約を結んでいた。良い事なのか悪い事なのかよく分からなかった。
    「まぁ、大抵の人間はこんな反応するとあの人が言ったけど、まさか……ねぇ。私は契約するにあたって、個人的にひとつの約束をしたの。それは……」
    「それは? なんだよ」
    「……。君に私の全てを差し出すこと」
     小さな声で何かを言った。あまりにも小さな声だったため何を言ったのか聞き取ることが出来なかった。
    「今、なに言ったんだよ?」
    「だから……私を君に差し出すって言ったの!」
    「本気かよ」
    「冗談でこんなこと言わないわよ!」
     神が人に全てを捧げるか……。
     貰って大丈夫なのだろうかと不安が何気なく付き纏ってくる。
     もし貰うにしても、女から貰うものだけもらって、男が何も返さないのは普通に駄目だと思った。そんな申し訳ないような気持が有るせいで、つい何が欲しいか聞いてしまった。
    「それが本当なら、俺は何を差し出せばいい」
     女性は、何も言っていないのに自分から何を口走っているのだろうと思った時にはすでに遅かった。
    「特に欲しいものはないよ。でも……」
    「でも、何だよ! 俺が与える事が出来るものなら、お前に与えてやるよ!」
     何を口走っているんだよ、と自分に突っ込みを入れそうになってしまった。いつの間にか本当に取り返しが付かない状況に進み始めていた。
    「本気なの? 約束は、守るよね?」
  • 28 轟雷 id:OvCI3Ij1

    2011-12-23(金) 21:22:39 [削除依頼]
    「嗚呼、守るよ。約束を守れない男は、真の男じゃあないからな」
     それを聞いて、相当嬉しかったのか再び躊躇無く強く抱き締められた。
     囁くように――
    「じゃあ、私は……あなたの全てが欲しい」
     つい聞き返しそうになってしまった。
     俺が欲しい? 何でんだよ。
     女性の真意が読み取れなくて、どんなふうに反応すればいいのか分からなかった。
    「そうなのか……」
     結局素っ気ない反応しか出来なくて申し訳なくなってきた。聞いた本人が、こんな反応では答えた方も報えない気がする。
     俺の返事の仕方が悪かったせいなのか、会話しづらい重く静かな沈黙が訪れた。
     女性は沈黙を気にしないで、優しくそっと瞼辺りに手をゆっくりと置いた。すると、今まで火傷を負っていないのに熱いと感じていた体から、負の感覚が無くなり今までよりも体が軽くなった。
     何をしたのか分からなかったが、恐らく神が使える特殊な技だと思う。
     ここまでしてくれた女性を信用できないとは、もう口が裂けても言えない状況になってしまった。
    「もう、痛くないでしょ? ほら、瞳を開いてよ。私に君の綺麗な瞳を見せてよ」
     とても甘い声だった。
     全てが蕩けてしまいそうなほど、切なく優しく尊い綺麗な声だった。
     痛みから解放された俺は、ゆっくりと瞳を開いていった。
     ゆっくりと開いていくと、今まで見えなかったいろんな光景が見えるようになっていた。自分自身が、何も見ないで走り回っていた事が悔しくも痛感させられてしまった。
     そんな後悔はどうでもいい。
     目の前には、想像通り女性が俺を跨っている。個人的には、嬉しいような嬉しくないようなもどかしい感じだった。
     今更だと思うが、人が跨いでいる感じがあっても、何故かあまり重さを感じさせなかった。不思議と思ったが、これも神が持つ特権の中の一つなのかと思うと不思議と納得が出来た。
    「お前が、あの神だったのか?」
     痛々しい姿と違い、何処にも居そうな可憐な少女がここには居た。
     その美しい容姿に魅了され、自分の意思とは関係なく無意識に見つめてしまった。
    「そんなに見つめられると恥ずかしいなぁ」
     女性いや少女は、人間離れした容姿だった。雪の様に真っ白な肌、荒々しく燃える炎の様に真っ赤な瞳、そして、肌と対照的な長く丁寧に梳かれている漆黒の髪が目に入った。
     少女の美しい姿と裏腹に、質素で味気ない服を身に纏っていた。
  • 29 轟雷 id:OvCI3Ij1

    2011-12-23(金) 22:42:01 [削除依頼]
     普段から雑な扱いをしているのか知らないが、残念ながら所々服に解れが見受けられた。
     服の解れはどうでもいいが、何故か体に見合っていない大きさの服を着ていた。
     どんな考えで大きめの服を着ているのか知らないが、男ならば誰もが求めるふたつの果実の大きさが把握できなかった。実に浅はかで幼稚な考えだと、気付いた時にはすでにいろんな意味で遅かった。
     心のどこかで把握出来なかったのは少し残念だと思っていた。現実は、禁断の知識な様な気がして怖くて調べようと出来なかった。
     当然と言うべきだろうか、何度見ても少女の体と服の大きさが釣り合っていなかった。上の方から少し覗き込めば服の中の未知の世界が全て見えてしまいそうな感じがした。
     やはり好奇心が有ったので本能に負け覗きそうになるが、微かに存在していた理性が押し留まり自重することが出来た。
    「そろそろ、お遊びに終止符を打たないとダメ見たね」
     声のトーンが少し下がったような気がした。
    「どういう事だ?」
    「今から神の群を殲滅するの。それで……」
    「それで、何だ? まぁ、良いけどさぁ。神様のお前なら戦うことが出来るかもしれないけど、あの数はさすがに無理があるんじゃあないのか?」
    「そうだね。流石に私でもあの数を一人で相手をするのは無理かな」
     清々しい笑顔で答えてくれた。
     あれ、今なんて言った。あの数を一人で相手するのは無理かな、と聞こえたが気のせいでは無いような。
    「冗談じゃないよなぁ?」
    「そうだけど……。何か問題でもあったのかな?」
    「かな? じゃないだろ! どうするんだよ。一人で相手できないなら、それなりの作戦的なものは考えてあるんだよな?」
     何と言うか、自分の手に負えない神様みたいだと痛感した。
    「作戦? あるよ」
    「あるなら、初めから教えてくれても良かったんじゃないか?」
     会話をすればするほど、お互いの意見を聞かないで一方的に話始めている様な気がした。
     今思うのも何だが、少女が契約したとか言った時も、俺の話を聞かないで一方的に話を進めて行ったような気がした。
    「あれ? 話していかなかったのかな……話した様な気がしたけど」
     思い込みが激しい子なのかな?
    「話していない」
     この緩い会話をしているせいかイラッと来てしまい少し強い言い方になってしまった。しかし、少女はめげずに、と言うか気にしないで話を進めて行く。
  • 30 轟雷 id:C9bFCr2.

    2011-12-24(土) 14:54:01 [削除依頼]
    「そう……。別に、説明無くても良いよね?」
    「良くないだろ!」
     当然の突っ込みをした。
     初め会話した時と何か違う様な気がしてきた。
     この違和感が気のせいで終わってくれれば良いと思った。
    「なんか、説明するのが面倒だから良いよね? 実践有るのみと言う言葉があったような無かったような。まぁ、深く考えないでくれればいいよ」
     結局彼女の一方的な会話で終わってしまった。これから何をするのか、どうすればいいのか説明を受けないで大丈夫なのかと疑問に思ってしまう。
     気にしても仕方ないので、そろそろ危機的な現実に戻ってくることを決意した。
    「大丈夫なのか?」
    「大丈夫に決まっているでしょ」
     自信に満ち溢れた笑顔で、微かに残る不安を掻き消してくれた。
    「じゃあ、始めましょうか」
     急に俺の手を握ってきた。
     手は、とても暖かく和やかな気持ちにしてくれる。しかし、今は和んでいる暇などなかった。
     目の前に龍の群がいるからだ。
     あんな夢の様な出会いをしていたので、つい緊迫していた現実を忘れて去ってしまっていた。だが、今現在は戻ってきている。
     少女は、次第に握る力を増していく。当然だんだん痛くなってくる。
    「そんなに強く握らなくても」
     俺の呟きは、軽く無視されてしまった。
     少女は、いきなり深く息を吸った。そして――
    「行くよ!」
     今までの呟き程度の声の大きさではなかった。今居る場所に声を反響するくらい大きな声で叫んだ。
     隣で叫ばれたので、つい握られていた手を振り解いて耳を抑えた。
     少女の叫びは長くは無かった。
     再び手を握ろうかと思い、少女の手を探る様に探してみたが何処にもなかった。
    「あれ……」
     嫌な予感がした。
     恐る恐る隣を見ると、淡い光を放ちながら消えかけている少女がいた。
     一度は安心したが、よく考えてみると安心できる状況ではなかった。
    「おい、大丈夫なのか?」
    「大丈夫。私に任せなさいよ!」
  • 31 轟雷 id:C9bFCr2.

    2011-12-24(土) 16:19:21 [削除依頼]
     頼りがいのある一言だった。しかし、本当は頼る事が出来る状況ではない事は、誰が見ても容易に理解することが出来るほど弱弱しく見えた。
     溢れ出るような光は次第に増し、ついには姿が見えなくなるほど強く激しく輝いた。
     ただ一言の言葉を残して、その場から消えてしまった。
     誰が消えたって? 当然少女に決まっているではないか。それ以外に消える人いや神が居るわけ無いだろう。
     ふと、龍だった時の様に何気なく消え去っていた事を思い出してしまった。
     再び不安が脳裏に過る。
    「冗談だよな……? おい。返事、してくれよ」
     不安や恐怖に負けて今にも泣き崩れそうな顔をしていた。
     残念ながら返事は無かった。
    「任せろ、そう言ったよな……。なのに、なのにどうして居なくなったんだよ」
     勢いがあった罵声も次第に勢いが無くなり聞こえなくなってしまった。
     龍の群と一人で戦わないといけない状況に戻ってしまった。これは、どうしようも無い事実で紛れもない現実だった。
     絶望した感情を捨て、戦う事を心に誓うように龍の眼を鋭い視線で睨んだ。両者の間には目に見えない戦闘の様な激しい威圧の衝突が感じられた。
     ただ睨みあっているだけで、周囲の空気は恐怖に怯え震えあがっていた。
     いつ戦闘が、始まるか分からない緊迫した空気が張りつめている。何もしていないのにお互いの手を読みあっているようにも見えた。
    「……」
     小さく呟いた。
     誰にも聞こえないくらい小さな声だった。本当にそう言ったのかも確かでなかった。
     最も危険だけど最も安全だった均衡は、少年の些細な行動によって簡単に崩されてしまった。
     龍は即座に咆哮を撃つ準備をし始めた。
    「作戦、教えてくれていれば何とかできたのに……無責任な神様だよ、本当に」
     無力な少年は、龍の咆哮が直撃しないようにジグザグに進みながら距離を詰めていった。距離を詰めて何が出来るか分からないが、とにかく今できる事を頑張ってやる事にしてみたようだった。
     風の抵抗を少なくするために上体を前屈みにしながら走っていく。
    「はぁ、はぁ……。以外に、距離が有るみたいだな」
     長い時間走っている訳では無いが、それなりの距離を走っているつもりだった。しかし、神は人に非情なのか距離が縮まる気配が全くなかった。
     それほどまで強大な者なのかと今更だが不安になってきてしまった。
     世界が漆黒の光をもたらした。
  • 32 轟雷 id:37CyDg1.

    2011-12-25(日) 11:06:45 [削除依頼]
     本能的に体が硬直し、動きが鈍くなるが相手が何をしてくるのか何となく分かっていたので、その場に立ち止るという選択を蹴っ飛ばして走り続ける事を選んだ。
     次第に強く燃え凝縮し集まっていく炎を、ここに居る誰も止めることが出来なかった。
    「――、くっそが」
     すでに息が切れかかってきていた。呼吸が上手くできなくて、体に酸素が運ばれなくなってきている。
     少ししか走っていないのに苦しくなり仕方なく立ち止る事にした。
     立ち止った瞬間とほぼ同時に上から光が降り注いできた。
     少年が気付くことは無かった。気が付いた時にはすでに光に飲まれ何も出来な状況になっていたからであった。
     気が付いた時には、変わり果てた世界に投げ出されたような錯覚に陥った。そう感じさせるほど周囲の環境を変えてしまった。
     視界は、黒煙に包まれていた。
     考える事も呼吸することが許されない場所に居るような錯覚に陥った。
     先ほどの息苦しさを軽く上回っていた。
    「っあ、はぁはぁ」
     息苦しさのため何が何でも息を吸おうとして黒煙を吸ってしまった。
    「や、やばい……。このままじゃ」
     遅かった。それしか言えない状況だった。
     何度目だろうか、同じ失敗をしでかしていると思い出している間に肺が焼かれていく。
    「――っ、うぁ」
     奇声より酷い声が出たような気がした。
     熱かった。とても熱かった。どうしようもないくらい肺が熱かった。
     痛みのせいでその場に座りこむ事しか出来なかった。
    「グォオオオオオオオオオ!」
     龍の遠吠えが聞こえる。それが死の宣告を言ったようにも聞き取れた。
     何かが来るような嫌な予感がした。
    「動け、動け体」
     予感がしたのでその場から退散しようとしたが、残念なことで体が何らかの理由で硬直して動かせなくなっていた。
     次第に焦りが行動にも露わになってしまう。
     汗を拭おうとした時見た光景は――
    「……、やめろぉォオオオオオオオ」
     一瞬何が何だか理解出来ていなかったが、異変を何気なく見ていたら自分がどんな状況に陥っていたのかを痛感させられた。
     俺の叫びは届かなかった。
  • 33 轟雷 id:37CyDg1.

    2011-12-25(日) 22:24:45 [削除依頼]
     黒煙の遥かかなったから黒い光が迫ってくる。それも一つでは無く、何十個と人が対処できる範囲を超えていた。
    「動けよ……。動いてくれよ、俺のからだっぁァアアアアアア」
     ギリギリまで動かなかった。
     体が動いた時は、黒い光の玉が目の前に到達するかしないかと危険な時に動いてくれた。
    「――ッ」
     目の前で爆発した。
     防げない威力を軽減できなかった一撃は、俺の体を容赦なく襲ってくる。
     初めの一撃を回避できなかったせいなのか、二撃三撃と連続で周囲に命中して破片が体に襲ってきた。
     破片は、弾丸かのように高速で肉谷体当たりをしてきた。
     破片が体に抉り込む事は一度もなかったが、確実に体を傷つけていく。防ぎようがない、体を丸めて凌ぐ以外方法が無かった。
     どうしようもないこの時を、ただ終わるまで防ぐ事だけを考え、体に力を入れその時を待っていた。
     長かった。
     何も出来ない時間が長かった。抵抗も反撃も全くできない、そんなもどかしい時間が長く感じられる。
    「このままじゃ……駄目だよな。やるしかない」
     心の底からそう思った。
     動けば致命傷を受けるかもしれない。けど、今動かなかったら全てが終わってしまうような気がして仕方なかった。
     勇気を振り絞って立ち上がった。
     即座に攻撃が出来るだけ当たらないように体制を低くし、その場から攻撃が当たらないように後退していった。
     体に破片が当たって痛かった。しかし、致命傷になるような大きさの破片は飛んでこなかった。
     それが幸いしたのかすぐに危険地帯から逃げ出すことが出来た。
     黒煙が辺り一面を支配しているため、恐らくお互いが安否を確認できていない。
    「何とか……安全な所に来られたようだな」
     もう何が何だが分からなかった。
     何処に居てどんな物が周囲にあるのか見えていても理解が出来なかった。
     俺があの場から離れて数分経ったと思うが、一向に攻撃の嵐がやむ気配が無く、攻撃を仕掛ける機会が全くなかった。
     出来るだけ呼吸を整える事に集中した。
    「力が、あれば……」
  • 34 轟雷 id:4S6p03/0

    2011-12-27(火) 19:24:29 [削除依頼]
     自分の無力を恨んだ。
     そんな後悔をしているよりも、自分が出来る事を理解していたので邪念を振り払い今生きる事に専念しなければならない事は、重々承知していた。だが、頭の中でそう思っていても現実問題そこまで合理的な考えではいられなかった。
     本能的に死を畏れ、体が恐怖に蝕われて硬直し全ての行動に支障を齎していた。
     少し冷静に思い起こしてみれば、極短時間にいろんな出来事が有りすぎて、一時が永遠に感じられるほど長く辛いものだったと思った。
     でも、そんな辛い時間でも俺が生きた時間に変えられない。そう思うと、永遠に感じられた時間が誇りになったような気がした。
     急な運動したせいか、額に嫌な脂汗が湧水の様に滲み出てきた。
     少しの時間を置いて頭が冷静になってきているのか、深刻な状況が頭の中で理解出来始めていた。
     心身が嫌な状況を理解出来た証拠として、恐ろしいほど小刻みに体が震えはじめていた。
    「こ、怖いのかな……俺は。体の震えが、どうしても止められないよ」
     何もしないでここでずっと居ても良いとも思えた。だけど、心の奥底ではそんな簡単に結論を出すことが出来なかった。
     何か出来るじゃあないか、少女が戻ってくるまでに倒せるじゃあ無いかと考えてしまう。その浅はかな考えが無ければ、絶対に此処から這いつくばってでも逃げ出していると思う。
     そんなみっともない事をしないという事は、まだ何処かで諦めきれていないと思う。
     俺が今できる唯一の事は、相手に関係する全ての情報を把握する事だった。情報が有るのと無いとでは、だいぶ戦闘に差が出来ると思う。
     そう考えた俺は、攻撃が当たるか当たらないかという曖昧な距離を探してみた。
    「大丈夫だ、大丈夫……死ぬ事は、無いんだから」
     そう言い聞かせて歩き出した。
     近づくにつれて嫌いな黒煙が濃くなってきた。
     目の前からは、耳の鼓膜を破くほど大きく強烈な爆発が繰り広げられえていた。
    「――ッ」
     恐怖に負けないように自己暗示を掛けながら進んでいたが、思ってもいなかった事が目の前で起きようとしていた。
    「何だよ……、ふざけているのかよ。この世界は、ふざけているのかよぉおおお」
     目の前、黒煙の先に一つの人影を認識が出来た。
     影は揺らぎ、確実な大きさ姿を把握することが出来ないが、それだけ証拠不十分でも誰なのか直感で分かってしまった。
     初めは、少女が助けに来てくれたのかと思ったが、どうも世界はそこまで甘くできていないようだった。
     歩くたびに鼓動が跳ね上がり、全身の血が噴き出すかと思うほど激しく脈打った。
  • 35 轟雷 id:1s3rnvy.

    2011-12-28(水) 21:06:47 [削除依頼]
     近づいて行くにつれて、影の揺らぎが少なくなり曖昧だった情報は不確かから確実に変わっていく。
     情報が鮮明になるにつれて、第六感の直感は根拠がある確信に変わっていった。
    「お前は……誰だよ。そこに居る、お前は誰だよ」
     声は届いているはずなのに聞こえない振りをしている。そんな気がした。
     そこに居る誰かを確かめるために危険な道を選んだ。別に選ぶ必要が無い道だった。だけど、選ばないといけないような気がしたので、その道をあえて選んでみる事にしてみた。
     初めは歩いていたが、次第に小走りに変わり距離を詰めていった。
    「分かっているだろ? フィン・ウィルソン」
     脳裏に一人の人物が思い当たった。
     姿を確かめようと黒煙の中を疾走した。
     肺が熱くなる。燃えるように熱くなる。呼吸が苦しいが我慢し、気に留めないで走り続けた。
     長い距離ではなかった。
     だんだんと黒煙が晴れてゆく。そのお蔭で相手の姿が見えそうになってきた。
    「早く来いよ」
     幼い青年の様な声が鮮明に聞こえてきた。
     部屋から出た時と違う声だが似ている様な気がした。だが、そんなことを気にしている暇などない。
     黒煙を切り裂いた。
     その先に待っていた人物は――
    「何でお前が……ここに居るんだよ。なんで俺の目の前に現れた」
     俺の目の前に居たのは、青年だった。
     歳は恐らく十二歳程度だろか、分からないがそのぐらいの歳だと思う。
     青年は、その姿の見合っていない服を着ていた。
    「そこまで、驚くことかな?」
    「ふざけるな! お前だけは此処に来ては……」
     最後まで言わせてくれなかった。
     尋常ではない速度で接近し、俺の首元を小さな手で絞める様に握られた。
    「っくあ……」
    「苦しいか? フィン。俺に逆らった罪だ」
     子供のくせに大人勝りの力だった。抵抗出来ずにただ一方的にやられるだけだった。
    「は、はなせよ、咎人……」
    「誰が咎人だ? 俺は、そんな落ちた者では無い。俺は、俺は……」
    「なんだよ……こた、えろよ」
     苦しかった。ただ、苦しいとしか言えない苦しさだった。
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