眠たい夜明け17コメント

1 ごん id:0z1F/qh.

2011-11-16(水) 22:54:26 [削除依頼]



溶けて、溶けて

無くなってしまいたくなる時がある

泥まみれになって、傷だらけになって

空を見上げて泣いてみたくなる時がある


          ―33888888111.44444111
  • 2 ごん id:0z1F/qh.

    2011-11-16(水) 22:58:08 [削除依頼]
    ごんです。

    これは、佐古ユズリの物語です。

    ジャンルは、純文学でしょうか。
    いや、そんな御大層なものでもないでしょう。
    青春…かな。

    どうぞよろしくお願いします。
  • 3 ごん id:0z1F/qh.

    2011-11-16(水) 23:45:46 [削除依頼]
    00〔別れの夜〕


     私はふすまに寄りかかり、部屋を眺めた。窓から月光が差し込み、部屋を青白く照らしている。
     部屋の中には何もない。使い慣れたちゃぶ台も、タンスも本棚もラジカセも布団も何もない。それらは、今日の正午、引越センターの人々が新居に運んだ。この部屋に残っているのは、私だけ。狭い狭いと思っていたが、こう何もなくなると広すぎるように感じた。
     ペタリ、と畳にすわりこむ。ひんやりと冷たい感触、指で溝をスーっと撫でてみた。つるつるとして気持ちいい。この畳とも、お別れだ。普段、とくに畳に思い入れを持ったことはないのだが、そう思うと、なんだか急に別れがたくなってくる。いっそ新居に持っていってしまおうか、なんて無茶なことを若干本気で考えてみた。
     ふと視線を感じて後ろを振り向くと、さっきまで私が寄りかかっていたふすまがいつの間にか開いていた。そして、そこには久世景見が立っていた。手にはパンパンのコンビニ袋を持っている。うっすらと『コンソメ』の文字が見えた。
    「しんみりしてんなぁ」
     そう言ってずかずかと部屋の中に入り込むと、どっかりと私の前に座りこんだ。逆光で、彼の顔がよく見えない。
    「後悔してるか?」
     ここを出ていくことを。
     そんな彼の問に、私は迷うことなく、ゆるゆると首を横に振った。
     後悔はしていない。これからも、するつもりはない。
     私がそう言うと、彼はハンと鼻で笑った。しかし、その答えは彼を満足させたらしい。顔は見えないが、雰囲気で分かる。
     
  • 4 ごん id:EC0ebqI1

    2011-11-17(木) 00:23:44 [削除依頼]

     彼がコンビニ袋の中身を取り出した。ポテトチップスのコンソメ味に、ジャガリコ、さきいか、それから得体のしれない何か。
     何それ、と尋ねると日本語とも思えない言葉が返ってきた。どうやら新製品らしいのだが、どうにも食べる気がしない。私はこっそりそれを彼の方に寄せた。しかし、しっかりとばれていたようで、「ユズリも食べるんだからな」とくぎを刺された。
     紙コップに飲み物を注ぎあう。彼にはチューハイ。私には爽健美茶。
    「とりあえず、乾杯でもしとくか?」
    「乾杯?」
    「一応、お別れ会なんだからよ。形だけでも」
    「何に対して乾杯するの?」
     私がそう尋ね返すと、彼は少しだけ、んー……、と悩んだ。しかし、めんどくさくなったのか、
    「とにかく乾杯」
     と無理やり自分のカップを私のカップに押し付けた。彼らしいといえば彼らしい。私も慌てて、乾杯、と小声で呟きカップを押し返した。
     夜はまだ始まったばかりだ。
     私は、ちょびちょびと爽健美茶に口をつける。
     私は目の前の彼を見た。その顔は相変わらず逆光のせいでよく見えない。彼がチューハイを勢いよく呷る。一瞬、彼が知らない男のように見えて、ぎょっとした。そして、まだまだ知らないことが多いのだと気付く。
     ずいぶんと長い間一緒にいたような気もするが、考えてみたらこの男と出会ってまだ一年も経っていないのだ。今さらそんな当たり前のことに気づき、愕然とする。

     別れの夜は長い。

     私はこの一年間を思い、目を伏せた。
     瞼の裏には、たくさんの空が浮かんだ。
     そして、たくさんの景見が浮かんだ。

     ずいぶんと遠くまで来たようにも感じるが、きっとあの頃の私はまだまだ近くにいる。
  • 5 ごん id:Gz0CkxD/

    2011-11-20(日) 11:49:05 [削除依頼]
    01〔アイデンティーティー・クライシス〕

    このまま消えてしまったらどうなるのだろう、とふと考えた。
  • 6 ごん id:Gz0CkxD/

    2011-11-20(日) 11:55:41 [削除依頼]

    学校を休んだ。朝調子が悪かったが、別に学校を休むほどでもなかった。言ってしまえば、ただのずる休みだ。
    母親には、頭が痛いから休む、と言った。
    母親はすぐに学校へ欠席の連絡をいれると、いつも通り出勤していった。
    私は、なるべく力のない声で、
    「いってらっしゃい」
    と言った。
    母親は、いってきまーす、と私以上に力のない声を返した。彼女は朝が弱いのだ。
    我が家は両親が共働きなので、家には私一人が残ることになる。

    誰もいなくなった家でぼんやりと考える。
    人生初めてのずる休みとは、こんなにあっさりすんでしまうものなのか。

    時間を確かめるため携帯電話を開く。もう一時間目が始まってる時間だった。
    友達から一件のメールもきていない。
    いないことにも気付かれてない、なんて悲しい状況ではないと思う。
    ただ――佐古は? 風邪だってさー。ふーん、風邪かぁ。――で終わっているのだろう。お大事にメールを送るような可愛らしい付き合い方はしていない。私もたぶん、あの中の誰かが風邪をひいてもメールを送ったりしない。仲が悪いわけではないのだが、私たちはずっとそうなのだ。
  • 7 ごん id:Gz0CkxD/

    2011-11-20(日) 14:13:13 [削除依頼]

     電気を消したままの薄暗い部屋。私は動かない。だから他の何も動かない。じっと時間が止まったかのような部屋。
     それでも外の世界はあわただしく動いているのだろう。私がいようがいまいが、くるくるとめまぐるしく世界は動く。

     このまま消えてしまっても何も変わらないんじゃないか。

     そんな気がする。ああ、目眩がする。体の奥が空っぽになるような喪失感。
     自分がいなくても、世界が回る。
     そんな当たり前のことに、いまさら気がついたわけじゃない。それはずっと知っていた。そして、そんなのは大したことじゃないと知っていた。この世界は、誰がいなくても勝手に回る。
     だけども、時々、無性にやるせなくなるのだ。

     私って、なんなのかな。

     ――ぐるぐると頭の中を旋回する理性からの言葉。
     ――ぐちゃぐちゃと心を掻き乱す不安からの嘆き。
     その何もかもが小さな私の中を猥雑に散らかしていく。考えれば考えるほど、自分がどうしたいのか――どうであればいいのか――それすら分からなくなる。繰り返される自家撞着なディベート。「私」という核が全く定まらない。
     何もしていないのに、とてつもない疲労感が私を襲った。
     めんどくさくなって、ぼそっと呟く。


    「消えちゃいたい」
  • 8 ごん id:Gz0CkxD/

    2011-11-20(日) 14:23:32 [削除依頼]

     携帯電話が鳴る。だいぶ前に見た映画の主題歌「僕が僕であるために」が流れる。それで、ハッと我に返った。ずいぶんとネガティブ思考に陥っていたようだ。最近ぼおっとしてると、すぐにその手のことを考えてしまうのが悪い癖だ。
     発信者は母親だった。
    『洗濯物いれておいて!』
     母親の声は切羽詰まっていた。
     窓の外を見ると、いつの間にか雨が降っていた。新緑にパサパサの雨粒が当たる音がよく聞こえる。
    「うん、分かった」
    『ごめんね。じゃ、よろしく』
     電話は一方的に切られた。私は慌てて立ち上がると、サンダルを履いて外に出た。
     幸い、降りだしたばかりのようで洗濯物はあまり濡れていなかった。部屋の中にもう一度干し直す。パンパンとくしゃくしゃにしてしまったシャツを伸ばすと、ほのかに洗剤の匂いがした。洗剤の強い匂いは好きだ。私はちょっとだけ匂いを楽しんだ。
  • 9 ごん id:Gz0CkxD/

    2011-11-20(日) 14:59:28 [削除依頼]

     雨はどんどん激しさを増す。私は一人ぼんやりとそれを眺めた。雨が羨ましくて羨ましくてたまらない。窓からそうっと手をのばした。ぴちゃんと音を立ててどんどん手のひらに水がたまり、あっというまに溢れ落ちていった。


     私は昔から水になりたかった。ときどき、水になる自分を夢想した。
     ひんやりとした湧水に。川のせせらぎに。猛々しい滝に。荒れ狂う波に。全てを包み込む雨に。
     私はなりたかった。
     あるいは、地面に染み込むところを想像した。
     人に飲み干されるところもだ。
     それはひどく楽しいものだった。

     風で窓がガタガタと揺れた。ビクッと肩を揺らしてしまう。なんだか風も強くなってきたようだ。
    「あっ!!」
     目の前を白いものが横切った。一瞬人のようにも見えたが、くるくる舞うそれはただのYシャツだった。どうやら、一つだけ取り込み忘れたらしい。
     私は慌てて外へ駆けだした。
     Yシャツは地面に落ちて泥だらけになってしまっていた。うわどろどろ、とため息交じりに嘆く。
     ビューっと強く風が吹いた。長く伸ばした髪の毛がぐしゃぐしゃになる。なんとか髪をかきわけて地面に視線を落とした。
     また落としてしまったYシャツが、偶然にも大の字に寝転んだように広げられていた。
     一瞬それが、私の死体のように見えた。
     私の死体が目の裏に浮かぶ。そして、すぐに跡形もなく消え去る。あとに残るのは、透明な水たまり。

     得体のしれない衝動が体を駆け廻った。背筋がぞくぞくと震える。

     溶けて、溶けて、無くなってしまいたくなる時がある。
     泥まみれになって、傷だらけになって、空を見上げて泣いてみたくなる時がある。

     そうして私は水になる。

     今なら、なれる気がした。
  • 10 ごん id:Gz0CkxD/

    2011-11-20(日) 15:28:17 [削除依頼]

     潦にわざと足を滑らせて、視界で世界をぐるんと回す。
     そのまま仰向けに倒れて、灰色の空を見上げる。
     雨粒が顔に当たる、目に入る。
     このまま水になって溶けてしまえと真剣に願う。
     なのに、いつまでも体はそのまま。
     悲しいほどに人間。
     どうしようもなく胸がつかえて涙がこぼれる。

     そのうち、大声で泣き叫んでみた。

    「うああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ」

     なんて、ままならないんだろう。


     馬鹿なことをしたものだ、と自分自身に呆れる。
     Yシャツどころか、自分自身もどろどろになってしまったので昼間から風呂に入った。温かいお湯に身をゆだねながら、気づく。あ、これも水じゃないか。
     ドライヤーで髪を乾かしながら、まだ半日も経っていない今日のことを思い返してみた。
     どうしてだか、今日の私は朝起きてからずっと変だった。まずずる休みをしようと思い立ったところから変だった。
    「……酔ってたのかな」
     酔っていたとしか思えない行動。酒は飲んでいないが、自分に酔っていたかもしれない。

     母親が家に帰ってきた。仕事を早く切り上げてきたらしい。そして、ドライヤーで髪を乾かしてる私を見て首をかしげた。
    「どうしたの?」
     自分から転んでびしょぬれになって水になろうとしてました、など言えず「ちょっとね」なんて言葉で濁した。
    「変な子ね」
     と母親はクスクス笑って、ゼリーを取り出した。私の好きなちょっとお高い白桃ゼリー。

     二人で昼食を食べた。デザートには白桃ゼリー。
    「ねえ、母さん」
    「なに?」
    「私、なんかずっと変なんだけど」
    「変?」
    「うん。そう」
     すると、母親はなんでもないように、五月病じゃない? と言った。なるほど、五月病。
     案外、そうだったのかもしれない。

     いつの間にか、雨は止んでいた。
     厚い雲の隙間から、太陽が庭を照らした。新緑の上の甘露がキラキラと輝いていた。
  • 11 ごん id:OkA53rx1

    2011-11-21(月) 23:07:58 [削除依頼]
    00〔PM10:35〕

     あ。
     急に間抜けな声が聞こえた。顔を上げると、景見が頭を抱えていた。
    「どうしたの?」
    「忘れた」
    「何を?」
    「ドラマの初回。修哉にでも録画頼もうと思ってたんだけど」
     すっかり忘れちまってたんだよ。ま、自業自得か。
     そう言って彼は、何本目かのチューハイを開けた。その頬はほんのりと赤いが、酔った様子はない。彼は相変わらず酒に強かった。

     飲んでもなかなか酔えない、とだいぶ前に彼がそう言ったことを思い出す。
     アレは、夏の日だった。入道雲の影が濃くなる昼下がり。柱に止まった蝉がやけにうるさく鳴いていた。
  • 12 ごん id:.UnW07c/

    2011-11-22(火) 02:18:52 [削除依頼]
    02〔陽炎のよう〕

     終業式だけで午後の授業がない。
     担任が、みなさんよい夏休みを、と長ったらしい話をしめた。そして微笑んで言った。
    「帰ってよし」
     すると、待ってましたとばかりに他の生徒たちは喜び勇んで帰っていく。正気だろうか。しかし、学校に残っていても何もすることはないし、第一すぐに完全下校の時間になってしまうので、帰るしかない。
     私は、重たい溜息を一つ落とし、炎天下の中学校の外へ出た。
     こんな昼間の一番日差しが強い時間に帰すなんて、全く馬鹿げてる。
     ぐわん、ぐわん、と頭が揺れる。強すぎる日差しに目眩する。日差しは苦手だ。
     吐く、と思った。
     慌てて口元に手をやったのだが、出てきたのは熱いと息と「うぇ……」という呻き声だけだった。まあ、吐こうにも胃の中には胃液ぐらいしか入っていないのだが。最近、食欲がなくてろくに食事を取っていないのだ。
  • 13 ごん id:PfDwrYM.

    2011-11-25(金) 21:47:19 [削除依頼]
    ああこれが夏バテか、と妙に感慨深く思う。人生初めての夏バテだった。
    家に帰って真っ先にシャワーを浴びると、すぐに布団に横になった。冷たい布が未だ火照ってる肌に心地よい。

    両親は共働きで、昼間は家にいない。何か食べなくてはと思うのだが、自炊するしかないことをかんがえるとどうでもいいような気がしてしまう。どうせ食欲ないのだし、とうつらうつらした頭で考える。
    ふと、視線を感じたような気がして顔を庭の方へ向けた。
    夏の光を浴びて、光があふれてるかのようにも見える眩しい庭。熱気で少しゆらゆらと揺らいで見える。その庭の真ん中に男が立っていた。その姿もゆらゆらと揺らいで見えて、まるで陽炎のような男だと思った。
    私はその男をよく知っているような気がした。
    が、思いだそうとしたところで意識を手放してしまった。
  • 14 ごん id:PfDwrYM.

    2011-11-25(金) 22:42:13 [削除依頼]
    目が覚めると、すでに夜になっていた。
    ふすまの向こうから、ぼんやりと光が漏れている。そして、少しいつもより高い母親の声と男の人の声がした。
    私はゆっくりと起き上がると、手近にあったユニクロのちょっと大きめのTシャツと学校の短パンに着替えた。まだ霞がかったようにぼんやりとしている目を擦り(ついでに目やにもとってしまう)、髪も手櫛で整えた。
  • 15 ごん id:AnLf0De1

    2011-11-26(土) 20:32:58 [削除依頼]
    ああ、起きたの?
  • 16 ごん id:AnLf0De1

    2011-11-26(土) 21:50:36 [削除依頼]
    目を開けた瞬間に、とてつもない疲労感を感じてぐったりする。首元を手で触る。嫌な汗をかいていた。
    どうやら、悪い夢にうなされたらしい。
    部屋は真っ暗だった。私は手探りで携帯を取ると、時刻を確認しようとした。
    いきなりの光に目が驚いたのか、どばっと涙が流れた。
  • 17 ごん id:gWSF6gq1

    2011-11-27(日) 21:42:39 [削除依頼]
    夜の鳥が鳴く。怖いくらいに暗闇で、頭がおかしくなりそうだ。
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