空言少年と人形少女7コメント

1 藍名 id:O1ePsxs/

2011-10-19(水) 15:08:25 [削除依頼]
再び彼女を見たのは学校の屋上だった。
風で長い黒髪が舞い上がり、髪が乱れるのも気にせず、彼女は真っ直ぐに遠く先を見ていた。

「……」

やっと見つけた。
憎くて憎くて堪らなかったコイツを。
そう思うと自然に俺は笑っていた。
  • 2 藍名 id:O1ePsxs/

    2011-10-19(水) 15:17:34 [削除依頼]
    第1章
    楽しくて堪らなかった。
    油断すると、笑ってしまう。

    「……っく」

    嫌々、今は笑う所ではない。
    俺は必死に堪える。

    「さっきから、如何したの?」

    向かい側に座って、真面目に本と向き合っていた浅間美雨は本から顔を上げて俺を見た。

    「え、何?」

    「嫌、ずっと嬉しそうだから如何したのかなって」

    「別にそんな事ないと思うけど」

    「誤魔化そうとしたって無駄何だからね。もう私は時雨くんの全てを見切ってるんだから」

    美雨は偉そうに胸を張って言い切った。
    見切ってる、か。
    それは如何だろう。

    「じゃあ、当てて見ろよ」

    「んーと、今日、時雨くんの好きなマンガの発売日、とか?」

    「はずれ」

    「えー、何?分かんないよ」

    見切ってないじゃないか。

    「じゃあ、何?他に嬉しい事なんてあったかな。んー……あっ」

    何やらひらめてた様だ。
    美雨は微笑む。

    「好きな子が出来たんでしょ?」

    「如何してそう思う?」

    「今日の入学式で、良い子を見つけたって感じでしょ?ほら、図星だ。やっぱ、幼馴染の思ってる事は分かるものだね」

    良い子を見つけた。
    ま、そう言う事にして置くか。

    「応援してくれるか?美雨」

    「勿論。幼馴染として、応援する。で、誰々?」

    「言わねーよ。言ったら、お前、余計な事しそうだし」

    「えー、教えてよ」

    美雨の追求をサラリとかわし、俺は図書室を出た。
  • 3 藍名 id:O1ePsxs/

    2011-10-19(水) 15:27:48 [削除依頼]
    今日の時刻は4月8日。
    入学式があった。
    式の後は普通に教室へ移動し、適当にプリントを配布して解散だったのだが、読書家の美雨が図書室に行きたいと言うのでついでに寄っていた。

    「うー、待ってよ」

    図書室を出て歩いていると、後ろから慌てて美雨が走って来る。
    その辺の女子よりも遙に長いスカート(要するに真面目)は走り難そうだった。

    「何でそんな真面目なわけ?」

    「え?」

    俺に追い付き、息を切らす美雨は大きく首を傾げた。

    「嫌、普通に他の女子は膝ぐらいじゃん。スカート」

    「時雨くんは短い方が好きなのかな?」

    「如何でも良いけど。ただ、長過ぎると走った時、転びそうだなって」

    「うーん、如何だろ。別に走らなければ良いんじゃないかな」

    ごもっともだった。

    「ねえ、おばさん、今日も仕事でいないんでしょ?だったら、お昼ご飯はうちで食べて行こうよ」

    「別に良いって。迷惑だろ」

    「でも、お母さん、時雨くんに会いたくて仕方ないって言ってたよ」

    それはそれで怖ぇーよ。

    「良いでしょ?家、隣同士何だし、近いしさ。入学祝いって事で」

    こう言う状況になると、断れなかった。
  • 4 藍名 id:O1ePsxs/

    2011-10-19(水) 15:38:13 [削除依頼]
    美雨の母親に会うのは久し振りだった。
    いつかの夕方に会ったくらいで。

    「時雨くん、元気にしてた?何かもうカッコ良過ぎて抱き付きたいくらいよっ」

    相変わらずのテンションの様だ。
    この人の性格は全然変わらないし、ブレる事もない。

    「もう、お母さん。少しは自粛してよ。時雨くん、好きな人出来たんだから」

    何、サラリとバラしてんだ、コイツ。
    俺は美雨を睨むが、美雨は気付かずまだ言い続ける。

    「でね、同じ学年の人らしいんだけど、誰なのか教えてくれないんだよ」

    「へえ。時雨くんの初恋か」

    え、俺の初恋、まだ来てなかったのか。

    「まあ、良いじゃない。次期にフラれた時に聞けば」

    「うん。そうだね」

    嫌々、何でフラれる事になってるんだよ。
    って、別にムキになってツッコむ必要もないか。
    別に好きな子が出来たって言うのは全部嘘だからな。
    正確には“殺.してやりたい子”が出来たって所だ。
  • 5 藍名 id:O1ePsxs/

    2011-10-19(水) 15:45:01 [削除依頼]
    結局、美雨の家で昼飯を頂き、俺は家に帰った。
    帰り際、おばさんから夕飯も食べに来なさいだとか言われたが、失礼のない様に断った。
    でも、幾ら遠慮して断っても、後になって家に夕飯のおかずを持って来るんだよな。
    ま、その時は断れる事もなく、有難く受け取るんだが。

    「あーあ」

    自分の部屋のベットに座り、寝転ぶ。
    もう一度、確認して置くか。
    俺はスクバから、今日配られた1年生の全クラス表のプリントを取り出す。
    プリントの右側、1年7組の真ん中より上の方を凝視する。

    出席番号13番 白雪愛無

    やっぱり、間違いない。
    本当にコイツだ。

    「……っく」

    思わず、笑い声が漏れる……が、気にしない。
  • 6 藍名 id:O1ePsxs/

    2011-10-19(水) 16:36:23 [削除依頼]
    白雪愛無は妙に目立っていた。
    長い綺麗な黒髪、
    整った顔、
    そして、無表情。
    綺麗に作られた人形の様だった。

    「ねえ、時雨くん」

    「何だ?」

    「あの、白雪、愛無さんって人、私、見た事あるんだよね」

    「ふーん」

    「嫌、ホントだよ。小学……6年生ぐらいだったかな?どっかで会った気がするんだ。時雨くんも、覚えない?」

    「ないな」

    もう嘘を吐いても、何も感じない。
    罪悪感とか、もう、ない。

    「でもでも、あの雰囲気、覚えてるよ、私」

    隣の席になった美雨は、うんうんと頷く。

    キーンコーンカーンコーンッ

    チャイムが鳴った。
  • 7 藍名 id:O1ePsxs/

    2011-10-19(水) 16:49:37 [削除依頼]
    美雨がうろ覚えだった様に向こう――白雪愛無も、覚えていないらしい。
    普通に教室で、確実に白雪の視界に俺が入っても、彼女は気付かない。
    結局、完璧に覚えているのは俺だけなのか。
    俺は大きく溜め息を吐く。
    殺.そう。
    確かにそう思った。
    けど、本人が忘れている様では話にならない。
    如何にかして、思い出させなければ……
    っても、忘れたモノを思い出すって結構難しい事だろうしな。

    バンッ

    誰かとぶつかった事で、俺の思考は停止する。

    「あ、すみません」

    自然と謝罪の言葉が出た。

    「ううん。こっちこそ、考え事してたから」

    ぶつかった相手は微笑んでいた。

    「いえ」

    「ねえ、ぶつかったお詫びに名前、教えてくれないかしら?」

    「名前、ですか」

    「別に言って、減る様なモノじゃないでしょう?」

    よく見ると、その女子生徒の校章は2年生を指していた。
    先輩、だったのか。
    通りで最初からタメ口なわけだ。

    「神崎時雨です」

    「へえ。雨って点で、浅間さんと被ってるのね」

    浅間、さん?
    美雨の事か。
    いつも、名前で呼んでいるせいか、名字を忘れ掛けていた。

    「美雨と知り合い何ですか?」

    「ええ。別に向こうは知らないのよ。私が知っているだけ」

    くすりと、先輩は笑う。
    何かストーカーに近いモノを感じた。

    「昨日、図書室に来ていたでしょう?中々の読書好きだなって、調べたのよ。1年7組1番浅間美雨……で、合っているわよね?」

    「はい。合ってます」

    「じゃ、私、行くわね」

    軽く手を振って、先輩は普通に行ってしまった。
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