ファンタジア3コメント

1 茜 id:vk-8VsRzPb0

2011-10-11(火) 21:14:55 [削除依頼]
「……まただね」
一面に広がる荒野を眺めながら、彼は呟いた。
「また、滅んでしまった」
「どうして……」
女の乾いた瞳が、荒れた大地を写す。側に転がる少女の死体を引き寄せて、女はうなだれた。
「どうしてなのよ……」
「仕方ないよ。君は、よくやったんだから」
「そんな……」
冷たく乾いた風が吹き抜ける。
「何故? 何故いつも、あなたはそう……」
「じゃあ、ここで諦めるのかい?」
女が顔を上げる。大地に取り残された少女の身体が、砂と共に光となって、飛ばされていく。
「……いいえ」
瞳からこぼれ落ちた雫が、黒き地の底に沈んでいく。
「諦めないわ、絶対に。この魂に懸けても」
真っ白な光が、女と彼を包む。やがてそれが空に帰すと、二つの姿はもう消えていた。何も遺ってはいなかった。ただ、砂だけが吹き荒れていた。

何もかもが荒れゆく大地。かつて太陽が大空に座し、白き光に祝福されていた豊かな世界の姿は、もうそこにはない。
黄金に輝く砂の大地も、それに実りをもたらす命も、それを潤す水も、世界が乾ききると共に、全て失せてしまったのだ。
その終焉は、あまりにもあっけなかった。
突如として大陸を襲った大地の黒化。黒き砂によりもたらされたその災いは、たった数百年余りで大陸を死の土地へと変えていく。
滅びが世界を蝕む中、狂気した人々は、生きた土地を求め武器を取った。大陸は争いに呑まれ、とめどなく流される血の色に、やがて世界は染まっていく。

大陸の東に位置する皇国。西の帝国との長きに渡る戦いにより疲弊した国力は、遂には民の心までをも疲弊させていた。
悪化の一途を辿るばかりの戦況に、次第に軍部も焦りの色を強めていく。
滅びが世界を包み、その恐怖に、人々が絶望していた時代。
そこから紡がれる、新たな歴史――
  • 2 茜 id:qWq30Zm0

    2011-10-12(水) 00:28:46 [削除依頼]
    序章 ー滅びー

     流れるような黒い髪。青の装束を身にまとい、騎士の剣を収めた鞘を腰に差し、少女は執務室へと現れた。
    「久しぶりだな、イリス」
    「前置きはいいわ。本題に入って」
     青い瞳が、窓を背にする老人の目を捉える。
    「……相変わらず、ということか。まあいい」
     白く長い髭を撫でながら、老人は溜め息をついた。側の椅子に腰掛け、イリスをその前へと促す。
    「……それで、話って?」
     イリスが切り出した。
    「お前に新たな任務が下った」
     老人が懐から一枚の書状を取り出す。
    「これだ」
     受け取ったイリスが中身を開いた。
    「……護衛?」
    「そうだ」
     窓から差し込む光に、老人の黒い背が浮かぶ。
    「知っての通り、我が皇国が西の帝国と開戦してから、幾年か経つ。これまで前戦に立ってきたお前なら解る通り、今我が皇国は、敵の戦力を前に疲弊している」
     黒い瞳に、イリスの姿が写る。
    「そこで上の判断により、これまで密偵が敵国へ送り込まれていたが、それがこの度帰還することになった。その護衛が、今回のお前の任務だ」
    「どこへ向かえばいいの?」
    「南のオアシスだ。敵軍が作戦の展開拠点としてオアシスに駐留する機会に合わせ、合流することになっている」
    「成る程。だから私なのね」
    「そういうことだ。敵軍の渦中でも問題なく動ける戦士は、わしが信頼するお前を置いて他にいないからな」
    「……分かった。今すぐ向かうわ」
    「待て」
     執務室から出ようとしたイリスを、老人が呼び止めた。
    「何? セルバン」
    「まだ話は終わってないぞ」
    「……まだ何かあるの?」
     呆れた様子で溜め息をつきつつ、セルバンは続ける。
    「……今回の任務に当たり、お前に部下を用意した」
    「部下?」
    「そうだ。自らの命に代えてでも、お前を守ってくれるだろう。上手く使うことだ。それと……」
    「今度は何?」
    「これをお前に渡しておく」
     セルバンに言われるまま、イリスは差し出されたものを受け取った。
    「これは……?」
     イリスの掌に乗った瞬間、それはあざやかな蒼の光を放ち、輝き出した。
    「“ジェム”と呼ばれる鉱石だ」
    「ジェム……? これがどうかしたの?」
    「深い意味はない。そうだな……せいぜい、お守りとでも捉えておけばよいだろう」
    「お守り……」
     いぶかしげに、イリスがセルバンを見つめる。どういう風の吹き回しなのだろう。だが、そこまで考えて、やめた。
    「……分かったわ。では任務に向かうわね」
     そう言い残し、イリスは執務室を後にした。
    「イリス……」
     誰もいなくなった部屋で独り、セルバンの声だけが籠もる。窓の外を覗くと、そこには砂の大地が一面に広がっていた。
     風に運ばれて、砂山が一つ崩れた。
  • 3 茜 id:vk-ar/Jyqv/

    2011-10-14(金) 00:09:21 [削除依頼]
    「……公場、か」
    灼熱の太陽、吹き荒れる熱風。大陸の東端に位置する皇都は、緋の都と呼ばれる皇国の中でも、特に熱気の強烈な都市として知られている。城から出てきたイリスは、額に滲み出る汗を拭いながら、セルバンから受け取った書状の中身を改めて確認していた。
    そこには、セルバンの言った例の部下との待ち合わせ場所が記されていた。皇都は広大なオアシスを中心に、円形に拡がった街である。オアシスは国の管理下に置かれ、普段より公場と呼ばれていた。
    「………」
    書状を閉じ、イリスは歩み出す。街はいつもと変わらない。都民があちらこちらで群れを成し、そこには必ず記者の姿が在る。皆、戦場での自国の地位が気になるのだ。幾ら現場が同胞の血に染まろうと、それが勝利に繋がれば、彼らにとってあとのことは関係ない。帝国との開戦以来、戦いは民衆の心をすっかり貧しくさせてしまったようだった。日々重なる敗北の報せに、民の心は荒れ果てていた。

    「あ、あの人じゃない?」
    「あ、本当だね。あの人だ」
    オアシスに着くと、広場の人ごみの中に、こちらを指差す人影を発見した。
    「あれが……」
    人影の方へと近付いて行く。
    「こんにちは」
    「初めまして」
    イリスの姿を確認すると、黒マントの衣装に身を包んだ二人の兵士が、待ち構えていたかのように前に出た。国の者ならば誰もがしている格好である。
    「……ええ、初めまして。あなた達が、例の部下かしら」
    「はい。僕はリムと言います」
    「私はライムです。えっと、あなたが上官の……」
    ライムが困惑した表情を浮かべる。
    「イリス、よ」
    名を口にすると、あ、そうそうと叫びながら手を叩く。
    「もう、ライムったら……」
    隣のリムの呆れた表情をよそに、ライムは慌ててごめんなさいと頭を下げた。
    「気にしてないわ。それより、あなた達は……」
    「僕らは魔導兵です。任務については、セルバン様より伺っております」
    「にしても、展開中の軍隊に潜り込めだなんて……」
    ライムが沈んだ表情を浮かべる。不安は最もだった。確かに、幾ら任務とはいえ、敵軍の渦中へ潜入するというのはあまりにも危険な行為である。
    「けれど、今回の任務には密偵の身の安全もかかってる」
    「敵国に潜入していた密偵ですね」
    「ええ。いずれにせよ、任務である以上は、遂行するまでよ」
    「は、はい。そうですよね。すみません、こんな時に、私ときたら……」
    申し訳なさそうに、ライムは顔を伏せた。
    「大丈夫よ。ともかく、場所は南のオアシス。任務は敵軍に交じっての密偵の保護。質問はある?」
    大丈夫ですと、リムが勇んで応える。それに続き、はっと我に反ったように、ライムも顔を上げる。空に舞った砂埃が、ライムの髪をさらった。
    「分かったわ。では早速向かいましょう」
    イリスが言うと、二人ははい、と返し、彼女の後ろに付いた。それを確認してから、二人を引き連れ、都の門へ向かい出発した。
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